雪のひとひら (新潮文庫)

  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784102168059

みんなの感想まとめ

人生の旅路を一人の女性の視点から描いた物語は、雪のひとひらの美しさを通じて、シンプルながら深いメッセージを伝えます。流れるような言葉と情景描写が、幼少期のワクワク感や大人になってからの幸せな日々を鮮や...

感想・レビュー・書評

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  • 猫丸さんのお薦めの1冊です。ありがとうございます。


    なんという美しい作品なのでしょう。心が清浄になります。
    訳者の矢川澄子さんによりますと、ファンタジー形式の女の愛と生涯の物語だそうです。

    雪のひとひらはある寒い冬の日、地上を何マイルも離れたはるかな空の高みで生まれました。
    雪のひとひらは雲の中から生まれて他の兄弟姉妹たちと地上への長旅に出ます。
    そして、雪のひとひらは奇蹟の始まりを見ます。

    「まず、谷向こうの雪をかぶった山のてっぺんが、ほのかなバラ色にそまり、それがゆっくりと、峰また峰へつぎつぎにひろがってゆきました。空も岩も木々も、うすべに色をおび、はるか目の下を流れる川にその色は映って、あたりいちめんの雲を一色にそめあげました。そしてまもなく、あたかも世界中がひとつのバラの鏡と化したかのように、空気にまでうすべにの色がみちあふれたのです」
    ずっと、このような美しい調べのような矢川澄子さんの訳文で文章が綴られています。


    以下ネタバレしていますのでお気をつけください。


    雪のひとひらは旅を続けて、雪だるまになり、川を流れてゆき、夫となる雨のしずくに出会います。
    雪のひとひらは、雨のしずくと一緒に湖の果てまで行きます。
    そしてまた旅が始まり、大きな河へと流れていきます。
    四人の子どもたち(雪のしずく・雨のひとひら・雪のさやか・雨のしずく二世)が生まれます。
    一家は暗いトンネルの口へ入ってしまい最大の敵「火」出会います。「火事」でした。
    雨のしずくとの別れの場面はこんなにも短いお話なのに涙がこぼれました。
    子どもたちは旅立ち雪のひとひらは海へ。

    「雪のひとひらは、自分の全生涯が奉仕を目ざしてなされていたことを悟りました」
    「この宇宙のすばらしい調和を思い、この身もその中で一役果たすべく世に送られたことを思いました」

    私は、自分がなにか世の中の役に立ったことがあったのだろうかという思いにうたれました。

    「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」
    ここも、なんだか涙のにじむ場面でした。

    珠玉の掌編。
    まったくその名がふさわしい作品でした。
    心が清々しくなる思いがしました。
    雪のひとひらの美しい佇まいによって、心の中が浄化されるような気持ちです。
    そんな、生涯を送った雪のひとひらを、とても羨ましく思います。


    ※なお、猫丸さんの情報によりますと、原マスミさん挿画の1997年版の新潮文庫で読むのがお薦めだそうです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      まことさん
      にゃ〜ん!
      まことさん
      にゃ〜ん!
      2021/01/15
    • りまのさん
      まことさん
      なんと美しいレビューでしょうか。「雪のひとひら」…持っている筈なのです。読み返したくなりました。
      ポール・ギャリコは、ハリスおば...
      まことさん
      なんと美しいレビューでしょうか。「雪のひとひら」…持っている筈なのです。読み返したくなりました。
      ポール・ギャリコは、ハリスおばさんシリーズも、とても面白いし、ホロリとします。ハリスおばさんのキャラクターが、すごく良いのです!
      2021/01/15
    • まことさん
      りまのさん
      ありがとうございます!
      私は、ポールギャリコは、初めて読みました。
      さっき、「ジェニィ」と「トマシーナ」を予約しました。
      ...
      りまのさん
      ありがとうございます!
      私は、ポールギャリコは、初めて読みました。
      さっき、「ジェニィ」と「トマシーナ」を予約しました。
      読むのをとても、楽しみにしています。
      「ハリスおばさん」も書いていたとは、私は、今日初めて知りました。
      2021/01/15
  • 1952年 原題”Snowflake “

    物語も、そして日本語訳も、流れるような美しさ。
    人生の潮流に逆らわず身をまかせて生きていく。
    それがなかなか難しい…
    とても勇気のいることだと思います。

