続813: ルパン傑作集(Ⅱ) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102140024

感想・レビュー・書評

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  • 「モーリス・ルブラン」の『続813』を読みました。
    先日読んだ『813』の続篇です。

    -----story-------------
    謎の人物"L.M."の手によって刑務所に放り込まれた「ルパン」は、持ち前の沈着冷静さで警察陣を翻弄して脱獄に成功。
    一路ベルデンツの廃墟に向かう。
    全ヨーロッパの運命を握る秘密を解く鍵が、必ずあるにちがいない……。
    が、またしても"L.M."の恐るべき刃は先回りしていた。
    "L.M."とはいったい何者なのか?
    「ルパン」の鋭い追及の前に遂に姿を現した人物は意外にも……。
    -----------------------

    『813』では、「ルパン」が逮捕され、謎が謎のままで終わっちゃっていて、何も解決していなかったのですが、本篇で全ての謎が解かれます。

    まぁ、もともとひとつの作品だったらしいので、当たり前なんでしょうが、、、
    "続"って付いていると、ひとつの物語が終わったあとの、類似性のある別な物語だと勘違いしちゃいますよね。

    "上巻"と"下巻"とか"前篇"と"後篇"の方がタイトルとしては適切な感じがします。

    あと、ドイツとフランスの歴史的背景が理解できていたら、もっと愉しめたんじゃないかと思いましたね。

    小学校の教科書にアルザス/ロレーヌ地方の悲劇を取り上げた物語(多分「最後の授業」だと思う)が使われていたので、全く知らないことはないのですが、、、
    その程度の乏しい知識しかなかったので、なかなか感情移入ができませんでした。


    ≪ちょっとネタバレ!≫


    そして"L.M."の正体は予想外の人物。
    まさか「ケッセルバック夫人」だったとは驚きです。

    本名は「ドロレス・ド・マルライヒ」で「レチチア」と呼ばれていたことから、イニシャルが"L.M."だったんですよね。

    確かに彼女が真犯人だと数々の犯罪と辻褄が合うんですが、、、
    血統が彼女を殺人鬼にしたというのは、ちょっと前時代的な印象を受けました。
    まぁ、古い作品ですから、仕方ないんですけどね。

    それにしても本作の「ルパン」は、

    ■殺すつもりのない「ドロレス」を殺しちゃったり、
    ■「ピエール・ルディック(ジェラール・ポープレ)」を自殺に至りしめたり、
    ■真犯人ではない「レオン・マシェ」を冤罪で死刑(斬首刑?)に追い込んだり… と失敗続き、

    そして「ルパン」本人もカプリ島で投身自殺を試みるが失敗して生き延びます。



    まぁ、「ルパン」生き延びたお陰で続篇があるので、最後の失敗は感謝すべきですかね。

  • 初めてのアルセーヌルパン。

    紳士怪盗とはなるほど。矜持とエスプリのかまたり。

    このヒーローとして大衆に賞賛される貴族こそ、あるべき姿のようである。現代でいうところのセレブなんじゃなかろうか。ノブレスオブリージュ。ただ財産のあることがセレブではなく、知的で天晴れな振る舞いこそ。


    ヒーロー像と、当時の時代背景など歴史・政治ミステリーとして秀逸だと思う。この2020年において、100年前のミステリーに真新しさや描写、奇天烈なトリックを求めるのはお門違いではと思うけども。ただただ、できることなら自分もこうありたいと思えるヒーロー物語。

    この数年後に第一次世界大戦が巻き起こるヨーロッパの情勢のなか書かれた小説、と思って読めるのは、ある意味で当時からすれば未来に生きる現代人の特権。一方で毎日の報道、主に新聞に生々しい記事が掲載されていた当時に読むリアリティ・風刺は、いまはもう味わうことができない感覚。

    あと女性に弱い設定の三世は、
    これまたちょうど現代で愛されるための愛嬌だと思う。

  • 1910年発表
    原題:Les Trois Crimes d'Arsène Lupin

  • 神出鬼没 VS 超神出鬼没


     前哨戦(『813』)を終えてはっきりしたのは、われらがアルセーヌ・ルパンは殺人犯などではなく、まだなお無血を守る怪盗紳士であるという、喜ばしい真実☆ その一方で、事件の首謀者は仲間を殺すことも辞さない、冷酷な人物です。『続813』は、ついにルパン対殺人鬼の一騎打ちとなります★

     戦いは、ルパン側の苦難の連続! 投獄されて足を封じられ、脱獄からの再出発。まるで姿を見せない敵は、なぜかルパンの手口を見通していて、神出鬼没で鳴らしているルパンを上回る、超神出鬼没なのでした。
     神出鬼没は、超神出鬼没に出会うと無効化される! 特殊な性質や能力があっても、同種の特性において相手に上回られた場合、その力は損なわれるのです★

