フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 9178
レビュー : 982
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159712

作品紹介・あらすじ

17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが-。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 数学とか定理とか聞くと、
    「い、いや、ほら、もっと大事なことがあるでしょ!ほら政治とか!経済とか!」とか、
    「ごめんなさい、私文系だし数式アレルギーで…もう腕にこんなブツブツが…」とか、
    「え、数学?あ、用事あったの思い出しました、失礼!」
    とか何とか言って、逃げたくなる人いっぱいいるのではないでしょうか。フェルマーの最終定理なんて特に題名だけで逃げたくなりません?ええ、私もです!
    しかし、そんな私でも、

    数学って、数式って、とても美しい!

    とヘレンケラーの「うぉーたー!」ばりに叫びたくなるような感動を覚えたこちらの本。
    いや、フェルマーの最終定理について何一つわかったわけではないのだけど、大丈夫!めっちゃ面白いから!!ということだけは伝えたい。

    天才数学者フェルマーが遺したメモ書きの定理。
    「x^n+y^n=z^n (nは3、4、5…)
     を満たす三つの数は存在しない。」

    これが350年にもわたり、数学者の挑戦を阻み続けることとなる『フェルマーの最終定理』と呼ばれるもの。
    このフェルマーという人は、他人に謎かけをして負かすのが好きなのだが、面倒くさがりで名声欲はなく、たくさん発見した定理も公にせず、その証明もメモ書き程度できちんと残していなかった。
    数々の功績は自己満足のまま消えてしまうところだったのを、フェルマーの死後、息子がメモ書きや手紙を集めて出版したことにより世に出ることになる。
    フェルマーの残した定理には基本的で重要なものからおふざけのようなものまであり、それらを数学者達が一つずつ解明していくが、上記の一つだけ最後まで誰も解くことができないまま残ってしまう。
    しかもフェルマーは、この定理と共に「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。」なんて思わせぶりで挑発的な言葉も残している。(これも本来は別に誰に向けたものでもない独り言だったのだから、天才というやつは!)

    数学は神に選ばれし一握りの天才が切り拓いてきた分野。
    凡人にはもちろんフェルマーの最終定理の中身なんか理解できるわけではないのに、解明までのドラマ性には感嘆しきり。
    大河ドラマではおさまらない、350年分の重み。こちらの本は、数学者向けではなく、凡人向けにわかりやすく順を追って書かれており、難しくても最後まで読み進められる。フェルマーの最終定理がいかに証明困難なものか、数学者達が辿ってきた苦難の道、挑戦の軌跡に圧倒される。

    そしてついには、イギリスの数学者ワイルズによりフェルマーの最終定理は証明されるのだけど、この証明は、1950年代に生まれた谷山=志村予想(そう、日本人が提唱したのです!)の証明を軸としていて、フェルマーの時代からはとり得ないアプローチをとったものだった。
    なので、フェルマーが当時、どんな証明をもっていたのかは依然謎のままなのだ。この謎については、フェルマーの見つけた証明は間違っていたのだという説と、17世紀のテクニックを用いたフェルマーのオリジナルの証明が存在するという説に分かれるのだとか。後者だとすると、まだフェルマーの最終定理(オリジナル版)の証明は続くことになり、これはこれで違うロマンがある。
    『フェルマーの最終定理2』にむけて頑張ってください数学者の方々!(丸投げ)

    数式はたくさん出てくるけれど、別に全部理解できなくても大丈夫だし、小川洋子さんの「博士の愛した数式」や、沖方丁さんの「天地明察」なんかが面白いと思える人なら、こちらもいけるんじゃないかと!是非構えずに読んでみてください。
    もちろん、数学に多少の素養がある方は、ずっともっと楽しめるだろうなと思います(羨ましい!)