  • 子ども向けの語りのようにも見えますが、どうでしょう。
    一人の女性の一生を描いたものです。

    どのように、どのような気持ちを持って生まれたか覚えている人はいないと思います。生を受けたそのときから、どのようなことに感動し、毎日を送ってきたか、喜びを誰とどのように分かち合ったか描かれてます。

    そして秀逸なのが、最後です。
    最期を悟り、その時に今までの人生を振り返ります。
    誰しもそうではないでしょうか。
    人生を受け止め、生を受けた後に感じた感動、はじめてみる朝日、子どもの笑い声、そうしたことをもう一度思い出します。

    あとがきにて。
    最後の言葉の原文について書かれています。Well Done 。さあ、どういう意味が込められているのでしょう。「主人公の生涯も要約してしまえばごく平凡な、あたりまえの女の一生にすぎません」(あとがきより)。。。そうなんです。そうなんですが、でも響くのです。
    他人にとっては些細な一生でしょう。でもかけがえなのない一生なのです。Well Done.

    昔読んだ「ジェニイ」も、「トンデモネズミ」も近いうちに読み返したいと思いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      辛4さん
      自炊かぁ、、、猫はPCクラッシャーなので紙の本だけにしました。
      辛4さん
      自炊かぁ、、、猫はPCクラッシャーなので紙の本だけにしました。
      2021/08/23
    • 辛4さん
      猫丸さん
      こわさないで。。。お願い。
      猫丸さん
      こわさないで。。。お願い。
      2021/08/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      辛4さん
      にゃ~ん
      気合いでも勝てない時は、ブッチ~ンと電源を切ってやりまする。。。
      辛4さん
      にゃ~ん
      気合いでも勝てない時は、ブッチ~ンと電源を切ってやりまする。。。
      2021/08/25
  • ひとひらの雪が地上に舞い降りて天に帰るまでの一生を描いた作品。

    初めてみる日の出のきらめきや人間の子供のコロコロした笑顔、春のせせらぎなど世界の美しい欠片が散りばめられていて、何度も心打たれた。
    その反面、水車や船、火事など命を削るような経験もしていて、それもひとひらのまっすぐな視点で丁寧に描かれているから私にとっての当たり前の世界を再発見できた感覚がした。

    私達はなぜこの世界に創造されたのか。
    ひとひらが生まれてからずっと探し続けてきた答えに導かれる最期も素敵だった。


    葉っぱのフレディが好きな方には雪のひとひらもぜひ読んでほしいな。

  • 『ポセイドンアドベンチャー』を書いたポール・ギャリコが50代頃の作品。

    すっかり暖かくなってきて花粉症なんですが先週までは雪山登ってて、雪のひとひらってタイトルに惹かれて読んでみました。

    生まれてひらひらと舞い降りた雪の物語、次第に下流へと流されて海に至るまでいろんな冒険をして出会い別れ人生を振り返る。

    なんだったのかなあって、ギャリコも訳者の矢川澄子さんも亡くなって随分なるけど素敵な本残してくれてありがとうございました♪

  • この一冊に出会えただけでも
    選書していただいて良かった。
    生きることの楽しさ喜び苦しさを
    こんなにも愛おしく買いた作品があったなんて。

    きっとこれから先、何度も読み返す、
    人生のお守りのような本。

  • 生命の誕生から死にいたるまで、女性の一生を「雪のひとひら」の生涯にたとえて綴られた物語。
    「わたしって、いまはここにいる。けれどいったい、もとはどこにいたのだろう。そして、どんなすがたをしていたのだろう。どこからきて、どこへ行くつもりなのだろう。…」
    どんなにささやかで、つつましい存在でも、何ひとつとして無意味なものはないのです。
    最後の「おかえりなさい」の一言で、なにもかもが救われた気持ちになる。

  • ただただ素晴らしく美しい寓話でした。雪のひとひらを一人の女性に擬人化し、その一生を語った物語。語り口、テーマ、描写、どこをとってもまさに雪のような純潔な白さをイメージさせます。

    話の雰囲気はパッと読んでいくと、童話のような印象を受けるのだけど、内容を考えるごとに深みが増していく気がします。雪のひとひらの語りのうちに、愛する人との出会いと別れ、想像だにしない困難、老い、死があり、そして「自分はなぜ生まれてきたのか」「生きていく意味は何なのか」という問いが織り込まれる。

