優雅な生活が最高の復讐である (新潮文庫 ト 21-1)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102144213

作品紹介・あらすじ

あのフィッツジェラルドが憧れ、『夜はやさし』のモデルにしたという画家ジェラルドとセーラのマーフィ夫妻。ヘミングウェイ、ピカソ、レジェ、コール・ポーターにまで及ぶ夫妻の華やかな交友関係を、さまざまなエピソードで綴る。1920〜30年代の文化人たちの群像を浮き彫りにしたノンフィクションの名著に、ジェラルドの没後、新たな情報と写真とを加え最終章を書き直した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • どうして自分が本を読み続けるのか、不思議に思う瞬間があるんです。理由は色々あるでしょうけど、短い一節にガツンとやられるせいじゃないかと、最近思ってます。この伝記は、自分にはあまり馴染まず、「読むのをよそうか」という気持ちが膨れあがっていたんですが、ある一節が衝撃的で、40分ほど電車に揺られながら、ずっと考えてました。帰宅して、お湯につかってる時も頭にチラついてました。多分、明日もまとわりついてるでしょーね。こういう体験が、僕は好きなんだと思うんです。映画を観るのも、音楽に耳を傾けるのも、多分同じような理由です。

  • まずタイトルが圧倒的に美しい。「Living Well is The Best Revenge.」というスペイン語の諺らしい。フィッツジェラルドの『夜はやさし』の元々のモデルとなったジェラルドとセーラのマーフィー夫妻の伝記。夜はやさしの何とも言えないもの哀しい感触は覚えているけど、もう一度読み直したい。

    生活にスタイルを持つこと。身なり、食事、友人との交流に決して手を抜かず、洗練を保つこと。お金はあるけどなんだか擦り切れた人もいる一方、お金はそんなにないけど美しい生活をしている人もいる。彼らは金はそこそこあって美しいて感じなのだけど、スタイルを持つことの格好よさは再実感させられる。そこには自分の意志で人生の洗練さを維持しようとする努力があるし、ジェラルドの「手を加えないかぎり人生はとても耐えがたい」という台詞は一つの真理だと思う。

  • ある無名?の夫婦についての伝記。といってもメインはその周辺にいたフィッツジェラルドやピカソ、サティといった芸術家たち。フィッツジェラルドは読んだことがなかったので一読してからの方が楽しめたか。

  • 写真が素敵でした。

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  • 初読

    フィッツジェラルドの「夜はやさし」のディックとニコルのダイヴァー夫妻モデルになった(された)
    ジェラルドとセーラのマーフィ夫妻の回想録。

    ディックとニコルはジェラルドとセーラをモデルという形にしておきながら、
    (本人達からしたら似ても似つかないのに!)
    途中からフィッツジェラルドとゼルダになってしまっている、
    「ぼくは誰かを好きになるとその人みたいになりたくてたまらなくなる」
    というのは、もう、フィッツジェラルドの哀しさ、切なさの最たるものだろう。

    20年代のパリの目眩く日々。
    ピカソ、ヘミングウェイ、コール・ポーター、エリック・サティ、ディアギレフ、ストラビンスキー、コクトー、ガートルート・スタイン…

