シャーロック・ホームズの叡智 (新潮文庫)

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感想 : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102134108

感想・レビュー・書評

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  • 小学生の頃、偕成社のシャーロック・ホームズ全集を夢中になって読んでいたことを思いだした。
    延原謙さんの訳が、わたしにはしっくりくる。すっと物語に入っていけたことで、あの頃のワクワク感が蘇ってきたのだ。
    あとカバー装幀が気に入ったな。シンプルな白地に凝った字体のタイトル、うるさくない可愛いデザインのホームズ。好き、こういうの。

    訳者解説によると、『シャーロック・ホームズの叡智』という独立した単行本はドイルの原作にはないとのこと。ドイルの原作を文庫用に組んでみると、短編集はページ数がやたら多くなったので、一部割愛することに。その割愛されたものをまとめたのが『シャーロック・ホームズの叡智』なんだって。割愛されたものだからといって、これらの作品が他のものより劣るものである訳ではけっしてないと述べられている。

    事件の概要は、怪しい仕事依頼から宝石の盗難、殺人、失踪、カレッジの奨学金試験不正疑惑などなど幅広く富んだラインナップ。大満足のとても面白い短編集だった。

    まず物語の大半は、相談者が思わぬ事態に取り乱し、慌てふためき登場するところから始まる。ときにホームズさえ呆気にとられてしまうのだから、相談者は必死なんだけれど、必死だからこそ意味不明な行動を取ってしまったりして不謹慎ながら吹き出しそうになる。ごめんなさーい。
    でもそんな彼らこそが、退屈そうなホームズを嬉々とさせてくれるのだから、ここは歓迎?しなくちゃならないところだよね。

    8編の短編は、「冒険」「思い出」「帰還」「事件簿」の各原作から集められたものなので、事件が起きるその時々のホームズの状況や、たとえば他の事件、ワトスン博士との関係性や健康状態などが当然違ってくる。
    だけど、それが煩わしいとかじゃなくて、時系列や、その頃のロンドンの様子、事件の概要などを調べたりすることが意外にも面白くて、無謀にもシャーロキアンぶりたくなってくる楽しいひとときだった。

    収録作品
    「シャーロック・ホームズの冒険」から
    『技師の親指』
    『緑柱石の宝冠』

    「シャーロック・ホームズの思い出」から
    『ライゲートの大地主』

    「シャーロック・ホームズの帰還」から
    『ノーウッドの建築士』
    『三人の学生』
    『スリー・クォーターの失踪』

    「シャーロック・ホームズの事件簿」から
    『ショスコム荘』
    『隠居絵具屋』

    そうそう、『緑柱石の宝冠』で、解き明かした事件の真相が信じられない相談者に対してホームズが語った言葉。
    〈あり得べからざることを除去してゆけば、あとに残ったのがいかに信じがたいものであっても、それが事実に相違ない。〉
    この名言を見つけたときは、あ、これかぁとひそかに嬉しくなった。なんてったって『名探偵コナン』の名作のひとつ「そして人魚はいなくなった」をはじめ度々出てくるセリフなのよ。そうか、この短編が元ネタだったんだな。

  • ホームズ・シリーズ、短編集。この巻は新潮文庫のオリジナルで、ドイルの原作にはない。頁数の関係で本来の巻に入りきらず、割愛された短編をまとめて掲載したもの。タイトルは訳者の命名。

  • 相変わらずの推理力。個人的には隠居絵具屋、三人の学生が好きでした。

  • 巷間に流布しているホームズ譚の短編集は『~冒険』、『~帰還』、『~思い出』、『~最後の挨拶』、『~事件簿』の5冊が通例だが、新潮文庫版においては各短編から1、2編ほど欠落しており、それらを集めて本書を編んでいる。従って衰えの見え始めた後期の短編集よりも実は内容的には充実しており、ドイル面目躍如という印象をもってホームズ譚を終える事になろうとは計算の上だったか定かではない。

    本作においては冒頭の「技師の親指」など結構読ませる短編が揃っており、個人的には「スリー・クォーターの失踪」がお気に入り。
    最後の「隠居絵具屋」はチャンドラー、ロスマク系統の人捜しの様相を呈した一風変わった発端から始まるが最後においてはポーの有名作品を思わせる仕上がりを見せるあたり、なかなかである。
    しかしホームズ譚を全編通じて読んだ感想はやはり小中学校で読むべき作品群であるとの認識は強く、少年の頃に抱いた輝かしい物語のきらめきの封印を無理に抉じ開けてしまった感があり、いささか寂しい思いがする。色褪せぬ名作でもやはり読む時期というものを選ぶのだ。

  • 「シャーロック・ホームズの叡智」新潮文庫は、 訳者の延原謙氏が、勝手に命名したもので、大人の事情で各文庫版に載せ切れなかった短編作品をまとめて出版したものです。

    ≪技師の親指≫「シャーロック・ホームズの冒険」より

    1889年の夏、ワトスンの結婚後まもなく、また開業することになった頃の話です。

    『私はベーカー街にホームズをおきざりにはしたが、それでもちょいちょい訪ねてはいったし、ときには彼を説きふせてその放縦癖(原文ではBohemian habits)を一時おさめ、私の家を訪ねてくるようにもしたのだった。』

    放縦とは「何の規律もなく勝手にしたいことをすること」ですが、ホームズの身勝手さは、自分の健康を損ねたりすることもあるので、ワトスンとしては、離れて住んでいても心配の種だったのだと思います。

