- Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102140024
感想・レビュー・書評
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初めてのアルセーヌルパン。
紳士怪盗とはなるほど。矜持とエスプリのかまたり。
このヒーローとして大衆に賞賛される貴族こそ、あるべき姿のようである。現代でいうところのセレブなんじゃなかろうか。ノブレスオブリージュ。ただ財産のあることがセレブではなく、知的で天晴れな振る舞いこそ。
ヒーロー像と、当時の時代背景など歴史・政治ミステリーとして秀逸だと思う。この2020年において、100年前のミステリーに真新しさや描写、奇天烈なトリックを求めるのはお門違いではと思うけども。ただただ、できることなら自分もこうありたいと思えるヒーロー物語。
この数年後に第一次世界大戦が巻き起こるヨーロッパの情勢のなか書かれた小説、と思って読めるのは、ある意味で当時からすれば未来に生きる現代人の特権。一方で毎日の報道、主に新聞に生々しい記事が掲載されていた当時に読むリアリティ・風刺は、いまはもう味わうことができない感覚。
あと女性に弱い設定の三世は、
これまたちょうど現代で愛されるための愛嬌だと思う。
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1910年発表
原題:Les Trois Crimes d'Arsène Lupin -
前作『813』を読んだのが、何と10ヶ月前!!ほとんど内容の方は忘れてしまっていて、何が何やらさっぱり判らなかった。
『813』で残された謎が次々と明らかにされていっているんだろうけれど、もう謎自体、忘却の彼方へ押しやられて、ただ文字の流れを見るのみになってしまった。
こんな読書はいけないのだろうけれど、他の作者の本を読むときは物語世界に入っていけるのだから、これはやはり作者のせいだろう。 -
この話のルパンは、アニメのルパン三世のおじいさんなんだね。なんとまあ、ルパンの話だったなあ。ひょうきんで、頭が回り、度胸もあるが、義に厚く情にもろい。そして恋した人を失い、ほろ苦い終わり。意外とよかった。
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久しぶりに再度読み返した。読み進めると同時に、ルパンに対しては「こいつ実に嫌な奴だな」という感情が徐々に強くなり、終いには「こいつどうしようもないワルじゃん」と確信するに至る。
当時の歴史背景や政治情勢がもっと語られていればもう少し読むのに面白くもあったろうが、そういうとこはことごとくスルーで、恋愛、活劇、権力、名誉、物欲金銭欲をめぐってお話は展開されていく。言ってみればルパンというのは当時のフランスの大衆の属性そのものの具現化だと言っていいのではないかな。
自分の両の手で絞め殺すまで真犯人が誰だか気づかなかったっていうのは推理小説としてはスンゴク型破りとは言えるな。しかしこれじゃ洞察力も観察眼もゼロだよ。
結末が虚無感一色で終わるという点にこの作品の一筋縄では行かなさが表れているとも思った。後味の悪いような不思議な読後感を生む。ただ、最後の最後でまたぞろワルの芽がムクムクと...。ということでやっぱりルパンは懲りてないのでした。 -
子供の頃に読んだと思うが内容を覚えていなかった。少年用で全文でなかったのだろう。新鮮だった。訳がわかりづらかった。ルパンが人を殺めるなんて驚いた。2015.4.27
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訳者さんの訳がどうしても私にはルパンに思えないのは前編同様。
一度読んだことがあるので内容は何となく覚えてました。
ネタバレになりますが、
セルニーヌ公爵=ルノルマン=アルセーヌ・ルパン。
ルパンが好敵に翻弄されつつも、最後は意外な相手が犯人だと発覚。
ルパンの娘さんが出て来たり、最初はルパンに頑なだった乳母のビクトワールが最後はやっぱり「私の坊や」に心動かされたり。
結末はお楽しみ、と言うところで割愛しますが、最後のアレはルパンが体鍛え過ぎなんだと思います…。 -
Maurice LeblancのArsène Lupinシリーズで、1910年発表の「813」の下巻である。813の数字やAPO ONの謎が明らかとなるが、あまり推理によって解けたという感じではない。冒頭の牢屋の中にいながらたくさんの事を仕掛けやり遂げてしまうルパンに巧妙さ、ヘルロック・ショルメスとの静かな戦い、7人の敵を金によって負かす大胆さがおもしろい。
終盤は、謎の暗殺者の正体が明らかとなり物語は一気に悲劇へと変わる。そこからのルパンの内面描写がすごいが、訳が直訳に近いので読むのもそこからかなり大変になる。「これが、それが、あの、何ともつかぬ、であったではないか」という感じ。
常に情熱的に行動し、車と電車が衝突しようと屈せずある男を助けようと奮闘するルパンがかっこいい。