英国諜報員アシェンデン (新潮文庫)

  • 新潮社 (2017年6月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784102130292

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

人間ドラマとスパイ活動が絶妙に交錯するこの作品は、主人公が多様な人物たちと関わりながら、ユーモアと皮肉を交えた会話を展開することで、読者を引き込んでいきます。著者の実体験を基にしたリアリティある人物描...

感想・レビュー・書評

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  • 津村さんの読書案内本から。たぶん著者初読み。金原さん訳なのもあるだろうが、人物描写や会話の切り返しなど楽しく引き込まれた。どこまで実体験かわからないがリアリティ感じる。『英国大使』とロシア革命時描いた最後2篇が印象深い。

  • スパイ小説というより飄々としたおじさんが困った人たちを相手にして仕事で苦労する話、といった趣がある。皮肉が込められた登場人物の細かい描写、ウィットのある会話、ユーモア。とはいえ、戦争中の諜報活動なので、派手なアクションはなくても、危険や重苦しさや悲しさはある。著者の体験をもとに書かれているけれど、どこからどこまでがフィクションなのかはわからず、不思議な味わいのある作品だった。

  • 諜報員が主人公の小説なのですが、サスペンスというよりも、主人公の前に現れる世界中の様々な人たちの描写や、会話の小気味よさが楽しい作品だったと思います。

    ウィットに富んだ、あるいはシニカル言い回しだったり、恋に身を焦がす人たちだったり、このあたりの描写はいい意味で日本の作品にはない洒脱な雰囲気があります。クラシカルな音楽のかかっているバーで読みたくなる雰囲気とでもいうべきか。

    スパイの主人公自身は割と冷めてるというか、一歩身を引いて、同僚たちや関係者とことを進めてる雰囲気があります。それがこの作品のいいところかもしれない。その分、登場人物たちの感情や個性が際立つ。

    捜査に来た警官の間の抜けた感じ。容疑者の男を信じ続ける女。お互いに尊重し合う夫婦。安定した身分がありながら、サーカスの女性に恋した男性などなど…

    著者自身スパイだったということだけど、世界中で出会ったであろう様々な人物やエピソードが混ざり合ったからこその、この登場人物たちの層の厚さなのかと思います。

    人間の恋の感情を描きつつも、一方でスパイらしい、一種の非常さもあって、それが作品の幅を広くしている気がします。

    ストーリーの面白さももちろんありますが、登場人物たちそれぞれのエピソードや言葉回しも楽しい一冊でした。

  • 「諜報員」という漢字に惹かれて購入。

    時代背景もあるかもしれないが、思ったよりも淡々と物語りはすすむ。何か大きな活動を行うかといえばそんなことはない。「諜報」というよりも「諜報員いろいろ」という感じ。アシェンデンが関わる様々な諜報員たちの個性を楽しむお話でした。諜報活動の展開を期待するとちょっとガッカリするかも。

  • スパイもの。前書きでフィクションではない!念をおされているが、著者が諜報員だったことを考えると、どれがリアルかフィクションかは判断が難しいが、少なくともフィクションであれ、リアリティのある話には違いない。
    「虚栄心ほど破壊的で、普遍的で、根深いものはない」
    なるほど。
    あとウィザースプーン卿がとても素晴らしいというか、理想的な人物像でした。
    決断すべきときに決断し、妥協するときに妥協するすべを心得ている。

  • 特にモームファンというわけではないが、新訳が出たことで気になって手に取った。

    タイトルのとおり、「アシェンデン」のコードネームを持つ諜報員がミッションを行う上で遭遇するあれこれ。モームは実際に英国情報部に在籍した時の経験をもとに作成したといわれ、標的に目の前で死なれる、などのエピソードは本当のことだという。それにしても、そんなことまでネタに使っていいのか?MI6は刺客を放ってこないのか?と思わないではないけれど、それは時代のなせるゆるさということでいいのだろう。おそらく、現代の諜報員のみなさまは「墓場まで持っていけ」的な契約を結ばされているだろうから、暴露本的な体裁にならない限り、もうこういう素材は出てこないだろうな、と思う。