    • マリモさん
      hotaruさん
      こんばんは!コメントありがとうございます。私もいつもhotaruさんの丁寧で柔らかいレビューを楽しく読ませていただいていま...
      hotaruさん
      こんばんは!コメントありがとうございます。私もいつもhotaruさんの丁寧で柔らかいレビューを楽しく読ませていただいています。
      レビューで興味持っていただけて嬉しいです。私もブクログレビューでこの本を知ったのですが、とても面白かったです。読んだ後は、自分は何もやってないのにやり遂げた感に浸りました(笑)
      小説に出てくる数式や定理は、素人でもわかるように丁寧に書いてあるのですが、それでもわからないところは飛ばし読みです。でもそれで話の筋は辿れるし大丈夫でした。数学や数学者にまつわる歴史なども読み応えがあります。ぜひぜひ!
      2020/01/07
    • kazzu008さん
      マリモさん。こんにちは。

      読了お疲れさまでした。
      こちらにもコメントさせていただきます。

      マリモさんのレビューはいつも素晴らし...
      マリモさん。こんにちは。

      読了お疲れさまでした。
      こちらにもコメントさせていただきます。

      マリモさんのレビューはいつも素晴らしく面白いですよね。
      この本の面白さを伝えるのって結構難しいのですが、その点、マリモさんのレビューはわかりやすくて、しかも面白いので素晴らしいです。

      また、マリモさんの本棚から面白そうな本を読ませていただきますね。
      2020/01/11
    • マリモさん
      kazzu008さん
      こんばんは!コメントありがとうございます。おかげさまで無事読了できました。kazzu008さんのレビューを読まなければ...
      kazzu008さん
      こんばんは!コメントありがとうございます。おかげさまで無事読了できました。kazzu008さんのレビューを読まなければ出会えなかった本です。本当にありがとうございました。

      過分に褒めていただいて、めちゃくちゃ恐縮です…!好きな本ほどレビューするの難しくて、面白いからとりあえず読んで!となってしまってます(笑)
      kazzu008さんは、本のあらすじをいつもわかりやすく魅力的に紹介されていて、読むたびにすごいなぁと感心しております。今年も本棚楽しみにしています。
      2020/01/12
  • この本は、凄い・・・。
    本書は、世界中でベストセラーとなり「傑作」の名をほしいままにしているが、実はこう言う本だったのか・・・。目から鱗が落ちる思いだ。

    この本をものすごく簡単に説明すると、17世紀のフランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(1601年~1665年)が
      「俺、こんな問題と答えを思いついちゃったんだけど~♪お前ら解ける?もちろん、やり方は教えな~い。解けるもんなら解いてみ。」
    と言って(もちろん、実際はこんな言い方はしていないw)、答えも教えずそのまま死んでしまったのだが、その後の多くの数学者達が血のにじむような努力を重ね、その解法のヒントを少しずつ得ながら、約350年の後、プリンストン大学の数学者アンドリュー・ワイルズが1995年にそれを解いたという物語を非常にドラマチックに描いたドキュメンタリータッチの作品と言えばよいだろうか。

    この『フェルマーの最終定理』と呼ばれる定理は、
      『3 以上の自然数 n について、X^n + Y^n = Z^n となる自然数の組 (X, Y, Z) は存在しない』
    というものだ。
    350年以上も解かれていないという定理だからもっと複雑なものを想像していたが、算数レベル(もちろん小・中学生レベルね)の知識しかない僕でも何となく意味することは分かる。
    例えば、このnが2だとしたら、つまり2乗であれば、
      3^2 + 4^2 =5^2   9+16=25
    というように解が存在する。ちなみにこれはピュタゴラスの定理と呼ばれている。
    ただ、これが3乗となると、先ほどの3、4、5で試すと
      3^3 + 4^3 =5^3   27+64≠125
    となり、解は無い。
    つまり『フェルマーの最終定理』を解くということは、これがどんな数字でも、どんな組み合わせでも3乗以上であれば絶対に解は無いということを証明しろということなのだ。

    数学の素養の全くない僕には、なにをどうしたらよいのか全く分からないが、過去の数学者達はこの問題に一生をかけて取り組んでいった。

    この本は数学の歴史から始まり、フェルマーがこの定理を考えついた背景、そして、その『フェルマー予想』(まだ証明がされていないものは『予想』と呼ばれる)が証明できるか否かに取り組んだ数学者ひとり一人について詳細に描写していく。そして約350年かけて数々の歴史的な数学上の発見や定理に基づき、最後にアンドリュー・ワイルズ教授がこれを証明するまでが詳細に描かれていくのだ。
     
