怒りの葡萄 (下巻) (新潮文庫)

制作 : 大久保 康雄 
  • 新潮社
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本棚登録 : 513
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102101056

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに感銘を受けた一冊。
    全編を通して「生」に真っ向から向き合い「希望」を捨てない、
    母親がとても素晴らしい。

    最初はなかなか馴染めず退屈だったんだけど、
    後半、読み進めるスピードが加速して行く。

    下巻、後半で母親がいう。
    「女ってものは男よりうまくいろいろ変えていけるものなんだ。」と。
    「女は自分の生活を腕に抱きかかえているのさ。男は生活をすっかり 頭の中にもっている。」
    そして、
    「男ってものは一区切り、一区切りのなかに生活しているのさ。女はね、おしまいまで一つの流れなんだよ。そんな風に見るんだよ。」

    これが、最後の場面に繋がっている。
    ひとこと、「凄い!」と思える場面に。

    自分たちの国(土地)を追われた農民を通して、
    語られる人としての生き様は、
    いつの時代にも共通する普遍的なものだと気づく。
    アメリカ文学の名作。

  • 噴き上げる砂嵐と企業の弾圧に嘆く日々に決別すべく、
    一家は手元で妙香を発する一枚の広告を手に、移住を決意する。
    そこには、カリフォルニアに求人が存在すると書いてあった。
    軋むトラックに、妊婦から老婆まで家族全員乗り込み、険しい道のりに歩みを置く。
    家族を1人、また1人と失い、それでも光明を信じてやまずに猛進する男たちと、
    そんな大家族を必死で支える母親。

    しかしカリフォルニアには、そんな家族が何百と群がっていた。
    仕事は日雇い労働しかなく、一日分の食糧も満足に手に入れられない。
    挙句の果てに、日雇い労働すら無き日が訪れる。

    広告1枚を信じるなんて、馬鹿げているのかもしれない。
    しかし農業しか知らなかった家族には、それすらも貴重で珍しい情報だった。
    無残な歴史の文脈が彼らに与えた判断力では、信じるしかなかったのだ。
    そして、手にとって温度のわかる家族と共に寄り合って力を合わせ、
    限定された選択肢から生きる術を選ばざるを得なかったのだ。

    本作品では1つの家族しか採り上げられていないが、
    同じような家族は数百・数千と存在し、それぞれがそれぞれの「怒り」を抱えていた。
    1つ1つの怒りの粒は群をなし、カリフォルニアに「怒りの葡萄」となって萌芽した。

    当事者には如何ともし難い歴史の文脈がもたらす理不尽が、
    極めてリアルに描写される嘆き声によって深刻に響いてくる。
    そんな作品でした。

  • 1930年代アメリカの「ダストボウル」による国内難民の一家族を描いた作品
    延々陰々滅々貧乏農民一家の苦難がひらすら続くので
    読んでいるこちらもげっそりするため読む手がどんどん加速する
    海が真っ二つに割れ石版に十戒が刻まれる場面でおなじみの
    聖書「出エジプト記」における苦難の旅という題材を下敷きにしたお話らしいが
    それがまだ7、80年前というごく最近の
    しかも世界一の経済大国で起こった事実であるのが
    聖書に既にあらゆる物語が含まれているというと同時に
    民衆の苦難と社会のありかたと生命賛歌が
    人間という文明にとってありふれた主題であることでもある

    時代背景からして一家の苦難は世界恐慌下における人災でもあるので
    何十年か後に本邦での『カムイ伝』みたいなうけとられかたをしたようでもあるが
    延々書き綴られた一家のありふれて真っ直ぐな生き様は
    なるほどこれぞ「時代と文化を越えて普遍性を持つ世界文学」といったおもむき
    それでも長いと思う
    無駄ではないけれども長い
    社会批評でなく小説でなく文学なのかもしれないが
    小説だと思って読むと長い
    その文化と時代における作品独自の視点を読むのであって
    その風俗や筆の運びを楽しんでいない態度だとそう思う

  • 新潮社世界文学全集で読んだ。2段組600頁超えの大作。
    竜巻と自動化のせいでオクラホマの農地を奪われた一家が、新天地カリフォルニアをめざす。家族や隣人たちとの別離を経て、着いた場所は、過酷な労働現場で賃金のダンピングが行われていた。
    まるで、現代社会の縮図のような。ラストで天災によってうちのめされ、子を失った家族に、聖母の慈愛のような一瞬がおとずれる。
    男たちに怒りが失われていなければ、女たちには希望がある。こんな描写がくりかえされる。読み通すのにかなり時間がかかったが、出会えてよかった名作。

  • 蟹工船アメリカ版、って感じでしょうか。
    1930年代のアメリカっていうのはもっともっと豊かなイメージを持っていただけに結構ショッキングな内容でした。アメリカが共産化する可能性はそれなりにあったからこそ、大資本家の徹底的な組合封じがなされなのだろう。
    解説を読むまで気がつかなかったが、登場人物の心理描写一切なしでこのページ数を描き切るのは大変なことだろうな。

  • おっ母さんの存在感というか生きざまがすごい。生きている人間は生きていくもんなんだ。

  • 古本

  • 上巻で 豊かさの象徴であった葡萄が、下巻では 搾取された労働者の怒りの象徴に変化。下巻は 新しい土地においても 資本家の搾取と貧困に苦悩する姿が描かれている

    下巻ではシャロンのバラ が神聖の象徴に感じた。シャロンのバラが 聖書の世界で何を意味するのか によって 結論の解釈は 大きく変わると思う。結末の意味は 出口のない貧困と狂気か 信仰による愛か

    資本主義への怒りが込められた葡萄と 貧困と苦痛に耐えてきた シャロンのバラの乳房は 同じなのではないか

  • ここ最近読んだなかでは断トツの傑作であった。
    土地を追われた人々はいくつもの苦難に遭いながらも、ただ生きることばかりを目的にして生活を繋いでゆく。
    なぜここまで苦しまねばならないのかと思い悩んで自害を選ぶこともなく、奇数章において語られる当時の悲惨で無情な社会的・自然的な不幸を受け容れる。
    そうした民衆の姿が、緻密で動的な筆によって、しかしあくまでも主観に陥らずに語られるために、そこには人間の生々しい醜さまでもが(ときには子供でさえも!)描かれるのである。
    文庫本で上下900頁ほどに及ぶが、それだけの長さにもじゅうぶん必然性が感じられる作品であった。

  • グイグイと引き込まれる話ではないが、ズッシリのしかかってくる長編だった。暗くて埃っぽくて湿っぽい雰囲気に満ちた悲壮な家族の物語が主軸。そのストーリーの合間には社会と時代の情勢が綴られていて、これが突き刺さる。超越的な視線で淡々と(しかし一人称で)叙述されていて、不条理感が浮き出してくる。
    かつて、作者は忘れたが「ローマの慈悲」という絵画を観て、結構衝撃を受けた記憶がある。本作のラストシーンで、そのビジュアルが蘇ったのに驚き。

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