人間の土地 (新潮文庫)

制作 : 堀口 大学 
  • 新潮社
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本棚登録 : 3694
レビュー : 328
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102122020

感想・レビュー・書評

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  • ユーロになる前のフランスの50フラン紙幣は星の王子様。繊細な色彩で、象を飲み込むウワバミや、サン・テグジュペリの飛行機と飛行経路も書かれたかなり凝ったもの。
    フランスにとってサン・テグジュペリは紙幣になる存在なのですね。

    この「人間の土地」の表紙の絵と後書きは宮崎駿が書いています。戦闘機乗りの資料はかなり持っているようです。

    サン・テグジュペリは、「平均寿命は2週間」と言われる戦闘機パイロットになり、偵察飛行中に行方不明、その後正式に墜落機が見つかり死が確認されました。

    ★★★
    郵便飛行機の操縦士の時に体験した、欧州から南米へ砂漠や海を越えて空路の旅での肉体および精神的体験の記録。
    飛行機乗りの命を支える小さな印。着陸を台無しにする草原の小さな川、一軒だけ建っている農家から漏れる灯り。
    水の無い砂漠の民族の暮らしと生活、彼らは欧州の森で滝の終わりを見たがり、無尽蔵な水にフランスの神の気前の良さを感じる。
    砂漠では危険な不帰順族もいる。不時着した飛行士を殺すこともあるし、親しくもてなすこともある。
    10分通信が途絶えると行方不明を示すほどの危険な空路、ある仲間はそのまま姿を消し、ある仲間は不時着地から数日間歩き続けて帰ってきた。

    サンテックス自身も危険な飛行を行い、ある時は砂漠にとらえられた。いきなりまっただ中から砂漠に乗り込んだ、まるでトリモチに捕まったように。
    仲間の操縦士と3日間歩き続けて救出するまでの日々、砂漠の生物に見た生命の知恵、水や救助の幻。帰れないと思い泣くのは自分のためではない、待っていてくれる人たちのため、彼らの自分を見る複数の目。それを思うと堪らない。向こうで彼らが助けを求めている。
    【「ぼくが泣いているのは自分の事なんかじゃないよ」そうだ、そうなのだ、耐え難いのは実はこれだ。待っていてくれる、あの数々の目が見えるたび、僕は火傷のような痛さを感じる。すぐさま起き上がってまっしぐらに走り出したい衝動に駆られる。彼方で人々が助けてくれと叫んでいるのだ、人々が遭難しかけているのだ。
    これは実に変わった役割の転倒ではあるが、僕は普段からこう考えている。
     (…中略…)
    なぜぼくらの焚火が、ぼくらの叫びを世界の果てまで伝えてくれないのか?我慢しろ…ぼくらが駆けつけてやる!…ぼくらのほうから駆けつけてやる!ぼくらこそは救援隊だ!】(P162~)

    ★★★

    嵐に会った仲間の場面が圧巻でした。
    【そこには竜巻が幾つとなく集まって突っ立っていた。一見それらは寺院の黒い円柱のように不動のもののように見えた。それら竜巻の円柱は、先端に膨らみを見せて、暗く低い暴風雨の空を支えていた。そのくせ、空の隙間からは、光の裾が落ちてきて、皓皓たる満月がそれら円柱の間から、冷たい海の敷石の上に照り渡っていた、そしてメルモスはこれら無人の廃墟の間を横切って、光の瀬戸から瀬戸へとはすかいに海がたけり狂いつつ昇天しているに相違ない巨大な竜巻の円柱を回避しながら、自分の道を飛び続けた。月光の滝津瀬に沿うて、前後四時間の飛行の後、彼はようやくその竜巻の寺院の出口へ出ることができた。しかもsの光景が如何にも圧倒的なものだったので、黒鳴戸(ボトオノアール)から解放されたときになって初めてメルモスは気づいた。自分が恐怖感は持たずにしまったことに】(P25~)
    この描写は、嵐に会った友人のメルモスの話を書いたものだが、語ったメルモスも、書いたサンテックスも情緒が深いというか飛行機乗りは危険な中に美しさを見つけてしまうものなのか。
    この場面はまさに宮崎駿が映像化したくてうずうずしてそうだ(笑)

  • フランス文学屈指の名作である。
    多くの人が堀口先生の訳を難解と感じ挫折されているようだが、私はとても正しく美しい訳だと感じた。この訳で内容が理解出来ないのならば、フランス語で読むか、或いは理解出来るようになった時にもう一度読むべきだろう。
    空について、砂漠について、土地について、人間について――飛行士の生き方が、美学がこのたった一冊に凝縮されている。
    無人島や砂漠に放り出されて、けれども一冊だけ本を持っていけるならば、私は本書を選びたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      堀口大學と言えば「月下の一群」ですねぇ、、、
      ところでサン=テグジュペリですが、光文社古典新訳文庫に「夜間飛行」が入ったので、堀口大學訳と読...
      堀口大學と言えば「月下の一群」ですねぇ、、、
      ところでサン=テグジュペリですが、光文社古典新訳文庫に「夜間飛行」が入ったので、堀口大學訳と読み比べをしようと思いつつ未だ出来ていません、、、この「人間の土地」も新たに訳されるかも。
      2013/01/15
  • Terre des Hommes(1939年、仏)。
    ともすれば、エゴイズムを個性の発露として美化しがちな文学の世界で、この作者は稀に見る高邁な精神の持ち主だったようだ。空や砂漠という過酷な自然と日々対峙していると、本質的なものを見抜く感覚が鋭敏になるのかもしれない。不要なものは自ずと削ぎ落とされるのだろう。一世紀近くたった今でもなお、色褪せることなく、むしろ一層の現実味を帯びて胸に迫ってくる名言の数々。人生の道標たりえる一冊だと思っている。