    子ども時代に読んだとしてしても刺さるものはあったと思うけど、例えば年を重ね、生と死の概念が明確になり始めるころ。思春期を迎えた先。ライフステージの転機に読むごとに印象的な場面や、読後の感想は変わってきそうな気がします。これから先自分が読み返すとするなら、雪のひとひらの老齢期のころがより実感を持って伝わってきそう。

    人生における困難や孤独、それに対しての恐怖。でも最後にはそれをすべて包み込むような優しい光が印象に残りました。生きる意味は分からなくても、それでも生きていた意味は残るのだろうと感じます。

  • 雪のひとひらの生涯。自然に生れてからその姿を消すまでの時間が、とても優しいまなざしで綴られていく。
    童話的で、読みながら「葉っぱのフレディ」に感動した10歳の頃を思い出した。

  • すべてが美しい詩のような作品。

    平凡な女性の一生とは、ちっとも平凡じゃない。
    幸せの形はみんな違うけれど、
    目を凝らして、耳をすまし、心を動かすことは
    豊かな一生の過ごし方だろう。

  • ごくろうさまだった
    小さな雪のひとひら
    さあ ようこそお帰り

  • 雪が空から舞い降り、川になって海に流れ込み、また天に昇って雲になるまでを、美しく、ドラマチックに、そして優しさを込めて描いています。透明感のある爽やかな物語の紡ぎ方が、まさに一片の雪のようで、読後もさわやか。あくまで自分では動けないので、色んな情景に巻き込まれていくのですが、あるときは冒険のようだったり、危機に立ち向かったり。それでもガチャガチャすることなく、絵本というファンタジックな距離感が絶妙。
    本のあとに、日本人のつけた解説文ではフェミニズムの思想がとかありましたが、個人的にはそれはちょっと深読みしすぎで、物語の素直さを、そのままシンプルに受け取って良いのではないかと思います。

  • 一人の女性の誕生から死に至るまでを、流動的な命の水に例え、ファンタジーという形で綴られた、女の愛と生涯の物語。

    この世に生まれて来て、結婚し子供を儲け、やがて夫に先立たれ、子供たちも独立し、老いて死ぬ。しかし雪のひとひらは死ぬ間際、自分が慎ましく生きたこの世界のありようと、些細だと思われた出来事にも意味があった事を知る。
    「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」の言葉とともに。

    女が女として生きて行く上で味わうであろう喜びと悲しみをシンプルに無駄なく。なのだけれど本当はとても難しい事。雪のひとひらの生き方は何にも執着せず賢明で、潔いまでに清々しい。

    …女の幸せという狭い範囲の考え方ではなく、幸せの形の一つとしてなら。性別に関係なく幸せの形は人それぞれ。

  • タイトルが綺麗。
    表紙が美しい。

    雪の日に読みたいと思っていた。
    雪ではないけれど、氷雨が地面に着いた途端に凍りつく日に読んだ。

    なんの話かしらと思っていたら、人間の、女の一生物語だった。Life is like a rolling stoneがlike a snow flake だったってわけ。一見おとぎ話風。その中に静かに抵抗せず流れながら経験していく人生が描かれる。
    美しい挿絵がふんだんなのも楽しい。

    いつか静かに人生を振り返る時、もう一度読み返してもいいかも、と思う本だった。

  • 何て優しく美しい物語だろうか。
    なんて事のないどこにでも居る女の一生。それを形や色を変える雪のひとひらにすることで不思議と世界の美しさが染み込んでくる。
    雪にはしゃぐ子供たちの笑い声、村や山々の長閑な風景、夏の日差しのなかで湖で束の間の憩いのひと時…。
    世界の美しさ、生きることの尊さが詰まった一冊。

  • ファンタジー。
    一人の女性の一生を描いた作品なのですが、主人公が雪。
    とにかく純粋で美しい。
    雪のひとひらが生の意味を悟るシーン、そして、最後の一文が印象的。
    名作ですね。

  • 『スカイ・イクリプス』で引用されていた文章が気になって読んでみました。
    
    空から舞い降りた「雪のひとひら(snowflake)」をとおして女性の一生を描く。大人のための童話というか、綺麗な詩のような一編。
    
    「雨のしずく」と結ばれて子供までできるあたりはメルヘンすぎる気もするけれど、海のなかで孤独静かに老いていく様とかなかなかシビアな擬人化です。
    
    「私はどこからきたのか、なぜ生まれてきたのか」という問いは普遍的なもの。子供の頃は不意にこの問いに包まれて自分の存在の不思議さに動けなくなるような気分になりました。
    
