- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102157237
感想・レビュー・書評
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多感な少女の衝動的な思いが引き起こす悲劇。映画を見てから読んでいるけれど…まあなんと嫌な小説であること!筆力と名声が共に絶頂期に至った作家の、ナルシスティックにも思えてしまうほどの絢爛たる文体。これでもかと精緻に美しく描き出される登場人物たちの思念。
上巻ではある夏の一日とその夜に起こった事件が語られる。タリス家の豪壮ではあるが些か古び始めた邸宅に集う家族と客人たちの心の動きが、うだるような熱気と眩しすぎる真夏の光の中で揺らめくような動線を描く。細かな表現まで息を呑むほどに美しい上に、痛々しいまでに真実味がある。ブライオニーの妄想癖とも言えそうな思い込みの激しさなど身につまされる…はぁ。
嫌味なほど上手いのと少女が痛すぎるのでどうしても諸手を挙げて絶讃するのは躊躇われるのだが…それにしても上手すぎる!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
登場人物たちの仔細な感情表現が素晴らしく、青年期にあるそれぞれの思惑と行動に心が奪われる。
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上級者向けの一冊。描写も心理も最初は恐ろしくまどろっこしく、遅々として進まない感じに、読みにくさを感じた。気持ちのぶつかり合うところは、息飲む面白さだった。
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現代の名匠による衝撃の結末は世界中の読者の感動を呼び、小説愛好家たちを唸らせた。究極のラブストーリーとして、現代文学の到達点として―。始まりは1935年、イギリス地方旧家。タリス家の末娘ブライオニーは、最愛の兄のために劇の上演を準備していた。じれったいほど優美に、精緻に描かれる時間の果てに、13歳の少女が目撃した光景とは
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2011/09/21
子供であるが故の真っ直ぐな正義感、高揚、単純さ、
それが引き起こしてしまった取り返しのつかない過ち。
一番守ろうとしていたその人を傷つけてしまうという皮肉。
小説を読むとき特有の高揚感というものを、
本当に久しぶりに味わうことができた。
エミリーの冷静な観察眼と憤懣と諦めとが、特にツボに入りました。 -
他人の人生に取り返しのつかない一撃を放ってしまった瞬間から、自分自身もそれまでの自分には戻れなくなる。作家として生きねばならない業の怖さ。