- Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102168059
作品紹介・あらすじ
ある寒い日、雪のひとひらは生まれた。地上に舞いおりたときから、彼女の長い旅がはじまった。伴侶となる雨のしずくとの出会い、新たな命の誕生。幸福なときも試練のときも、彼女は愛する者のために生きた。やがて訪れた、夫との永遠の別れ、子どもたちの門出。雪のひとひらは、その最期の瞬間、自らの生の意味を深く悟る-。自然の姿に託して女性の人生を綴る、優しく美しい物語。
感想・レビュー・書評
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猫丸さんのお薦めの1冊です。ありがとうございます。
なんという美しい作品なのでしょう。心が清浄になります。
訳者の矢川澄子さんによりますと、ファンタジー形式の女の愛と生涯の物語だそうです。
雪のひとひらはある寒い冬の日、地上を何マイルも離れたはるかな空の高みで生まれました。
雪のひとひらは雲の中から生まれて他の兄弟姉妹たちと地上への長旅に出ます。
そして、雪のひとひらは奇蹟の始まりを見ます。
「まず、谷向こうの雪をかぶった山のてっぺんが、ほのかなバラ色にそまり、それがゆっくりと、峰また峰へつぎつぎにひろがってゆきました。空も岩も木々も、うすべに色をおび、はるか目の下を流れる川にその色は映って、あたりいちめんの雲を一色にそめあげました。そしてまもなく、あたかも世界中がひとつのバラの鏡と化したかのように、空気にまでうすべにの色がみちあふれたのです」
ずっと、このような美しい調べのような矢川澄子さんの訳文で文章が綴られています。
以下ネタバレしていますのでお気をつけください。
雪のひとひらは旅を続けて、雪だるまになり、川を流れてゆき、夫となる雨のしずくに出会います。
雪のひとひらは、雨のしずくと一緒に湖の果てまで行きます。
そしてまた旅が始まり、大きな河へと流れていきます。
四人の子どもたち(雪のしずく・雨のひとひら・雪のさやか・雨のしずく二世)が生まれます。
一家は暗いトンネルの口へ入ってしまい最大の敵「火」出会います。「火事」でした。
雨のしずくとの別れの場面はこんなにも短いお話なのに涙がこぼれました。
子どもたちは旅立ち雪のひとひらは海へ。
「雪のひとひらは、自分の全生涯が奉仕を目ざしてなされていたことを悟りました」
「この宇宙のすばらしい調和を思い、この身もその中で一役果たすべく世に送られたことを思いました」
私は、自分がなにか世の中の役に立ったことがあったのだろうかという思いにうたれました。
「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」
ここも、なんだか涙のにじむ場面でした。
珠玉の掌編。
まったくその名がふさわしい作品でした。
心が清々しくなる思いがしました。
雪のひとひらの美しい佇まいによって、心の中が浄化されるような気持ちです。
そんな、生涯を送った雪のひとひらを、とても羨ましく思います。
※なお、猫丸さんの情報によりますと、原マスミさん挿画の1997年版の新潮文庫で読むのがお薦めだそうです。 -
雪のひとひらの長い旅が一人の女性の生涯として描かれる。
人間を雪のひとひらに例えることで、大切なものがよりシンプルに伝わってくる。
美しい言葉で綴られ、情景が目に浮かぶよう。
幼い頃のワクワクやドキドキ。見るもの聞くもの触れるもの全てが新鮮で興味深くて楽しかったあの頃。冒頭は懐かしい気持ちに。
大人になり、新しい家族ができ、大切な人と満ち足りた日々を送っていくあたりは、この時期が人生で一番幸せなのかもなぁと。
そして、いつか訪れる最期。ずっと考え続けてきた生まれた意味を深く悟った心境。自分もいつかこんな風に思えるときが来るのだろうか。
心の成長が、人生の喜びや悲しみが、この一冊に詰まっていた。 -
子ども向けの語りのようにも見えますが、どうでしょう。
一人の女性の一生を描いたものです。
どのように、どのような気持ちを持って生まれたか覚えている人はいないと思います。生を受けたそのときから、どのようなことに感動し、毎日を送ってきたか、喜びを誰とどのように分かち合ったか描かれてます。
そして秀逸なのが、最後です。
最期を悟り、その時に今までの人生を振り返ります。
誰しもそうではないでしょうか。
人生を受け止め、生を受けた後に感じた感動、はじめてみる朝日、子どもの笑い声、そうしたことをもう一度思い出します。
あとがきにて。
最後の言葉の原文について書かれています。Well Done 。さあ、どういう意味が込められているのでしょう。「主人公の生涯も要約してしまえばごく平凡な、あたりまえの女の一生にすぎません」(あとがきより)。。。そうなんです。そうなんですが、でも響くのです。
他人にとっては些細な一生でしょう。でもかけがえなのない一生なのです。Well Done.
