- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102134085
感想・レビュー・書評
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とても読みやすい復讐劇の作品。ホームズの名推理とマクマードの勇姿が素晴らしい。
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ホームズシリーズ最後の長編作品で、こちらもホームズ達が活躍する第一部と、物語中の人物の事情を描く三人称の第二部とに分かれる二部構成。
第二部ではなかなか話の本質が見えて来ず、「一体いつまでこのアメリカ人のお話を読み進めればいいんだ?」と思った瞬間もありましたが、最後のどんでん返しに「ああ、なるほど!」となりました。
この第二部は第二部である意味独立したひとつの物語になっているので、読み終わった今にして思えばこれはこれで面白いつくりだったなと思います。
そして最後の数ページで展開されるエピローグでは更に一波乱があり、「最後の事件」で存在感を示しつつもそれを読んだ時点ではどうしても「(ある意味で)即席で用意された悪役」といった印象が拭えなかったモリアーティ教授の「倫敦社会の裏で暗躍する大犯罪者」としてのインパクトも充分に与えられたのではないかなと思います。いずれ来るホームズとモリアーティとの決着の時を予感させるような幕引きも良かったです。
そして今回のメインである殺人事件のほうも、現在の科学捜査技術ではすぐに見破られてしまい成立しえないトリックとはいえ、こちらも第二部と同様のどんでん返し的な結末で、読んでいて非常に楽しかったです。これまで読んできたホームズ作品の中でも「ああ成程、そういうことか!」と思う展開が多かった作品でした。 -
この作品は、1914~15年に発表。
すなわち、著者が55歳の頃に書かれた作品になる。
●2022年10月1日、追記。
著者、コナン・ドイルさん、どのような方かを、ウィキにて確認しておきます。
サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(英語: Sir Arthur Ignatius Conan Doyle, KStJ, DL, [ˈɑːrθər ɪgˈneɪʃ(i)əs ˈkoʊnən / ˈkɑnən ˈdɔɪl], 1859年5月22日 – 1930年7月7日)は、イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説・歴史小説・SF小説などを多数著した。とりわけ『シャーロック・ホームズ』シリーズの著者として知られる。SF分野では『失われた世界』『毒ガス帯』などチャレンジャー教授が活躍する作品群を、また歴史小説でも『ホワイト・カンパニー(英語版)』やジェラール准将(英語版)シリーズなどを著している。
1902年にナイトに叙せられ、「サー」の称号を得た。 -
ホームズは長編の2部構成より、短編の方が好きだと改めて実感。
2部の後半で引き込まれました。 -
長編4作品の中で一番面白かった。
ミステリーとしての謎はともかく、前編の事件と後編の動機の物語の構成とバランスが良い。
どちらも面白くてまとまりが良かった。
後半に動機の物語を濃く語る構成って、いいな。こういうスタイルのミステリー他にもあるかな?ちょっと探してみよう。
犯人の語る動機の薄っぺらさに飽きがきてるので、こういうのが新鮮に感じる。読んで良かった。古典もたまには読むべきだな。 -
最後の事件の直前の物語のような終わり方で、モリアーティとの対決間近を思わせる。
この長編も前後半にてお話が分かれるいつものパターンだが、話自体、独立していてそれなりに楽しめる。 -
2部が最高に面白く、期待していたスパイ映画のような展開ですごく楽しめた。マクマードが魅力的。
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シャーロック・ホームズ4本目の長編。二部構成の後半は完全にハードボイルド。しかも、「緋色の研究」と同じくアメリカが舞台。これは、アメリカの読者に向けたサービス要素が大きいのかな。ワトソンがモリアーティー教授のことを「知らない」設定になっているのも「ツッコミどころ」の一つとなっているらしい。ドイル先生、時系列を整理して書く気、まったくナシ!!
