雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102130087

感想・レビュー・書評

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  • どの作品もすぐには入り込めず、でも気づくと面白くなっていて先が気になり、最後にひぃぃ…っと思わされる。
    すごく共感するけどちょっと冷ややか過ぎるように感じ、けれどまた、男女の愛や情熱に対しては情緒的でもありそこが好ましいと思った。

  • 「月と六ペンス」が有名なモームの短編集。月と六ペンスでも感じる南国情緒をより味わえる短編集かと。ここでの南国は現地人を軽蔑しながらもその場所から離れないでいる異国人たちの目を通して語られていて、登場人物たちの人生の妙に感じ入るところもありながらどこか滑稽です。ダニエル・デフォーと異なり、モームは意識してそう皮肉っている気がします。

    「雨」
    この短編は他の南国風短編とは一線を画します。宗教が持ち得る無神経な傲慢さとか、それと別にある人間の本能(しかもこれもまた嫌らしく汚いものときた!)とかを綺麗にまとめたような話です。などと偉そうに書いたものの、この話の主題を明確に語るのは難しく、また人によって感じ方も様々かと思います。でもだからこそ名作と呼ばれるのではないでしょうか。

    「赤毛」
    異国の甘く苦い恋の幻影、サムセント・モーム風皮肉を添えて といった感じです。

    「ホノルル」
    民族伝承を素材とした話で、前2つの出来には少し劣るものの、ハラハラドキドキ船長と一杯やった後のような読了感です。

  • 雨音が消してしまったのは音だけなのか、否、地面を叩きつける音は人の理性までも奪ってしまった。
    宣教師は悪趣味な売女の身体に溺れ、汚らわしい豚になる。
    …なんか千と千尋みたい。

    続く赤毛は、純粋な恋心と一途に想い続けることの不可能さを描く。
    きっと僕は大丈夫だ、不可能を可能にする、そう思っている今の僕に未来の僕は何て話しかけるだろうか…

    最後はホノルル。日本人の描写に風当たりの強さを感じつつ、いつの時代も女心は秋の空なのだ。

    DNAに組み込まれている人間のルールを素晴らしい描写で語る本作。

    モーム素敵。

  • 2016.7月からモームプロジェクトを始める。訳なくモームが気になりだした。代表作を固め読みしようと思う。モームのイメージは悪い。高校大学の英語のリーダーでは何かとモームの作品が登場したと思う。プロジェクトを始めるにあたり調べたら英語の教材として大流行したと書いてあった。
    読みやすい短編ではあるが説明的な文章が削ぎ落とされているのでしっかりと行間を想像しなければいけない。
    新潮文庫の装丁が可愛い、内容とはちょっと違う趣だが。

  • 学生時代に、「月と六ペンス」を読んで、サマセットモームに興味を持ったのに、それ以来読んで無かった。
    久しぶりに、手にした本であるが、この本は、「雨」「赤毛」「ホノルル」の3点の短編集が入っている。

    どの作品も、南国の島を舞台に描かれている。
    楽園の様な南の島でも、スコールだけでなく、雨季のように降り続く雨の毎日は、気をうっとうしくさせる。
    増して、宗教の塊のように、自分の思うようにしないといけないと言う使命感を持ったディビットソン夫妻の正義と思って行動する押しつけがましい行為。
    少し重たい。

    「赤毛」は、どんなに愛し合っていても、長時間の推移で、顔つきも、性格も、別れていたら、再会しても、分からないと言う皮肉さと、三角関係で、略奪の様にして、恋したのに、現実の衰えた醜くなった肉体を見て、若い時の恋が夢で、幻影だったと、、、。

    「ホノルル」も魔術師の様な、呪術の様な話が、出てきて、土着民の民話的話を読む感覚であった。
    しかし、この時代で、ホノルルは、東洋と、西洋の出会いの場所と、紹介してある。
    アメリカからの船旅では、長時間かかって、遠い島であったし、日本でさえ、夢の島で、サラリーマンの年収分が、渡航費用だった時代である。
    この本では、その当時のホノルルが、洒落た商店があり、フォード、ビュイック、パッカード等の車が走っていると、描かれており、アメリカ人、中国人、日本人、フィリッピン人の服装なども描いて面白い。
    其の中で、ふと、思ったのが、フィリッピン人と言う訳し方。
    先日、「フィリピンへ、海自機を貸与」と、新聞に掲載されていたが、いつからフィリッピン→フィリピンになったのだろうと、、、要らぬ事を考えてしまった。
    文章の中でも、訳注が、書かれており、そして、漢字にルビがふってあったり、英語のままの言葉も書かれている事に、違和感なく読んでいたのが、最後の方になって気づいた。
    鈍感なのか、本の内容の方へ集中していたのか?自分自身にそれに気づいて笑ってしまった。
    短編集なので、早く読めてしまうが、内容は、少し皮肉っていて、面白かった。

  • 二番目の赤毛が読みやすく印象に残った。淡々とした物語とちょっと歪んだ結末がモームの作風?訳の古さが気になる。

  • 皮肉。鼻で笑ってる。そんな感じ。

    『雨』宣教師の極端な上から目線というか正義感のふりかざしというか、不快になってくる。しつこい。気持ち悪い。そりゃミス・トムソンもろくでもない女かもしれないけど、あんなふうな言葉を吐き出したくなるわな。気分が悪い。

    『赤毛』最後のセリフが効いてる。あなたが相手だからこんなんになっただけ…って話でしょうに。彼女に気持ちの八つ当たりするんじゃないよ。

    『ホノルル』切り替えが早いなぁ。

  • 罪に対して必要以上に攻撃的だった宣教師のデイヴィドソンは何があって情欲に負けたのか。もともと色欲というものは人間、動物としてあるものだが、それをキリスト教によって無理矢理抑えてきたのが、グラマラスな女によって壊された。このグラマラスな女はデイヴィドソンの抑えてきた情欲の具現化ではないか。

  • 世界短編小説史上の傑作、らしいけど、どうもおもしろくなかった。

  • モームがすごいのか訳者がすごいのか。昔の本とは思えないほどみずみずしい文章。親切ではないので、細かな描写から意味や話の流れをくみ取らなければならない。ああ手っ取り早く解説が読みたい。ところで、モームってワンピースに出てきたよね。ウシだっけ。

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