チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

制作 : Tom Rob Smith  田口 俊樹 
  • 新潮社
3.79
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本棚登録 : 2340
レビュー : 317
  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102169315

作品紹介・あらすじ

スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • スターリン体制下のソ連、国家保安省の優秀な捜査官として働いているレオが主人公。

    上巻は連続殺人事件自体にこれから深く入り込んでいくってところでおわる。
    終盤までは当時のソ連がどんなにつらい状況下にあったか、国家保安省の仕事がどんなものだったか、などに重きを置いて書かれている。
    最後の方になってやっと本題に入るのかーって感じは若干あったものの、そこまでの展開も先が気になる読ませる展開で面白いし、翻訳も読みにくいってことが特にないので良かった。
    面白いは面白いんだけど、当時の状況が状況であるだけに辛い場面が多く気持ちがしんどくはなる。
    本当に当時はこんな感じだったんだろうか…。

    気になるところで上巻は終わったので下巻も楽しみ。

    それにしても作者は脚本などはすでに手がけていたらしいけど、小説はこれが処女作だと知ってすごいなぁと…。

  • 2008年発表のスリラー。長年の積読に手を付けてみる。
    ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得た物語である。

    2009年の「このミステリーがすごい!」海外編の第1位。「2008年度CWAスティール・ダガー受賞、ブッカー賞ノミネート」と帯は何だか華々しい。世界27カ国で刊行される一方、ロシアでは発禁というのはまぁむしろ勲章だろう。
    「リドリー・スコット監督で映画化決定」ともあるのだが、その後、いろいろあったのか、ダニエル・エスピノーサ監督で2015年に映画化されたようだ(あまり評判はよくなかった模様)。映画の方もロシアでは公開されなかったらしい。

    上巻を読み終えたところで、なるほどロシアではちょっと出せないだろうな、と思う。
    冒頭から、1933年のウクライナの飢饉のシーンである。著者は英国人なのだが、相当な取材をしたものか、かなり克明な描写が胸に迫る。
    物語の中心となるのは1953年、戦後のスターリン体制下のソ連である。
    主人公であるレオ・デミドフは、戦争の英雄でもあり、国家保安省捜査官というエリートである。特権階級として庶民には手の届かない贅沢な暮らしをしている。
    スターリンを中心とし、理想的な共産主義社会を築いていることになっているが、しかし、その実、社会は欺瞞に満ち、人々は常に「国家」の顔色を窺って生きている。ひとたび「スパイ」「反逆者」とでも疑われようものなら、「粛清」は当人のみならず家族や親戚にも及ぶ。拷問され強要された自白で隣人の名を口走れば、隣人もまたただでは済まない。罪があるかないかではない、疑われるようなことをするのが悪いのだ。

    部下の1人の子供が列車に轢かれて死ぬ。部下は事故ではなく、殺されたのだと主張するが、他の事件で忙しいレオは、子供を失った親の錯乱として取り合わない。
    その時、彼は重大な「反逆者」を追っていたのだった。だが、実のところ、「反逆者」はただの親切で腕の良い獣医だった。彼のただ1つの罪は、アメリカ大使館職員の犬の診察をしてやったことだった。
    レオは首尾よくこの「スパイ」をひっ捕らえるのだが、この事件の際に、自身の副官を邪慳に扱い、恨みを買う。そしてその姦計に落ち、民警として、妻とともに僻地へと追いやられる。
    その地で、レオはかつての部下の子供の死体に酷似した惨殺体を見る。

    上巻では、猟奇的殺人は確かに出てくるのだが、物語の大半は、抑圧的体制のねじ曲がった重苦しさの描写に費やされている。
    レオ自身、特権を笠に着た、かなり「嫌なヤツ」である。美人の妻とも心は通い合っていない。彼女はいわゆるトロフィーワイフなのだ。しかし、権力の座を追われた裸の個人となれば、妻との関係も変わらざるを得ないだろう。そんな気配も匂わせながら、上巻はひとまず幕を閉じる。

    さて、下巻はどういった展開になるのか。

  • ロシアの実情はほんとにこうなのかと驚いた。

  • ミステリ

  • このミスで話題になり本屋で平積みになっていたのを手にとった。

  • 設定にもうヤラレタ、スターリン時代という舞台背景をフルに活用している。ストーリーテリングの巧みさもTVドラマの脚本仕込。主人公夫婦の関係の変化や、脇役の丁寧な心理描写なども読ませる。ただし終盤ストーリーの無理矢理な収束のさせ方だけはチョット。。。

  • ミステリーとしてではなく、スターリン政権下における国家警察云々がレビューに書かれていて、読もうと決めた本。
    以下、ネタバレ有。



    いやー。

    エグイ!

