呪われた腕: ハーディ傑作選 (新潮文庫)

制作 : Thomas Hardy  河野 一郎 
  • 新潮社
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本棚登録 : 159
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102108062

作品紹介・あらすじ

19世末の英国ヴィクトリア時代。風が渡る荒野(ヒース)とハリエニシダの茂る田園風景の中で、運命に翻弄される主人公たち……美しい若妻ガートルードの腕に残された呪いの痣をめぐる悲劇的な人生を描いた傑作「呪われた腕」、妹の婚約者との密やかな愛の葛藤を綴る「アリシアの日記」他、「妻ゆえに」「幻想を追う女」など珠玉の全八編を収録。村上柴田翻訳堂シリーズ、復刊第一弾!

感想・レビュー・書評

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  • 村上柴田翻訳堂だからって全て買うこともあるまいと、図書館で借りて来たのだが、最初の一編で、「これは、買うべき本」(これから死ぬまでに何度か読むだろうと確信)と、すぐに買った。
    長編は名作でもなかなか通して再読はできないが、短編集はさっとどこでも読める。だから素晴らしい短編集は本当に貴重。そんな短編集を20冊くらい持っていると人生の豊かさが増す。これはまさにその一冊。
    オースティンより後の作家だから、オースティンの登場人物のように結婚までにあれこれ悩み、やたら手紙を書くことは同じだが、もっと人生そのものを描いている。運命や社会に翻弄されたり、狂おしい情熱をもてあましたりする様は、『ワインズバーグ・オハイオ』に似てるなと感じた。コルム・トビーンが好きなのもこういう雰囲気を持っているからだと思う。
    『テス』や『ジュード』の作者とは知っていたが、この二作は映画で見ただけだったので、まあ暗い話だろうとは思って読んだ。しかし、もちろん明るいとは決して言えないが、暗いという言葉だけには収まらない。言葉が貧困で申し訳ないが、どの時代のどこの人間でも普遍的に持っているものが感情に溺れずに書かれている。また、解説で村上柴田両氏も言っているが、風景描写が本当に上手い。自分もハリエニシダの茂みの中の羊飼い小屋から覗き見してる気持になった。(「羊飼の見た事件」)
    最初の「妻ゆえに」は友人の恋人を奪い、恋愛では勝利したが、結婚後は経済的格差で苦しむ話で、現代でも十分ある話だし、「わが子ゆえに」は逆に格差婚で上流階級になった小間使いが、夫の死後子どもに遠慮して自分らしくいきることができず苦悩する話で、これも現代にある話。
    表題作の「呪われた腕」からあとはもう、読むのをやめられす、イッキ読み。まあ、本当に上手い作家なんです。書き方、視点、端折り方がもう、読者を惹きつけずにはおかない。
    苦い後味の残る作品ばかりではあるが、本当にいい小説を読んだという満足感がいつまでも心に残った。

  • トマス・ハーディの『呪われた腕 ハーディ傑作選』新潮文庫。本書の登場人物たちは、過去の時点で犯した自分の間違いに対する後悔と、現状を変えることへの切実な希望の混じりあった思いに突き動かされて行動する。

    けれども、けっきょくはそんな行動が事態を好転させるわけもなく、よりいっそう悲劇的な破滅へと登場人物たちを導いてしまう。そしてより深くなった後悔だけが、苦い後味となってわたしたちに残されてしまう。

    「人間の力の及ばない大きな運命の流れには、逆らうことができないのだ」との諦念が、本書に収められた短編のあちこちにちりばめられていると言えるだろう。

    厚い雲が空一面に垂れ込め、雨はしとしとと降り続いている。時おり遠くの雷の音も聞こえる。消え去る気配のない雲と降り止まない様子の雨のせいで、部屋の中はどんよりと暗くじめじめとしている。そんな日は、思わず陰鬱な気分になってしまう。トマス・ハーディの『呪われた腕 ハーディ傑作選』は、そんな雰囲気がすみずみにまで漂う短編集だ。