    朝早く、患者でもある依頼人をホームズの所へ連れて行くと、ホームズは『例のもの静かな愛想のよさで私たちを迎え、ベーコンのうす切りと卵とを注文してくれ、いっしょに気持ちよく食事をとった。』のでした。
    さらに、怪我をしている患者に対してソファーや枕や気付け薬や優しい言葉を用意して、話を聞こうとします。

    そういうホームズの気遣いが、他の話や場面でのワトスンへの身勝手ぶりと対比していて面白いです。
    もちろんワトスンをないがしろにしているわけではなく、自分の一部であるかのような扱いとでもいえるような「甘え」があるのだと思います。

    ホームズは、人当たりをよくしたり、女性の心に入り込んだり、やろうと思えばいくらでも素晴らしい紳士にもなれるのに、事件解決のためなど目的がないと、好き勝手に振舞います。


    尊大な態度、無礼な振る舞い、いきなりの行動、 解っていることを隠してもったいぶったり、果てにはチェスの駒のようにだまして利用することもあります。

    「瀕死の探偵(シャーロック・ホームズ最後の挨拶)ひどいよホームズ! と、私は思わず怒ってしまいました。
    最後のフォロー「僕が医者としての君の才能を、それほど見くびっているとでも思うのかい……」がなければワトスンもきっと怒っていただろう……と思うのですが、本文では、瀕死のホームズが心配で心配でたまらないという感が強く表れていました。
    さすが、ワトスン、人がいいというか、ホームズに対してはなんでもありなのか。


    ハドソンさんもホームズを「尊敬している」という記述が見受けられますが、どちらかというと、 『わがままな子どもを見守り、世話を焼く身内』のような感覚に思います。


    ワトスンは、ホームズの態度にむっとしたり、口げんかをしたり、怒ったりすることも時にはありますが、結局のところ、事件の新事実なんかを提示されると
    「それでどうなったんだい?」
    などと、興味のほうが先に来て、ころっと機嫌がなおってしまうようです。
    ワトスンが単純で浅はかというのではなく、ホームズに対する、保護者のような慈愛と、友としての親愛と、そしておさえきれない好奇心とが、彼を許す動機になっている……
    などと、文字にあらわすと随分陳腐になってしまいますが、つまり、ワトスンはホームズが大好きなんですよ。
    ホームズも、他の誰とも違う信頼をワトスンにおいています。

    人前などでは「Doctor」などと型で呼ぶこともありますが、「my dear fellow(私の友達)」や「my dear Watson」と心を込めて呼ぶこともあります。

    一緒に法を犯す危険をくぐって泥棒の真似をしたり、一緒に静かな夜を暖炉の前で過ごしたり、どんなことでも行動をともにしてくれる存在のありがたさよ。


    「いつでも! どこへでも! 一緒にいくとも」
    「それでこそわが友!」

    その関係性が、ホームズにとってどれだけ貴重なものだったか、そしてその関係にどっぷり浸かっていたがために、許してくれるだろうという予測の元に、甘えとなって『ひどい態度』が出ていたのでしょうか。

    「技師の親指」では、そんなに『ひどい事』はしてませんが、
    態度にあまりに差があったので、思わず書いてしまいました。

  • 記念すべき私のファースト・ミステリィです。
    母親にシャーロック・ホームズシリーズを与えられたのは、確か小学3年生くらいの時。それ以来、ひたすらホームズものを読みあさりました。
    内容については、もう何も言わなくても良いでしょう。
    最後に一言。古典だからといって、毛嫌いしていたら、きっと後悔しますよ。

  • やはりホームズはおもしろい。まさに彼の叡智によって事件は解決された。
    短編集としては実際には原書として存在せず、寄せ集めたものであるとのこと。ラグビー選手の失踪などやはりイギリスを舞台にした話もあり、興味深い。

  • 文庫として最後のホームズシリーズ。訳者によるとボリュームから、これまでのシリーズから抜粋してまとめたとのこと。他の短編同様おもしろく楽しめる。2019.2.28

  • この一冊でシリーズ最後。読み切った達成感もあるけど、どの話も質が高かったなと改めて思った。あとは何といってもホームズとワトスンの関係性が良い。この巻でも、分かりの悪いのは君だけではなかった、誤解していたよ、とさらっと言ってしまうホームズに思わず笑ってしまった。
    この巻のお気に入りは「ノーウッドの建築士」。謎を解き明かすまでの過程が面白いだけでなく、犯人を誘い出す方法がまた面白い。同じような方法で犯人を暴く事件が某探偵アニメにもあったような…といろいろ広がるのも楽しい。

  • シャーロックホームズ最後の短編集

    8編のストーリーをまとめた一冊で、親指を失った奇妙な男の話やテストの問題の解答が盗み見された事件など
    短く楽しめる話が多くて良かった。

    これで新潮文庫では読み終わったので他の文庫でもホームズシリーズを読みたいと思う。

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著者プロフィール

1859年スコットランド、エディンバラ生まれ。小説家。推理小説、歴史小説、SF、戯作など、多岐にわたる作品を残す。中でも「シャーロック・ホームズ」シリーズは、現代のミステリ作品の基礎を築いたとされる。1902年にナイトに叙せられ、「サー」の称号を得る。1930年没。

「2021年 『シャーロック・ホームズの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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