- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102118283
感想・レビュー・書評
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著者フランソワーズ・サガン18歳のデビュー作。
この作品はたしか中学生の時に読んだことがある。主人公の名前しか覚えていないが、書店で偶然見つけ、懐かしくて購入した。
主人公セシルは17歳。
父と愛人エルザと、そして亡くなった母の旧友のアンヌと地中海の別荘にヴァカンスに出かけた夏の出来事。
自分本位で楽しく生きてきたセシルが、アンヌの出現で自分の生き方を見つめなくてはならなくなり、考えては苦しみ悩み、自分自身と折りあいがつかず…
大人の言いなりにはならないという反抗心、父を独占したいと思う気持ち、誰の型にもはまらないセシルは自由奔放といった印象だ。
大人びているがやはり子供で枠から出られない「自由」で幼稚で荒っぽい。
退屈と平穏がなにより怖いセシルには最後までドキドキさせられた。読了後、鳥肌がたった。
パリで出版されたのは1954年、少しも色あせていない、鮮烈な印象の作品だった。
皆さんも過去に読んだ本、再読してみませんか?
きっとびっくり、新しい発見、感想があると思いますよ。 -
ひとりの女性の純心な気持ちを傷つけておいて、それがきっかけで彼女が亡くなったかもしれないのに、その事を思い出して「悲しみよ、こんにちは」って言われてもなあ。飾りじゃないのよ、涙は。
主人公セシルのパパは、良い人なんだけれど、付ける薬が無いほどの女好き。ママが15年前に亡くなってから、美人でちょっとバカな愛人が絶えない。セシルはパパと同じように放蕩な性格で、そんなパパを愛し、気楽に暮らしていたのだが、セシルが17歳のある日、とうとうちゃんと再婚することを決意した。
相手の女性はアンヌ。美人で聡明で、40代とは思えないほどの引き締まったスタイルと肌艶が物語るくらい自己管理の行き届いた女性。放蕩者のセシルのパパとは価値観が正反対のはずだが、何処に出しても恥ずかしくない女性であり、娘の教育係としてもこれ以上ないアンヌと結婚したいパパ。そして、社会的な成功や女性としての称賛は既に得ていて、あと欲しいのはカッコいい男性の愛と家庭だけというアンヌもパパと結婚したかった。
アンヌがパパの友達であったころ、セシルはアンヌのことが好きであったが、アンヌが“母親“として家の中に入ってくると鬱陶しかった。「恋人とイチャイチャしてないで勉強しなさい」とかパパの友人たちの事を「下品」と言ったりする。アンヌは仕事や自分自身の生活を思い通りにしてきたのと同じように、セシルたちの家庭も“思い通り“の“上品な“家庭にしたかったのだ。
セシルはアンヌを追い出すために、巧妙な計画を練る。パパの直前の恋人エルザとセシルの恋人シリルにカップルのフリをさせ、パパの前にチラつかせて、パパの気持ちを若いエルザにもう一度向けさせるのだ。
計画は…成功。いや、成功を通り越してアンヌ自身が亡くなってしまった。事故なのだが、セシルは自殺だと思っている。
セシルはアンヌのことを素敵な女性だったと思う気持ちに変わりないし、好きだったし、パリで一緒に暮らす家の間取りを考えるのもワクワクしたというのも嘘ではなかった。だけど、本質的にセシルもパパも縛られるのが嫌いということを理解してほしかった。
ウーン、うっとうしい!!わたしがセシルなら、“グレる“か““家出“か“アンヌと正面対決“だよ!太陽燦々、海キラキラの南フランスの別荘地でなんとインケンな!
「朝起きたばかりの時にオレンジを食べながら、火傷しそうなコーヒーを口に入れるのが好き」だとかなんだとか、贅沢すぎてヒマなのか。
汗を拭くだけで忙しいこの日本で暮らしていては人の心がジワジワ傷ついていくのを楽しんでいる心の余裕などない。
眩しいくらい美しい中では“傷“や“悲しみ“や“苦さ“も美学であるようだ。セシルはアンヌが亡くなって初めて自分が夢中になっていた恋人“シリル“のことを全然愛していなかったことに気づく。“支配者“に見えたアンヌも実は“愛“や“夢“を持ってセシルたちの家族になろうとしてくれていたことを知り、そういうちゃんとした愛や夢がセシル親子には無かったということに気づく。それでも、セシルもパパも依然として刹那主義で人生楽しむ生活をやっぱり愛していた。
だけど、本当にセシル親子と家族になろうと思ってくれたアンヌの悲しい結末を思い出すとき「悲しみよ、こんにちは」なのだ。
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2023/07/18
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Macomi55さん、
中学生の時に、なんとなく本屋を物色して、安くて「俺サガン読んでいるんだけど」なんて言えそうな感じで選んだのがこの本で...Macomi55さん、
中学生の時に、なんとなく本屋を物色して、安くて「俺サガン読んでいるんだけど」なんて言えそうな感じで選んだのがこの本でした。数ページ読んで、日本語なのに外国語みたいで、読み進められなかった本の一つです。
そのあと、読むつもりはなかったけど、この本の中にもしかしたら夫であるサルトルに影響された実存主義の秘密が隠されているのかも‥‥という一点でずっと気になり続けていた本でもありました。やっとその呪縛から逃れたということです。
というわけで、読まなくても死ねる気がするので、これでさよなら、です。2023/07/19 -
kumaさん
中学生の時から!?
