- Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102101087
感想・レビュー・書評
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3POとR2など、この組み合わせは黄金コンビですね!
アメリカ西部の大農場を舞台に、渡り労働者の抱く夢と、夢に集う仲間と友情を描いたジョン・スタインベックの傑作です。
アメリカの広大な大地と大自然の息吹を存分に感じながらなされるジョージとレニーの絶妙な会話がとても絵になります。頭の弱いレニーに終始付き合うジョージ。そして、そのジョージもレニーのおかげで夢を見る。短い小説ながら、渡り労働者が持つ悲哀とささやかな夢が見事に描き出されていました。
舞台を思わせる構成と会話も面白かったです。そして、この黄金コンビが雇われた農場にいるのは、農場のドラ息子に、浮気な美人妻、やり手のラバ使いに、片腕が無い老人と身体障害者の黒人の下働きといった面々。揃うべき配役もきっちり固められて、否が応でもドラマへの期待が膨らみます。(笑)この中でやはり、頭が弱いが力持ちで動物愛のレニーの人物設計が一番秀逸ですね。
ラストは序盤からの全ての思いが集約されたシーンですが、余韻が万感の思いとなって残る名場面です。 -
世界大恐慌時のカリフォルニア州を舞台に、出稼ぎ労働者である切れ者のジョージと、低い知能と屈強な体力を持つレニーの2人を中心とした悲劇の物語。過去2回映画化。
対照的な性格ながらもジョージとレニーはお互いを認め合い、ある夢をずっと共有してきた。一方、いつか何か面倒が起こるのではと懸念するジョージと、無邪気で屈託ない心ゆえに事あるごとに思い通りにいかず歯痒い思いをするレニー。彼らの新しい働き口でのある事件をきっかけに、ジョージとレニーの夢は急に現実を帯びてきた。そんな矢先、悲劇が襲う。
大切なものを守るゆえの決断。その描写にはどうしようもない思いと虚無感で胸がぎゅっと締め付けられた。
幸せとは?友情とは?優しさとは?
正解のない問題に考えを巡らせつつ、人間の弱さとやるせなさにどっぷりと浸りたくなる。
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『To a Mouse』(スコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩、1785年)
二十日鼠と人間の、最善をつくした計画も
後からしだいに狂って行き
望んだよろこびのかわりに
嘆きと苦しみのほかは、われらに何物も残さない -
スタインベックは数年前に「怒りのぶどう」を読んだ時の感銘がまだ胸に残っている。
物語の内容というソフト面も、構成というハード面も両方見事で。
今作は未読だったが、ずーーーーーっと前に結末は聞いていて、忘れられずにいた。何て辛い話なのかと。
なので、今回読んでジョージとレニーの悲劇に驚きはなく、ただただ悲しかった。
でも、自分でも意外だったのだけど、読み終えた直後も、しばらく経った今も、この作品に関して頭を占めるのがジョージでもレニーでもなく、スリムだった。
ラスト、何もわかっていないカールソンと対照的にジョージの苦痛を理解して思いやりを示すスリム。
しかし、レニーを「狩る」ことを止めもしなかったスリム。
賢く、情もあり、人望もあるけれど、この農場で使われて一生を終えるのだろうスリム。
彼のことをずっと考えていて、ああ、諦めは人を殺すんだなぁ、とふとしみじみ思った。
今の暮らしから抜け出せないと諦める瞬間が、この作品には幾度か描かれている。
クルックス、キャンディー、そしてジョージ。
諦めた時、彼らの心の一部は死んでしまった。
スリムは多分この作品の時間以前に、諦めてしまった人だと思う。
諦めてしまったから、レニーが殺されることも仕方がないと目をつぶってしまった。
それがジョージの心も殺すことだとわかっていながら。
スリムの諦めは、彼自身だけでなく、レニーとジョージの二人(スリムは知らないけれどキャンディーもいれれば三人)を殺してしまう。
諦念というのは、そういうものだと私は思う。
この状況で、諦めるなと言うのも酷だと思うし、この感想は私が安全地帯にいるから書けることだともわかっているのだけど。
それでも、決して悪人ではないスリムの悪について、考えずにはいられない。 -
はじめてスタインベックを読んだ。
スタインベックといえば、知っていたのは「エデンの東」と「怒りの葡萄」だったのだけれど、どちらも長い作品なので、短めでスタインベックを有名にしたと言われる「ハツカネズミと人間」を読んでみた。
大きな身体に足りない知恵のレニーと、小柄で知恵のまわるジョージのふたりが旅をしている。ふたりは渡り労働者で、次の働き口を目指している。
たどり着いた農場でふたりは働くのだが。
貧しい労働者であるふたり。
レニーは貧しいながらも小さな夢を持っており、いつかその夢が叶うようにと願っている。ジョージは自分にとって足手まといとなりがちなレニーに腹を立てることもありながら、レニーを思っている。
読みながら哀しい物語になりそうだと思いながら読んだ。
途中からは予想した通りに物語が進んで、レニーとジョージを好きになっていたので予想通りにならないよう願った。そうはならず哀しい物語だったのだが、どこかあたたかさを感じたのはスタインベックの文章だからだろうか。
レニーを苦しめたくないからこそジョージはそうせざるを得なかった。そのジョージの葛藤。
こういった心情が、特に描かれているわけでもない。とてもシンプルな描写なのに、ジョージの苦悩や悲しみなどが伝わってくる。
戯曲の形式を小説に取り入れた作品らしく、殆ど会話で成り立っているのに、書かれていない行間が伝わってくるのは、ジョージだけでなく他の登場人物にも言える。
そこがとても素晴らしいと感じる。
短い作品で読みやすく、自然に登場人物の気持ちに寄り添えるため普段本を読まないかたにこそ薦めたい。
とても良い本に巡り会えたと思える読書だった。
しばしば読み返すことになると思う。
ただ、訳者あとがきによると「怒りと葡萄」以降の作品には凋落のきざしが見えるとあるため、「エデンの東」を読もうかどうしようか迷っている。 -
親からのススメで。繰り返し語られる夢が、ささやかで、幸せで、切ない。大好きな作品。
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前半はのんびりとしたところがあるが後半に向けての加速していく展開は面白い。
とっつきにくいところもあったが、読んでよかったと思えた作品 -
「一軒の小さな家と2エーカーの土地をもち、一頭のめウシと..」
ささやかな楽園への夢を描く
対照的な男2人の友情と交歓。
指先で掴めそうな精密な描写に
汗臭い男達が覆い被さっていく。
彼らの繊細さ故の不器用さが、
楽園を近づけては遠ざける。
ジョン・スタインベックの作品





