権力と栄光 (新潮文庫)

制作 : 本多 顕彰 
  • 新潮社
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102110027

感想・レビュー・書評

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  • ■読み始めのころは、なんて退屈なんだ・・・とブツクサ云いながらページを繰っていたのだが、次第に、表現が抑え目な文章が意外にも心地よく感じるようになって、ついには、これは確かに名作に違いない、と納得するまでになった。翻訳の古臭さ、読みにくさが原因だったかもしれないが、訳文というのは読みやすければそれでいいというわけではないことを改めて知った(ヴェブレンの『有閑階級の理論』(高哲男訳・ちくま学芸文庫)もそうですね)。この小説には内容から判断して堅苦しくも感傷をできるだけ排した文章がいかにも似合うというわけである。■話は章ごとに(ときには突然に)場面を交換しながら進んでいく。時代はカトリック教会が非合法化された1930年代のメキシコ。逃げた牧師を追跡する警察とそれに追従する人間の側の「権力」と、堕落しながらも神の愛を信じ続けるその牧師や敬虔な人々の側の「栄光」とが複雑に絡み合い、静かに闘い合う劇。いや、逃げる牧師は両者の狭間にいると云ったほうがいいかもしれない。酒や女に手を出さざるを得なくなってしまった牧師は、けして「権力」の側に妥協することはないが、神を裏切ったのも事実である。しかし、最後に警察に捕らえられた彼の、ひとりの主任警部にかけた言葉の数々は、神の「沈黙」(遠藤周作の『沈黙』)に激しく苦しみながらも、その苦しみを誤魔化さずになんとかして神を理解しようとした苦しみとして乗り越えようとした事実が如実に滲み出ている。彼のこの問い、「なぜ私たちは貧しい人に権力をあたえなければならないのでしょう? 貧乏人は、埃の中に死なせて、天国で目を覚まさせてやった方がいいのです」、これは神の「沈黙」に悩み疲れた経験のない牧師には到底発することのできない、あまりにも深い問いである。■もちろん貧しい人々は放っておけばよいなどと彼は云っているのではない。彼ら虐げられた人々には、「権力」ではなく、「生」そのものを与えるべきだという考えに到達するのである。自らの救われない苦悩から、「悩み」もまた「生」の本質であることを彼は知ったのだ。

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