    この本に読むに当たっては、とりあえず、数学の素養は必要ないし、アンドリュー・ワイルズ教授がどうやってこの定理を証明したのか、その論文の内容がこの本で紹介されている訳でもない。もし、その論文の内容が紹介されていたとしても、普通の読者はまったく理解できないだろうが(笑)。

    この本の特筆すべきところは、数々の数学の理論や定理をごくごく簡単に説明し、それぞれの数学者がどのような人生を送って、どのような苦労をしたかを詳細に説明することによって、この『フェルマー予想』を証明することがどれほど困難であるかということを読者に鮮やかに説明してくれるところにあるのだ。
    例えるなら「エベレストに登ること」がどれほど大変なのかということを「エベレスト登頂に失敗した多くの登山家」にインタビューしながら「エベレストに登ったことの無い筆者」が「エベレストに登ったことの無い読者」に上手に説明しているような感じである。

    もちろん、現在はエベレストにはたくさんの登頂者がいるので「なんだ大したことないじゃん」と思う人もいるかもしれないが、約350年以上誰も解くことができず、実際に存在するかも分からない解法を探し求めるという難易度を考えれば、エベレストを約10倍高い山として想定するか、『天空の城ラピュタ』や『アトランティス大陸』の実在を証明するくらい難しいと思ってもらった方が分かりやすいかもしれない。

    この本には数多くの数学者の方々が登場し、多くの日本人数学者もこの『フェルマー予想』の解法のヒントを提供しているのにも驚いたのだが、僕が本書の中で一番気になった数学者はフランスの女性数学者ソフィー・ジェルマン(1776年~1831年)だ。
    ソフィー・ジェルマンの人生をみると、こんなアニメの主人公のような女性が実在したのかと驚かされる。

    ソフィーは13歳でフランス革命を迎えた女性であり、当時の女性にとっては数学を勉強するなどということは、ほぼあり得ない時代だった。20歳そこそこの年齢だったソフィーは、数学の面白さに魅せられ、どうしても数学を勉強したいと思い、実在の男性になりすまして大学の数学の授業を聴講、当時の数論の世界的権威であったドイツ人数学者のガウスと「ムシュー・ルブラン」という男名を使って数論について文通をするほどの実力を持っていたのだ。
    そんなガウスはある事件が起こるまで「ルブラン」が女性であるとは全く知らなかった。
    ガウスが「ムシュー・ルブラン」の正体を知ったのは、1806年、ナポレオン軍がドイツ領土に侵攻した際に起こったできごとがきっかけだった。ソフィーはドイツにいたガウスの身を案じ、たまたま知り合いであったナポレオン軍の司令官に「ゲッチンゲン大学ガウス教授」の身の安全を頼んだのである。
    司令官はソフィーの願いどおり、ガウスの身を保護し「あなたが生きているのは、ソフィー・ジェルマンのおかげですよ」と教えた。ガウスはそれが誰だか分からなかったが、ソフィー・ジェルマンこそが彼が長年数論を指導していた文通相手「ムシュー・ルブラン」であることを後に知るのである。ガウスは「ルブラン」が若い女性であったことに驚いたが、その後も変わらず彼女を指導し続けた。
    女性蔑視が当たり前だった時代、まるで『ベルサイユのばら』のオスカルのように「男装の数学者」として活躍したソフィー・ジェルマンがなした「フェルマー予想」に関する研究は、その後何百年もの間、数学者が探究していくうえでの基礎を作ったのだ。

    ちなみにソフィー・ジェルマンをモデルにした『数字はわたしのことば: ぜったいあきらめなかった数学者ソフィー・ジェルマン』という絵本がほるぷ出版社から出版されているので今度読んでみたいと思う。