    ところどころ言葉の選び方が不思議だなと思っていたのですが(悪いわけではなく、絵本のような調子でつづられているのに「わだつみの」とか「幼なご」という言葉が使われていたりするので)、訳者は詩人でもあるのですね。
    訳者解説が「女性である雪のひとひら」と「男性的なる神」みたいになっているのはなんか不満。
    
    以下、引用。
    
    「わたしって、いまはここにいる。けれどいったい、もとはどこにいたのだろう。そして、どんなすがたをしていたのだろう。どこからきて、どこへ行くつもりなのだろう。このわたしと、あたりいちめんのおびただしい兄弟姉妹たちをつくったのは、はたして何ものだろう。そしてまた、なぜそんなことをしたのだろう?」
    
    「美って、何なのだろう。わたしもいままでに、空と、山と、森と、村を見た。それから日の出、女の子、そして、この灰色の牡牛の眼。それぞれ、ちがったものでありながら、わたしをしあわせにしてくれたことでは、いずれもおなじなのだ。これもみな、どなたかはぞんじあげないけれど、おなじ一人のひとのつくりだしたものにちがいない。そのひとの手になるものが、つまりは美のためにあるということも考えられるだろうか?」
    
    彼女は雨のしずくであり、彼は雪のひとひらでした。もちろん、さまざまな点でいまだ自分自身ではあるものの、いまではたがいに相手の一部でもあるのでした。
    あまりにしっくり溶け合あってしまったために、あたかもおなじ頭で考え、おなじ声でしゃべり、おなじ心で生きているようにさえ思われるのでした。
    
    いずれ取上げられるものならば、何ゆえに彼はわざわざ彼女に与えられたのか。
    
    いかなる理由あって、この身は生まれ、地上に送られ、よろこびかつ悲しみ、ある時は幸いを、ある時は憂いを味わったりしたのか。最後にはこうして涯しないわだつみの水面から太陽のもとに引きあげられて、無に帰すべきものを?
    まことに神秘のほどはいままでにもまして測り知られず、空しさも大きく思われるのでした。そうです、こうして死すべくして生まれ、無に還るべくして長らえるにすぎないとすれば、感覚とは、正義とは、また美とは、はたして何ほどの意味をもつのか?
    

    • りまのさん
      大きな意味を持つのでは?…リマノ
      大きな意味を持つのでは?…リマノ
      2020/08/21
  • 一人の女性の一生を雪に例えた童話。

    誰もが一度は思う『 自分の生まれた意味 』を
    探すお話。

    ひとつひとつのの言葉が綺麗で優しい。

  • 本書は、雪のひとひら(Snowflake)として生まれた女性の一生の物語である。

    彼女は、折に触れて自分の存在の意味について問うている。

    生まれた瞬間から思っていたのだ。

    「あたかも、ふかい眠りからさめたときの感じにそっくり」で、
    「ついいましがたまでどこにも存在しなかったこの身」のことを彼女は問う。

      わたしって、いまはここにいる。

      けれどいったい、もとはどこにいたのだろう。

      そして、どんなすがたをしていたのだろう。

      どこからきて、どこへ行くつもりなのだろう。

      このわたしと、あたりいちめんのおびただしい兄弟姉妹たちをつくったのは、
      はたして何者だろう。

      そしてまた、なぜそんなことをしたのだろう? (p.7)

    彼女は、同時にさびしさを感じてもいる。

      どちらをむいても、わたしとおなじ、
      生まれたばかりの雪の兄弟姉妹がこんなに大勢いるのに、
      それでいてこんなにさびしくてたまらないなんて。 (p.8)

    そして、そのさびしさをつつみこむ存在があった。

      雪のひとひらは、何かこうなつかしくもやさしい思いやりのようなものが、
      身のまわりをすっぽりつつんでくれていることに気がついたのです。

      だれかがこちらのことを気づかっていてくれるらしく、
      その感じがほのぼのと、こころよく、
      雪のひとひらの全身に、くまなくみちわたりました。 (p.9)

    大いなる問いとさびしさとつつみこむものが、この物語には常に存在するように思われる。

    彼女は、「おのれというものの秘密」を知りたいと思う。

      この身をつくりだしたのは、はたして何者なのか。

      どのような目的があってのことなのか。

      また、このしみじみとした、
      心なぐさまる思いはどこからもたらされるのか。 (p.9-10)