    諜報活動は意外と淡々としたものだが、それにまつわる人物の描写などは巧みで、1話1幕のドラマ仕立てできちんと作られていると思う。ヨーロッパ中部の貴族社会、労働者、貴族階級の過ちなど、WW1あたりの英国が好きな人のハートもわしづかみ。個人的には、ミス・キングのくだりは好きだ。謎はなく、単なる郷愁のエピソードだとは思うけど。

    ジェームズ・ボンド的なスーパー諜報員を想像すると、かなり物足りないのかもしれないけど、現実はこんな感じだろうというリアリティと、作劇の上手さが私は非常に好き。阿刀田高さんの解説も、まさにそんな感じ。

    翻訳については、「ハイボール」と日本人に気を使っていただくこともないように思ったので、そこがちょっと気になる。あと、私の手元にあるのは初版だが、文中の仏語表記に1か所誤りがあるのに気づいてしまったので、訂正されたほうがいいんじゃないかしら。

  • 戦時下におけるモームの諜報活動を基にした小説。分類するのであれば、スパイ小説になるかもしれないが、どんでん返しのような要素はなく、淡々と諜報活動が繰り返される。

    本小説内でも記載があるものの、諜報活動といえども、淡々とすべき業務をこなす公務員のようなものということらしい。

    モームの他の小説とやや毛色は異なるものの、人間洞察を主眼に置いている点は変わらない。

    以下のような記述が、いかにもモームらしい。

    > なぜ相反する性質が、ひとつの心のなかに、なんの矛盾もなく存在するのか。ひとつだけ確かなのは、ケイパーはまったく良心の呵責を覚えていないということだ。卑怯で卑劣なことを嬉々として行なっている。

  • 第一次大戦中,モームは実際にイギリスのスパイだった.その時の体験を踏まえて書かれた小説.
    ここに描かれてあることの,どこまでが実話でどこまでが虚構なのかは分からないが,ロシアを舞台に工作をしていたのは事実らしい.恐らく,事実を背景として借りてきて,そこに細やかに描かれた人物を重ね置くことによって,小説として創作されていると思われる.
    もちろんモーム自身が主人公なので,アクションは全く無く,情報を集める,偽情報を与えることが諜報活動であり,モーム的な可笑しいエピソードも挟まれつつも,巻末に近づくにしたがって,徐々にトーンが緊迫してゆく.いや,連作であるのだが,後半にゆくにしたがって短編の緊迫度がましてゆき,最後はロシア革命に巻き込まれた男の悲劇で終わる.

    個人的には,アシェンデンが熱弁する「虚栄心」のエピソード,それからスクランブルエッグのくだりが好きだ.

  • 面白かった。スパイ小説ではあるが謀略や不自然な殺人描写は無い。英国大使の長いモノローグは大きな緊張を持って読み手を離さない。

  • モームのトリッキーな悪口がよかった

  • 主人公のジョーク、ほのめかしが良い作品。ちょっとしたスパイ気分を味わえる。

  • スパイ小説だけれど、007並のアクション冒険譚ではない。どちらかというと、諜報機関組織の一員として、上司からの指示を受け部下を使い、情報収集や工作活動に勤しむ、ひとつひとつはほんの些細な出来事にも見える諜報員の日常が描かれている。
    派手ではないからこそ、そして、細部の丁寧な描写と、主人公のアシェンデンの淡々とした任務遂行に、妙なリアル感がありました。
    これくらいバイタリティがないと務まらないんだろうなと思う個性的な登場人物たちの様子も面白かったです。

