芝生の復讐 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 644
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102147030

作品紹介・あらすじ

雨に濡れそぼつ子ども時代の記憶と、カリフォルニアの陽光。その明暗のはざまに浮かびあがる、メランコリアの王国。密造酒をつくる堂々たち祖母、燃やされる梨の木、哀しい迷子の仔犬、ネグリジェを着た熊、失われた恋と墓のようなコーヒー、西瓜を食べる美しい娘たち…。囁きながら流れてゆく清冽な小川のような62の物語。『アメリカの鱒釣り』の作家が遺したもっとも美しい短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 「西瓜糖の日々」と「アメリカの鱒釣り」は生に満ち溢れた(少なくともすごく肯定的な)雰囲気だったのにこれはなんとも言えない影とアメリカを問い続ける問題意識みたいのが見え隠れしていて、今まで読んだ作品とは違った雰囲気を味わえた。

    私はこういうの好き。

    「太平洋のラジオ火事のこと」が一番よかった。

  • 「ことばで表わすことのできない感情と、ことばでよりはむしろ糸くずの世界をもって描かれるべきできごとに、今夜のわたしは取り憑かれている。
    わたしは子ども時代のかけらたちのことを考えていた。それらは形もなく意味もない遠い昔のかけら。ちょうど糸くずのようなことがらなのだ」「糸くず」

  • 状況の風景と心象の風景とが渾然一体となって伝わってくる。面白いと言うより心地よいと言う方が読後感として適切だろう。

  • 大好きなブローティガン。数少ない現在も出版されているもの。『アメリカの鱒釣り』の続編にあたる。少しその点についても触れられるのでそちらを読んでからこちらを読むべきである。短いチャプターをつないでいくのは『西瓜糖の日々』に近いがこちらはひどく自伝的内容である。名訳者・藤本和子と、リチャード・ブローティガンが出会えて本当によかった。原典は簡易な英語で綴られているようなのでいつか原典にも当たってみたいと思う。

  • どうしようもない愛おしく、
    同時に心の底から嫌悪する「アメリカ」。

    (もちろん「」の中は任意です。
    あなたも思い当たる言葉を入れてください。
    僕だったらあれやこれやそれや。)

    なんであれ、
    そんな引き裂かれた場所に立つ人は、
    どんなふうに振舞えばよいのかと聞かれれば、
    それはブローティガンのように、と答えます。

    まるでライフルを持ったキチ○イのような。
    まるでなにも知らない子供のような。
    まるで死を直前にしてチューブにつながれ、
    ベッドに横たわる老婆のような。
    まるでそれを見守る息子のような。

    自伝的でノスタルジックなトーンのみで書かれた
    (なんてことだ!)「談話番組」と
    「きみのことを話していたのさ」に涙涙。
    でも、それでさえこの感情の渦のような
    短編集のほんの一部の側面でしかありません。

    たぶんそれはなにをもってしても代えがたいなにか。
    文字を順番に書いて/読んでいくことでしか得られないなにか。
    言葉だけがなしうるなにか。

    いまいましくもいまいましい四月初旬は、
    「芝生の復讐」からはじまる。
    僕はそんなふうにして「アメリカ」「文学」
    を読んでしまったのだった。

  •  や、やっぱりブンガクって難しいなあ……。なんて、ネガティブな感想から入ってしまった。ごめんなさい!
     もちろん、ぜんぜんつまらなかったとか、そういうのとは違うんだけど、浅学な身にはこの作品の面白さはわかりづらいです。いや、学よりも、むしろ感性の問題なのかな。

     ストーリーに起伏があって、結末に向って収束するような『物語』ならば、肌にあう合わないは別として、すくなくともそこに一定の面白さはあるんですよね。
     わかりやすい「おはなし」がなければ、あとはその小説の評価を決めるのは、どれだけ自分の心の琴線に触れるか、感情移入できるか、あるいは心をひっかくような何かを見出せるかだろうと、思うんですけど……

     断片的に切り取られた情景、不思議でヘンテコな人たち。現実のこととは思われないような出来事。遠くからなんとなく眺める分には、所々に狂的な美しさがある、ような気がするのだけれども、「……えっ、これでおしまい? それで、このお話のキモは何だったの?」という感じ。なんて貧しい感想だろう。
     小説に起承転結だとか、テーマだとか、カタルシスだとか、オチだとか、何かしらそういう脈絡を求めずにはいられない、良くも悪くも娯楽小説に飼いならされて育った人間の感想だなあという気がします。

     うーん。目の前にある文章の行間に、薄膜一枚隔てた向こうに、何か私にはうまく見出せないでいる、不思議な魅力があるような、そんな手ごたえはあるんですよね。
     でもその皮一枚を、どうとりはらっていいかがわからない。彼我の文化の違いがあるのかもしれないし、私個人の感受性の問題なのかも。

     なんかよく分からないままで終わるのも悔しいな。本屋さんで見かけて衝動買いした一冊だったのですが、池澤夏樹さんが世界文学の紹介で、同じ作家さんの『アメリカの鱒釣り』をレビューしてらっしゃったので、いずれそちらを探して読んでみようなかなと思います。それまで評価保留かなあ。

  • ブローティガンの天才をあますところなく味わえる62の物語。雨の日に部屋にこもって読みたい本。自分の心の一番孤独なところに強く響いた。

  • やっぱりよくわからない短編集。アバンギャルドにもほどがある。

  • 自伝的な色合いが強い。短編集。『アメリカの鱒釣り』『西瓜糖の日々』などで有名な作家。幼少期や青年時代に過ごしてきたアメリカの様子を幻のように、少し奇妙な文体で語っている。

    メランコリックと訳者が評しているが、たしかにそのような雰囲気がそこかしこに漂っている。話の流れや文意が意味不明なものもある。現実をそのまま、ノスタルジィを伴って描写しようという意思を感じる。『糸くず』で書かれているようなことを作者は表そうと努めているのだろう。

    『エルマイラ』『オレゴン小史』『きみのことを話していたのさ』が好き。

  • 洗面所や便器や浴槽の代わりに
    「詩」を設置し、「詩」が
    「便器になった僕は最高だな」などと言っている
    ぶっ飛んだ篇もあるし
    (これは実際に見ている景色と、
    頭の中で作り上げた景色を混ぜ込んで
    話が出来上がっているような感じ)
    (あらゆる篇において、
    この平行世界みたいな感覚が
    読み取れる気がした)

    コーヒーを言い訳にして
    女のもとを訪れるという現実的な話もある

    共通して感じたのは短編というより
    詩を読んでいるような感覚だった
    舞台はアメリカ、ブローティガンの生活を
    のぞいているような気にもなるが、
    そこはあまり意識せずとも素敵な話が読めるのかな

    ちょっと虚しく、ちょっと切ない、僅かな死の香り、
    ノスタルジアとファンタジー

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