- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102134030
感想・レビュー・書評
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海軍条約文書事件の朝食シーンは思わずニヤッとさかてしまう。ホームズの遊び心がよい。
最後の事件は、、、なんとも言えない気持ちになる。
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二人の関係性の点で言えば、ワトスンが結婚してベーカー街を出た後は、 同居していたときとは少し遠い距離感を持って付き合っている感じがします。
一緒に住んでいる心安さで、ぶっきらぼうだったり、説明が足りなかったりしていたホームズが、 開業したワトスンを訪ねるのに、奥さんに気を遣ったりしています。
《白銀号事件》では、
まだ同居しているので、ホームズのぶっきらぼうさが出ています。
『ワトスンなら怒らないだろう、わかってくれるだろう』という、ホームズの『甘え』があるのがよいです。
冒頭「ワトスン君、僕は行かなきゃなるまいと思うよ」といういきなりのホームズの発言に、ワトスンは『べつに驚きもしなかった』のであります。
なぜなら、『眉根をよせた顔をうなだれて、強いくろタバコをパイプに詰めかえ詰めかえ、部屋のなかを歩き回ってばかりいて、何を話しかけても何を尋ねても、聞こえないかのようにがんこにだまりこくっていた。』そんなホームズを見て『私には、ひとことも彼が口をきかないにもかかわらず、彼の頭のなかで考えられていることは、よくわかっていた。』からです。
《黄色い顔》では、二人が午後の散歩をしています。『二時間ばかり〜ぶらついたが、どちらからもほとんど口はきかなかった。心の底ふかく知りあった仲として、べつに珍しいことでもない。』
とてもいい雰囲気で帰ってくると、客が来ていたという知らせを聞くなり、事件に飢えていたホームズは、
「だから午後の散歩なんかダメなんだ」とワトスンをとがめるように言います。
人のせいにするところが珍しく思います。
ワトスンに対しては、よく責めるような言葉を言うホームズです。主にワトソンの文章についての苦言は喧嘩の原因にもなりますが、日常的な皮肉や責任転嫁については、ワトスンがさらっと流して取り合わないことが多いように思います。
むっとはしているかもしれませんが。
事件について、見当違いをしてしまうという失敗をしたホームズが、家に帰り、ろうそくを片手に寝室へ引込むというときになって、
「ワトスン君、これからさきもし僕が、自分の力を過信したり、事件にたいしてそれ相当の骨折りを惜しんだりするようなことがあったら、ひとこと僕の耳に『ノーバリ』とささやいてくれたまえ。そうしてくれれば僕は非常にありがたい」
と言ったホームズがいいです。ワトスンへの信頼が伺えます。
《株式仲買店員》では、ワトスンが開業したパディントン区へホームズが訪ねて来ます。
ベルの音に続いてやや耳ざわりなくらい甲だかい声を響かせながらずかずか入ってきて、奥さんへ気を遣う発言をします。
温かくホームズの手を握るワトスン。腰掛けながらホームズは、
「開業して医術のほうが忙しいために、僕たちの推理問題に示した君の興味が、あとかたもなくなってしまわなければよいがねえ」と気遣うように言います。
ワトスンがホームズの誘いを受けて出かけるというと、
「ハ、そいつは何より好都合だ」といすにそりかえって、いつもの俺様な(?)態度になります。
その後は推理をひけらかして驚かせたり、説明しすぎて「なんだそんなことか」という顔になったワトスンを見て苦笑したり、いつもの気の置けない関係に戻ります。
さて、他にもホームズが初めて手がけた事件《グロリア・スコット号》や、兄マイクロフトが登場する《ギリシャ語通訳》、そしてなんと言っても、モリアーティー教授の出てくる《最後の事件》など、読むべき作品がたくさん入っています。 -
最後の事件は唐突に現れたモリアティに戸惑ったものだが、
彼が得体の知れない人物であり、奇妙で恐怖を感じる男であると同時に、ホームズの最大の敵であることがとても納得できたものだった。
都合よく運んでいくのがいつものことであるが、それがこの作品の納得してしまう凄いところで、とても読んでいて気持ちいいくらいで、ホームズの物語には陶酔してしまうような何かがあるのだと思う。
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「ノーベリ」の元になった『黄色い顔』、マイクロフト初登場の『ギリシャ語通訳』、モリアーティ教授が登場した途端いきなり終焉を迎える『最後の事件』等々盛り沢山。復活するの知ってるからいいようなものの、当時のストランド・マガジン読者は突然の最終話に嘆いただろうなと。捜査は相変わらず拡大鏡で足跡を見たり夜中に張込みをしたり。調べ物も書物や文書に当たったり電報で問い合わせたり大変だ。今なら指紋とDNA鑑定で一発な内容も、19世紀の犯罪者は平気で葉巻の吸殻を暖炉に放り込んで現場を去る。それでも続きを読みたいと思える意外な結末を用意するところが凄い。
石炭入れに葉巻を入れる、ペルシャスリッパの爪先に煙草を入れる、返事をしていない手紙をジャックナイフでマントルピースに突き刺す、拳銃の弾痕で壁にV.R.の文字を飾る、といった有名なホームズの奇行は『マスグレーヴ家の儀式』の冒頭で解説されている。 -
いくつかの短編は官憲が犯人を捕まえるのではなく、因果応報の結末を迎えた。19世紀の犯罪捜査の大らかさと、著者の筆致を堪能。そして「最後の事件」で登場した難敵・モリアティ教授。短い物語の中に、シャーロックが追われる立場になった緊張感が伝わってくる。あとがきから本作がシリーズ最後の予定だったが、読者の反響で執筆を再開させたことを知る。
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これまでホームズシリーズは何冊か読んできたものの、モリアーティとの対決の場面は初めて読んだ。ドキドキさせられる展開・・・ホームズってこの後復活するんだっけな?