  • ハーディーの紡ぎ出す物語は独特の雰囲気を持っている。救いが用意されていないので、とても切ない。

  • 19世紀の小説の良さ--ひねりすぎず、自然に物語ることの良さ--を堪能できました。村上春樹さんと柴田元幸さんの対談による解説もあり、充実した文庫本。

  • 「村上柴田翻訳堂」の1冊。「MONKEY」での村上と柴田の翻訳小説対談でハーディに言及されており興味があったため、購入。いやいや、面白い!村上によると「風景」がよいとのことだが、ストーリーも面白い。物語の「骨」みたいなものがよくできている。夢見る夢子さん的な有閑マダムや、ただ裏切りものでいたくない男とが出てきたり、六条の御息所的なホラー的な話が出てきたり、どれもこれも面白い。その人が持っている個性というか、枠というか、持って生まれた性格・思考・タイプから帰結するところの人生・哀しみみたいなものを描いているのがどの短編にも共通するところか(柴田が村上の「トニー滝谷」との共通性を挙げていたがそんな感じ)。オースティン以来、物語が面白い海外文学が読みたいと思っているのだが、次何よもう・・?

  • トマス・ハーディと言えば、
    私が大好きな小説ベスト10に入る
    モーム作「お菓子と麦酒」のドリッフィールドのモデルとされる人物。

    多分その影響で張り切って「テス」も買ってきたけれど、
    目下挫折中。
    (どこまで読んだかと言えば牧師さんが村人に話しかける場面、って
    はじまって5ページくらいだから、挫折ではなく「まだ読んでいない」で
    良いのではないかい?)

    そのことを映画好きの人に話したら「『テス』は読むものじゃなく
    観るものだよ」なあんて言われてますます遠のくばかり…

    そんな中、噂の「村上柴田翻訳堂」でこちらの短篇集が出たので
    興味をそそられ読んでみました。

    まあ、本当に、見事なまでにどれもこれも悲しくって暗いのだわ。

    「モームさんならここでユーモア的に思わずニヤッとしてしまう
    展開にしてくれそう…」と折々考えてしまった。

    でも一方、ひたすら陰鬱で救われない話、と言うのも
    案外好きな私なのです。

    大体どの話も無駄に遠慮していることから
    不幸を引き寄せている、と言った印象。

    特に「わが子ゆえに」は私も自分自身不思議なほど感情移入して
    「もう…、思い切って良いんじゃないの?!」と。
    主人公の見栄をはる息子を憎みながら、
    本当に大事なことに気付く、って言う…。

    最後に載っている柴田さんと村上春樹(呼び捨て)の
    対談でも「テス」を読んでいないとお話にならないみたいだし、
    この勢いで読んでみるかな。

  • 読み終わってみたら、思いがけず引っ張られ、、、
    ジェーン・オースティンの不幸版みたいな笑

  • 読書会があるので読んだ。童話集みたいな傑作選。短い作品のなかに人生経験や背景描写が盛り込まれていて、きちんと最後まで話の終わりもみえるから読みやすい。気に入った作品は『幻想を追う女』と『アリシアの日記』。幻想を追う女は一度もリアルで会うことのなかった詩人に憧れた主婦の話。アリシアの日記は妹の婚約者を好きになって、彼も姉であるアリシアのことを好きになる話。こういうのって分かりやすいから。トマス・ハーディの作品の影響受けてる作品も世界にはたくさんあるらしい。今度の読書会には10人集まるみたいなので、いかに読みやすいか分かる。読まないでくるひともいる読書会なのですがw

  • 英国的、退廃的な文才を感じる。とても後味が悪く、しかも因縁や不運の色が強いのでガッツリとしたオチが無い。なだらかな坂道を転がり落ちていくような話だ。O・ヘンリを期待して読んだら大怪我だ。村上春樹×柴田元幸の村上柴田翻訳堂(このユニット名好き)の対談がサブカルインテリっぽくてマジ良いイライラ♡出てくる名詞がよくわかんねーよ!僕の無知故!彼らの使用単語(映画名や著書名)を調べるだけできっと造詣がより深まることでしょう。サブカル映画好き≠ハーディ好きはなんかわかる気するなぁ。

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