    このように「フェルマー予想」を証明しようとした、多くの数学者の人生が本書で生き生きと描かれている。このソフィー・ジェルマンのほかにも10代で『ガロア理論』を確立し、21歳で非業の死を遂げたフランスの若き数学者で革命家のエヴァリスト・ガロア(1811年~1832年)や「フェルマー予想」の解法に大きな役割を果たした「谷山-志村予想」を発表した日本の数学者の谷山豊と志村五郎の驚くべき生涯など興味深い数学者が数多く取り上げられている。
    本書を読んでそれぞれの数学者のことをさらに詳しく知りたいと思う読者はたぶん僕だけではないはずだ。

    本書はドキュメンタリーとしても、大きな謎を解く極上のミステリーエンターテイメントとしても楽しめるのは間違いない。そして著者のサイモン・シン氏の筆力の凄まじさがそれを可能ならしめているのである。

    この世界には「天才」と呼ばれる学者達が数多くいることが分かったのだが、この「フェルマーの最終定理」を生み出した当の本人ピエール・ド・フェルマーが本当はどうやって証明したのかは、いまだに永遠の謎のままである。
    この「フェルマーの最終定理」を証明したアンドリュー・ワイルズ教授は、8年がかりで、しかも、350年間の間に培われた多くの数学者たちが発見した多くのヒントを使って、この定理を証明した。
    一方、350年前の数学の知識でこの「定理」を創り出したフェルマーは、本当に350年間に一人の本当の『超天才』だったかもしれない。
    しかし、もしかしたらフェルマーは
      「『こんな問題と答えを思いついちゃったんだけど~♪』ってあの時は言ったけど、実ははったりだったんだよね~、本当に解いちゃった人がいるんだ凄いね~☆」
    と天国で驚いているという可能性もなきにしもあらずなのである(笑)。
    全く数学の素人の僕でもそう思うのだから、この定理を解いたアンドリュー・ワイルズ教授をはじめ「フェルマー予想」を解こうとした過去全ての数学者達があの世にいったらぜひフェルマーに会って真相を知りたいと思っているに違いない。

    こんな数学界の偉大なロマンを本書によって知ることができたのは、自分の人生によって大きな一歩となったのは間違いない。そして、この経験を他の多くの読書人と分かち合うことができたら、読書人としての僕の人生にこれ以上の幸せはないだろう。

    • kazzu008さん
      やまさん、こんにちは。
      コメント、いいね、ありがとうございます!
      やまさん、こんにちは。
      コメント、いいね、ありがとうございます!
      2019/11/11
    • マリモさん
      こんにちは!この本、kazzu008さんのレビューがすごく面白くて、お正月に全部読むぞ☆と思っていたのですが、明日から仕事を控えてまだ中盤で...
      こんにちは!この本、kazzu008さんのレビューがすごく面白くて、お正月に全部読むぞ☆と思っていたのですが、明日から仕事を控えてまだ中盤です。。なかなか時間かかっていますが、めっちゃ面白いですねー。全く理系の頭脳を持ち合わせていない私でも面白く、もっと理系だったらもっと面白かっただろうなーと悔しいくらいです(笑)
      読んでみて、kazzu008さんの、エベレストの例えがとてもよくわかります!エベレストに挑んできた数多の天才のすごさはもちろんのこと、エベレストに昇らずにエベレストの困難性を登山門外漢の読者にここまで伝えてくる作者の力量と、この専門的な世界を余すところなく伝えてくる訳者の力量もすごいなーと感嘆しています。あと少しがんばります(笑)
      2020/01/05
    • kazzu008さん
      マリモさん。こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      返事が遅くなり申し訳ありません。
      この本は本当に面白いですよね。
      確か...
      マリモさん。こんにちは。

      コメントありがとうございます。
      返事が遅くなり申し訳ありません。
      この本は本当に面白いですよね。
      確かにこれだけのことを伝える筆者と訳者の力量のすばらしさに尽きると思います。

      僕も文系人間なので、理系の人が読んだらさらに面白いのでしょうね。
      2020/01/11
  • 「ネタバレ もクソもねえよ。最終定理が証明されるんだよ」でお馴染み、フェルマーの最終定理です。

