- Amazon.co.jp ・本 (740ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102116036
感想・レビュー・書評
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洗濯女とトタン工の男。夫婦。娘一人。夫婦は真面目に働き、洗濯屋を経営し始める。しかし夫が怪我をし、居酒屋で酒に溺れるように。借金が増え、洗濯屋を失う。娘は家に寄り付かず。夫はアルコール中毒で死亡。女は物乞いになり、集合住宅の階段下でひっそりと息を引き取る。ゾラ『居酒屋』
※ゾラ。貧民は無知のまま労働と貧困に毒されている。彼らは酒に溺れるなど、堕落しているが、それは不道徳だからではなく、社会が彼らをそういった境遇に追いやっている。
世の中は人が思うほど善くもないし、悪くもない。モーパッサン『女の一生』
私はあなたの「人形妻」になりました。ちょうど父の家で「人形子」になっていたのと同じように。▼女は愛する者のために自らの名誉を犠牲にしてきた。イプセン『人形の家』
※ノルウェー。劇作家。女性の目覚めと家庭からの解放を描く。
多数派が正しい、なんてことは決してない。人口の多数は愚か者たちだからだ。ヘンリック・イプセン『民衆の敵』
不幸ばかりつづくと、人はみんな狼になる。ストリンドベリ『父』
※スウェーデン。劇作家。
※自然主義。社会の矛盾や人間の欲望を直視。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
貧しくとも小さな幸せを夢みる真面目なジェルヴェーズ。どん底から一度は幸せをつかんだように見えたが、周りのならず者たちと、自分の見栄と怠惰のために、何もかも失って人生を終える。
パリ貧民街の臭いまでしてくるような描写。
現代でも一歩踏み外せば同じような転落が待っている。 -
全ての元凶はクーポー。最初は実直な男であったが、酒飲みになり、最低最悪のクズ男になってしまう。実直が売りな男が堕落したらお仕舞いだ。よほどのイケメンだったり、愛妻家でない限りは酒飲みの旦那を愛し続けてくれる妻などなかなかいないものだ。
ストレスの蓄積、夫の堕落のせいでジェルベーズも酒に溺れるようになってからはもう地獄。夫婦がお互いを殴り合い、憎み、娘のナナにまで手がでてしまうのは最悪だろう。
19世紀のブルジョワジー社会のありのままを表現したため、ファンタジー要素もなければ、胸をときめかせる恋愛要素もない。それでも魅了される要素があるのだとすれば、我々一般人も一歩間違えれば彼女たちのような人生を歩みかねないというリアリティである。 -
真面目で健気で美人で情が深いジェルヴェーズが堕落していく人生。読んでて思わず不快になるような生活のありさまが随所にあり。(1840年代フランスの労働者階層の現実・・?) ラリーに向けて彼女の父親がかけた言葉、「うちの小さいかあさんや」の言葉が印象的。
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ページを捲る手が止まらなくなる程に面白かった!
人間を描ききるとはこういう事。
たった一つの行為の中に相反する様々な心理がうごめいている。
思いやりから出た行為の裏に見栄があるように。
対照的に、フローベールがつまらないのは
偏った側面からしか人間を描けていないから
2012-04-06 Twitterより -
一言。素晴らしい♪そして。只管陰鬱にさせる小説ナンバーワン
19世紀仏蘭西の時代感がドブに咲く花の様に鮮やかに
残酷に描かれていた。
遣る瀬無い位のリアルさに、胸はむかつくが
先を読まずにはいられない負の快楽に浸った。 -
ゾラを自然主義小説の頭領たらしめる作品。ゾラは「ある労働者一家の避けることのできない転落を描こうとした」と述べており、実際にその不道徳な内容から当時轟々たる非難を浴びたようですが、落ちぶれたジェルヴェーズが少女ラリーの死に心打たれる場面や、彼女を想い続けたグージェからの誘いを断る場面などからは、この作品が如何に道徳的であるかが伺えると思います。時間をかけて読了しましたが、お酒を飲むのはまだそんなに怖くはありませんw
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友達から「『居酒屋』読んだ?もう読んだ?」とせかされるのでむきになって読みました。
今年一番影響を受けた本になるかもしれない。ゾラ天才すぎる…! -
まじか、この作品。女性主人公に悪いところ何もないのにそんなに落ちぶらせてしまうのか?! 人って能力や気概よりも運と環境次第で歩む人生が大きく変わってしまうことを見事に喝破して描き切った傑作ですな。それと、機械化というかオートメーション化が人にもたらす暗と明を一言で言い切っているセリフもすごい洞察力と表現力をこの作家が持っていることを示している。なんか自然主義文学とプロレタリア文学の見事に融合していて、その点からもゾラって日本でももっと評価されるべき作家だよなあ。