怒りの葡萄(下) (新潮文庫)

制作 : John Steinbeck  伏見 威蕃 
  • 新潮社
4.23
  • (11)
  • (5)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 87
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (474ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102101100

作品紹介・あらすじ

ロッキー山脈を越え、アリゾナ沙漠を渡り、夜は野営地でテントで過ごしながらカリフォルニアを目指すジョード一家。途中、警察から嫌がらせを受けるも、ひたすら西へ西への旅が続く。希望に満ちて“約束の地”に到着したが、そこは同様な渡り人であふれていた。彼らを待っていたのは、不当に安い賃銀での過酷な労働だけだった……。旧約聖書の「出エジプト記」を思わせる一大叙事詩。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • カリフォルニアに向かう途中でのおばぁが亡くなるところからの下巻。人が死に至る程の過酷な旅路の先にある現実が更に凄まじい。一緒にいた家族が、伝道師ケイシーがバラバラになっていく。
    根底にあるテーマ、家族愛、隣人への思慮、労働の尊さ、労働組合の必要性、経営者の苦悩や不安。その中でたくましく生きる家族。特にお母の存在が大きい。シャロンの薔薇にはいつもイライラさせられたが最後のシーンは感動もの。
    家族の行く末が気になる。
    タイトルに何故葡萄と付くのか疑問。

  • 人が幸せになるために必要なものは、きっとそんなに多くない。

    「まっとうな暮らしをして、子供たちをまっとうに育てたいと思っとる。そして、年老いたら戸口に座って、沈む夕日を眺めたいと思っとる。若い頃には、踊り、歌い、男女の契りを結びたいと思っとる。食べ、酒を飲み、働きたいと思っとる。それだけなんだ。疲れるまで力仕事をすることだけが望みなんだ」

    人間の幸せって、本来こういうものなんじゃないのか。そう強く思う場面が随所に散りばめられ、何気無い言葉一つに深い共感を覚える作品でした。魅力的なキャラクター達が多く、彼らの生きているこの物語を少しでも長く読んでいたくなり、終わってしまうのがとても寂しかったです。終わり方も決してハッピーエンドではないのに、感じたのは悲しさではなく、まさしく帯に書かれていた「人間讃歌」という言葉がぴったり合う、そんなラストでした。素晴らしかったです。何度も読み返すと思います。

  • 実際の社会問題がベースとなっているだけあって、登場人物のセリフや背景まで、ノンフィクションのようなリアリティを感じる

  • 故郷を離れ苦労の末にたどり着いたカリフォルニアでは、他所から流入した労働者家族が仕事を求めていた。不当に安い賃金でも働かなければ飢えるしかなく、集団で抵抗しようとすれば弾圧される。
    一方で、熟れた果実が儲けにならなくて潰される。
    そんな中でも人々は助け合い、声をかけ合って生き延びようとする。
    この後、ジョード一家はどうなったのだろうか。当時のアメリカにはこんな家族が大勢いたのだろうな。

  • 生きるということはとても厳しいということがよくわかる。そして権力はいつの時代も残酷だ。

  • 新たな生命は生まれて来ず、結局残ったのはお父、お母、ジョンおじ、シャロンの薔薇、ルーシー、ウィンフィールド。11人家族中6人になってしまったとはいえ、これが固い家族の絆を描いた作品であることは間違いない。ジョード一家に限らず、どの家族も一家団結して困難を乗り越えようとしたのだろう。
    大恐慌は歴史で習って言葉だけ知っていたけど、実情がこんな風だったとは。食べ物が本当に必要な人に行き渡らず、儲けが出ないからといって捨てられるなんて。世の中の仕組みがおかしいとはわかりつつも、どうしたらよいのかわからない、言いようのないもどかしさが嫌というほど伝わってきて辛かった。
    家長として采配を振るうべきお父は途中からみるみる影が薄くなり、お母が家族の大黒柱的存在になるのが印象深い。地母神的というか、なんかどっしりしている。シャロンの薔薇が最後死にかけている男に乳をやるところも、女性の生命力を感じさせる。
    トムとお母の別れのシーンはこの作品の白眉だと思う。お母が一番頼りにしていたトムは、心を同じくする人々の中に自分はいつでもいると言って、トム・ジョード個人ではなく怒れる民衆として生きることを選ぶ。おそらく家族と再会することはないだろうと思うと、どうか民衆よ情に熱い彼を愛して迎えてやってと願いたくなる。

  • いたたまれない感情でいっぱいになる。

  • 「粗にして野だが卑にあらず」

    ジョード家は今でいうDQN「風」だが、人間、本書の言葉では「民」そのものである。アメリカ人として労働への誇りを持ち、どれだけ自分たちが困窮していても、自分たちよりも貧しい人がいれば助ける。正しいと思う行為は法に触れることを厭わずにやり遂げる。

    民を搾取し、痛めつける「資本」という怪物は決して正体を現さない。資本は「自由競争」という貧者同士が相争うシステムを作り上げ、貧しいものをより貧しくさせ、良心的なものを残忍なものに変え、多くのものの不幸を喰らって膨れ上がる。

    民が人間として生き延びるには不確かな希望を頼りにした団結しかないのだが、団結を分断する手段は多彩で、狡猾で、しかも効果的である。民は負ければ死ぬが、資本は死なない。「金は命より重い」というあのマンガのセリフが響いてくる。

    絶望的な状況の中、神も貧者には味方しない。雨は富める者、貧しき者平等に降るのではなく、貧しい者だけをことさらに痛めつける。

    それでも「民は死なない」と信じる人々の姿は崇高で、写実的にはグロテスクでしかないはずのラストシーンも宗教画のような美しさを感じさせる。

    ...本書は大恐慌前の話である。現在、民はまたしても死にかけている。

  • 重厚な物語。1920年代、銀行や地主に追い詰められた農民たちは、手にした作業員募集のチラシにすがり、カリフォルニアに25万人もの人々が大移動した。しかし、そこにも同じ社会構造・格差があった。絶望の中でも生き抜く家族の姿を描いている。

  • やはり名作だと言われるだけのことはある、珠玉のロードノベルであるとともに家族小説である。
    下層労働者の家族の生き様を通じて、なんと色々な事を教えてくれる小説であることか、ぶるーす・スプリングスティーンが本作を絶賛していると聞いた事があるが、むべなるかな。この小説の重要テーマに共感するからこそ、彼の音楽が詩があるんだと、非常によく分かる。

    アメリカ人のライフスタイルを構築する一つの指標なんだろうなぁ。ロシア人がこれを書くと「罪と罰」になり、フランス人が書くと「レ・ミゼラブル」になり、日本人が書くと「蟹工船」になる。

    そして、オーストラリア人が撮ると「マッドマックス」になるんやなぁ。「怒りのデスロード」は間違いなく、この作品のオマージュだと思う。

    古い作品だからと躊躇しなくもなかったが、ロードノベルの名作と聞いて…本当に読んで良かった

全14件中 1 - 10件を表示

ジョン・スタインベックの作品

怒りの葡萄(下) (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする