宇宙創成(上) (新潮文庫)

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レビュー : 142
  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159743

作品紹介・あらすじ

宇宙はいつ、どのように始まったのか?人類永遠の謎とも言えるその問いには現在、ある解答が与えられている。ビッグバン・モデル。もはや「旧聞」の感さえあるこの概念には、実は古代から20世紀末の大発見へと到る意外なエピソードと人間ドラマが満ちていた-。有名無名の天才たちの挑戦と挫折、人類の夢と苦闘を描き出す傑作科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻の最後で鳥肌が立った。本書はまさに人類の夢と苦闘を描き出した大傑作である。中盤では、アルベルト・アインシュタイン氏が輝きを放ち、終盤はエドウィン・ハッブル氏が自身を開花させ、ビッグバンが仮説ではない証拠を見つけ出す。要所要所に計算式が出てくるが、親切に要訳してくれており、計算式のすべてを理解しなくても十分楽しめる。寝る前に宇宙の彼方を想像しては、ワクワクし過ぎて寝付けなかった。

    以下、本書よりお気に入りの箇所を抜粋。
    「『オッカムの剃刀』は、2つの競合する理論があるならば、よりシンプルなもののほうが正しい可能性が高いというものである」

    「聖書は天国への行き方を教えるものであって、天の仕組みを教えるものではありません」ガリレオ

    「理論の良し悪しを判定するとき、私はこう自問します。もしも私が神だったなら、世界をこんなふうに作るだろうかと」アインシュタイン

  • 既に海外ノンフィクション部門のゴールデンコンビとなっているサイモン・シンと青木薫のタッグは宇宙論という分野にも確かな爪痕を残しました。
    うまい安い早いが吉牛なら、うまい、わかりやすい、ためになるがこのコンビの特徴です。
    サイモン・シンの展開する科学的な知見をスムーズに理解するには、読んでいてストレスを感じさせない日本語訳があってこそです。
    その内容は、科学者や天文学者、さらには物理学者や数学者などを総動員した知の格闘による新たな発見のアウフヘーベン(ある解釈を否定して、さらに高みを目指す思考方法)の蓄積の歴史です。
    そして天文学とは我々の存在理由をも決定するという科学的な哲学だということがよくわかります。
    我々もよく知る偉人の名前と業績が手際よく紹介され、その後の新たな事実によって否定され、より真実に近づいていくプロセスは簡にして要を得る見事な筆さばきです。
    現在では、本命とされるビッグバンモデルも、つい最近まで定常宇宙モデルと激しい主導権争いが繰り返されていたことやその論争の歴史の中で新たな発見があるたびに両者の客観的評価をまとめた表を都度掲載することで、難解な理論の変遷をわかりやすくしています。

    「ビッグバンから1秒の内に超高温だった宇宙は膨張して劇的に冷え、温度は数兆度から数十億度まで下がった。その頃の宇宙は、主として陽子と中性子と電子からなり、すべては光の海に浸されていた。それから数分の内に、陽子は他の粒子と反応して、ヘリウムなどの軽い原子核を形成した。この最初の数分間で、宇宙に存在する水素とヘリウムの比率はほぼ決定され、その値は今日観測されるものとよく一致している。宇宙はその後も膨張して冷え続けた。このころの宇宙には、簡単な原子核とエネルギッシュに飛び回る電子と、膨大な光が存在しそれらが互いにぶつかり合って跳ね飛ばされていた。そして、およそ30万年が経過したとき、温度が十分に下がり電子の速度が落ちて原子核につかまり原子が形成された。この時以降光はほぼ何にも邪魔されずに宇宙をまっすぐ進めるようになった。こうして生じた自由な光こそ宇宙マイクロ波背景放射で、これは光によるビッグバンのこだまなのだ」(P298下巻)

    さて、ここでビッグバンモデルと旧約聖書の出だしとの類似性に気づきます。
    創世記曰く、初めに、神は天地を創造された。地は混とんであって、闇が深淵の面にあり、神の魂が水の面を動いていた。神は言われた、光あれ、こうして光があった。・・
    聖書では神は7日間ですべてを創造したわけですが、ビッグバンモデルでは最初の1秒と数分で宇宙の原型ができたという大きな時間的な差異はありますが、秒や分という概念がない時代を考慮すればむしろ光が主役だという点に注目すべきでしょう。
    もちろん、本書でも教会と科学との対立と受容の歴史にも触れています。

    宇宙はどのように始まったのか?という真相に近づくにつれ、では我々が住む地球が生命体にとってかくも理想な形で成り立っているのはがなぜだろうという次の疑問が湧いてくるのは当然です。
    そして、マーティン・ルースは6つの数値(重力、核力、宇宙密度、反重力、重力と静止エネルギー比、次元数)が宇宙の形を決定しており、6つの中の1つでも今と違った数値だったなら、宇宙の進化自体に深刻な影響がでていたという理由で人間中心原理に行きついたのも興味深い。(P316下巻)

    最後に、訳者の青木薫は2006年に単行本のあとがきで、「本書は宇宙のことをよく知らない読者のために書かれた」と記し、内容は専門的だがわかりやすい点を強調していましたが、2008年の文庫本のあとがきでは「宇宙論についての最新の知見を紹介することよりも、科学的方法の喜びを味わってほしいために書かれた本」という言い直しをしていますが、まさに詰め込みの学校教育では味わえないアカデミックな知的興奮を味わえる1冊となっています。

