体の贈り物 (新潮文庫)

  • 新潮社
4.03
  • (111)
  • (56)
  • (84)
  • (9)
  • (0)
本棚登録 : 881
感想 : 92
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102149317

作品紹介・あらすじ

食べること、歩くこと、泣けること…重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身のまわりを世話している。死は逃れようもなく、目前に迫る。失われるものと、それと引き換えのようにして残される、かけがえのない十一の贈り物。熱い共感と静謐な感動を呼ぶ連作小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1994年 原題”The gifts of the body”

    ブク友さんのレビュー
    「重くもの悲しいのに、ラストには生命の喜び、希望を感じとれる清々しい一冊」に惹かれて読んでみました。ありがとうございます♪

    この本が書かれた頃はまだエイズの治療法はなかったんだと思う。患者自身も周りの人も来たるべき死を静かに覚悟している。ホームケアをする「私」の目線から描かれるその様子は、患者の気持ちや人生を尊重し、日常を穏やかに保ち続ける姿。
    gifts-贈り物という捉え方に心打たれました。

  • 重くもの悲しいのに、ラストには生命の喜び、希望を感じとれる清々しい一冊だった。
    エイズ患者のホームケア・ワーカーを語り手とし、彼女と患者らの交流を描いた連作短編集。ストーリーだけを追えば、お涙頂戴の感動物になりかねない。しかし、違った。
    家族でのケアとは性質が違う(家族間となれば毛色の違う話になっただろう)。
    他人である職としての、ワーカーの目を通すことで出来る寄り添い方。同情心でなく突き放すようでもなく、冷静に病状と最期に向き合う距離感。人間味溢れるワーカーでありながら、前面に出さない患者との向き合い方、患者側の心の動きの表現に魅力を感じた。ケアを受ける人の体は症状により、状態も様々。ただありのままにそこに存在する。だんだん体が不自由になる患者の切なる願いと日常生活、ワーカーの仕事ぶり。体と心が健全でない患者をサポートする本来の理念に触れるようだった。
    淡々とした飾り気のない訳文が、よけいに心に迫ってきた。「~の贈り物」の意味。自分の事を自分で出来るありがたみ。次の世代に繋ぎ渡してゆくことを、命をかけ見せてくれている姿。心に潜んでいる気持ちを反芻するようだった。

    • koalajさん
      kazekaoru21さん
      こんばんは、夜分遅くに失礼します。
      貴方のレビューを読んで、この本を手にとりました。静かで深みのある内容、生と死...
      kazekaoru21さん
      こんばんは、夜分遅くに失礼します。
      貴方のレビューを読んで、この本を手にとりました。静かで深みのある内容、生と死に向かい合う人々の姿、心に沁みました。ご紹介ありがとうございました。
      2023/07/03
    • kazekaoru21さん
      koalajさん
      こんにちは。
      私の拙いレビューを読んでいただき、この作品を手にとられたとのこと。そのように言っていただき、ほんとうに嬉...
      koalajさん
      こんにちは。
      私の拙いレビューを読んでいただき、この作品を手にとられたとのこと。そのように言っていただき、ほんとうに嬉しいです。
      こんなに重いものを、と思って読み進めたのに、ラストでは晴々(?)と命の重みを教えられたようでした。失われるものと引き換えのもの…ですよね。自分は持っているものを無駄にしていないかって考えさせられました。コメントありがとうございました。
      2023/07/04
  • AIDS患者の支援をしているヘルパーの日常のお話
    1994年刊行の連作短篇小説

    以下、公式のあらすじ
    ---------------------
    食べること、歩くこと、泣けること……重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身のまわりを世話している。死は逃れようもなく、目前に迫る。失われるものと、それと引き換えのようにして残される、かけがえのない十一の贈り物。熱い共感と静謐な感動を呼ぶ連作小説。
    ---------------------

    まだ効果的なHIV治療薬がなかった頃
    患者の身の回りの世話をするボランディア団体に所属する「私」
    死期が迫りくる患者との交流
    そして、「私」が受け取る様々なもの
    それは物理的な「物」ではなく、受け取る側の感受性によるもの

    解説で訳者も言っている通り
    「エイズ患者を世話するホームケア・ワーカーを語り手として、彼女と患者たちとの交流をめぐる、生と死の、喜びと悲しみの、希望と絶望の物語」
    と物語を要約できるけど
    この概要だけで「そういうのパス」「それってちょっと」と避けてしまうのはもったいない物語だった

    多分、これは人の尊厳の物語なのでしょうね
    特定の病気だからとか、死期が迫っているのが明らかという事情とは関係なく、人と人がどう交流して何を受け取るのかというのが重要な事に思える

    まぁそれはそれとして、終末ケアの距離感として適度な感じなのはよかった
    患者にしても多種多様で、一般的にイメージする患者然としていない
    何だろう、精神的な強さを持つ人が登場人物に多い
    でも、一番精神的にタフなのは主人公の「私」なのではなかろうか
    好むとと飲まざるに限らず、いずれ最期の瞬間を迎える患者と日々向き合うわけで
    自分には出来そうもないと感じる
    そんな環境だからこそ響く言葉があるな
    ヌグムシュー なんて最たるものでしょうね

  • 死の床についた人と最期の生をサポートする女性を描いた連作短編集。
    死に行く者から生者に手渡される贈り物の数々。
    生きること、死ぬことを静かに考える。
    マーガレットから主人公に発せられた言葉が深く刺さった。

