芝生の復讐 (新潮文庫)

制作 : Richard Brautigan  藤本 和子 
  • 新潮社 (2008年3月28日発売)
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  • レビュー :45
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102147030

作品紹介

雨に濡れそぼつ子ども時代の記憶と、カリフォルニアの陽光。その明暗のはざまに浮かびあがる、メランコリアの王国。密造酒をつくる堂々たち祖母、燃やされる梨の木、哀しい迷子の仔犬、ネグリジェを着た熊、失われた恋と墓のようなコーヒー、西瓜を食べる美しい娘たち…。囁きながら流れてゆく清冽な小川のような62の物語。『アメリカの鱒釣り』の作家が遺したもっとも美しい短篇集。

芝生の復讐 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 状況の風景と心象の風景とが渾然一体となって伝わってくる。面白いと言うより心地よいと言う方が読後感として適切だろう。

  • 大好きなブローティガン。数少ない現在も出版されているもの。『アメリカの鱒釣り』の続編にあたる。少しその点についても触れられるのでそちらを読んでからこちらを読むべきである。短いチャプターをつないでいくのは『西瓜糖の日々』に近いがこちらはひどく自伝的内容である。名訳者・藤本和子と、リチャード・ブローティガンが出会えて本当によかった。原典は簡易な英語で綴られているようなのでいつか原典にも当たってみたいと思う。

  • どうしようもない愛おしく、
    同時に心の底から嫌悪する「アメリカ」。

    (もちろん「」の中は任意です。
    あなたも思い当たる言葉を入れてください。
    僕だったらあれやこれやそれや。)

    なんであれ、
    そんな引き裂かれた場所に立つ人は、
    どんなふうに振舞えばよいのかと聞かれれば、
    それはブローティガンのように、と答えます。

    まるでライフルを持ったキチ○イのような。
    まるでなにも知らない子供のような。
    まるで死を直前にしてチューブにつながれ、
    ベッドに横たわる老婆のような。
    まるでそれを見守る息子のような。

    自伝的でノスタルジックなトーンのみで書かれた
    (なんてことだ!)「談話番組」と
    「きみのことを話していたのさ」に涙涙。
    でも、それでさえこの感情の渦のような
    短編集のほんの一部の側面でしかありません。

    たぶんそれはなにをもってしても代えがたいなにか。
    文字を順番に書いて/読んでいくことでしか得られないなにか。
    言葉だけがなしうるなにか。

    いまいましくもいまいましい四月初旬は、
    「芝生の復讐」からはじまる。
    僕はそんなふうにして「アメリカ」「文学」
    を読んでしまったのだった。

  • 「西瓜糖の日々」と「アメリカの鱒釣り」は生に満ち溢れた(少なくともすごく肯定的な)雰囲気だったのにこれはなんとも言えない影とアメリカを問い続ける問題意識みたいのが見え隠れしていて、今まで読んだ作品とは違った雰囲気を味わえた。

    私はこういうの好き。

    「太平洋のラジオ火事のこと」が一番よかった。

  •  や、やっぱりブンガクって難しいなあ……。なんて、ネガティブな感想から入ってしまった。ごめんなさい!
     もちろん、ぜんぜんつまらなかったとか、そういうのとは違うんだけど、浅学な身にはこの作品の面白さはわかりづらいです。いや、学よりも、むしろ感性の問題なのかな。

     ストーリーに起伏があって、結末に向って収束するような『物語』ならば、肌にあう合わないは別として、すくなくともそこに一定の面白さはあるんですよね。
     わかりやすい「おはなし」がなければ、あとはその小説の評価を決めるのは、どれだけ自分の心の琴線に触れるか、感情移入できるか、あるいは心をひっかくような何かを見出せるかだろうと、思うんですけど……

     断片的に切り取られた情景、不思議でヘンテコな人たち。現実のこととは思われないような出来事。遠くからなんとなく眺める分には、所々に狂的な美しさがある、ような気がするのだけれども、「……えっ、これでおしまい? それで、このお話のキモは何だったの?」という感じ。なんて貧しい感想だろう。
     小説に起承転結だとか、テーマだとか、カタルシスだとか、オチだとか、何かしらそういう脈絡を求めずにはいられない、良くも悪くも娯楽小説に飼いならされて育った人間の感想だなあという気がします。