    この問いは、彼女の雪のひとひらとしての一生を貫くものである。

    「何をめあてで行なわれていることなのか」を苦しい時にもまた問うのである。

    どんなときにも何のために誰のためにを考え、
    役に立ちたいと願う彼女は、とても健気な存在でもある。

    深くうずもれ、見捨てられたように感じられるときも、
    今のところ忘れられているだけなのだと信じ、
    自分をいつくしんでくれているその人に訴えかけるのである。

    季節が変わると雪のひとひらは自分の姿が変容していることに気づく。

    彼女は「走りはじめた」ときはそれに気づかない。

    「走りつづけながら」それに気づくのである。

    結晶を持ち、個として存在していた彼女は、
    流動するものになってからも個を持ち続けている。

    周りと同じようでいて確かに違う存在である。

    そして、流れていきながら、またあの孤独感を感じる。

    仲間に取り囲まれているのにさびしいというあの孤独。

    誰も自分のことを気にかけてはくれないし、
    どうなろうときっとどうでもいいのだと思ってしまうとき。

    これは、私たちにも覚えのあるものなのではないか。

    そのとき彼女は出会う。

    自分を個として見つめ、認めてくれる存在に。

    生まれてすぐに孤独を感じたときにつつんでくれた存在とは異なり、
    ここで現れるのは、自分と同じく個を纏うものである。

    雪のひとひらは、この相手にも、根源的なことを問う。

    彼女は、あの問いを忘れていないのだ。

      ね、だれがわたしたちをつくったのかしら。

      わたしたち、なぜふってきたのかしら。

      どうしてここに送られてきたのかしら。

      あなたはどう、だれかが自分のことをいろいろと思いやり、
      見守ってくれているんだとはお思いにならない? (p.69-70)

    彼女の伴侶となる雨のしずくは、
    彼女の問いには現実的な答えを返したのだが、
    現実的ながらも命の不思議について言及している。

    自分が生まれてきたタイミングについて、
    雪がひらひら舞いおりてゆくのが見えたけれども、
    「それでもまだ、こちらの出番ではないから、上空にとどまっていた」
    と語ったのだ。

    「出番でない」のはなぜなのか答えられないし、
    「誰にも説明できない」と思っているけれども、
    自分は「温かい気流に出くわして」ふりはじめたのだと。

    すべてのことにはときがあるということを象徴しているようだ。

    雪のひとひらは彼女にとって最も幸せな時を彼と過ごし、そして彼とともに生きていく。

    雪として生まれ、水として流れて生きた一人の女性。

    伴侶と出会い、共に生き、子を為し、別れを経験し、やがて空へと帰っていく。

    多くの女性が、何代にもわたって生きてきた日々。

    一つ一つが異なり、同時に似てもいる命の営み。

    同じ生き方は選んでいなくても、どこか静かに共感を覚えるところがある。

    同じ生き方は選んでいなくても、女性だからわかるというところがある。

    大いなる問いとさびしさとつつみこむもので始まった物語は、
    また、問いへと帰ってくる。

    途中で大切な者を失ったときに彼女は、
    「いずれ取上げられるものならば、何ゆえに彼はわざわざ彼女に与えられたのか」
    と問うている。

    それは悲しみから来る問いであったが、
    そのとき「彼を呼び戻した者」を強く意識している。

    最後の問いは、死すべくして生まれること、
    無に還るべくして長らえることへの根本的な問いである

    「感覚とは、正義とは、美とは、はたして何ほどの意味をもつのか」という問いは、
    生きることの価値や意味についての問いなのだ。

    雪のひとひらは「終始役に立つものであり、
    その目的を果すために必要とされるところに、つねに居合わせていた」と思い出す。

    ほんのちょっと誰かの役に立っただけでも、
    「むなしくうまれてきたのではなかった」と思うのだ。

    最期の時、一体どんなものを見るのだろう。

    そのとき私は自分をどう思い起こすのだろう。

    私は、一般的な女性の生き方を外れてきた方なので、
    女性の生き様を思い起こさせる作品にはいろいろと思うところがある。

    私は違うという思いを持ってしまうことが多々あったのだ。

    だが、最近、違っても、わかると思えるようになってきた。

    今、これを書いていることは『ちいさなあなたへ』について書けたことと同じくらいに嬉しい。

  • 雪の一生が人の一生になぞらえるなら全てのものが生まれて消えるものというのを思い出させられた。
    とても綺麗なお話だった。

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著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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