  • 無人島に1冊だけもっていくとしたら、
    刑務所に差し入れてもらうとしたら、
    死ぬ前に1冊だけ読めるとしたら、この本にします。

    • ouiさん
      まったく同感です。最近読みました。経験から滲み出てくる言葉にまさるものはありませんね。
      まったく同感です。最近読みました。経験から滲み出てくる言葉にまさるものはありませんね。
      2010/01/12
  • 『星の王子さま』で有名なサン=テグジュペリのエッセイ。飛行士としての経験と、そこから考察した人間観が語られる。

    星の王子さまを読んで、サン=テグジュペリって何て素敵な表現をする詩人なんだろうと思ったけど、これを読んで印象がガラッと変わった。行動力と精神力がとてつもなく高い冒険家で、洞察力に優れた哲学者なんだなと。

    幾つかのエピソードが描かれていて、全体として「人間として気高く生き、世界に対して責任を持つこと」の重要さが語られているのだけど、奴隷のエピソードはすごい心に残ったなぁ…どれだけ過酷な環境でも人間としての尊厳を失わず生きるという話なんだけど、『夜と霧』みたいな印象。

    あと、「愛するということは向かい合うことではなく、同じ方向を向くことだ」ってこの本の言葉だったのね。。しかも恋愛関連の名言かと思ったら全然ちゃうやんけ。「これは知っておきたい!恋愛に関する名言10」みたいなネイバーにありがちなチープなまとめ記事によく載ってたから騙されちまったぜ…

    表紙が宮崎駿ってのも良いね。あとがきも宮崎駿が書いているけど、これを読むと駿が「風立ちぬ」をどれだけ作りたかったのかがよく分かります。

    ただ、すごくすごくいい作品だというのは分かるのだけれど、如何せん文章が読みにくい…これくらい固い文体の方が格調高くて良いというのも分かるのだけれど。。。

  • 人間についての、机上ではない考察。

    その土地、経験、職業が人生観や人間観、もっと大きく捉えると哲学というものに、いかに大きな影響を与えるか、あるいはそれらこそが哲学の土台になるものではないかと思う。

    日本人は自然と対決するというよりは、自然と寄り添い、折り合いをつけていくという思想になっていると思うが、それはたぶん、この国の地理や気候のせいだ。何人であっても、長年この土地で代々暮らしてくればそういう思想になると思う。同様に、砂漠などの厳しい自然に対峙しなければならない環境では、自ずとこの本に書かれているような人間観になるだろう。

    哲学は、それぞれの人が自らの経験に基づいて構築するものだ。だから皆、固有の哲学を持つ。それでいい。

  • 辛く悲しいことがあると僕は『人間の土地』を読む。

    そして、雪山で遭難し生還したギヨメの話をゆっくりと噛み締める。

    読み終えると、暖かい太陽の下でのんびり昼寝をする。

    そして僕はまた毎日へと戻る。

  • 星の王子様で有名な著者ですが、かたや飛行機のパイロットでこんな作品を残してるとは知りませんでした。無知な自分が恥ずかしい…。


    なかなか一回読んだだけでは彼の思想を読みとくのは難しかったですが、読み終わるともう一度読みたくなるような不思議な感覚を持ってます。


    どんな環境であれ、自分の役割を認識したとき初めてその人は幸福になりうる。というところはまさにそうだなぁと。自分の役割は何なんだろう?と考えさせられます。

  • 大戦間の飛行機乗りという時代を生きた作家の随筆
    ロマンというと不明瞭であり詩的は的があやしいし哲学は宗教と区別がつかないが
    飛行機から眼下に眺める景色
    砂漠の人々が在る現実を見下ろす固定された視点からの描写が
    空を飛んで地に足が付いていないところが価値有る一品

    どうでもいいけれど随筆と小説の区別は内容の形式でなく
    読みよう次第だと「おすすめタグ」をみて思う

  • 乗り換えで何となくよった駅中の本屋で何となく書棚から手に取った。久しぶりに良い本に出会った。堀口大學の訳も詩的で読みにくいときもあるけど、やはり美しい。
    「今日の世界を把握するのに、ぼくらは昨日の世界のために作られた言葉を用いているわけだ」
    「完成は付与すべき何ものもなくなったときではなく、除去すべき何ものもなくなったときに達せられるように思われる。(中略)海がみがきあげた小石と同じほど」

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著者プロフィール

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。1900年6月29日、フランスのリヨン生まれ。
幼少の頃より飛行士に憧れてその職につく。飛行士と兼業して、飛行士の体験をもとに『南方郵便機』、『夜間飛行』などを発表。
第二次世界大戦中、亡命先のニューヨークにて『星の王子さま』を執筆し、1943年に出版。同年軍に復帰し、翌1944年7月31日地中海コルシカ島から偵察飛行に飛び立ったまま、消息を絶つ。
その行方は永らく不明とされていたが、1998年地中海のマルセイユ沖にあるリュウ島近くの海域でサン=テグジュペリのブレスレットが発見される。飛行機の残骸も確認されて2003年に引き上げられ、サン=テグジュペリの搭乗機であると最終確認された。

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