     うーん。目の前にある文章の行間に、薄膜一枚隔てた向こうに、何か私にはうまく見出せないでいる、不思議な魅力があるような、そんな手ごたえはあるんですよね。
     でもその皮一枚を、どうとりはらっていいかがわからない。彼我の文化の違いがあるのかもしれないし、私個人の感受性の問題なのかも。

     なんかよく分からないままで終わるのも悔しいな。本屋さんで見かけて衝動買いした一冊だったのですが、池澤夏樹さんが世界文学の紹介で、同じ作家さんの『アメリカの鱒釣り』をレビューしてらっしゃったので、いずれそちらを探して読んでみようなかなと思います。それまで評価保留かなあ。

  • ブローティガンの天才をあますところなく味わえる62の物語。雨の日に部屋にこもって読みたい本。自分の心の一番孤独なところに強く響いた。

  • 明らかにある時代のアメリカを描いているのに、どこかタイムレスな文章だなと感じる。鮮烈なイメージの連続は、古びて今なお鮮やかな発色を保つポストカードセットのよう。絵を鑑賞するように読んでほしい。

  • 『アメリカの鱒釣り』のあとの数年間に書かれた短編というか掌編集。自伝的な要素というか、幼少期の思い出や個人的な思い出にまつわる話が多かった印象。その他、寓話っぽいものや不条理なもの日常の一コマ、ジャンルはわりと雑多でさまざま。嫌われものの川の「カーセイジ川の凹地」とか童話っぽくて好きだったけど、普通の日常がなぜかマジックリアリズム的幻想に溶け込んでしまうような表題作もとても好きでした。単純な幻想文学ではけしてなく、かといってリアリズムでもない、ブローティガンのファンタスティックさって、説明するのが難しいですね。

    ※収録作品
    芝生の復讐/一六九二年版コットン・マザー・ニュース映画/1/3 1/3 1/3/カリフォルニアは招く/カリフォルニア現代生活に関する短篇/大平洋のラジオ火事のこと/エルマイラ/コーヒー/『アメリカの鱒釣り』から失われた二章――「レンブラント・クリーク」と「カーセイジ川の凹地」/サン・フランシスコの天気/こみいった銀行問題/シンガポールの高い建物/無限の三五ミリ・フィルム/スカルラッティが仇となり/天の鳥たち/冬の絨緞/アーネスト・ヘミングウェイのタイピスト/サン・フランシスコYMCA讃歌/きれいなオフィス/庭はなぜ要るのか/年寄りバス/タコマの亡霊の子供ら/談話番組/きみのことを話していたのさ/万聖節の宵祭は船でゆく海原/やぶいちごモータリスト/ソローのゴム輪/44/40/完璧にカリフォルニア的な日のこと/東オレゴン郵便局/青白い大理石の映画/相棒/たがいを知ること/オレゴン小史/ずっと昔、人々はアメリカに住むと決めた/カリフォルニアの宗教・小史/いまいましい四月/一九三九年のある午後のこと/伍長/糸くず/ドイツおよび日本両国全史/競売/装甲車/カリフォルニア一九六四年の文学生活/みずから選びし旗じるし/カリフォルニア一九六四年において高名であること/ある娘の思い出/九月のカリフォルニア/習作・カリフォルニアの花/裏切られた王国/朝がきて、女たちは服を着る/デンヴァーのハロウィーン/アトランティスパーク/犬の塔からの眺め/グレイハウンド・バスの悲劇/気のふれた老婆たちが、今日のアメリカのバスに乗っている/正しい時刻/ドイツの休日/砂の城/許してあげよう/星条旗うつし絵/第一次世界対戦ロサンジェルス航空機

  • 難しい。

  • なんとこの短編集、『アメリカの鱒釣り』から失われた二章ー「レンブラント•クリーク」と「カーセイジ川の凹地」が収録されている。勿論、藤本和子訳。巻末には熱い訳者あとがきと、なぜか岸本佐知子の文章もある。

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