    今を遡ること350年プラス20年前、天才数学者のピエール・ド・フェルマーが残した言葉が、その後3世紀以上も数学者を悩ませた数学界最大の難問となった。それは

    〉「3 以上の自然数 n について、x^n + y^n = z^n となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない」

    〉私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない

    と言うメモ書きだった。
    これを名だたる天才たちが挑み続け、敗北し続け、ついに1995年、アンドリュー・ワイルズが証明に成功する。
    その過程についてのノンフィクション。

    これを読むまで、そんなに誰も解けないような問題なんて、フェルマーという人も解けてなくて適当に書いただけなんじゃないの?と思っていましたが…。
    どうもこのフェルマーという人は変人中の変人で、

    〉フェルマーにとっては、証明を公表して夜に認められたところでなんの意味もなく、一人静かに新しい定理を創り出すという純粋な喜びだけで満足していたのである。とはいえ、猜疑心が強くて付き合いの悪いこの天才には、人を困らせて喜ぶようなところがあった。そんな性格と秘密主義とがあいまって、彼がいざほかの数学者とやりとりをするとなると、ただ相手をからかうことだけがその目的となるのだった。(p86)

    というのだから、この走り書きも彼は実際に証明していたと見られているのだ。走り書きは他にもたくさんあって、たくさんの新証明が公表されないままになったと。

    フェルマーの最終定理は、長い間重要な定理だとは思われていなかった。
    これが名声を博していたのは、単に非常に難しい、というそれだけだった。
    ワイルズも「純粋数学者というのは、手ごわい問題が、そう、未解決の問題が大好きなのです」と言っている。

    この本が面白いのは、ただの超難問のパズルと思われていたフェルマーの最終定理にチャレンジする過程でたくさんの天才数学者が登場し、少しずつ数学界に知見を加えて数学の世界を広げていくところだ。
    そして最後には谷山=志村予想という現代数学に革命を起こす予想と結びついて、数学の中心に躍り出るというダイナミックな史実。


    以下は備忘というか、この本の、ワイルズの証明までの歴史。

    長い歴史の端緒として、オイラーが背理法の一種である無限降下法を使ってn=3の場合を証明して最初の突破口を開いた。
    19世紀に入ってソフィー・ジェルマンが特定の素数について道を示してn=5とn=7が証明された。
    コーシーとラメの二人が完全証明に手をかけたように見えたが、失敗。
    クンマーが、当時の数学のテクニックでは完全に証明できないことを示した。
    1908年になって賞金10万マルクという懸賞金が懸けられる。
    1931年に発表されたゲーデルの不完全性定理が「数学は論理的に完全ではありえない」ことを数学者たちに認めさせ、フェルマーの最終定理のような問題は解けないかもしれないとほのめかした。
    それからノイマンとチューリングのおかげで大戦後から1980年代までにn=4,000,000までの場合が証明された。
    1960年代に重要な数学的仮説が発表された。谷村=志村予想と呼ばれるそれは、楕円方程式という数学のジャンルと、モジュラー形式というジャンルの、まったく別の世界を結び付けられるかもしれない仮説だった。
    1984年秋、谷村=志村予想が証明されることが、そのままフェルマーの最終定理の証明つながるという報告がされる。
    1993年6月、ワイルズがケンブリッジの専門家会議で証明を発表する。
    1993年12月証明に欠陥があることが分かり、1995年5月修正された二篇の論文が掲載され、ついに証明が完成することになる。


    さて、翻訳作業が行われた1999年12月時点では谷山=志村予想は一部についてしか証明されておらず全体の証明は査読中であるとの記述がある。
    ネット検索した限りでは証明は完成し、「モジュラリティ定理」となっているようである。作中で言及のあった数学の大統一を目指すラングランズ・プログラムにも前進があったということでいいのかな?