そんな長いお付き合いを終わらせるきっかけを作ってしまったなんて!
複雑な心境です。kumaさん
中学生の時から!?
そんな長いお付き合いを終わらせるきっかけを作ってしまったなんて!
複雑な心境です。2023/07/19
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文学ってすごいー。
一人の少女の複雑で支離滅裂な感情が言語化されており、自分にも身に覚えがある、知ってるこの感情とかなり入り込んでしまった。思春期の時にも読みたかったな。
読後の感情は、まさに「悲しみよ こんにちは」であり、私も彼女と同じ境遇にいたら、きっとほとんど同じように感じるだろうなと、とても彼女に共感した。 -
サガン18歳の処女作。まだ、新潮文庫のロングセラー上位に入ってるらしい。ル・モンド20世紀の100冊にも選定されているとか。
薄くて、本棚でよく迷子になっているのよ。
ヒロインは17歳のモラトリアム中のセシル。(一世を風靡したセシルカットですよ)母親は亡くなり、自由で美貌の父と時折変わる父の愛人と気ままに暮らしていた。17歳の夏のバカンスに、、亡き母の友人・聡明で美しいアンヌが加わることで、今までの彼女と父のバランスが崩れようとする。
父親は、アンヌに夢中になり、プレイボーイを返上し、結婚まで考える。
愛する父親の喪失、彼女の自由への介入など思春期後期の葛藤から、二人の破局を策略する。
策略の中、アンヌの聡明さ、美しい秩序、人生の調和に傾く想いはあるが、退屈と平穏への恐れは、計画を止める事をさせない。
大人になりつつある少女の、若い残酷性に翻弄された子供のような大人達。
最終章の、小悪魔的なセシルが、憧れと羨望の作品なんだろうと思う。
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これを18歳で書いたんだ!すごいなー。心理猫写、きらめいてるけどおそろしくもある。
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#木曜日は本曜日 という企画にて
上白石萌音ちゃんが紹介していた作品です。
「言葉にできないぐちゃぐちゃした感情を、サガンは見事に言語化している」と話されていたことが印象に残り、読んでみたいなと思って購入しました。
私が購入したものには、2022年の新潮文庫フェアの限定カバーが付いており、とても綺麗な装丁でした。
本書は、17歳の少女、セシルが南フランスの別荘にて、ひと夏を過ごす様子が描かれたお話です。
海辺に佇む別荘には、セシルとその父のほか、父の恋人・エルザ、そして亡き母の友人・アンヌがともに滞在することになりー。
愛されたいけど、縛られたくなかったり…
知性を身に付けたいのに、諦めているふりをしたり…
軽蔑している連中との関係性をなぜか断ち切ることができなかったり…
誰かを陥れながら、罪悪感を抱いてしまったり…
そして最終的には、世の中が嫌で嫌でたまらなくなってしまう…
人間って本当に面倒くさいよな〜と、思ってしまいます。
本書では、17歳のセシルが様々な感情の渦に飲み込まれる様が細やかに描かれていますが、
とびきり若い彼女でなくても、我々は皆、複雑に入り組んだ感情によってぐらぐら揺さぶられながら生きているんじゃないかと思います。
生きているだけで大変ですよね。。。
はぁ、な〜んにも考えずに生きられたら良いのになぁ〜〜〜(笑)
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コメント失礼しますm(_ _)m
私も同じYouTubeでこの本を知りました!
ただ、萌音ちゃんが言っていた「思っていることが言語化されてい...コメント失礼しますm(_ _)m
私も同じYouTubeでこの本を知りました!