     しかも、手がかりをあらかた消し去っていく相手の手腕と、ルパンと違って血を流すのも厭わないやり口に、高まる恐怖感――
     この強大な敵を前にして、ルパンから新たな魅力がにじみ出します。風のように現れたり、煙のように消えうせたりすることはないかわり、肉体の物質感を獲得したルパン。血が通い、汗もかき、焦りや苦痛をおぼえることだってある、熱い思いを抱く一人の人間になったのです。
     変幻自在の怪盗紳士は、香水のようにおしゃれなフェロモンをふりまいてきたけれども、この作品でルパンがまき散らすのはおしゃれ系さらさらフェロモンではなく、したたる汗系へと変わりました。ふりかかる苦難を乗り越え、何事かを成し遂げる者からでなければしたたらない塩水です★





     このように新生ルパンの魅力を引き出したのはいいのですが、続編まで謎を持ち越した超大作を追った果てに待っているのは、その時代の人間でなければ到底納得しかねる結末。率直に言っちゃうと、私は読書に費やしてきた時間をむなしく感じたな……。小説家は自らが生きた時代に作品を縛られずにはいられないのか。古典の限界でしょうか……?

  • 前作『813』を読んだのが、何と10ヶ月前!!ほとんど内容の方は忘れてしまっていて、何が何やらさっぱり判らなかった。
    『813』で残された謎が次々と明らかにされていっているんだろうけれど、もう謎自体、忘却の彼方へ押しやられて、ただ文字の流れを見るのみになってしまった。
    こんな読書はいけないのだろうけれど、他の作者の本を読むときは物語世界に入っていけるのだから、これはやはり作者のせいだろう。

  • この話のルパンは、アニメのルパン三世のおじいさんなんだね。なんとまあ、ルパンの話だったなあ。ひょうきんで、頭が回り、度胸もあるが、義に厚く情にもろい。そして恋した人を失い、ほろ苦い終わり。意外とよかった。

  • 久しぶりに再度読み返した。読み進めると同時に、ルパンに対しては「こいつ実に嫌な奴だな」という感情が徐々に強くなり、終いには「こいつどうしようもないワルじゃん」と確信するに至る。

    当時の歴史背景や政治情勢がもっと語られていればもう少し読むのに面白くもあったろうが、そういうとこはことごとくスルーで、恋愛、活劇、権力、名誉、物欲金銭欲をめぐってお話は展開されていく。言ってみればルパンというのは当時のフランスの大衆の属性そのものの具現化だと言っていいのではないかな。

    自分の両の手で絞め殺すまで真犯人が誰だか気づかなかったっていうのは推理小説としてはスンゴク型破りとは言えるな。しかしこれじゃ洞察力も観察眼もゼロだよ。

    結末が虚無感一色で終わるという点にこの作品の一筋縄では行かなさが表れているとも思った。後味の悪いような不思議な読後感を生む。ただ、最後の最後でまたぞろワルの芽がムクムクと...。ということでやっぱりルパンは懲りてないのでした。

  • 子供の頃に読んだと思うが内容を覚えていなかった。少年用で全文でなかったのだろう。新鮮だった。訳がわかりづらかった。ルパンが人を殺めるなんて驚いた。2015.4.27

  • 訳者さんの訳がどうしても私にはルパンに思えないのは前編同様。
    一度読んだことがあるので内容は何となく覚えてました。

    ネタバレになりますが、
    セルニーヌ公爵=ルノルマン=アルセーヌ・ルパン。
    ルパンが好敵に翻弄されつつも、最後は意外な相手が犯人だと発覚。
    ルパンの娘さんが出て来たり、最初はルパンに頑なだった乳母のビクトワールが最後はやっぱり「私の坊や」に心動かされたり。

    結末はお楽しみ、と言うところで割愛しますが、最後のアレはルパンが体鍛え過ぎなんだと思います…。

  • Maurice LeblancのArsène Lupinシリーズで、1910年発表の「813」の下巻である。813の数字やAPO ONの謎が明らかとなるが、あまり推理によって解けたという感じではない。冒頭の牢屋の中にいながらたくさんの事を仕掛けやり遂げてしまうルパンに巧妙さ、ヘルロック・ショルメスとの静かな戦い、7人の敵を金によって負かす大胆さがおもしろい。

    終盤は、謎の暗殺者の正体が明らかとなり物語は一気に悲劇へと変わる。そこからのルパンの内面描写がすごいが、訳が直訳に近いので読むのもそこからかなり大変になる。「これが、それが、あの、何ともつかぬ、であったではないか」という感じ。

    常に情熱的に行動し、車と電車が衝突しようと屈せずある男を助けようと奮闘するルパンがかっこいい。

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著者プロフィール

本名モーリス・マリー・エミール・ルブラン。1864年、フランス、ノルマンディー地方ルーアン生まれ。 1890年頃から小説を発表していたが、1905年に編集者からの 依頼で書いた「アルセーヌ・ルパンの逮捕」が好評を博し、 強盗紳士アルセーヌ・ルパン冒険譚の作者として有名になる。 41年死去。

「2018年 『名探偵ルパン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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