シャーロック・ホームズ最後の挨拶 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102134092

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり面白い!一番好きなのは兄マイクロフトとともに活躍する『ブルース・パティントン設計書』お兄ちゃんは頭脳だけで動かないというイメージが覆る。謎が印象的な『ウィステリア荘』『ボール箱』と異例の『最後の挨拶』も楽しい。

  • His Last Bow(1917年、英)。
    ホームズ・シリーズ、短編集。ホームズが扱った最後の事件で、シリーズ中の異色作「最後の挨拶」など。

  • シャーロックホームズの素晴らしさはトリックだとかどんでん返しにあるのではない。
    ワトスンの語りから垣間見えるホームズという人間、ワトスンとの関係、魅力的な依頼人と犯人にあると思う。
    基本的に人物の心情について細かに書いてあることは少なく、事実が多い。だからこそシリーズを読み進める過程でホームズの人間像が少しずつ自分の中で厚みを帯びてきて気がついたらお気に入りの人になっている。
    まるで本当に事件を通して友達になったみたいに!
    きっと世界中、たくさんの時代の人がホームズに夢中になってホームズを作り上げてきたんだと思う。だからこそ映画化、ドラマ化が絶えなくて。
    「最後の挨拶」は今までの短編とは雰囲気が違う。三人称で引退後のホームズ。ワトスンも初老。時が作り出すものはなんだか少し悲しい。それと同時に愛しくもある。ワトスンとホームズの友情も気づけば何十年積み重ねたものなんだなあって思った。ワトスンはまた戦争に行くみたいだ。もうホームズと会えないかもしれない。東風の話をするホームズとのんびり答えるワトスンに胸が締め付けられた。小説の中の主人公はやろうと思えば歳をとらないこともできる。それでもやはり沢山の事件を通して歳を重ねたワトスンとホームズがわたしは大好きだ。
    シャーロックホームズシリーズは紛れもなく2人の男の人生の断片を描いていると思う。
    忘れ去られることが死ぬということなら、シャーロックホームズはたとえ現実にいなかったとしても、数え切れない数の人の中に命を宿した紛れも無いヴィクトリア朝時代のイギリスに生きた探偵だ。

  • 良き
    『瀕死の探偵』や『最後の挨拶』は特に好き
    次作も楽しみ

  • う~ん、とうとう来るべきものが来たという感じ。今回に関しては各短編全てにおいて興趣を欠いていた。
    有名な短編としては「瀕死の探偵」が挙げられるが、この話もホームズの馬鹿さ振りを髣髴させるエピソードとして色んな作家の作品中で語られるものなので実は大したことはない(実際、この短編におけるホームズはアホである。それにまんまと引っかかるワトスンもまた斯くや)。
    短編集の題名になっている「最後の挨拶」はもはや本格ですらない。これこそドイルがホームズ譚を執筆するのにうんざりしていた証拠になる。
    「亢龍やがて堕つべし」というがホームズもまた同様である。
    まあ『恐怖の谷』が読めただけでもホームズ譚を読む事の収穫は大いにあった。

  • 8つの短編集。「ボール箱」「悪魔の足」が良かった。シリーズとしてなお1冊余してるのに表題の「最後の挨拶」が含まれてるのかは、巻末の解説にある。2019.2.17

  • ホームズの物語の中で、時系列的に一番最後の「最後の挨拶」が収録されている短編集。このあとに「シャーロック・ホームズの事件簿」がまだ執筆されるわけだけれど、引退したホームズの最後の事件か…と思うと、寂しいものは寂しい。馬車じゃなくて自動車が登場したり、ホームズが60代になっていたり…当時の読者はホームズロスになったんじゃなかろうか。

    個人的に好きだったのは「瀕死の探偵」それまでの作品とはひと味違った展開をみせるから。
    あと「悪魔の足」も。ホームズ作品って、未開の地の神秘を要素に入れてることがけっこうあるよね。当時の人々の冒険心とか文化人類学的な興味を刺激したんじゃなかろうか。
    まあ今の感覚でいったらたとえば「四つの署名」にみられるような人種の扱いはアウトかもしれないけど、昔の文学作品にあんまり野暮なことはいいたくない。

