チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

制作 : Tom Rob Smith  田口 俊樹 
  • 新潮社
3.79
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本棚登録 : 2338
レビュー : 317
  • Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102169315

作品紹介・あらすじ

スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得て、世界を震撼させた超新星の鮮烈なデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • ずーーと読みたかったこの本。やっと読んだ~。
    とりあえずは上巻。

    これ、おもしろい。
    舞台は旧ソビエト。スターリンの時代です。
    読む前は「なんか難しそうだな~」と思ったけど、なんのなんの。
    とっても丁寧に書かれて、翻訳もわかりやすく、日本の警察小説を読んでるような感じ。

    なんでも、国のままにならないと、無罪でも処刑・重刑され、濡れ衣もきせられ左遷される。家族にも害が及ぶという正に共産主義な支配下に置かれた主人公が、シリアルキラーの真相に挑むという大スケールな話。

    読んでて、このソビエトという国の支配にムカムカさせられたことか。

    上巻のほんとの最後のほうで、やっと本編に入るような展開になってるけど、でも十分面白い。
    下巻が楽しみだ~!

  • いやー、殺人鬼なんかよりスターリン時代のソ連怖すぎる。
    上巻はほぼまるごと当時のソ連の社会描写に費やされている。
    「国家は正しい」(しかも科学的にそれは証明されている!)という理念が前提とされ、それを少しでも揺るがすものはたとえ現実であっても「間違っている」とされる。
    だから捕まえた容疑者はすべて犯人(自白するまで拷問するから)だし、それを覆すような証言は存在しない(そんな証言をするのは犯人の仲間だから)。
    主人公は国家保安省の高官として、そんな社会に多少の疑問を抱きながらも「「より大きな善」のために「犯罪者」を捕まえる日々を送っていた。
    この主人公が送る日々の描写が素晴らしい。
    ソ連時代の恐怖政治については多少知ってはいたけれど、こんなに生々しく描かれている物語は初めて。
    下巻も楽しみ!

  • ミステリーとしてではなく、スターリン政権下における国家警察云々がレビューに書かれていて、読もうと決めた本。
    以下、ネタバレ有。



    いやー。

    エグイ!

    どこぞのディストピア小説より、余程、気鬱にさせてくれます。
    ご飯食べる気なくすレベル。

    国家保安省の捜査官である主人公レオが、最初どういう立ち位置にいるのかよく分からなかった。
    上司に気に入られている筈のレオが、マークしていた容疑者に逃げられるという致命的なミスを犯す辺りから、不穏な空気。
    彼等のミスは、そのまま死に直結する。
    サイコパスな部下、ワシーリーに善なる鉄拳制裁を加えたことも、その後のレオの窮地に至る布石となる。

    血も涙もない国家警察の中で、しかし、それはいつかの善政に向けた「仕方のない現実」だと思い込むレオ。
    しかし、彼が追い詰め、拷問を加えた相手が「スパイデサが。、」であったことから、改めて自身の職分を見つめ直す展開を見せる。
    そんなキレイな終わり方はさせませんよ、とワシーリーの計略により、レオの美しい妻ライーサにスパイの容疑がかかってしまう。

    このまま二人共殺されるのか、どちらかが裏切るのか、とマジでハラハラ。
    だって、何が起きてもおかしくない状況ですからね。

    三人対二人の命に持って行った智略戦も面白いし、結局、レオとの結婚も「結婚を拒めばいつか処刑されるから」と話して従順を装っていた暴露をする妻ライーサが、私的には好きな黒さです(笑)
    そして、左遷されてもワシーリーのクズっぷりは健在でーす。

    下巻がどうなるのか、なんも想像出来ず!

  • 1980年代に女子供50人を殺したチカチーロ事件に着想を得て、1950年代のスターリン政権下のソビエトを舞台に描いた作品。このミス2009年版海外部門第1位ということで読んでみる。

    殺人鬼よりも、とにかくソヴィエト社会が前提としている不文律が恐怖。
    ソビエトでは平等の社会が実現しているので犯罪は起こり得ない。
    もし犯罪を犯す者がいるとすれば、それはソヴィエトの体制の埒外にいる者で、排除しなければならない。

    この不文律が人々の日常生活に恐怖と不信を植え付けます。
    硬直した社会システムが無実の人々を殺していきます。真面目に仕事をしていても嫌疑をかけられたが最後です。なぜなら国家に捕まえられた容疑者はすべて犯人だから。それは自白するまで拷問するからです。それを覆すような証言は存在しません。そんな証言をするのは犯人の仲間だからです。魂を切り売りして心を殺さなければ、体が生き延びることができない社会です。

