恐怖の谷 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102134085

感想・レビュー・書評

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  • やっと来た、という感じの満足感が得られた。物語作家ドイルの面目躍如たる一作。
    私は世評高い『バスカーヴィル家の犬』よりも本作を推す。今回はドイルがここまで書けるのかと感嘆させられた。

    物語の構成はエピローグを加えると大きく分けて3部になる。
    1部は通常のホームズ譚―依頼人が来て、事件の概要を話し、ホームズが現地に乗り出し、事件発生後、証拠を捜索して驚嘆の事実を暴露する―で読者に提示された真実も結局被害者とされていた人物が実は加害者で、被害者は当人とは別人だったという現在から見れば定型の1つである。
    しかし、今回白眉なのは第2部、つまり事件の背景となる加害者側のストーリーなのだ。
    これが実にいい!!
    この構成は先に出てきた『バスカヴィル~』以外の長編、『緋色の研究』、『四つの署名』と同じなのだが、『緋色の研究』の時にも感嘆させられたが今回は更に作家としての円熟味が増したせいか、ものすごく芳醇な味わいがあるのだ。
    なんとハード・ボイルドなのである!!!
    ハメットすら唸らせるかのようなその臨場感はまるでスペクタクル映画を観ているよう!
    しかもそのサイド・ストーリーにも驚きの仕掛―これは今考えるとほとんどサスペンスの常套手段なのだが私には全く予想つかなかった―が施されている辺りにも正にぬかりなしといった感じ。
    ドイルはやはりドイルなのだと感じ入った次第。思うに本来ドイルはこのような小説を書きたかったのではないだろうか。

  • とても読みやすい復讐劇の作品。ホームズの名推理とマクマードの勇姿が素晴らしい。

  •  ホームズシリーズ最後の長編作品で、こちらもホームズ達が活躍する第一部と、物語中の人物の事情を描く三人称の第二部とに分かれる二部構成。

     第二部ではなかなか話の本質が見えて来ず、「一体いつまでこのアメリカ人のお話を読み進めればいいんだ?」と思った瞬間もありましたが、最後のどんでん返しに「ああ、なるほど!」となりました。
     この第二部は第二部である意味独立したひとつの物語になっているので、読み終わった今にして思えばこれはこれで面白いつくりだったなと思います。

     そして最後の数ページで展開されるエピローグでは更に一波乱があり、「最後の事件」で存在感を示しつつもそれを読んだ時点ではどうしても「(ある意味で)即席で用意された悪役」といった印象が拭えなかったモリアーティ教授の「倫敦社会の裏で暗躍する大犯罪者」としてのインパクトも充分に与えられたのではないかなと思います。いずれ来るホームズとモリアーティとの決着の時を予感させるような幕引きも良かったです。

     そして今回のメインである殺人事件のほうも、現在の科学捜査技術ではすぐに見破られてしまい成立しえないトリックとはいえ、こちらも第二部と同様のどんでん返し的な結末で、読んでいて非常に楽しかったです。これまで読んできたホームズ作品の中でも「ああ成程、そういうことか!」と思う展開が多かった作品でした。

  • この作品は、1914~15年に発表。
    すなわち、著者が55歳の頃に書かれた作品になる。

    ●2022年10月1日、追記。

    著者、コナン・ドイルさん、どのような方かを、ウィキにて確認しておきます。

    サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(英語: Sir Arthur Ignatius Conan Doyle, KStJ, DL, [ˈɑːrθər ɪgˈneɪʃ(i)əs ˈkoʊnən / ˈkɑnən ˈdɔɪl], 1859年5月22日 – 1930年7月7日)は、イギリスの作家、医師、政治活動家。

    推理小説・歴史小説・SF小説などを多数著した。とりわけ『シャーロック・ホームズ』シリーズの著者として知られる。SF分野では『失われた世界』『毒ガス帯』などチャレンジャー教授が活躍する作品群を、また歴史小説でも『ホワイト・カンパニー(英語版)』やジェラール准将(英語版)シリーズなどを著している。

    1902年にナイトに叙せられ、「サー」の称号を得た。

  • ホームズは長編の2部構成より、短編の方が好きだと改めて実感。
    2部の後半で引き込まれました。

  • The Valley of Fear(1914-1915年、英)。
    ホームズ・シリーズ、長編。

    ホームズの元に、事件を警告する暗号の手紙が届けられた。ほどなく警告どおりの殺人が起きるが、事件は、ある男のアメリカでの奇妙な冒険譚に関係していた…。

    「緋色の研究」と同様の形式で、後半はほとんど別の小説になっている。ただし本作品では、後半の冒険譚そのものが、叙述トリックに近い「どんでん返し」を含んだ、独立した探偵小説になっている。進化するものなのだなぁ、と感心した。

  • 長編4作品の中で一番面白かった。

    ミステリーとしての謎はともかく、前編の事件と後編の動機の物語の構成とバランスが良い。
    どちらも面白くてまとまりが良かった。

    後半に動機の物語を濃く語る構成って、いいな。こういうスタイルのミステリー他にもあるかな?ちょっと探してみよう。
    犯人の語る動機の薄っぺらさに飽きがきてるので、こういうのが新鮮に感じる。読んで良かった。古典もたまには読むべきだな。

  • ホームズ長編。
    冒頭部分は覚えているんだが、結局結末をいっつも忘れている。

    殺されていた人は実は別人で・・・とゆーやつ。
    なぜ狙われるようになったのか、という過去話付。
    いや、付、というより、半々ってとこか。
    以前過去話がでた時は冗長な感じがしたが、
    これはこれでホームズなしでも楽しめた。
    結構最後の最後まで、「探偵」というフレーズでてくるまで、この人、ただの魅力的悪人ってやつなんじゃ?
    ただの内輪もめなんじゃ?とか思っていたが・・・・。
    結局、最後までは逃げ切れず、モリアーティ教授の計画により、殺されてしまうとゆー・・・・。
    しかもその結末をホームズは予想していたとゆー・・・。
    うーん、予想しなたら、その上をいって、彼を守って欲しかった、泣 泣。
    仕事を全うしただけなのに殺されるとは・・・・。
    悪の世界オソルベシ。

  • 最後の事件の直前の物語のような終わり方で、モリアーティとの対決間近を思わせる。

    この長編も前後半にてお話が分かれるいつものパターンだが、話自体、独立していてそれなりに楽しめる。

  • 2部が最高に面白く、期待していたスパイ映画のような展開ですごく楽しめた。マクマードが魅力的。

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2024年 『コナン・ドイル 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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