  • モームが書いたスパイ小説。モーム自身が第一次大戦中英国情報部のスパイとして活動した経歴があり、主人公は作家兼スパイ。面白くないわけがない。
    主人公アシェンデンの目を通して語られる短編の積み重ねの形式を取っており、アシェンデンの受ける任務によって舞台となる国や登場する人物が変わる。相変わらずの人物造形の巧みさは見事。特に、ヘアレスメキシカン、英国大使、ハミルトン、アナスタシアは出色。
    当然短編なので、エピソード毎に色があるのだが、前半のコメディタッチの話から、大戦を背景とした暗い話へ読み進めていくことでグラデーションが効いているため一貫性を損なうことがない。実際のところは分からないが、特に中後半にロシアに舞台を移してからのエピソードは、モームのスパイとしての経験をより色濃く反映しているように感じた。特に、最後の2つエピソードでアナスタシアが出てくる場面においては、前半その他のモームの短編と同様、主人公はあくまでも観察者としての立位置を固持しキャラクターがぼやかしているところが多かったが、アシェンデンとアナスタシアのロマンスが描かれており、キャラクターが大きく変わりその効果が絶妙で物語への没入が一段階強くなったように感じた。
    舞台設定、主人公のキャラクター等、一冊だけではなくて連載して一生ご飯が食べられるような名作だと思うが、モームの才能を持ってすれば他に描くべきものが沢山あったということなのだろう。

    読みながら特にロシアの場面なんかは映画になるなと思っていたが、ヒッチコックが原作として採用していることを読後しる。ロシアの場面ではないが、「間諜最後の日」というタイトルらしいので、こちらも是非鑑賞したい。

  • 小説家でスパイの主人公の冒険譚のような短編集。モーム自身がスパイだったせいか、何となくリアルさを感じさせる静けさがある。ただ、モームらしい人間観察は少しだけ影を潜めているような、それとは違うところで読む人を楽しませようとしているような。モームらしい本を読みたいとしたら、あまりお勧めはしないところ。純粋にスパイ小説として読むと面白い。

  • これまでに読んだモームさんの作品の中では比較的エンターテインメント色が強いように感じましたが、小説家でスパイというのがスマートな感じです。
    登場するキャラクターたちはどれもみんな際立っていて、それぞれのエピソードがくっきりとしています。

    各章読み切りではありませんが、いくつかの短編の連作のように見えます。

    戦時におかれた人間の深層を、複数の登場人物の愛憎を折り重ねて描出していくような作品です。

    淡々と仕事をこなす諜報員の活動を中心ですので快刀乱麻、八面六臂の大活躍はありませんが、そこに強烈なリアリティを感じます。

  • 文章の上手さ(訳の上手さももちろん)が際立つ。
    スパイなのだけど、007のように派手に銃撃戦をしたりするわけではなく、上司の言う通りに地味にあちこちへ。
    けれど淡々と描かれているそこに、関係した人達の生が
    滲み出ている。
    「ジゴロとジゴレット」収録の「サナトリウム」に出ていたのがアシェンデンだったとは!
    読み返してより胸に沁みた。

  • どこをきってもモームはモーム。
    期待したほどハードボイルドでなくて、でもやっぱり安定の面白さだった。
    スパイ的な要素は、政治的事情により書けなかったこともあるのだろうが、
    それよりもモームは人間を描きたかったのかと思う。
    スパイではなくて、根っからの小説家だ。

  • 「月と六ペンス」の方が好きだけど、こちらも個性豊かな登場人物たちの絶妙な会話のやり取りが楽しい。
    アシェンデンの上司Rの人(部下)の動かし方が凄すぎる。怖いもの見たさで、少しだけRの部下になってみたいけど、すぐお役御免にされそう(T▽T)

    マカロニは好きか?
    うんぬんかんぬん・・・好きです。
    よかった。イタリアに行ってくれ。
    ( ゚д゚)

  • 金原瑞人さんの新訳で新潮文庫より出版されているもの。(『剃刀の刃』も訳してくれないだろうか)モームの実体験に基づくスパイ小説。女スパイとやりあっている話が好きだった。

  • 派手な事件はないが
    キャラの造型や心理描写が巧み!
    皮肉の効いた会話が楽しい。

    面白い!

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