チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102169315

作品紹介・あらすじ

スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • ヤロスラヴリ発の鉄道の線路上で子供の死体が発見され、物語が動き出す。KGBの前身であるMGB(国家保安省)の捜査官のレオ・デミドフは子供は事故で列車にはねられたと説明するが、両親は犯人の目撃者もいて殺人だと主張する。忠実なソ連イデオローグであるレオは、貧困と欠乏を解消して犯罪のない楽園を目指す共産主義社会での犯罪の存在は、理想社会の実現を大きく逆戻りさせることになると考え、殺人事件の存在を否定する。その後、部下の策略により、地方の警察に左遷され、更にスパイとして糾弾され、流刑を宣告される。囚人列車から脱走したレオは連続する小児殺人事件の究明に挑む。グラスノスチ以前のソ連の誰もが疑心暗鬼に陥る陰湿な空気が感じられ、現代のロシアや中国も同じ空気に包まれているなと思及させられた一冊でした。

  • スターリン体制下のソ連。そのなかで従順な国家警察として働く主人公レオの行動が非人道的で理解ができなかったが同時にこの時代に殺されずに生きるための当たり前の行動なのだと強く感じた。物語の冒頭で出てきた事件は一体誰が何の目的をもって引き起こしたのか。下巻が楽しみです。

  • 前置きが長かった気がする…。
    ソ連下での強烈な思想と、陰湿な体制が印象的。
    最後にかけてうまく盛り上がっていったので、下巻も読んでみようという気になった。

  •  いやあ、コワイコワイ。もちろん、殺人事件も怖いのだけれど、何より旧ソ連のスターリン体制が怖い。
     スターリン大元帥の元での絶対的な体制では「殺人事件などおこるはずがない」とされていたこと。だから、そういう事件は「なかったことにされる」ということ。
     それより何より罪が重いのは、「国家反逆罪」であるということ。それは例えば「外国人と接点を持った」だけでも疑いをかけられ、一度疑われたらほぼ「有罪」になることは間違いなく、有罪になれば、虐殺されたり、良くて過酷な強制労働に何年も尽かされたりするのだ。そして、子供のころから「反逆分子」は告発しなければならないと教育され、常に隣人の言動に目を光らせている。
    この国で少しでも心地よい暮らしをするには、「国家に疑問を持たず、従う」ことなのだ。
    あまりにもジョージ・オーウェルの「1984年」に酷似している。
     ロシア革命は平和のための革命ではなかったのか?レーニンがもっと長生きしていたらどうなっていたか分からないが、スターリン体制になって革命の「目的」と「手段」を履きかえられたのではないだろうか。世の中に「絶対安心できる体制」などない。今の日本でも「学歴社会の線路に乗れば安心」だとか「大企業に入社すれば安心」だとか、「◯◯党が政権を取っていれば安心」だとか、盲信が一番怖い。この小説はロシアでは発禁処分にまでなったということだ。この小説を堂々と読める社会に住んでいる有り難さを享受しよう。
     話がズレた。
     国家保安省のエリート捜査官だった主人公レオは、あることがきっかけで自分が告発されたが、そのタイミングでスターリンが死んだために最悪の処罰は免れ、地方の工場の街の下っ端の警官として左遷される。
     しかし、そこで目にしたある殺人事件のファイルが、自分がかつて「事故」として握り潰してしまった少年の死に似ていたため、「殺人事件をなかったことにせず、向き合う」警察署として目覚める。そして、人間としても目覚める。自分のことを愛してくれて結婚してくれたと思っていた奥さんが実は自分のことを「◯◯ったから」結婚したのだという事実、みんなそうだという事実を知らされる。知らなかったのは「国家保安省捜査官」という恵まれた立場にいた自分だけだったと。
    ミステリーとしてはこれから。

  •  1933年のスターリン体制下のソ連はウクライナの村から物語はスタートしますが、十数ページ読むうちに「この本、読むのやめようかな」と思いました。猫好きな人にはちょっとつらいところです。なにせこの作品を読む前に「ねことじいちゃん」、「旅猫リポート」を読んでいたのですから。
     しかし、この先にはきっとハッピーな展開もあるのではないかという期待を頼りに、目を背けたくなる話も我慢しながら読み進めましたが、見事に期待は裏切られ、冒頭の話は始まりに過ぎないことを思い知らされました。事件はよりエスカレートし、その背景を取り巻く旧ソ連の暗部がリアルで、物語はより暗く、より深みを増していきます。しかも人間関係も冷ややかで、あげく気候も寒い。
     上巻をとりあえず読みましたが、今のところ救いのない展開です。下巻を読みたいと思うのは、事態の好転を期待するからなのか、怖いものみたさなのか。。。
     社会主義国であったソ連の描写は、やはりジョージ・オーウェルの「1984」を思い出させました。

  • 読み始めは、ちょっと・・・
    って思ってたのに
    どんどん引き込まれて
    イライラしながら進んで

  • 洋書っぽい内容。 面白い。

  • 2023/06/21-06/28

  • 面白いなんて言葉で表現するのが躊躇われるくらい、この物語で描かれるスターリン体制下のソ連は最悪。
    泣くことすらも国家への反逆の疑いをかけられて、処刑されるきっかけになる社会、やばすぎる。事実は小説より奇なり…。

    なのにやっぱり、この緊迫感、前半主要人物かと思われた人があっけなく命を落とす衝撃、男と女の極限時の心理、お、面白すぎる、ページをめくる手が止まらない!!

    上下巻の上巻は、こんなに読み応えあるのに、大量殺人に関しては、まるまる序章に過ぎないのもすごい。
    どこも凍りついた土地で、被害者の口に柔らかい泥が詰め込まれていたのはなぜか、という謎がうっすら浮かび上がるのみ。これからどうなってしまうの?

  • 映画は観ていたがあまり覚えていなかったので、読み返してみるとまた新鮮に面白かった。
    チカチーロのほうがおぞましさは上だけど、殺人犯より権力者のほうが恐ろしいという社会が何より怖い。

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著者プロフィール

1979年、ロンドン生れ。2001年、ケンブリッジ大学英文学科を首席で卒業。在学当時から映画・TVドラマの脚本を手がける。処女小説『チャイルド44』は刊行1年前から世界的注目を浴びたのち、2008年度CWA賞最優秀スパイ・冒険・スリラー賞をはじめ数々の賞を受ける。

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