贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)

制作 : Ian McEwan  小山 太一 
  • 新潮社
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本棚登録 : 441
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102157244

感想・レビュー・書評

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  • ただただ、本当に衝撃の結末。上巻は少女たちの痛々しさに苦しみながらも、繊細な語りのおかげでなんとか読み終えたが、下巻は流れが変わったかのように引力が強くて、一気に読み終えた。ただ、この結末はとても不安な気持ちになる。小説内の嘘と真実、現実の嘘と真実は必ずしも一致せず、その混乱に加えて、最後の最後でこれまでの話を握りつぶして放り投げるようなことを言われては!緻密で、鎧のように堅く、とても変な小説でした。早く新刊買いに行こう...。

  • 皆の運命を変えたタリス邸の事件から時は流れ、舞台は1940年戦時下のダンケルク、そしてロンドンへと移る。第一部の技巧を凝らした文体は影を潜め、ロビーとブライオニーが、全ヨーロッパが直面した戦禍が重厚な筆致で語られる。そして最後に明かされる、この小説の仕掛け。
    前半と後半のトーンの落差やヴァネッサ・レッドグレーヴの登場場面の違和感など、映画の不満点が原作を読んで全て解消された。本書の白眉は構成そのもの、小説による贖罪という主題そのものだろう。第一部の夏の一日と第二部・第三部の戦争物語の間隙が埋まることはない。しかしそれが終章で突如一つの枠組みにすっぽり収められる。違和感までもが意図されたもので、読み手は作家の罠にまんまとはまり嘆息するのみ。

    ただこの小説の真の素晴らしさは、第二部のダンケルクへの行軍と第三部のブライオニーの病院勤務の、静かではあるが生々しく迫ってくる描写にあると思っている。これがあるからこそ第一部の嫌らしいまでの美しさが意味を成す。その逆も然り。あまりに重たくて、トリッキーな構造の中では突出してしまいそうにも感じる。しかしそれすらも作家の仕掛けのうちなのだろう。

    作家の腕前にうなりつつ、やっぱり手放しで好きとは言えない。ただ第二部・第三部は、そんなへそまがりでもひれ伏さずにいられないほどの圧倒的な語りだった。

  • 久しぶりに「やられたー!」と言いたくなる小説。
    純愛小説という殻を被った小説論であり作家論。その構造がだんだんと明らかになっていく過程に痺れる。まさか上巻の冒頭部分を「読みにくいなー」と思いながら読んでいた(いや、読まされていた)、あれすら仕掛けだったとは…。

  • 上巻で締めくくられた切実さが、次元を変えて、その度を増す。

    そして、まさかのセカイ系だったとは。
    小説の本質とは、物語を求めてしまう読者の心象とは。

    戦争に関する叙述、リアリティは凄まじかった。

    ・人間関係のせばまりが第一に意味するのは自分のアイデンティティが抜け落ちていくこと。

  • 上巻の内容を受け継いで、「その後」のストーリーが語られる下巻です。

    で、この内容が結構すごいことになっていて、上巻で起こった「事件」の真相とかそういうことよりも、むしろちょっとした行き違いですれ違ってしまった人間関係が、戦争の災禍の中で雪だるま式にどんどん大きくなってすれ違ってゆくような、そんな話。

    そこでマキューアンがいう「贖罪」ということはある意味で「物語」の力そのものではあるのだけれど、その構造とか、読んでいる自分の気持とか、なんだかもう訳がわからなくなって整理するのにちょっと時間がかかった、みたいな作品でした。

    本筋ではないけれど、ブライオニーがフランスの若い兵士と会話するところが特に心に残りました。

    面白かったのに加えて、いろんなことを考えさせられた物語です。

  • 後半戦。前半で冤罪を着せられた彼の従軍光景を描く第2章と、その彼を冤罪に追いやった張本人の贖罪が描かれる第3章。はっきりとした結末まで描かれないまま、それぞれの章が幕を閉じるから、実際のところどうだったのかという真相は明かされないまま。未成年だから許されるものなのか、また成長後、その罪を贖うことは出来るのか。ここに提示される問題は重い。