    そんな窒息しそうな社会の描写がひとつ。
    そこにソヴィエト全土にわたる連続殺人というミステリーが加わって大スペクタクルになっています。
    すごい小説です。

  • 洋書にありがちな日本語訳の微妙なずれが全く無く、読んでいると日本人作家のものかと思うほど。捜査官のレオ・デミドフがとてもいい。映画化するなら、絶対ダニエル・クレイグに演じてもらいたい。

  • 暗い暗い旧ソ連の恐怖政治下の話。推理物だけど、読み応えの部分では抑圧された人々の生活の方があるかも。これから下巻にかけて事件がどう展開していくのか期待。

  • 冒頭の飢餓の描写から眼を奪われ、終わりまで一気に読んでしまいました。国権の代行者イコール正義であり、良心や良識が否定される社会の恐ろしさをジワジワと感じます。

  • うーん、読むのが辛い・・・

  • スターリン体制下のソ連、国家保安省の優秀な捜査官として働いているレオが主人公。

    上巻は連続殺人事件自体にこれから深く入り込んでいくってところでおわる。
    終盤までは当時のソ連がどんなにつらい状況下にあったか、国家保安省の仕事がどんなものだったか、などに重きを置いて書かれている。
    最後の方になってやっと本題に入るのかーって感じは若干あったものの、そこまでの展開も先が気になる読ませる展開で面白いし、翻訳も読みにくいってことが特にないので良かった。
    面白いは面白いんだけど、当時の状況が状況であるだけに辛い場面が多く気持ちがしんどくはなる。
    本当に当時はこんな感じだったんだろうか…。

    気になるところで上巻は終わったので下巻も楽しみ。

    それにしても作者は脚本などはすでに手がけていたらしいけど、小説はこれが処女作だと知ってすごいなぁと…。

  • 2008年発表のスリラー。長年の積読に手を付けてみる。
    ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得た物語である。

    2009年の「このミステリーがすごい!」海外編の第1位。「2008年度CWAスティール・ダガー受賞、ブッカー賞ノミネート」と帯は何だか華々しい。世界27カ国で刊行される一方、ロシアでは発禁というのはまぁむしろ勲章だろう。
    「リドリー・スコット監督で映画化決定」ともあるのだが、その後、いろいろあったのか、ダニエル・エスピノーサ監督で2015年に映画化されたようだ(あまり評判はよくなかった模様)。映画の方もロシアでは公開されなかったらしい。

    上巻を読み終えたところで、なるほどロシアではちょっと出せないだろうな、と思う。
    冒頭から、1933年のウクライナの飢饉のシーンである。著者は英国人なのだが、相当な取材をしたものか、かなり克明な描写が胸に迫る。
    物語の中心となるのは1953年、戦後のスターリン体制下のソ連である。
    主人公であるレオ・デミドフは、戦争の英雄でもあり、国家保安省捜査官というエリートである。特権階級として庶民には手の届かない贅沢な暮らしをしている。
    スターリンを中心とし、理想的な共産主義社会を築いていることになっているが、しかし、その実、社会は欺瞞に満ち、人々は常に「国家」の顔色を窺って生きている。ひとたび「スパイ」「反逆者」とでも疑われようものなら、「粛清」は当人のみならず家族や親戚にも及ぶ。拷問され強要された自白で隣人の名を口走れば、隣人もまたただでは済まない。罪があるかないかではない、疑われるようなことをするのが悪いのだ。

    部下の1人の子供が列車に轢かれて死ぬ。部下は事故ではなく、殺されたのだと主張するが、他の事件で忙しいレオは、子供を失った親の錯乱として取り合わない。
    その時、彼は重大な「反逆者」を追っていたのだった。だが、実のところ、「反逆者」はただの親切で腕の良い獣医だった。彼のただ1つの罪は、アメリカ大使館職員の犬の診察をしてやったことだった。
    レオは首尾よくこの「スパイ」をひっ捕らえるのだが、この事件の際に、自身の副官を邪慳に扱い、恨みを買う。そしてその姦計に落ち、民警として、妻とともに僻地へと追いやられる。
    その地で、レオはかつての部下の子供の死体に酷似した惨殺体を見る。

    上巻では、猟奇的殺人は確かに出てくるのだが、物語の大半は、抑圧的体制のねじ曲がった重苦しさの描写に費やされている。
    レオ自身、特権を笠に着た、かなり「嫌なヤツ」である。美人の妻とも心は通い合っていない。彼女はいわゆるトロフィーワイフなのだ。しかし、権力の座を追われた裸の個人となれば、妻との関係も変わらざるを得ないだろう。そんな気配も匂わせながら、上巻はひとまず幕を閉じる。

    さて、下巻はどういった展開になるのか。

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