ジェニィ (新潮文庫)

  • 新潮社
3.77
  • (126)
  • (119)
  • (206)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 1459
感想 : 139
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (503ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102168011

作品紹介・あらすじ

突然真っ白な猫になってしまった少年は、大好きなばあやに、冷たい雨のそぼ降るロンドンの町へ放り出された。無情な人間たちに追われ、意地悪なボス猫にいじめられ-でも、やさしい雌猫ジェニィとめぐり会って、二匹の猫は恋と冒険の旅に出発した。猫好きな著者ギャリコが、一匹の雌猫に永遠の女性の姿を託して、猫好きな読者たちに贈る、すてきな大人の童話。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 8歳のピーター・ブラウン少年はある日交通事故に遭い、突然真っ白な猫になってしまい、可愛がられていたばあやに、ロンドンの町中に放り出されてしまいます。
    ピーターは猫が大好きでしたが、猫になりたいと思うことと、猫そっくりの格好になることは話が全く違うのです。

    ピーターは船だまりの中でナンバーワンの喧嘩に強い猫デンプシィにやられていたところを、ジェニイという雌猫に助けてもらいます。ジェニイにピーターは自分が実は人間であることを話しますが、ジェニイは「まず猫になる方法を勉強しなければいけない」と言い「絶対に他の者に自分の秘密をしゃべってはいけない」ということと、身づくろいの仕方、ねずみを食べることを教えてくれます。

    ジェニイはスコットランドの血をひく猫で、以前は人間の女の子に飼われていましたが引っ越しの時に置き去りにされた猫でした。
    そして、二匹の猫は、のどの渇きによって善良な老人をだましてミルクをもらいます。
    ピーターは老人の猫になりたいと思うのですが、ジェニイは船に乗ってスコットランドへ行きたいと言い出しました。ピーターは中身は8歳の少年なので、船に書いてある行先の字が読めたのです。
    そして伯爵夫人(カンテラス)・オブ・グリーノック号に乗り込み二匹の冒険の旅が始まります。

    そして、二匹はお互いに愛し合うようになります。

    ポール・ギャリコの猫の物語は『トマシーナ』に続き二冊目でしたが、ジェニイはトマシーナの叔母にあたる猫だそうです。
    ギャリコは、本当に猫というものを知り尽くしていると思いました。
    ピーターがジェニイから身づくろい、ミルクの飲み方、ネズミの獲り方を教えてもらう場面は非常に詳細でギャリコは猫の神様かと思いました。


    以下ネタバレしていますのでお気をつけください。


    そして物語は佳境に入り、ピーターとジェニイの愛が試されます。8歳の少年だったピーターが猫と愛し合うようになるなんて摩訶不思議ですが、ピーターはジェニイの為に勇敢に戦うのです。
    そして、傷ついたピーターが目覚めるとそこには…。
    最後はこの物語の運命(宿命)というものに涙しました。
    ジェニイはなんとも強く美しい猫でした。

  • 「猫語の教科書」に続き、レビューワーさんお勧めポール・ギャリコの作品「ジェニイ」。古い作品ですが、まだ触れていなかった楽しい書物に接することができて、ブクログのつながりに感謝、感謝。

     猫好きにとっては、今回もうーん、そうそう、野良猫の生活はこんなか!と納得してしまいます。白い猫を追いかけて、交通事故にあった少年ピーターは夢?の中で真っ白な猫として生まれ変わっていきます。人間の意識を残したまま野良猫の世界へ。

     やがてジェニイ(彼女)との出会い。ボス猫との争いで傷ついたピーターを優しく舐めるジェニイ、そう、野良猫は傷ついた体を舐めて直すしかないんです。
    強く賢い美猫のジェニイに優しく舐められたら、惚れてまうやろ!

     今は亡き同居していた彼(雄猫)も家猫ではありましたが、テリトリーを守るべく戦いの日々で、体はボロボロでした。家に拾われてきたときは、ふくふくの綿だったのに。猫の世界も大変なのです。ポール・ギャリコの世界、面白いです。

    • 九月猫さん
      8minaさん、こんばんは~♪

      わっ『ジェニィ』読んでくださったのですね(*´∇`*)
      しかも楽しいレビュー!ありがとうございますっ...
      8minaさん、こんばんは~♪

      わっ『ジェニィ』読んでくださったのですね(*´∇`*)
      しかも楽しいレビュー!ありがとうございますっ!

