ガラスの動物園 (新潮文庫)

制作 : Tennessee Williams  小田島 雄志 
  • 新潮社
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本棚登録 : 657
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102109076

感想・レビュー・書評

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  • ほぼ家の中のワンシーンだけで完結する内容なのに、グサッと胸に突き刺さるものがあります。戯曲の形式であるから、室内劇でも感情の動きだけでここまで魂を揺さぶられるんだろうなと見直しました。
    過去の栄光にすがりつく母と、社会に適合できない娘、そして二人を支えるために自分の夢を犠牲にする息子。今にもバラバラに砕け散ってしまいそうな家族の脆さに、悲劇的な美しさを感じてしまいます。
    それでも後味が悪くなくて、ささやかな希望も感じられるところが良いですね。陽の光が当たる道を生きれない人間の苦しみを描いた普遍的な名作だと思います。

  • 吐き気をもよおすような戯曲だった。

    「ねえ、ローラ、棺桶に入って釘づけになるぐらいならたいして知恵はいらんよね。だけど、そのなかから釘一本動かさずに抜け出すやつなんて、この世にいるだろうか?」

    ガラスの動物たちが出てくると悲しいけど心が安らぐ。

  • おそらく三十年ぶりの再読。豊崎由美さんの「まるでダメ男じゃん!」に出てきて読みたくなり、本棚から(まさに)発掘。紙は変色してるし、字は小っちゃいし(昔の文庫ってほんとに字が小さい。中高年は文庫を読まなかったのか?)読みづらいのなんの。それでもやはり面白くて一気に読んでしまった。

    以前読んだときどう思ったかは、もはや定かではないけれど、まず間違いなくその時とは違う感慨を抱いたのは、ヒロインであるローラの母アマンダについてだ。若かった私にはこのアマンダの心の内はわからなかったと思う。ただ愚かで支配的な母親だとしか思わなかったに違いない。今は、このアマンダの優しさや、報われない善良さが悲しく胸に迫ってくる。痛切なラストも、ローラと同じかそれ以上にアマンダに心を寄せて味わった。

    豊崎さんも書いていたが、まったくこの話には「救い」というものがない。それでいて実に美しい。文句のない名作。

  • ガラスの動物たちに囲まれたローラの儚げで陰鬱な生活と彼女を取り巻く人間の空しさやもろさが淡々と進んでいくようすがすきです。スクリーン、照明、音楽のト書きも斬新で舞台でもみたくなる!

  • もし、自分の足が立たなくなって、どこにも行けなくなったとしたら――もし、自分の体重さえ支えることができず、また誰も手を貸してくれないとしたら――自分はこれから一生、誰かとダンスをすることができないのだとしたら、救いになるのは一体なんだろう? 自分には決してそれが手に入らないなら、一体何が許されるだろう?
    それは、かつての幸福な記憶を思い出すことなのではないか。ただそれだけが現実を忘れさせてくれる、自分のみじめさを忘れさせてくれるなら。しかし、そんな記憶さえもない人間は、では一体どうしたら? いったい何が人生の慰めとなるのか? 自分は何もできないし、これからも何もないと思っている人間は、何をよすがとすればいいのか?
    それは夢を見ることだ。夢を見ることは、誰にも奪えない。そこでは私は今の私ではなく、体は羽のように軽く、そして私は微笑んでいるのだ。自分の幸福を、神様に感謝して――。

    この戯曲に登場する母と娘、そして息子はみんな夢見がちで現実を見ていない。そこでリアルなのは苦しみだけ、明日の生活さえも危うい自分たちの未来だけなのだ。
    アマンダ(母親)の造形も、トム(息子)の造形も素晴らしい。彼らはお互いを思いやりながらも、現実の力の前では無力で、いらいらしたり自暴自棄になったりしている。
    しかし、彼らは決して優しさを忘れているわけではないのだ。ただ、ある種の過剰さが邪魔をして、逆に彼らをがんじがらめにしているのだろう。それは時と場所さえきちんとととのえば、人よりも素晴らしい力だと思うのだけど……。

    しかし、娘のローラはそんな母息子ともまた違う。彼女は現実にすっかり萎縮しきっていて、自分の存在自体に疑問を持っているようにさえ見える。母親と弟の愛情も、彼女の大きすぎる疑問を和らげてはくれない。
    じっさい、彼女が生きていくのはとても苦しみばかりが多そうだ。ガラスの動物に語り掛け、きれいにしてあげることが、彼女が素直になれる唯一の方法である。

    そんな彼女に突然訪れる、かつての思い人は、果たして夢なのだろうか? ジムがローラを素敵だと言い、綺麗だと言い、そしてキスしてくれるのは、現実のこと? それとも、夢?
    ……。
    それは幸福な記憶……ローラにとっては、それは夢でも現実でも変わりないのではないかと、私は思う。彼女はこの出来事を、神様に感謝するだろうか? たとえ一度でもこのような記憶を持てたことを。何度も何度でも思い出せる夢を持てたことを。

  • またまた『百年の誤読』から。それにしても戯曲って、しっかり読んだのめちゃくちゃ久しぶりかも。ひょっとしたら入試問題以来かもしらん。というか、プライベートでは読んだ記憶がない… それはさておき、本作は非常に楽しめました。登場人物が4人しかいないし、尺もさほど長くないから、そもそも物語り展開はそれほど複雑怪奇ではない。かといって、何の中身もないかといえば、人物造形の妙あり、淡い恋心と裏切りありと、波乱万丈の展開。自宅だけで繰り広げられるから、実際に演じられる情景も思い描きやすい。うん、素晴らしいですね。作者の他作品にも触れてみたいし、実際に演じられているのも観てみたい。そんな作品でした。

  • 初読

    今更ながら。
    薄暗くて、哀しくて、美しい。

    アーサーミラーのセールスマンの死の母親版といえなくもないというか、
    子供達に期待する「成功」にアメリカ的なものを感じる。

    元サザンベル(自称?)のアマンダ母ちゃん、
    これも愛なんだよー。確かにエゴでもある。
    でも家族に対する愛情は完全にエゴと分離出来るものではないのよな…

  • 儚い

  • 陽気で夢見がちな母と極端にはにかみ屋で引きこもった姉と失踪した父に代わって一家を支える倉庫番の主人公の一家の話。
    作者の内面的な世界が色濃い悲劇の戯曲です。
    登場人物たちの繊細な心情を巧みに表現しています。

    終始スクリーンをつかって、画像や文字を映す指示や音楽の指定があります。
    ほかの芸術と違う演劇ならではの表現方法を垣間見ました。小説、映画でもないまさに演劇なのだなあと。
    まあ実際に劇場で見るべきなのだろうけども。

  • ただただ悲しい話。救いようがない。

    作品には、ヒステリックな母親、びっこでガラスの置物ばかり集めるメンヘラの姉、阿片に手を染めた倉庫勤めのぼく、が出てくる。
    母親が姉の結婚を心配して、ぼくに相手を紹介させる。偶然にも、紹介されたジムは姉が昔恋した人だった。惹かれ合う二人、姉の凝り固まった心が溶けかける。しかし、ジムには婚約者がいて、姉のもてを去って行く…という一晩の物語。

    主役が全員どうしようもない状況。その上、また絶望に突き落とされるという無慈悲な話を、これでもかというくらいに、美しく(ガラスの置物を扱うように)書いた作品。
    読んだあと、憂うつになった。

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