訣別のトリガー (新潮文庫)

  • 新潮社 (2013年7月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784102179222

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  • 「メモからこの仕事の話を聞くと、すぐに彼は、これを最後の仕事にしようと心に決めた。コロナドに帰るのだ。帰って息子に会うのだと。」
    クライム・ノヴェルには最後の一仕事系というのもある。その仕事をやり遂げるとともに人生をも解決しようとするそれらの物語は、人生の解決出来なさ故に、これもまた「解決出来ない物語」になるのだった。
    はじめに読んでしまった解説の冒頭では、「血と暴力の国(ノー・カントリー・フォー・オールド・メン)」のタイトルが引き合いに出されたり「ウィンターズ・ボーン」のダニエル・ウッドレルのコメントが引かれていて、その2作は大好きだからあがったのだけれど、読み始めて直ぐに、わたしならそこに初期のボストン・テランも付け加えたい、と思った。
    丁寧に描写される世界の状況と、繊細に抉りだすように語られる内面描写と独白。その両方に詩的で美しい比喩のベールがかけられていく。一瞬内容を見失ってしまうようにも思えるけれど、そうすることで新しい景色が見えたり、意外な輪郭が浮かびあがったりする。そういう文章。好きだ。
    最後の仕事と決めた男の決断によって、事件が起き事態が動く。多くの人々も決断を迫られ、それぞれの人生を解決しようとせざるえなくなる。彼女、彼らの視点と場面を短く頻繁に切り替えながら、幾つもの個人的な物語がひとつの世界を作りながらドライヴしていく。特に主人公がある意味人生は解決出来ないことに気がついて以降、クライマックスに向かっていく後半は凝縮された内容が目まぐるしく切り替わってめちゃくちゃドライヴしていた。ここでもまた初期のボストン・テラン、特に「死者を侮るなかれ」の同じくクライマックスに向かう部分を読んだときの興奮も思い出した。最高。
    生き残り物語を語れる、あるいは語られるアウトローには人生にも“仕事”にも生き残るためのこだわりやルールがある。クライム・ノヴェルではそれも読みたい。この物語の主人公は最後の仕事を受けるため、人生を解決しようと、それまでのこだわりを捨てルールを曲げることで終わりがある物語がはじまるから、そのこだわりやルールは少し虚しくて哀しくも読めてしまうけれど、それでも沢山の付箋が立った。その付箋を立てたなかの幾つかのラインはわたしの解決しない人生のヒントになって、こだわりやルールにもなっていく、ような気もするのだった。

    「いまできるのは、どうにかなるだろうと思いながら前進すること以外、ほとんどなかった」

    「もはや自分のものにはならない人生を少しだけでも取り戻したかったから」

    ……そうやって生きていくしかないときも、ある。そんなときをクライム・ノヴェルが、読書が救ってくれる、といいなと思ってしまうこともありますよね。うん。

    そういえば、鈴木恵さん翻訳のクライム・ノヴェルを続けて読んでいた。彼が翻訳する作品も翻訳された文章も好みなんだな、と気がつきました。

  • こういう渇いた感のある小説はほんまジワジワくる。

  • 熱風と渇きを肌に感じるようなノワール小説。家族との暮らしの望むヒットマン、レイ・ラマーの最後の仕事は相棒のミスにより失敗に終わり、窮地に立たされる。かつて、石油採掘で栄華を極め、今は凋落したアメリカの地方都市を舞台に裏切りと復讐、暴力の嵐が吹き荒れる。

    ドン・ウインズロウの『犬の力』『フランキー・マシーンの冬』といったノワール小説を彷彿とさせる秀作。

    アーバン・ウェイトのデビュー作である『生、なお恐るべし』にも驚かされたが、この作品に漂う独特の雰囲気にも驚かされた。

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