    借りた直後に図書館が休館になったので、じっくり読ませていただきました。

  • 数学界に長年証明されずに残っていたフェルマーの最終定理を証明した数学者のお話。

    この本が他のエッセイや自伝と違うところは、著者のサイモン・シンがテレビ業界の人だという点だ。

    数百年証明されていなかっただけに、フェルマーの最終定理の証明を巡る物語には、一般人には難解すぎる概念が数多く出てくる。いわば一般受けしにくいトピックのはずなのだ。

    だが、サイモン・シンはこの物語を数学的要素を最大限に噛み砕いた上でドラマ性にスポットを当てている。

    1人の数学者、アンドリュー・ワイルズが幼少期に魅せられたフェルマーの最終定理に、最新のテクニックや革新的なアイディアを用いて立ち向かう姿は、研究者としての姿勢よりも、ひとりの男性の人生を賭けた戦いと言う方がふさわしい。

    上司から与えられたテーマが非常に運命的だった。ワイルズは実力もさることながら、運も味方につけている。

    人生で大いなる目標を達成するためには、徹底した準備に加え、運や人との巡り合わせが大切だということを学んだ。

    これはフェルマーの最終定理を巡る多くの方々のドラマであり、感動的に描かれている。

    題材自体の魅力に加え、サイモン・シンの構成力・表現力がこの本を名著たらしめている。

  • 数学の知識がなくても物語として面白い。フェルマーの最終定理を証明することななった過程を描く。そこに日本人の数学者が大きく関わっていたのは驚いた。

  • 【感想】
    この本を読むにあたり3度目のチャレンジだったが、300ページ目くらいで挫折・・・
    数学の美しさを知るにあたり、非常に面白い内容なんだけど、文系出身の自分にはハードルが高すぎる作品でした。

    ただ凡人の僕にも「美しい!」と思える点は多々見受けられたようで、完全数や完全数の和のエピソードや、川の長さが直線距離×πである点など、決して役に立たないが素敵な雑学をいくつも手に入れる事が出来たのは良かったかも。
    「数学」の美しさと難解さを思う存分知る事が出来た1冊でした。

    この本を完読し、且つ内容をしっかりと理解できる人は本当にすごいと思う。


    【あらすじ】
    言葉にしようのない、美しい瞬間でした。
    数学界最大の超難問はどうやって解かれたのか?
    3世紀にわたって苦闘した天才数学者たちの挫折と栄光、証明に至るまでを描く感動の人間ドラマ。

    17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。
    「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」
    以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが――。
    天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション!


    【内容まとめ】
    1.「フェルマーの最終定理」
    3以上の自然数nに対して、「X'n+Y'n= Z'n」を満たすような自然数X,Y,Zはない。

    2.「ピュタゴラスの定理」
    「直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい。」

    3.「完全数」・・・約数の和がその数自身と同じになる
    →6(1+2+3=6)
    →28(1+2+4+7+14=28)
    →3番目は496、4番目は8128、5番目は33,550,336、6番目は8,589,869,056

    4.完全数のエレガントな点
    常に連続した自然数の和として表すことができる
    6=1+2+3
    28=1+2+3+4+5+6+7
    496=1+2+3+4+5+6+7.....+30+31
    8,128=1+2+3+4+5+6+7....+126+127

    5.曲がりくねった川の長さについて。
    水源から河口までの直線距離×3≒川の実際の長さ
    しかも、この比はほぼ3.14
    π、すなわち円周と直径の比の値に近い。


    【引用】
    3以上の自然数nに対して
    X'n+Y'n= Z'n
    を満たすような自然数X,Y, Zはない。


    p10
    アンドリュー・ワイルズ
    「数学界における聖杯を発見した。」
    「つまり、フェルマーの最終定理を証明した」と。
    1993年夏にワイルズは証明を発表した。
    しかし、発表した証明の中に欠陥が見つかった…


    p33
    数学の深いアイデアを考えつくのは、大体において若い時分である。
    「数学上の大きな一歩が、50を過ぎた人間によって踏み出された例を私は知らない。」
    中年になった数学者は次第に輝きを失い、残りの人生は研究よりも教育や管理運営をして過ごすことになりがち。

    p37
    ・ピュタゴラスの定理
    「直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい。」

    ピュタゴラス
    「数には数の論理がある」
    紀元前6世紀に生きたピュタゴラスのおかげで、数は単にものを数えたり、計算したりするために利用されるだけでなく、数それ自体としての価値を認められるようになった。


    p44
    ・過剰数、不足数、完全数
    過剰数
    →約数の和がその数よりも多いもの
    →12(1+2+3+4+6=16)