    やはり、宇宙には深遠な魅力、いや魔力があるようです。

  • 壮大なる宇宙に魅了された科学者達の格闘を描いた作品。古代ギリシャから現代にいたる。前半はヒックバン理論にたどりつくまでの歴史。後半も楽しみだな。

  • サイモン・シン「宇宙創成〈上〉」を読了。今月22冊目。

    著者の処女作「フェルマーの最終定理」が最高に素晴らしかったので、買ってきた3作目。2作目は「暗号解読」という、これがまた面白そうなテーマなんだけど、まだ出会えていないので未購入。

    もともとは「ビッグバン宇宙論」という題名だったくらいなので、基本的にビッグバン宇宙論への歴史が綴られている。上巻ではハッブルが宇宙が膨張しているという事実を観測から見出すところまで収録。

    上巻で出てくる著名な人物としては、アリストテレス、ガリレオ、コペルニクス、ニュートン、ケプラー、アインシュタイン、ハッブルなど。

    翻訳物であるにもかかわらず、翻訳が大変に素晴らしい仕事をしている。翻訳にありがちな読みにくさなど全く感じられず、最初から日本語で執筆されたんじゃないかと疑うほどに良い仕事をしてて、ちょっと感動的ですらある。

    個人的に意外なエピソードだったのが、天の川銀河の外にも銀河があるんだよって事実が確定したのが1923年という、わりと最近だということ。それまでの宇宙観では全部、天の川銀河の中に観測される天体は含まれる・・・と考えられていたとか。まだ100年もたってないんだねぇ。というか、一般相対性理論の発表の時期にも、まだ天の川銀河が唯一の銀河だったという事なのか。

    またニュートンの重力理論とアインシュタインの重力理論とのせめぎ合いは、既に正解とされているもの、価値観を、新しいものが置き換えていく事がどれだけ困難な仕事なのかという事を分からせてくれる。この辺のエピソードは現代社会においても組織論的な置き換えで読んでも役に立つかもしれない。

    理系のテーマではあるけれども、各章の終わりには「まとめ」としてノートを取ったように分かりやすくまとめられているので、容易に理解できるし、人間のドラマとして圧倒的な時間的スケールが描かれているので、文系な方にもおすすめな一冊。まだ下巻を読んでないけど。

  • 古代ギリシャ時代の宇宙観から最新の宇宙理論までを描き切った壮大なノンフィクション。宇宙論に関する本は哲学書以上に哲学を感じさせてくれる。セーガンのコスモスの感動が甦る。

  • 天文学の歴史の変遷(宗教的な世界観、地動説、一般相対性理論、観測方法の進化etc..)が、その時代の背景と合わせて書かれています。
    宇宙だけでなく、アインシュタインやハッブルの考え方や信念も魅力的に書かれている面白く、美しい本でした。

  • あんまり読みやすくないかな
    天文学の歴史としてはかなり内容濃い本ではある

  • 読了。

    宇宙創成 (上) / サイモン・シン

    天才たちのドラマ、フェルマーの最終定理、暗号解読につづく第三弾。
    積み本しておいて何年たってたでしょうか。宇宙ものはわけわからないから怖いんですよね。ひも理論とか超ひも理論とか言われてお手上げになること間違いなし、昔手をつけた宇宙の謎という本を読んで上記の理論出て投げ出しましたので。

    というわけで宇宙の地球を含めた天体がどうやって現在の天文学にたどり着いたかを紀元前から始まります。

    第1章は古代の天体にたいする対応と答えですね。
    太陽地球月の大きさ天動説地動説とか
    第2章は光の速度と重力の影響と宇宙は永遠か有限か
    アインシュタイン登場です。
    第3章は望遠鏡の技術向上で星たちは外へ外へ移動していることを発見。ハッブルさんです。

    章ごとにまとめ書きもされてて勉強になりますね。

    英題はBigbangなので
    いかんしてビッグバンモデルにたどり着いたかという感じでしょうか
    星・銀河が外に外に広がって行くならば過去は一箇所にあつまってたのではないかという感じっすね。

    ここまで見て、フェルマーの最終定理をもう一度読みたくなってきましたね。
    たいへん面白かったです。
    続いて下巻に行きます。(こっから難しそう)

  • 2009(底本2006)年刊。

     太陽系構造論、重力論、宇宙論等天文学の史的展開を、関係者の業績(人物像を含む)を交え簡明な表現にて描写する。
     「いやぁ、面白い本は、まだまだどこにでも転がっている」との思いを強くする。
     上巻はハッブルの宇宙膨張の観測まで(古代ギリシアからガリレオ、ケプラー、ニュートン、アインシュタイン、フリードマン等)。

     どれも驚異的業績だが、ニュートンの重力概念の転換とアインシュタインの時空相対化の発想転換は別格の凄さだ。
     また測定機器の進歩に情熱を傾け、懸命に観測し続けた者達(ガリレオら)にも感動。

  • 理論と観測の双方で対立したり補完したりしながら進んできた宇宙論の歴史が非常にわかりやすい。
    20世紀に入り、一般相対性理論が発表されている時代でもアンドロメダが銀河系の外にあるとわかっておらず、そんなギャップがあったことに驚きつつも面白いと思った。逆にこの時代の宇宙論の目まぐるしい進化を感じてみたかった。
    下巻も楽しみ。

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