- Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102129135
作品紹介・あらすじ
ニック・ビレーンは、飲んだくれで、競馬が趣味の超ダメ探偵。ところが、そんな彼に仕事が二つ転がり込む。ひとつは死んだはずの作家セリーヌをハリウッドで見かけたから調べてくれという"死の貴婦人"の依頼、もうひとつは"赤い雀"を探してくれという知人の依頼。突然の仕事に大張り切のビレーンは、早速調査にのり出すのだが…。元祖アウトロー作家の遺作ハードボイルド長編。
感想・レビュー・書評
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ここまでハチャメチャで、ああ、これは何なんだという作品が、なぜかピュアで切実で、笑いながらも胸を打ちます。
ドタバタの軽さとニヒリスティックな世界観の重さが「文学」をつくりだしているわけで、まあ、言ってしまえば「奇跡」です。飲んだくれのブコウスキーという悲しい作家が、流れ星のように現れて、あっという間に去ってしまって、もう25年も経つのだけれど、もう一度読み直してため息をつきました。
ブログに感想書きました。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202012070000/詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
圧倒的なまでの最低さ。ハードボイルドに仕立てたはずが殻を割ってみればぐずぐずの中身が毀れ汚しちまったような、セリーヌも宇宙人も出てくるこのカストリ雑誌に連載されていてもおかしくない三文娯楽探偵小説。相も変わらず酒と女と競馬に芯まで浸かり切ったその不愛想さは軽妙かつ噴飯ものだが、遺作であるが故の感傷を拒絶するだけの気高さも不思議と感じてしまう。そう、ブコウスキーはいつだってブコウスキーだった。死をポケットに入れて生きてきた。乾ききった諦観から絞り出される、誰にも奪えやしない生の美しさ。最低なまでに最高だ。
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かなりトリッキーで奇想天外で面白かった。主人公は悲しくて、虚しくて、バカで、最高にかっこよかった。
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ああ、もう、このだめ男、かっこよすぎて宇宙的。
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素晴らしさがいっぱいです。
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涙が出るほど素晴らしく壊れた物語。これが遺作なんてなんて絵に描いたような正にブコウスキーの人生。彼かがいなかったらと思うとぞっとする。
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ブコウスキーの本。
不真面目で、最高に面白いw
どの本もそうだからあきれるばかりww -
こいつはいいなあ。
私立探偵が浮気調査を行いつつ、地球の危機を救ったりするストーリー、いや筋立ての説明なんか意味がないから止めよう。この最高にくだらない本を、手に取る運を持っていたことに、感謝したい気分。 -
本作がブコウスキーの遺作であることにまず、頭を垂れた。面白すぎて。
結末はなんとなく、カフカの『審判』を連想させられた。
とはいえ、文豪セリーヌを探す探偵という冒頭のシチュエーションに、心をがっちりとつかまれた。それから、死に損ないの作家セリーヌが、「死の貴婦人」によって半ば殺される場面には、今までに感じたことのない爽快感をおぼえた。
とにかくストーリーはめっちゃくちゃなのだけれども、すごく抑制の効いた文章で、汚い言葉を多用しているわりには、ものすごく品位の感じられる文章だった。最初から最後まで笑いっぱなしだったけれども、主人公ニックの(じつは)毅然とした態度が、そして無常観が、かえってものすごく悲哀を誘った。
もっとも感動したのは、地球人と宇宙人を、定められた死によって結びつける「死の貴婦人」の存在。たとえ宇宙人が存在するとしても、かれらもまた死ぬ運命にあるのだというリアルな感覚。
世界文学というケチくさい用語を超えて、これはもう、宇宙文学。 -
幸運読書航海記。ブコウスキーの入り口はこの「パルプ」であった。古本屋でセリーヌを見かけるくだりがなんとも魅力的であった。それから挿絵の妙とあいまってブコウスキーの幻影を追い強烈な深みに落ちた。一時期一日中ブコウスキーのことばかり考え語っていた。わたしのかんじ方など他者に何の意味もないのは分かっているのだし、私が面白かったので誰だかわからないアナタもどうぞなんて無意味な大味はないものだ。だからこれ以上は語らないけれども、わたしに語りかけてくる人がいたら大変に嬉しいことだろうとは思う。・・・薬篭に老いて死にけり冬の蝿。蕪村。ブコウスキー本体も窯変しやがて終局したのであるがそれを感じる私も毎日変節し続けている。色々な哀切を経過し超光速で忘却していくのだろうケレドモ、幸運なことに出発点がこの「パルプ」であることが分かっているので便利この上ないと思っている。