      「惚れてまうやろ!」に思わず笑ってしまいました!!
      8minaさんのお書きになっているとおり、強くて賢いんですよねジェニィ。
      あやかって、というか、この作品が好きすぎて、読んだ少し後に縁があって
      うちにきたコの名前はジェニィになりました。
      立て続けに2匹縁があり、そのコたちはピーターとブラッキーになりました。
      (ブラッキーは黒猫だった、というだけなのでちょっと可哀想な名付けになりましたが)

      あ、お礼を言いにきたのでした!
      8minaさんのレビューがきっかけで『猫語の教科書』再読しました。
      猫の日読書の予定が少し遅れてしまったのですが、とても楽しい読書になり、
      大感謝です!!
      どうもありがとうございました♪
      2014/03/01
    • 8minaさん
      九月猫さん、こんばんは。
      いつもフォローありがとうございます。

      九月猫さんおすすめのジェニイを図書館で借りて読みました。猫達の世界が...
      九月猫さん、こんばんは。
      いつもフォローありがとうございます。

      九月猫さんおすすめのジェニイを図書館で借りて読みました。猫達の世界がありありと描かれていて、雄猫たちのオワー!という雄叫びが聞こえてきそうです。

      Nejidonさんの本棚にも立ち寄りましたが、お二人が盛り上がってるのをニコニコレビューしておりました。

      02・22は私も猫本の日にします!
      2014/03/01
  • 事故に遭った少年がなぜか猫となり、雌猫ジェニィと旅するお話。
    猫好きなら微笑ましく思い出される、猫の仕草や表情がふんだんに楽しめる。猫、猫、猫で、こちらも猫になってしまうかのようだった。長い物語で、さすがにそろそろ私も人間世界に戻ってきたいと思い始めた最後あたり、急に涙が溢れた。

    猫は女性性を感じさせる。蠱惑的な女も慈しみの母も猫によって表されている。ギャリコは猫を通して守り守られる幸せな空間を描きたかったのかも。とにかく愛情に満ちた1冊。暗い場面もどこか爽快な風が吹いているのは、巻末の訳者によるギャリコの来歴紹介を読めば納得できるところ。

    • りまのさん
      リンネさん
      フォロー頂いて、とても嬉しいです♪ありがとうございます!
      「ジェニィ」は、大好きな作品です。ネコ大好き♡
      どうぞよろしくお願いい...
      リンネさん
      フォロー頂いて、とても嬉しいです♪ありがとうございます!
      「ジェニィ」は、大好きな作品です。ネコ大好き♡
      どうぞよろしくお願いいたします!  りまの
      2021/02/06
  • 猫好きの自分の為に祖母が買ってくれた文庫本。
    中学の時から繰り返し、繰り返し読んでいるけど、何度読んでも新しい発見がある。
    ヒロイン・ジェニィの、猫なのに人間臭い、繊細で女性的なしぐさにとても癒やされます。

  • 『雪のひとひら』が意外に良かったのでポール・ギャリコ2冊め。
    
    ジェニィというのが猫の名前で、猫の物語だということはなんとなく知っていましたが、それ以外は前知識なしで読みました。
    
    ジェニィは特別美人ではないけれど、とびきり頭がよくて気立てがよい。
    
    ジェニィのいう「疑いが起きたら身づくろいをせよ」という教えは、人間にも必要だなと、最近のコロナ騒動に滅入っていた身に響きました。心が動揺したらまずいったん落ち着いてみようよと。
    猫を飼ったことはないので実際にどんなときに猫が身づくろいするのかはよく知らないんですが。
    
    身づくろいの話を『ジェニィ』好きの知り合いに話したら、「褒められると髪を触って「ええー」とか言う女の子いるでしょ。『ジェニィ』を読んでからあの動作って身づくろいだなと思うようになった」とのこと。なるほど、嬉しくても悲しくても動揺したら身づくろい。おもしろい視点だと思いました。
    
    ラストはあれしかないというまとめ方ではありますが、切なさも残ります。ジェニィとはいったいなんだったのか。文庫の裏表紙には「一匹の雌猫に永遠の女性の姿を託して」と書かれていて、実際にジェニィは母性であり、男性の憧れを体現する存在なんだと思うけど、そう言ってしまうと、なんかつまらない気がする。
    