    不足数
    →約数の和がその数よりも少ないもの
    →10(1+2+5=8)

    完全数
    →約数の和がその数自身と同じになる
    →6(1+2+3=6)
    →28(1+2+4+7+14=28)
    →3番目は496、4番目は8128、5番目は33,550,336、6番目は8,589,869,056

    また他にもエレガントな点がある
    なんと、常に連続した自然数の和として表すことができる
    6=1+2+3
    28=1+2+3+4+5+6+7
    496=1+2+3+4+5+6+7.....+30+31
    8,128=1+2+3+4+5+6+7....+126+127


    p50
    ・曲がりくねった川の長さについて
    水源から河口までの直線距離×3
    ≒川の実際の長さ
    しかも、この比はほぼ3.14
    π、すなわち円周と直径の比の値に近い。


    p61
    ・隅を切り取られたチェスボードの問題
    →8×8-2=62マスとなったチェスボードを、31枚のドミノ牌で覆い尽くせることはできるか?

    数学的アプローチ
    1.チェスボードから切り取られた隅は、両方とも白である。したがってボード上には、32個の黒い正方形と30個の白い正方形がある。
    2.それぞれのドミノ牌は、隣り合った2個の正方形を覆う。隣り合う2つの正方形は必ず色が異なっており、つまり、1個の白と1個の黒である。
    3.それゆえ、どんな並べ方をしようとも、30枚のドミノ牌は30個の白・黒の正方形を覆う。
    4.結果として、つねに1枚のドミノ牌と2個の黒い正方形が残る。


    p72
    ・フェルマーの最終定理
    「xn+yn=zn」
    この方程式はnが2より大きい場合は整数解をもたない。


    p106
    西暦642年、イスラム教徒のアレクサンドリア攻略によって、コーランに反する書物は破棄され、ギリシャの数学は煙となって消えた。
    続く千年のあいだ西洋の数学は沈滞し、数学の命の灯火をともし続けたのはインドやアラビアの一握りの知識人だけだった。

    彼らは失われた定理の多くを自ら作り出しただけではなく、数学に「ゼロ」をはじめとする新しい要素を付け加えたのである。


    p117
    ・xn×yn=zn n≦3
    「ある三乗数を二つの三乗数の和で表すこと、あるいはある四乗数を二つの四乗数で表すこと、および一般に、二乗よりも大きいべきの数を同じべきの二つの数の和で表すことは不可能である」

    定理の概略を述べた書き込みに続けて、このいたずら好きの天才は、その後何世代にもわたって数学者たちを悩ますことになるメモを書き添えた。

    「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」


    p243
    ・ゲーム理論とトルエル
    トルエルとは、3人で行う決闘のようなもの。
    問題
    クロ氏、グレー氏、シロ氏は揉め事を解決するためにピストルで決闘することになった。
    クロ氏は平均して3回に1回しか当たらず、グレー氏は3回に2回、シロ氏は百発百中の名手とする。
    公平を期するため、クロ氏、グレー氏、シロ氏の順番で一人が生き残るまで続ける場合、クロ氏ははじめにどこを狙うべきだろうか?

    第1の選択肢としてグレー氏を狙った場合、もし成功すれば次にピストルを引くのはシロ氏のため、クロ氏は死ぬだろう。
    第2の選択肢としてシロ氏を狙った場合、それに成功しても次に引き金を引くのはクロ氏であり、確率論から言えば勝利の見込みはうすい。
    第3の最も良い選択肢はクロ氏が空に向かってピストルを打つことだ。次にピストルを発射するのはグレー氏だが、彼は間違いなくシロ氏を狙う。そしてもしシロ氏が生き残れば彼はグレー氏を狙う。
    結局グレー氏またはシロ氏のどちらかが死に、クロ氏はその後どちらか生き残った方を狙うことになる。