  • すごく良かった。
    題材はエイズと死とホームヘルスケアエイドという一見お涙頂戴になりそうなものなのに、全く悲しみを脚色してないところが好感が持てた。
    この本の中には悲しみは悲しみとして死は死として寸分違わぬ重さで入っている。
    主人公は大きな感情の起伏を見せないけどでも彼女が悲しんでいるのも疲れているのもすごくよく伝わってくる。
    そしてこの本の登場人物たちは何故こんなに愛らしいのだろうか。

    最後の章には涙腺が緩んだ。
    死を覚悟している人は美しい。

  • 談話室で薦めて頂いて読了。
    翻訳ものは久しぶりだったので、最初は違和感みたいのを感じたけれど、第1章を読み終わる時には涙が。
    人ってどんなに苦しい時でも、誰かに喜んでもらえると幸せを感じられるのかもしれない。

    生きてるって凄いことだけれど、どうやって生きるかが大切だと思った。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      レベッカ・ブラウン=「家庭の医学」なので、どうしても二の足を踏んでしまう。でも
      「誰かに喜んでもらえると幸せを」感じられるような話でしたら読...
      レベッカ・ブラウン=「家庭の医学」なので、どうしても二の足を踏んでしまう。でも
      「誰かに喜んでもらえると幸せを」感じられるような話でしたら読んでみたい。。。
      2012/04/05
    • norigami112さん
      nyancomaruさん
      私は図書館で借りて読んでみました。
      死を前にした人々と関わる話なのですが「さぁ、泣いてください」みたいなもので...
      nyancomaruさん
      私は図書館で借りて読んでみました。
      死を前にした人々と関わる話なのですが「さぁ、泣いてください」みたいなものではなく、淡々としていて逆に私には染みました。
      (病気で)自分自身で出来ないことが増えても、大切な人を喜ばせたい、ということは一種の希望だと思う部分がありました。

      好みに合うといいのですが。
      2012/04/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「死を前にした人々と関わる話」
      そうなんだ、、、「大切な人を喜ばせたい」と言う言葉に押されて再チャレンジしてみようかな。
      「死を前にした人々と関わる話」
      そうなんだ、、、「大切な人を喜ばせたい」と言う言葉に押されて再チャレンジしてみようかな。
      2012/04/07
  • エイズ患者とのお話。
    いかにも訳本という感じで読みづらかった。
    興味深い内容もところどころあり、手を止める時もあった。

  • 前情報を何も得ず、どこかページを開いて「読もう」と思う人が読んだらいいと思う本。
    訳者あとがきで「この本がとにかく読んでもらわないと魅力がわかってもらえない本だ」と書いている通りだなと思う。
    図書館で何気なく手にし、最初の2ページ立ち読みして、借りて、読んで、バスの中でハンカチ片手に読んで、レベッカブラウンのほかの本を図書館で予約しました。

  • ホームケアワーカーさんが主人公のお話。
    『~の贈り物』というタイトルの連作短編が11編。
    メインタイトルからして柔軟な印象と、江國香織さんの書評(泣く大人『読書日記』より)の「彫刻のような手ざわりの幸福な小説集」と評されていた文章、そのふたつから私の持つホームケアワークの印象から魅力的な乖離を感じて手にした。
    重い病(エイズ)に侵された人に対する尊厳を尊重することを念頭にケアをしている主人公から見えた人々の人となりやコミュニケーションや生活は、シンプル且つ人間の根源的なタイトルに包まれて、悲しいけれど温かさを感じるお話で全編通して読後感が優しい。

  • 【本の内容】
    食べること、歩くこと、泣けること…重い病に侵され、日常生活のささやかながら、大切なことさえ困難になってゆくリック、エド、コニー、カーロスら。

    私はホームケア・ワーカーとして、彼らの身のまわりを世話している。
    死は逃れようもなく、目前に迫る。

    失われるものと、それと引き換えのようにして残される、かけがえのない十一の贈り物。

    熱い共感と静謐な感動を呼ぶ連作小説。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    最初はただの淡々とした日記なのかと思っていた。

    だけど、ホームケアワーカーの私は全力で「普通の生活」を守っていた。

    HIVに感染された人たちは、「私」にとって大切な人間になりかけると、はかない贈り物を残して、旅立っていく。

    そんなことの繰り返しに彼女も力尽きかける。

    人が亡くなるのを看取ると「アウトテイク」と呼ばれるカウンセリングを受けるが、どれだけ周りが配慮をしてくれていても、心に大きく開いた穴はふさがらない。

    でも人は生きているだけで、存在するだけで大きな力を発揮する。

    それは例えば、リックが用意したシナモンロール、コニ―の優しい気遣い、マーガレットのおびえのない強さ。

    人間の尊厳を静かに描ききって、読後なにか力がわいてくるような、そんな連作集だ。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

全92件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1956年ワシントン州生まれ、シアトル在住。作家。翻訳されている著書に『体の贈り物』『私たちがやったこと』『若かった日々』『家庭の医学』『犬たち』がある。『体の贈り物』でラムダ文学賞、ボストン書評家賞、太平洋岸北西地区書店連合賞受賞。

「2017年 『かつらの合っていない女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レベッカ・ブラウンの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×