  • 13歳の少女が、姉の恋人に無実の罪を着せてしまい、成長した少女がその罪をどう償うのか―という物語である。
    精緻な描写と衝撃のどんでん返しが高く評価されているという。
    その点に関しては、確かにその通りだと思う。
    けれど、上巻の裏表紙には「世界中の読者の感動を呼」んだ「究極のラブストーリー」とあるが、個人的にはそうは思えなかった。

    まず、前半の冗長さに挫折してしまい、大分読み飛ばしてしまった;
    もちろん描写が精緻で綿密に練られたゆえの長さであり、この部分によって主人公のブライオニーをはじめ登場人物が生きてくるわけだし、退屈とも思えるほどのゆったりした時間の中で恋人たちの愛が描かれ、それゆえに「事件」が起きてからの悲劇性が一層際立つ訳だが。
    それにしても長すぎる…!

    翻訳もの独特の読みにくさも強く感じた。
    海外作品の独特の言い回しになじめないのか、翻訳が合わないのか、どちらなのかはわからない。

    それと、何よりも作中の「事件」が、その顛末も含めて、どうしても受け入れがたかった。
    「魂の殺人」とも呼ばれる性犯罪を、ラブストーリーの中の小道具のひとつとしてカタルシスとともに綺麗に流してしまうことは、私にはできない。
    奇しくも同じタイトルの湊かなえ氏の『贖罪』に嫌悪感を覚えたのも、この点だ。ただ、湊氏の場合は「イヤミスの女王」と言われるだけあって、あえてそういう題材を作品の中心に据えたのだろうと考えれば(そもそも綺麗な話にする気など毛頭ないのだし)まだマシだ。
    けれど、本作の場合は別だ。これを綺麗に描いてしまうあたり、やはり男性の作者だなと思わずにはいられない。
    もちろん、すべての題材にケチをつけていたらキリがない。結局のところ受け入れられるかどうかというのは人それぞれ、ということだろう。



    それでも☆をつけたのにはいくつか理由がある。
    一つは、長すぎて挫折した前半ではあったが、それはこれでもかというほど「ブライオニー」を描いていたからであって、少女独特の未熟さ、それゆえの残酷さが際立っていたこと。

    それから、ブライオニーが見習い看護婦として、戦地で負傷した兵士たちと向き合う場面の描写が、とても印象に残ったこと。

    そして、最後の「わたし」の述懐。

    結局のところ、ラブストーリーとしての部分より、その他の部分が私には印象に残った。



    レビュー全文
    http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-503.html

  • 作品全体のレビューです。

    映画「つぐない」でこの作品を知りました。
    映画ではロビーとセシーリアが主にフォーカスされていたのに対し、原作ではまさにタイトルの通りブライオニーの贖罪が主題となっている。
    映画が台詞を抑えて映像や表情などの力も借り匠に物語を描写したのに対し、原作では丁寧に各人物の心理描写がされることで各人物の造形に深みが生まれたように思う。
    とくにブライオニーの内面は興味深く、謝罪をしている最中に些細な優越感に浸るなど、一見相反するような感情が混在している。
    ただし、ブライオニーの内面が混沌としているというよりも、良くも悪くも知的で人間的だということに他ならないような気がする

    ロンドンで看護学生生活を送るブライオニーが中心となる3章では、セシーリアとロビーへの謝罪のための訪問で章が終わり、そこに1999年ブライオニー・タリスと添えられいて、ここまでがブライオニーが描いた作品であることを読者は知る。

    最終章では、ブライオニーは認知症の診断を下され作家として筆を折る覚悟を決める。
    ブライオニーの誕生日では大勢の親族に囲まれ、亡き夫との結婚生活も含め幸せな生活を送ってきたことが伺える。

    贖罪とのタイトルだが、反語的で

  • くー、楽しみに読んでいたのにふとみたブログに普通に結末が書かれていて、うっかりそれを読んでしまい激しくテンションが下がった。普通にさらっと書いとくなよなーくそー。見る自分が悪いのだけど。これから読む人は、何の前情報もいれずに読んで頂きたい。

  • 2016.06.19

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