怒りの葡萄(下) (新潮文庫)

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感想 : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102101100

作品紹介・あらすじ

ロッキー山脈を越え、アリゾナ沙漠を渡り、夜は野営地でテントで過ごしながらカリフォルニアを目指すジョード一家。途中、警察から嫌がらせを受けるも、ひたすら西へ西への旅が続く。希望に満ちて“約束の地”に到着したが、そこは同様な渡り人であふれていた。彼らを待っていたのは、不当に安い賃銀での過酷な労働だけだった……。旧約聖書の「出エジプト記」を思わせる一大叙事詩。

感想・レビュー・書評

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  • ノーベル文学賞作家ジョン・スタインベックの名作。土地を追われたジョード一族が、安住の地を求めて移動する物語であるが、行く先先で災難に襲われてしまい、どこまで行っても救いがない。最後には、まさかロザシャーンが死産となってしまうとは。個個の登場人物の心までは荒んでいないことが唯一の明るい要素で、ラスト・シーンもそれを反映したものとなっているし、またまさに「肝っ玉母さん」と呼ぶにふさわしい、「お母」の一本筋が通った堂堂とした生きかたには感動すら覚える。しかしその前向きさが救いようのなさを余計に際立たせており、読者をよりやるせない気持にさせる。さらに絶望的なのは、この物語が決して単なるフィクションでも、この時代に限った話でもないということである。「下層」の人人が大資本に土地を追われ、あるいはいいように扱われるというのは、現在でも世界中で普遍的に見られる現象である。日本においても例外ではなく、たとえば跋扈するブラック企業のことを考えればよくわかるだろう。このような世界を見事に描いているため、現在まで読み継がれていることにも納得である。一方で、このような読み方もできる。主人公たちは「絆」を重んじるなど懸命に生きているが、みんなどこか自己中心的な部分も持ち合わせている。そもそもトムはカリフォルニア州から出ては行けないのに、無視して勝手に移動してしまっている。あれだけ「強い」お母も、このことでは謗りを免れないだろう。このような人物「だからこそ」、こういう目に遭っているという見方もできないか。そして、このような見方こそがまさに、現代社会で「上層」に立つ人間が「下層」にいる人間に向けている視線と同じだろう。これら二つの読み方いずれを取っても今日でも通用するといえ、やはり名作であると強く実感させられる。

  • 読み継がれている名作でありますから、いろいろの示唆があるんですね。

    ある家族の生きざまを通して、人間社会の仕組みに翻弄され、艱難刻苦に向わせられ、なお襲い掛かる天災災害の非情なる仕打ちにどうするのか!というようなすごい物語のように思われるのだが、読めば読むほど、この家族それぞれの身勝手さは腹立たしいほどで、精神性の崇高さを感じれば感じるほど、人間の生態の愚かしさもくっきりと浮き上がってくるのが面白い。

    まず、「お母」が家族集団13人の中心なのはわかる。しかし、殺人を犯し、刑務所から仮出所のトムという次男もしょうがないが、まあ骨がある。おじいさんおばあさんは旅の難儀さに死んでしまい。はかなげな長男は何考えてるのか、旅の途中で行方不明に(家族はあきらめてしまうのだ!)、長女(16)は若くして結婚、ふたりとも夢る夢子さんで妊娠中に夫に逃げられてしまう。三男は浮気性でふらふらしているし、次女(12)と四男(10)はいたずら盛りで手に負えない、「お父」は空威張りの他人ごと、「お父」の兄ジョンはアル中の役立たず、おまけに元「説教師」の他人も加わって、それぞれが勝手なことを言い、やってしまって艱難辛苦の旅を余計に複雑にさせる。「なんでそこでそれをやってしまうのぉ~!!」と「お母」の気持ちに感情移入してしまうが、「大丈夫だよ、なんとかするから」と、おおらかなのか!?偉大なのか!?その「お母」が何とかしてしまうのが、おかしいようなほっとする救いのような、そんな読み方もいいかなと。この頃の、いや、ずっとそうだったけど、我が家族集団でもそんなふうなんだよね。

  • 労働条件や食糧不足に悩まされながらもジョード家が行き延びるために戦う物語。トムが主人公的な立ち位置ではあるが、彼だけでなく、父母、ジョンおじさん、シャロンの薔薇、アルといった複数のキャラクターが均等にフォーカスされ、成長していく。

    オクラホマからカリフォルニアまで移動する様は、「荒れ野」と言う聖書を連想させるようなワードや、聖書をときどき引用することから、「出エジプト記」に重ねることができる。

    もっとカジュアルに例えるならば映画「スタンド・バイ・ミー」にて、子供たちが長い道のりを歩いていく大冒険に似ているとも言えなくない。

  • 登場人物が生き生きとしており、読んでいて元気が出た。
    最後のシーンがとても好きだ。神々しい光がスポットライトのように当たっているような、そんな終わり方で心に残った。

  • やはり名作はスゴい!実地調査に基づくルポルタージュ的内容を、出エジプト記を思わせる壮大な小説にまとめるという筆力に圧倒されました。聖書を思わせる逸話もちりばめられ、人類愛につながるラストに涙が止まりませんでした。

  • 上巻に続き、仕事を探して放浪するジョード一家。上巻よりもさらに過酷な状況になり、正直読んでいて絶望を感じるほど。ただトムがお母から離れる時の情景とラストシーンは、印象に残った。あとお母に砂糖を工面した店番がよかったねー。社会に絶望しても、人に絶望しなければよりよい社会を築けると思う。

  • 前巻に続き、訳が気になるので途中拾い読みのみ。既に別訳で読んであるので、そちらからの感想になるが素晴らしい小説。その内容をかなり加味した星の数(偉そうに申し訳無い)。ただし、この訳がでは再読はなし。ハヤカワの方は、手元においておきたい1冊の一つ。

  • 夢を求めて西へ。しかし、あまくはない。数々の困難を体を張って耐えていく。トムだけでなく家族皆が、自分が貢献できることを考え、何をすべきか自覚するようになる。自分のことから、家族のことへ、そして家族を越えて困ってる人へ目を向けるようになった。2020.7.19

  • 終盤は、家族の苦難に読むのが辛くなった。気が休まるのは、子ども達の無邪気な姿と、質素だけど美味しそうなお母の料理。
    社会の搾取に対して、人は団結して抵抗すべきと思うが、それが大変難しいことを痛感する。現代の日本に置き換えても、それは同様だし、更に難しいかもしれない。
    トム・ジョードとジム・ケイシーは、個人的に印象深いキャラクター。複数の印象に残る言葉を発しているが、それがキリスト教的宗教観を背景とするものなのかは知識不足のため分からない。聖書を読んでみたくなる。

  • そこで終わる⁈という終わり方。象徴的。
    お母が一家を切り盛りしてることからも、つまり強いのは女。出産まではめそめそしていたロザシャーンが、最後に母になる。母は強い。飢える人を直接救えるのは母である女しかいない。
    トムの最後の台詞は、キリストか神のもの。人が愛をもって集まるときそこに神はいる。
    ジョンおじがロザシャーンの子を流すときに言う台詞も印象的。資本主義の闇、格差社会の構造的な巨悪を富める者が認識するには、最も無力な人間の無惨な死が雄弁なのかもしれない。
    近代の資本主義の負の側面が描かれる一方、虐げられた人々の結束や社会形成の中で、自主的で民主的な自由の可能性、人間という社会的な生き物の希望的な可能性を感じた。

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