    どこぞのディストピア小説より、余程、気鬱にさせてくれます。
    ご飯食べる気なくすレベル。

    国家保安省の捜査官である主人公レオが、最初どういう立ち位置にいるのかよく分からなかった。
    上司に気に入られている筈のレオが、マークしていた容疑者に逃げられるという致命的なミスを犯す辺りから、不穏な空気。
    彼等のミスは、そのまま死に直結する。
    サイコパスな部下、ワシーリーに善なる鉄拳制裁を加えたことも、その後のレオの窮地に至る布石となる。

    血も涙もない国家警察の中で、しかし、それはいつかの善政に向けた「仕方のない現実」だと思い込むレオ。
    しかし、彼が追い詰め、拷問を加えた相手が「スパイデサが。、」であったことから、改めて自身の職分を見つめ直す展開を見せる。
    そんなキレイな終わり方はさせませんよ、とワシーリーの計略により、レオの美しい妻ライーサにスパイの容疑がかかってしまう。

    このまま二人共殺されるのか、どちらかが裏切るのか、とマジでハラハラ。
    だって、何が起きてもおかしくない状況ですからね。

    三人対二人の命に持って行った智略戦も面白いし、結局、レオとの結婚も「結婚を拒めばいつか処刑されるから」と話して従順を装っていた暴露をする妻ライーサが、私的には好きな黒さです(笑)
    そして、左遷されてもワシーリーのクズっぷりは健在でーす。

    下巻がどうなるのか、なんも想像出来ず!

  • 上下巻あわせてのレビューです。

    劇場で観た映画版『チャイルド44 森に消えた子供たち』。サスペンスフルでとても面白かったけれど、主人公の行動は説得力に欠け、犯人もただのイカレたオッサン。ミステリーとしてはイマイチでしたから、トム・ロブ・スミスの原作ではどうなっているのだろうと興味津々。

    『このミス』にランクインしたときに読んだという友人は、かなりとっつきにくかったと教えてくれました。確かに、『卵をめぐる祖父の戦争』といい、旧ソ連が舞台の話は重苦しくてとっつきにくい。上巻は冒頭シーンが大きく異なるものの、まぁ映画と同じと言ってもよく、こりゃ映画を先に観ていなければ、読み進めるのに苦労しただろうと思いました。

    「ふ~ん、フツー」と思いながら下巻へ。そうしたら、冒頭シーンの意味がわかる後半から、もう怒濤の面白さ。

    完全ネタバレなので、原作をお読みになるご予定の方はご注意を。

    原作の冒頭では、まだ少年の兄弟が森へ出かけます。飢餓の時代、猫の鳴き声を聞いた兄のパーヴェルは、弟のアンドレイを連れて、猫を捕らえるために森へ。暗闇で猫を捕獲したかに思えたそのとき、パーヴェルの姿が見えなくなります。実はパーヴェルはある夫婦に襲われて連れ去られたのです。

    その夫婦は飢え死にしかけている自分の息子を助けるために、パーヴェルを殺して息子に食べさせようとしていました。しかし、意識を失ったパーヴェルを袋に詰め込んで帰ったときには息子はすでに死亡。パーヴェルを殺す必要がなくなった夫婦は、パーヴェルに食糧を与え、「帰ってもよいし、自分たちと一緒に来てもよい」と告げるのです。以後、パーヴェルは夫婦の息子だったレオの名前で生きます。

    大好きだった兄に見捨てられたと思ったアンドレイは、パーヴェルのことを片時も忘れませんでした。あるとき、戦争の英雄としてパーヴェルが掲載された新聞記事を目にします。兄が軍の重要機関に勤めていることを知り、アンドレイはパーヴェルにメッセージを送ることに。そのメッセージというのが数々の猟奇殺人でした。

    映画を観たときに原作は決してこうではなかったはずと感じたとおり、犯人はただのイカレたオッサンではなかったし、遺体の様子を見たレオが何かに突き動かされて、事件に異様な執着を見せることも、原作を読めば納得。

    レオとライーサの逃走劇に何の見返りもなく手を貸す人々。このくだりには胸が熱くなります。あきらかな狂人ながら、兄が気づいてくれるのをひたすら待つ弟、その弟を自らの手で殺さなければならなくなった兄。

    本作はロシアでは発禁処分になっているそうです。理想国家では殺人事件など起こらない。そう人々に言わせていたがゆえに実際に起きたアンドレイ・チカチーロ事件。著者はチカチーロ事件に着想を得たとのこと。犯人の名前もここから来たものだったのですね。

    下巻途中からはかなり興奮しました。国内編では唖然呆然とさせられることも多い『このミス』も、海外編のランキング1位は侮れず。

    映画の感想はこちら→http://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/5a174a3f00220aa28a66a71e943f8844

  • 2017年2月26日に開催されたビブリオバトルinいこまで発表された本です。テーマは「夫婦」。

  • 【スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。】
    (「BOOK」データベースより)

     ようこそ! どの国も成し遂げなかった平和と安全を実現した、理想郷へ! 犯罪? そんなものないない。あるならそれは敵国のスパイのせいだ。捕まえて尋問しなきゃ。例えどんな手を使ってでも。国家繁栄のためならなんだって許される。
     だってここは資本主義のソビエト連邦。凍えそうな吹雪に囲まれた、世界で最も安全な国だから……。
    (感想は下巻へ)

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