怒りの葡萄(上) (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 151
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102101094

作品紹介・あらすじ

米国オクラホマ州を激しい砂嵐が襲い、先祖が血と汗で開拓した農地は耕作不可能となった。大銀行に土地を奪われた農民たちは、トラックに家財を詰め、故郷を捨てて、“乳と蜜が流れる”新天地カリフォルニアを目指したが……。ジョード一家に焦点をあて、1930年代のアメリカ大恐慌期に、苦境を切り抜けようとする情愛深い家族の姿を描いた、ノーベル文学賞作家による不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • たくましく男くさい小説。トラクターや銀行・会社による土地支配という農業の近代化によって、一体化していた土地をおわれ、カリフォルニアの豊かな農園を目指して移住しにいくジョード一家の話がメイン。おんぼろの車を改造して修理しながら旅していく主人公トムや弟のアルのTOKIO感がすごい。カリフォルニアでは移住者がオーキーと蔑まれ、畏怖嫌厭される未来が透けて見えているが…?たくましく強いお母の、家族がバラバラになることだけは許さない姿勢が印象的。その割に途中離脱した長男のノアにはあまりしつこく執着しないのね…?
    嫁の腹痛を甘く見て死なせてしまった罪の意識を抱えて生きるジョンおじが渋くて良き。

  • 耕地を奪われたジョドー一家が新天地を目指す過酷な物語。
    土地を奪われ飢えに苛む者の立場、大地主の立場を、時折鳥瞰的な目線で淡々と説明する章で時代の背景や人間性を浮き彫りにし、その中でのジョドー家目線で物語が進行する手法がよいです。
    人間同士の争い、助け合いがどのようにして起こるのかを機械化が進みだし貧富の差が拡がる時代を下敷きに教えてくれます。
    家族の絆や友人との助け合い、正しいものの考え方を押し付けがましくなく教えてくれますが、物語の行く末がとても暗澹としておりその教えが殊更尊く感じますね。
    少々読みにくいですが一度は読んでおくべき良作と感じました。
    時折語られる伝統師ケイシーやジョドーお母の魂の叫びのような深いセリフが良いです。

  • 大地と人の絆が引き裂かれた時の叫びが、全体を通じて響いている。故郷を追われて当て所なくさまよわなくてはならない不安。帰る家のあることがいかに幸せか。
    カリフォルニアにたどり着くまでに家族がじわじわとバラバラになって行く様子が恐ろしい。お母は本能的に危機を感じ取って頑なに家族が離れて行動することを拒否するも、はじめにじいちゃん、次にばあちゃんと、故郷との絆が強いものから先に脱落していく。そして長男のノアまでも。
    この行くあてのない家族が乗っているのが、血の通わない機械(オンボロトラック)というのも象徴的だなと。トラクターという機械に追い出されて、でも自分たちも機械に頼っている。
    信頼できるものとは一体なんなのか?同じ苦渋を味わった人間同士の連帯感のもたらすものは?下巻に続く。

  • トラクターが小作人を駆逐する。大量の家族たちが新天地を求めて西へ、カリフォルニアに向けてポンコツ車で移動する。弱ってたどり着けない人もいる。飢えは迫るが、同じ境遇の人たちはお互いに親切だ。2020.7.4

  • 以前、早川書房を読んだのでこちらもと思い手にしたが、のっけから機械翻訳のような訳に驚く。読み進めていくが、以前のあの感動を再び呼び起こされるどころか、時々どうしても訳が気になって内容が入ってこない。それでも読んでいくとこの訳に慣れていくが、やはり別訳のように響いてこない。
    文芸翻訳は本当に難しい分野だと思う。外国語能力以上に日本能力が必要といっても過言ではないかも。

    星マイナス分は訳。作品自体は文句無し。

  • ピューリツァー賞とってるだけあって、当時のアメリカの社会問題を根本的な側面からうまく表現されている

  • 1930年代のアメリカ。大恐慌時代の農民たち。土地を追われ仕事を求めてカリフォルニアを目指すが…。
    殺伐とした中にも、同じ境遇の他人に親切に、少ないものを分かち合う姿には慰められた。

  • いたたまれない感情でいっぱいになる。

  • Amazonレビューの評価が低かったので見てみると「訳が酷い」。たしかに冒頭は読みづらくイライラするが、読み進むとそんなことは気にならなくなってくる。


    自由の国アメリカ、チャンスの国アメリカ。ハリウッド映画に出てくる不屈のヒーローに可憐なヒロイン... そんなものは登場しない。描かれているのは敗者と、これから敗者になるであろう、普通の、逞しく、罪を犯し、そして善良な人々である。

    何一つ持たない人々が身を寄せ合い、助け合い、そして人間としての誇りを捨てることなく、互いに感謝して生きている。ジョード一家の逃避行は「法」にこそ触れてはいるが、乱暴で暖かい「人間」の営みとして描かれる。

    「人間」の尊厳を根こそぎにする象徴としてのトラクター、銀行、貧困ビジネス、農園、そして自己増殖する「資本」。
    「自分が生きるため」というたった一つの理由で小作人を追い払い、なけなしの金銭を騙し取る者、彼らもまた生身の人間であり、実は弱者である。本当の悪は地主でも頭取でも取締役でもなく、法人ですらなく、法人を駆り立てる目に見えない資本主義の「動力」であり、銃で撃つこともできず、止めることもできない。

    「この国はどうなっちまうんだろう」という不安は消えることなく、人々は目の前のことに集中する歯車になるか、儚い夢に縋りつくか、自分自身が消えるかしかない。
    痛い。息苦しい。

    戦前の作品だが、現代でも、いや現代でこそ通用する。

  • レビューは下巻にて

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