    ジェニィはやっぱりただの一匹の猫で、するりと身をかわして去っていくのではないかと。
    
    以下、引用。
    
    「『疑いが起きたらーどんな疑いにせよー身づくろいをすること』これが規則第一号なの」とジェニィは言った。
    
    「もしあんたが何か過ちをしでかすとか、人にしかられたような場合ー身づくろいをするの」
    「もし足をすべらすとか、何かから落ちるとか、誰かに笑われたような場合ー身づくろいするの。もし誰かと議論して負けるとか、自分が落ちつくまで、敵対行為を一時中止したいと思ったような場合、すぐ身づくろいを始めるの。」
    
    「感情が高ぶって、参ってしまったような場合ーちょっと身づくろいすれば、しっかり自分をおさえつけて、自分をとり戻すことに役に立つものよ。」
    
    「特に近ごろでは、問題になるのは先祖ではなくて、本人がどういう人間かということなんだから、なおさらよ。もっとも、自分がどういう人間であるかわかれば慰めになるものだ、と言わなければならないとは思うんだけれど。特にあらゆるものごとが、自分にたいして盛んに敵対しているような場合、もしその人が自分の先祖がどういう者であり、どういうことをした人かということが、いくらかわかっていたら、その人はそうやすやすとあきらめる必要はないんだもの、ね。」
    
    「大事なことは、そういう相手の人たちは要するに、結局はみんな人間であり、一方あたしたちのほうはみんなこういう動物なんだから、もしあたしたちの間に愛と尊敬さえあれば、それ以上のことを何も望む必要はないのだ、と。」
    
    「だけど少なくとも、誰ももはやあたしを傷つけることはできないのよ。あたしの言うのは、心を、の意味なの。心の中へは誰もはいって来られないものなの。そして心の中に受けた傷は、決して治ることはないものなの。」
    
    「さあ、さあ。とにかくぼくたちはまだ生きているんだろう。それにぼくたちにはお互いというものがあるじゃないか。大事なことはそれだけなんだよ」
    
    過去の過ちの償いをしようと、どんなふうに思っていようと、そのためにどんなことをしたいと思っていようと、人の世というものはそんなこととは無関係に、容赦なく動いていくものだということも知っていたし、また、いくら心配して苦しんだところで、「ちょうど間に合ってよかった」という場合より、「遅すぎた、もう遅すぎた」という場合のほうが多いことも知っていた。
    
    オールド・ミスたちといっしょに暮している、よく釣り合いのとれた三匹のとら毛猫は、もし物に恵まれないことが、それほど気にならないなら、オールド・ミスの二人の姉妹といっしょに暮すほど、気楽なことはないと言った。なぜなら、ものごとは何も決して変らないし、こわがったり、心配したりすることは、何も起きないからだそうである。
    
    「ぼくが医学部を断念したことによって、どれほどたくさんの人命が救われたかと思うと、身震いがする」と彼は述懐している。
    

  • 事故がきっかけで猫になってしまった男の子ピーターと、雌猫ジェニィの冒険小説。

    ポール・ギャリコは本当に猫が好きだったんだなぁ。物語の節々からポール・ギャリコの猫愛が伺える。

  • 突然白猫に変身してしまった8歳の少年ピーターが、助けてくれた雌猫のジェニィとともに繰り広げる大冒険の物語。変身直後のピーターが直面する災難のリアルさに引き込まれ、やたらと詳細な身づくろいの解説に「そういえば『猫語の教科書』の人だったんだ」と思い出す。結末をいまいちと捉える人も多いようだが、私は孤独な少年が愛されること・愛することを学ぶ物語として味わい深い結末と感じた。ちょっと翻訳の言葉遣いが古めかしかったので、もう少し今風の翻訳でも読みたい。

  • ねこ好き、ファンジー好きの私にピッタリな本だした。最初は読むのも辛かったけど、ワクワクしたり悲しい涙を流したり素敵な本でした。
    図書館で借りたけど、何回も読みたいので購入しようと思います。

  • ギャリコ、ネッコが好きすぎる。
    ある日猫になってしまったぼく・ポールと、気高いジェニィとの旅。ただただ愛情深いエピソードが連なっている。しかしラストはなんだかがっかりしてしまった。

  • 真っ白な猫になってほのぼの生活なのかと思ったら、かなりの大冒険だった!
    翻訳を現代風にしてかわいい挿絵をつければ小中学生にも読んでもらえるのに。

全139件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ポール・ギャリコの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ポール・オースタ...
宮部みゆき
ポール・ギャリコ
吉本ばなな
ポール・ギャリコ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×