この〈二部構成〉をよしとするかイマイチとするか評価のわかれるところで、私としては長編なら「バスカヴィル家の犬」のほうに軍配を上げたい・・・。とはいえ、後半のハードボイルドスタイルはそれはそれで魅力がある。炭鉱の町ヴァーミッサの無法地帯の描写は、ほとんどマッドマックスか北斗の拳(笑)。そこにやってきた脛に傷を持つ(ある意味勲章?)の青年が街を牛耳る
秘密結社の中でめきめき存在感を現しながら、地元の美女と恋に落ちる設定は、男のロマンむんむんで、こういうのが好きな人にはたまらんだろうなあ、という気がする。まあ、結末を無理やりモリアーティー教授にもっていった感は否めませんけどね(笑)。
【補足】
ヴァーミッサ地方の炭鉱の町のモデルとなったのは米国ペンシルベニア州の無煙炭炭田地帯セントラリアといわれ、町を恐怖で支配する「スコウラーズ」のモデルはアイルランド系アメリカ人秘密結社〈モリー・マグワイアズ(モリーズ)〉であることを付け加えておきます。偕成社版の「恐怖の谷」の巻末に概要が記載されていますが、詳しくはwikiにも載っています。余談ですが、セントラリア炭鉱は1962年に起きた火災により町は捨て去られ、火災の日は50年経った今でも燃え続けているそうです。 -
面白い。とにかく面白い。
1部も2部もそれぞれで1つの物語として読みごたえがあります。シャーロックはでてこないけど、2部の鮮やかな物語展開は本当に素晴らしい! -
やっと読めた。感無量である。
最後の長編にして『緋色の研究』と同じ現在・過去の2部構成になっていて(僕は物語としてそれがドラマチックな感じで好きだったのでとてもうれしい)、しかもそのどちらにも最後に驚きがきちんと用意されていておもしろい。それらはもしかしたらとても単純なものなのかもしれないけど、ミステリをこれまで読んだことがあまりないぶん、古典としてだけでなく読みものとして純粋に楽しめた。良かった。
「そんなことはいいませんよ」ホームズは遙かな未来を見やるような眼つきをした。「打ちかつ者がないとはいいませんけれど、もっと時間をいただかなければ……まあ見ていてくださいよ!」(p.255)
ずっと後に書かれたこの小説が、「最後の事件」につながっていくのだという感覚は、やっぱり読んでいないと味わえなかったと思うから、この長かったホームズとの一ヶ月があるだけに、「遙かな未来」という表現による感動も、ひとしおであるのです。 -
シャーロックホームズ、シリーズ最後の長編であります。やっとここまで来たという感慨もあったり。
本作はシリーズで初めて、本格推理を感じました。後出しが全くない訳でもないんですが、それでも読者が推理をたてられるような流れになっています。暗号のVVVについて何も思い付けなかったのが悔しい(苦笑)
『緋色の研究』『四つの署名』では二部構成に疑問を感じもしましたが、本作ではこの二部構成がかなり生きた場合のように思います。それぞれが独立しながらも、繋がる物語。ドイルがこの構成にこだわった真意が分かるような気がしました。自分の中ではシリーズ最高傑作と据えたいと思います。
余談ですが、本作発表が1914年、つまり今年で100年目であります。あにばーさりー -
ホームズ長編第4作。
ホームズがモリアティの部下から受け取った暗号の手紙。
解読してみると、表れたのはある男に危険が迫っているという内容。
直後に現れたマクドナルド警部が持ち込んできたのは、
その男が殺害された事件の謎だった。
そして事件は、数年前のアメリカでの出来事に端を発する、
壮大な復讐劇の最後の一幕だった――。
ホームズの長編の中では最後の作。
4作ある長編の中では「バスカヴィル家の犬」が有名だが、
この「恐怖の谷」こそがベストではないかと思った。
第一部では殺人事件の謎をホームズが解決し、
第二部では事件が起こるに到った経緯が描かれる。
第一部でのホームズの推理は実に鮮やかだし、
結末も意外性のあるもので面白い。
特筆すべきは第二部で、「緋色の研究」と同様に
事件の背景がただ語られるだけかと思いきや、
第二部だけでも意外性のある結末が用意されていて、
立派なミステリィの体裁をなしている。
鮮やかな情景描写や怪奇趣味という点では
前作「バスカヴィル家の犬」は確かに勝るが、
推理小説的驚きを提供してくれるという点では
この「恐怖の谷」は、長編4作の中でベストだろう。
古典推理小説の名作。 -
二部構成。
一部のホームズの素晴らしさはもちろん、二部の痛快感がとても良かったです。
マクマードを表現することによってモリアーティの凄さ、ひいてはホームズの凄さを表現する構成に感嘆しました。
マクマードの件が史実だというのにも驚きです。 -
ホームズ最後の長編。『緋色の研究』のように二部構成なので、後半はホームズを読んでいることを忘れてしまう。第一部はDNA鑑定が確立していない時代であることを忘れていたので、純粋に驚いてしまった。続く二部で登場する法も秩序もない犯罪者集団が蔓延る町は、今でこそ現実味がないものの当時はエンタメとして面白かったのかなと思いきや、実際に存在した秘密結社をモデルにしているらしいと知りびっくり。結末は些か残念。教授の魔の手が迫っていることはわかっていたので、彼を匿い命を救う手立ては他にあったように思う。
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長編で賛否が分かれる作品のようですが、私はとても好きでした。ホームズの中でな異色な雰囲気ですが、描写が昔のアメリカ映画のようでかっこいいです。