- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102157237
作品紹介・あらすじ
現代の名匠による衝撃の結末は世界中の読者の感動を呼び、小説愛好家たちを唸らせた。究極のラブストーリーとして、現代文学の到達点として-。始まりは1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために劇の上演を準備していた。じれったいほど優美に、精緻に描かれる時間の果てに、13歳の少女が目撃した光景とは。傑作の名に恥じぬ、著者代表作の開幕。
感想・レビュー・書評
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▼ここ何年も、ずーっと「マキューアンを読んでみたい、読もう」と思っていて果たせず、ようやく実行できました。
▼近所のブックオフで買って読んだんですが、正直この上巻の前半は辛かった・・・
・1930年代かな?
・イギリスの郊外の、金持ちの別荘かな?
・主人一家と、その親戚たちが集まって何かパーティみたいなことをしようとしている。
・そんな中の、ひとりひとりを(主に10代の子どもたち)人物紹介的に描いていく
という感じですが、文章がなかなかこねくった長文が多く、物語内で事件が起こらない。正直、挫折しかかったんですが・・・。
・その中に、金持ち一家の使用人の息子、という二十歳くらいの?青年がいて、金持ち一家の慈悲でいい学校に通わせてもらっている。名をロビー・ターナー。
・このロビーが、金持ち一家のお嬢さんと、良い仲になる。
・だが、なんと、痴漢、強姦、の・・・罪に問われる。のだけど、これははじめから冤罪。であることは読者はわかっている。
という展開を見せてきて、終盤は面白くなりました。
下巻に期待。
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読み終えたとき、私は憤りと感動と衝撃でひどく混乱した気持ちになってしまった。作者に騙されたことに傷ついたが、そもそもこれはお話、フィクションだとわかって読んでいたのだから、「ひどい!騙された」とショックを受けるのはそもそも変なのだ。そんなことでイチイチ怒ってたら物語なんて読めない。にも関わらず、私は本当に動揺した。いや事実と混同したのではなく、ちゃんとフィクションだと頭で理解していたのに、私はこの物語にのめりこんでいて、ロビーもセシーリアもブライオニーも何とか過去を乗り越えて、幸せになって欲しいと願っていたのだ。
読後、3日経つが、物語とは何だろうと考えずにはいられない。この本にはいくつかの仕掛けがあるが、メタフィクションにありがちな実験性がみじんも感じられない。上巻のきらめくような豊かな表現と下巻の苦痛に近い凄まじい表現と、普通に文学として素晴らしい。特に上巻はある1日を人物の視点を変えながらゆったりと描く。全然時間が進まなくてびっくりしたが、その悠々さに気持ちよく身をゆだねていると、上巻後半の不穏な結末に一気に持っていかれる。下巻は一転、第二次大戦のフランスからのダンケルク撤退を描くが、特に退却してきた兵士たちを迎える病院の場面にさしかかった時、手が止まり何日か読む気がしなかった。辛いからと言って飛ばすわけにもいかず、ここを乗り越えないとと意を決して再開したが、泣きながらうめきながら必死に読み進んだ。言葉というのは恐ろしい。映像や写真はケガや死体をある程度「物体」として見ることができるが(もちろんテレビや映画レベルなので本当にすさまじいものもあると思うが)、文章は否応なく私の脳に入ってきて勝手に想像させるのだ。他の本で読むのが辛い場面にあたったとき、ダメージをできるだけ減らそうと私はよく心の動きを止めて読もうとする、そしてそれはまあまあ成功するが、贖罪はダメだった。本当にうめきながら読んだ。
まとめきれないが、物語とは語りとは騙りとは何か。作者とは何か。小説の深淵を考えるとともに、普通に登場人物たちの幸を願ってやまなくなる本。 -
多感な少女の衝動的な思いが引き起こす悲劇。映画を見てから読んでいるけれど…まあなんと嫌な小説であること!筆力と名声が共に絶頂期に至った作家の、ナルシスティックにも思えてしまうほどの絢爛たる文体。これでもかと精緻に美しく描き出される登場人物たちの思念。
上巻ではある夏の一日とその夜に起こった事件が語られる。タリス家の豪壮ではあるが些か古び始めた邸宅に集う家族と客人たちの心の動きが、うだるような熱気と眩しすぎる真夏の光の中で揺らめくような動線を描く。細かな表現まで息を呑むほどに美しい上に、痛々しいまでに真実味がある。ブライオニーの妄想癖とも言えそうな思い込みの激しさなど身につまされる…はぁ。
嫌味なほど上手いのと少女が痛すぎるのでどうしても諸手を挙げて絶讃するのは躊躇われるのだが…それにしても上手すぎる! -
豊崎由美センセご推薦の本
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登場人物たちの仔細な感情表現が素晴らしく、青年期にあるそれぞれの思惑と行動に心が奪われる。
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何という長い序章だったのだろう。ここまで来て、やっと物語は動き始める。社会階層と恋愛、思春期、家族。これらのテーマがないまぜになって、それぞれの思惑は交わることなく、物語は太い骨格を表し始めた。
とにかく人物、心情描写に舌を巻く。 -
”アムステルダム”が素晴らしかったんで、それならばということで手に取ったマキューアン作品。兄が帰ってくる期待とか、従兄弟との諍いとか、隣人と姉の葛藤とか、とかく比喩表現の連発で緩やかに進行する前半、正直ちょっとかったるく思えたりもしました。いざ兄が帰って来てから、引きこもる母が登場したり、従兄弟が派手な喧嘩をしたり、徐々に不穏な気配が高まっていく。その果てに起こる暴行事件。いかにも冤罪。”贖罪”というタイトルの意味が浮かび上がってくるであろう後半戦、その展開に期待しつつ、心して読ませていただきます。
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ぐわーっと読んでしまった。下巻がたのしみ。ブライオニーよ、少しは反省しろ。