    さて、なるべく刊行順に読んできたホームズシリーズ、次は「シャーロック・ホームズの事件簿」といきたいところだけれど、新潮社版ではこれまで収録しきれなかった短編を集めた「シャーロック・ホームズの叡知」がある。
    最初は読みづらいと思っていた古風な訳もくせになってきたけど、新潮社版のこの仕様だけはいまだに納得いかないなー

  •  『冒険』ほどではないにせよ個人的に粒揃いだと感じた今回の短編集の中、ひときわ印象強い読後感が残ったのはやはり表題の「最後の挨拶」でした。

     これまでの作品群には現実の歴史的事件の匂いを感じるようなものは然程ありませんでしたが、この短編に関しては第一次大戦の不穏な気配が色濃く表れており、ホームズの取り扱った他の事件とは少し毛色の異なる緊張感が漂っています。
     そしてこの緊張感が、読者が抱くこのシリーズへの「慣れ」という、悪く言えば一種のマンネリ感とも言うべきものを取り払った部分が少なからずあるのかなと感じました。他と比べて異色であることは確かなので好みが分かれそうな短編だと思いますが個人的にはとても気に入りました。
     ホームズが探偵業を引退してから長らく交流が無かったであろう彼とワトスンとの関係も、ひとたび両者が合流すれば再び以前のように息の合ったコンビネーションを見せるそのままの関係が垣間見えるのも微笑ましい。「最後の挨拶」直前までの短編でホームズの現役時代の話を読んでいるはずなのに、久方振りに共同で事件にあたった二人のやり取りに読者としてもどこか懐かしい気持ちにさせられます。

     「東の風になるね、ワトスン君」から始まる二人の最後のやり取り、特にホームズの言葉は彼の口を介して出たドイル自身の言葉なのかな。ホームズ物語はこの後もう一冊(いま読んでいるのは新潮社版なので後二冊)ぶんの展開があることは頭には入っているものの、個人的にはこの「最後の挨拶」は適度にセンチメンタルな読後感を残してくれる良い最終回だと思います。全ての短編を読み終わった後にもう一度この一篇に戻って来たいと思える作品でした。

  • えっ?終わんの?と思う本。

  • 「ウィステリア荘」
    ホームズが認める若手刑事のベインズ君との推理合戦。同じ目的のために違う手段をとる二人が面白かった。最後に同じことをしようとした際に、ホームズがベインズ刑事を褒めるところが印象的だった。真に自信を持っている人は他人をほめることに躊躇がないということを暗示している気がした。

    「ボール箱」
    最後の事件解説が、ホームズの説明でなく、犯人の供述・調書が使われているのが斬新だった。中身が不倫がらみのことなので、感情的になっており臨場感があった。

    「赤い輪」
    引っ越してから引きこもり続ける入居者と、それに関連すると考えられる奇妙な新聞広告。相変わらず、いろんな国の出身者が出て来ており、この頃、イギリスが覇権国家であった事を感じさせる物語だった。

    「ブルース・パティントン設計書」
    ホームズ兄弟が、盗まれた国家機密文書を取り戻すべく、奔走する話、と裏表紙には書いてあった。しかし、読んでみるとマイクロフトは、あまり出て来ず、ちょっと残念だった。ただ、マイクロフトの経歴が少し知れたことは、良かった。

    「瀕死の探偵」
    ホームズシリーズで、一番驚かされた物語だった。瀕死の演技をするために、三日間の絶食をし、メイクをする。そして、信頼してるがゆえに、一番用心をして、ワトスン博士を騙す。読んでいて、私自身もホームズに騙され、思わず笑ってしまった。

    「フランシス・カーファクス姫の失踪」
    合法的に一人の人を殺そうとする二人組。トリックは、棺が出て来た時にわかってしまったが、これもドイルが考え、広まっていったものなのだろうか。。。

    「悪魔の足」
    探偵小説の常だが、休暇中であったとしても、事件に巻き込まれるホームズ。彼の精神的な休暇は、事件に巻き込まれる事かもしれないが。。。

    「最後の挨拶」
    ホームズが2年もかけて、潜入し、ドイツのスパイを逮捕するということ。解説に書いてあったが、ドイルの個人的な心情も含まれた一編だったそうだ。

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2024年 『コナン・ドイル 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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