    アルバムの章は必見。

    それにしてもフィッツジェラルドにもヘミングウェイにも愛される
    セーラのモテモテぶりをもうちょっと詳しく知りたかったものです…

  • フィッツジェラルドが憧れ、『夜はやさし』のモデルにしたジェラルドとセーラのマーフィー夫婦。ヘミングウェイ、ピカソ、コール・ポーター、エリック・サティらとの華麗な交遊。アメリカからヨーロッパにわたり、彼らなりのスタイルを持った優雅な暮らしをおくる。正直、どのようにセンスが良かったかは、自分の力不足で汲み取れなかったのだけど。エピソードでつづられる1920年代。フィッツジェラルド「最後のほうはぼくとゼルダのことになったが、しかたないよ、きみたちとぼくたちはそっくりなんだから」/「だれかが好きになると」「ぼくはそのひとみたいになりたくてたまらなくなる-ぼくがぼくでしかないことを示すぼくの外見をかなぐり捨てて、そのひとみたいになりたくなる」/サティ「ときどきアメリカ精神に肩をたたかれるのだが、あのアイロニカルな凍りのような感触は気分がいい」/ゼルダ「知らなかった?あたしたち、大事に守りたいものなんて、ないのよ」/ジェラルド「セーラは人生に恋をしているが、人間はいまひとつ信じちゃいない」「ぼくは逆だ。手を加えないかぎり人生はとても耐えがたい」/ヘミングウェイ「気に入ると思うよ、やつはタフだから」/セーラ「スコット」「質問をある程度すればひとのことはわかるとおもってるとしたら、大間違いよ。あなたには人間というのがまるでわかってない」/ジェラルド「無視はしないが、過大視したくない。大事なのは、なにをするかではなくて、なににこころを傾けるかだとおもっているから、人生のじぶんでつくりあげた部分しか、ぼくには意味がないんだよ」/フィッツジェラルド「きみとセーラに助けられているのが…唯一のうれしい人間的なことだとおもうことがよくありました。ひとは通り過ぎてぼくを忘れていく、と生意気にも考えていたものですから」/彼らの語るフィッツジェラルドは、才能にあふれ、度し難い面も多々ありつつも、美質をもった愛すべき人だったけど、その人間的な理解は浅く、その文学も深みに到達していなかったといったところなのだろうか。もっとフィッツジェラルドの伝記や研究にもふれてみたくなった。

  • 作家の多くは身近な人々をモデルにして小説を書くけれども、書かれた方の立場の居心地の悪さはいかなるものか。この本を手に取る人の多くはフィッツジェラルド『夜はやさし』を既に読んでいることが前提となっているだろう。登場人物のモデルになったアメリカ生まれヨーロッパ暮らしの裕福なマーフィ夫妻について書かれた本。
    著者は実際にマーフィー夫妻に直接インタビューを行った上でこの本を執筆している。前半は夫妻がストラヴィンスキーの成功を祝うパーティを開催したり、ピカソやヘミングウェイなどの文化人との華やかな交流が描かれる。後半、ジェラルド・マーフィー氏は絵を描いていたことが明かされ、ジェラルドが本気で画家になりたかったことをフィッツジェラルドは知らなかったというくだりから、憧れているだけでは本質的な人間関係を育めなかった作家の性質が侘びしい。フィッツジェラルドの娘の学費をマーフィー夫妻が支援しているところのあたり、充分に親しい関係であったことは伺えるが、おそらくマーフィー夫妻にとっては、フィツジェラルドは支援した芸術家、文化人のひとりに過ぎず、晩年のスコットとゼルダの素行には手を焼いていたのではないだろうか。
    成り上がりが見つめる生まれも育ちも恵まれた裕福な家系、という構図は『グレート・ギャツビー』にも『夜はやさし』にも一貫してながれるフィツジェラルド作品の虚しさ。その根源がこの夫婦の中にあったと感じられる。
    フェルナン・レジェと並ぶ絵を描きつつも筆を折るというジョセフ・マーフィの苦悩をフィツジェラルドは知ることはなかった。ジェラルドの絵の雰囲気はカッサンドルに似ている(沢木耕太郎の『深夜特急』装丁といえばわかりやすい)。作品はキュビズムの影響を受けた20~30年代の画家たちのありふれた作風といえば残酷かもしれないが、おそらく家族と生活の維持のためにジェラルドは父親の仕事を継ぐことを選び、芸術に向かう夢をあきらめた彼の人生に想いを馳せたときに初めてこの本のタイトルの意味の重みが増してくる、『優雅な生活が最高の復讐である』。
    いつか、この本を読んだわたしたちも昔を懐かしく思い出すのだろうか。「パーティをするのは皆と毎日会いたいから」と無邪気に笑う妻セーラの面影のように。

  • 恵まれた環境に生まれたように周囲には見えても、じぶんでつくりあげたものだけが気に入っているという人もいる。お金があるからこその生活に見えるが、それでも彼ら夫婦の暮らしぶりは素敵だな。

  • as a bible

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著者プロフィール

1925年、ニュー・ジャージー州生まれ。48年、プリンストン大学卒業。雑誌「ニューヨーカー」のスタッフ・ライターとして活躍し、主にアート関係の文章を手がける。“カルチャー・シーン通”の異名を持ち、本書の他にも『マルセル・デュシャン』、『花嫁と独身者たち』、『ザ・シーン——ポスト・モダン・アート』などの著書がある。

「2022年 『優雅な生活が最高の復讐である』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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