昔読んだ「ジェニイ」も、「トンデモネズミ」も近いうちに読み返したいと思いました。-
2021/08/23
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2021/08/25
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辛4さん
にゃ~ん
気合いでも勝てない時は、ブッチ~ンと電源を切ってやりまする。。。辛4さん
にゃ~ん
気合いでも勝てない時は、ブッチ~ンと電源を切ってやりまする。。。2021/08/25
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『ポセイドンアドベンチャー』を書いたポール・ギャリコが50代頃の作品。
すっかり暖かくなってきて花粉症なんですが先週までは雪山登ってて、雪のひとひらってタイトルに惹かれて読んでみました。
生まれてひらひらと舞い降りた雪の物語、次第に下流へと流されて海に至るまでいろんな冒険をして出会い別れ人生を振り返る。
なんだったのかなあって、ギャリコも訳者の矢川澄子さんも亡くなって随分なるけど素敵な本残してくれてありがとうございました♪ -
この一冊に出会えただけでも
選書していただいて良かった。
生きることの楽しさ喜び苦しさを
こんなにも愛おしく買いた作品があったなんて。
きっとこれから先、何度も読み返す、
人生のお守りのような本。 -
生命の誕生から死にいたるまで、女性の一生を「雪のひとひら」の生涯にたとえて綴られた物語。
「わたしって、いまはここにいる。けれどいったい、もとはどこにいたのだろう。そして、どんなすがたをしていたのだろう。どこからきて、どこへ行くつもりなのだろう。…」
どんなにささやかで、つつましい存在でも、何ひとつとして無意味なものはないのです。
最後の「おかえりなさい」の一言で、なにもかもが救われた気持ちになる。 -
ただただ素晴らしく美しい寓話でした。雪のひとひらを一人の女性に擬人化し、その一生を語った物語。語り口、テーマ、描写、どこをとってもまさに雪のような純潔な白さをイメージさせます。
話の雰囲気はパッと読んでいくと、童話のような印象を受けるのだけど、内容を考えるごとに深みが増していく気がします。雪のひとひらの語りのうちに、愛する人との出会いと別れ、想像だにしない困難、老い、死があり、そして「自分はなぜ生まれてきたのか」「生きていく意味は何なのか」という問いが織り込まれる。
子ども時代に読んだとしてしても刺さるものはあったと思うけど、例えば年を重ね、生と死の概念が明確になり始めるころ。思春期を迎えた先。ライフステージの転機に読むごとに印象的な場面や、読後の感想は変わってきそうな気がします。これから先自分が読み返すとするなら、雪のひとひらの老齢期のころがより実感を持って伝わってきそう。
人生における困難や孤独、それに対しての恐怖。でも最後にはそれをすべて包み込むような優しい光が印象に残りました。生きる意味は分からなくても、それでも生きていた意味は残るのだろうと感じます。 -
雪のひとひらの生涯。自然に生れてからその姿を消すまでの時間が、とても優しいまなざしで綴られていく。
童話的で、読みながら「葉っぱのフレディ」に感動した10歳の頃を思い出した。 -
すべてが美しい詩のような作品。
平凡な女性の一生とは、ちっとも平凡じゃない。
幸せの形はみんな違うけれど、
目を凝らして、耳をすまし、心を動かすことは
豊かな一生の過ごし方だろう。
にゃ〜ん!
にゃ〜ん!
なんと美しいレビューでしょうか。「雪のひとひら」…持っている筈なのです。読み返したくなりました。
ポール・ギャリコは、ハリスおば...
なんと美しいレビューでしょうか。「雪のひとひら」…持っている筈なのです。読み返したくなりました。
ポール・ギャリコは、ハリスおばさんシリーズも、とても面白いし、ホロリとします。ハリスおばさんのキャラクターが、すごく良いのです!
ありがとうございます!
私は、ポールギャリコは、初めて読みました。
さっき、「ジェニィ」と「トマシーナ」を予約しました。
...
ありがとうございます!
私は、ポールギャリコは、初めて読みました。
さっき、「ジェニィ」と「トマシーナ」を予約しました。
読むのをとても、楽しみにしています。
「ハリスおばさん」も書いていたとは、私は、今日初めて知りました。