  • 数学が苦手でも楽しめます。フェルマーの最終定理に魅せられた数学者アンドリュー・ワイルズの挑戦、紀元前からの数学の歴史、若くして亡くなった天才数学者。などなどドラマがいっぱいでした。
    自分一人では答えの出ない難問を、過去や現在の成果を駆使して証明を積み上げていく様子は感動します。また逆に、難問に挑戦していく過程で数学的に非常に重要な発見がなされて行くのもわくわくします。

  • 「博士の愛した数式」や河田直樹著の本を読んでから数学の本も意外と面白いことに気づき、手に取った一冊。解説にもあるように専門的な数学の知識はほとんどいらないのに、大事なところはつかみやすく物語の進行も捉えやすいような印象だった。自分も一応理系なので、ピタゴラスやエウクレイデス(ユークリッド)を始め、オイラー、ダランベール、ラグランジュ、ガウス、ベルヌーイ、コーシー、ガロアなどなど(それぞれ年代は把握しきれていませんが、、)登場するたび各偉人の人としての部分も少し知れてその点も面白かった。実話だけどまるでフィクションとして描いたように物語に起伏があってまさに「事実は小説より奇なり」と感じた。もっと数学に触れてみたいと率直に感じられたし、もう自分は大人になりつつあるけれどワイルズのように何か一つを追いかけることは素敵だなと改めて感じた。

  • 積読状態だったものを読破。

    これはもう本当に素晴らしい一冊だった。

    数学、数論という非常に難解な世界を、
    その誕生から遡り、一般読者にも分かりやすいよう丁寧に説明しながら、
    本書のゴールであるフェルマーの最終定理の証明まで、一切飽きさせることがない。
    むしろクライマックスに近づくにつれ、益々読者を引き付けていく。
    最初の証明から破綻、そして再証明まで、ワイルズの心情が真に伝わってくる。

    本書、そしてフェルマーの最終定理証明までの物語は、
    どんな人にも薦められる、素晴らしい人類の財産だと思う。
    そして、物語の中核に多くの日本人が関わっていることが、
    同じ日本人として非常に嬉しく誇らしい。

  • 数学や数学者の生き方の面白さを存分に味わえるノンフィクション。面白いとは聞いていたが、こんなに面白い本とは思わなかった。

    フェルマーの最終定理とは、3 以上の自然数n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組が存在しないとする定理。
    リーマン予想とは違い、命題内容そのものは単純。17世紀にフェルマーという数学者が予想。しかも、フェルマーは「私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」という言葉を残している。しかし、3世紀を経ても、この問題は解決されず、1993年アンドリュー・ワイルズによって、やっと完全証明がなされる。本書は、そこに至るまでの幾多の数学者の数々のドラマを描く。

    この命題の証明は、とてつもなくやっかいだ。命題が偽であるという証明は、この式が成立する解(反例)を示せば良い。しかし、この命題が「真だとすると、少なくとも反例を挙げるという明快な証明方法はなくなってしまう。つまり、フェルマーの最終定理が真だったとしても、それを証明する方法が存在するとはかぎらないのである」。
    1980年代、イリノイ大学は n=4百万まで該当する自然数が存在しないことをコンピューターで計算したが、それだけでは証明したことにはならない。また、該当する自然数が有限数であることを証明した数学者もいたが、これも証明には至らない。

    フェルマーの最終定理の証明には、日本人数学者の谷山=志村予想が重大な役割を果している。ワイルズは、この予想を使い背理法と帰納法で最終定理を完成している。ただし、残念なことに谷山=志村予想は難解。「すべての楕円方程式はモジュラーでなければならない」と書かれても、全く分からない。しかし、本書は敢えて、詳細な説明を避けている。要は、この証明がわからなくとも、本書の面白さは全く減ずることはない。
    本書の主人公は、最終証明に成功したワイルズだが、3世紀にわたって登場する数学者たちの生き方、友情、運命は、フィクション以上のすごさがある。
    また、フェルマー定理以外でも、数学の楽しいエピソードが紹介されている。青木薫さんの翻訳も素晴らしいと思う。

    読み終えるのが、もったいないと思えるような稀有な本。絶対お勧めの★5つ。

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