ただ、萌音ちゃんが言っていた「思っていることが言語化されていてすごい」というのが理解できませんでした、、。(私にはまだ知性が足りないのだと思い知らされました)
なので、きちんと物語を理解されてるだけでも本当にすごいな、と素直に思いました。
ナッツさんの感想を読んで、しばらくしたらもう一度トライしてみようと思います、、!2023/02/16
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カバー装画はイナキヨシコさん。思春期の不安定さを表すような三角と寒色が点在。フランス語のフォントが郷愁を帯びている。河野万里子さん訳、訳本独特の言い回しが少なくとても読みやすかった。
愛憎賞賛軽蔑混じる五角関係を南フランスの夏の海辺の眩しい自然と儚い思い出のように描き、思春期のあやうさと葛藤、残酷な感情が引き起こす結末。
セシルがバスタオルを体に巻いて鏡を見ながらヨガをしているところをアンナに見られ「インド哲学」と返したところが特に好き。
小池真理子さんの解説は日本の戦後時代背景と作家との交流について触れていて興味深い。
ゴダールが感動したというセシルカットを見るために映画も視聴してみようと思う。 -
小説を読むなら同年代の人間が活躍する話がベスト的なアドバイスを言う人がいたけど、本書を含めてそんなのはナンセンスだと思っている。同年代の頃に出会ったとしても当時の自分に恋慕の情なんぞ共感できっこない。(そもそも相関図の時点で落ち着けるわけがない)
おまけにその活躍(=行動を起こした)が間接的にとは言え、虚しい結末をたぐり寄せてしまった。
でも「活躍」以前の彼女に関しては見覚えがあり、無関心ではいられなかった。立板に水か、とめどなく溢れてやまないセシルの激情を黙って見ているだけじゃ受け止めきれなくて、声に出して読みたくなった。一方でセシルの方は言葉が出かかっているのに、扉で塞いじゃっているせいでガスみたいに下の隙間から漏れ出ている。今出来てしまっている現実は嫌だ、でも壊しちゃいけない。一人、弱々しくドアの向こうを見つめる。
誰かを愛したい。誰かにすがりつきたい。
本当の愛を見極めるひと夏の記録。
でも溢れんばかりの激情が濾過されていくうちに、愛を通り越して悲しみという形で結晶化されてしまった。(分かったような言い方…)
気持ちを堰き止めていたあの扉は、セシルも自分も今は取っ払っていると思う。
本当はそんな単純な話ではないのだろうけど、愛が悲しみに変わることが二度とないよう本当の愛にたどり着いていることを願っている。(おこがましくも…) -
夏のバカンスを過ごそうと、南仏にある別荘にやって来たセシル。ハンサムで享楽的な父、父の若い愛人エルザと共におもしろおかしく暮らし、シリルという恋人もできたセシルだが、父が古い友人のアンヌと恋に落ち、結婚する、と宣言したことから、彼女の世界は変わり始める。
勉学に励み、規則正しい生活を送ることを強要する、聡明で厳格なアンヌと、それに反発するセシル。彼女は、これまでの生活を守るために、シリルやエルザの協力を得てある計画を実行する。
セシルと同年代の頃に初めて読んだが、別荘でバカンスとか、夜のパーティとか、父親の愛人だとか、ごく普通の日本の家庭で育った自分とは世界が違い過ぎて、共感は少な目だった。
本書を再び手に取ったのは、小川洋子さんの『心と響き合う読書案内』がきっかけである。
やはりセシルと同年代で本書を読んだという小川さんは、母親の目線で読み返した時、セシルを庇護するような気持ちになったそう。今の自分だったらどういう風に読めるのかな、と興味がわいた。
再読すると、確かに昔よりもセシルの気持ちがよくわかる。元々母を早くに亡くし、寄宿舎に預けられていたセシルのつかの間の享楽をいきなり管理するようになったアンヌは、セシルにとっては鬱陶しい存在だっただろう。
と同時に、大人になった今では、アンヌの気持ちもすごくよくわかる。
真面目な彼女は、愛する人の子どもをちゃんと育てなければならない、という義務感を持っていただろうし、大事な娘を任せられた、というはりきった思いもあったかもしれない。でも、いきなり17歳の少女の母親になることへの戸惑いは少なからず感じていたはずだ。
小説では、セシルから見たアンヌの言動や表情が描かれるだけで、彼女の心情は明らかにされない。アンヌは感情の起伏が少なく、厳格で、冷たい人間のように描かれるが、これはあくまで17歳の少女から見た、大人の女性に対する憧れとか畏怖を含んだ主観でしかない。
アンヌだってセシルにどう接していいかわからなかったこともあるだろうし、心の中で葛藤もあったに違いない。それを表に出すのがあまり得意ではなかったのかもしれない。
そう思うと、アンヌが気の毒に思えてくるのである。
今回の再読でもう一つ強く感じたのは、セシルの父親のダメンズぶりである。
彼はセシルをどう育てたらよいのかわからず、丸投げできる存在としてアンヌを選んだ。これまで彼が付き合ってきた女性とは違う、聡明なアンヌが自分を愛してくれている、という事実に有頂天になっていたところもあるだろう。
だが彼はいずれ元の享楽的な生活に戻っただろうし、彼女との結婚は遅かれ早かれ破綻していたのではないかと思う。
フランスと日本の価値観の違いもあるかもしれないが、少なくとも彼はアンヌが選んではいけない人だった。彼を愛してしまったことがアンヌの悲劇の一番の要因ではないか。
それにしても、18歳でこの小説を書いたサガンはすごい。抑えた筆致であるにもかかわらず、登場人物たちの繊細な感情がしっかりと伝わってくる。背景描写の美しさもさらに悲しみを増幅させる。
再読してこんなに印象が変わるとは思わなかった。これも読書の醍醐味である。
著者プロフィール
フランソワーズ・サガンの作品






私も今、何十年も前に読んだ本の再読にはまってます。お話の新しい面が見えて、面白いですよね〜!
私も今、何十年も前に読んだ本の再読にはまってます。お話の新しい面が見えて、面白いですよね〜!
コメントありがとうございます。
お話の新しい面も見えるし、当時この本、選んだんだ〜
なんてびっくりしたり、けっこ...
コメントありがとうございます。
お話の新しい面も見えるし、当時この本、選んだんだ〜
なんてびっくりしたり、けっこう楽しいです。