- Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102186510
作品紹介・あらすじ
若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。あるとき、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。故郷へ逃亡した彼は、醜さゆえの孤独にあえぎ、彼を憎んだ“怪物”に、追い詰められることなろうとは知る由もなかった。天才女性作家が遺した伝説の名著。
感想・レビュー・書評
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フランケンシュタイン博士が生み出した醜悪な怪物は、聡明な頭脳と知性を持ち合わせている寂しがり屋。自己憐憫に浸って都合のいい理屈をひねり出す博士より、よほど「人間」として魅力的だ。
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イギリスの作家・メアリー・シェリーが19歳のときに発表したSFの古典と讃えられる作品だが、未読だったので、どれどれと読んでみた。で、気づいたことがある。誤解していた点が2つある。
まず、フランケンシュタインは怪物の名ではなく、怪物を作った若き科学者の名だということ。
で、もうひとつ。ここが重要なこと。
フランケンシュタイン博士が作り出したものは「怪物」ではない。言葉を学習できて、情愛と友を求める感情と理性を宿した「人造人間」を作り上げたということ。
作られた人造人間は恐ろしい容貌ゆえに社会から除け者にされ、孤独ゆえに創造主と人間を恨み、復讐のため殺戮を繰り返す。怪物として生まれたのでなく「怪物」となってしまった哀しい被造物のお話。おそらく、この作品の普遍性と読み継がれてきた理由がここにあるのでしょう。 -
映画なら見なかったと思いますが、18世紀末に生まれ、19世紀初頭
20歳の美女が書いたという小説ならば興味ひかないわけはありません
ところが、暑さも忘れるほどゾッとする怪奇な恐怖話ではないこと
むしろ、これは現代にも当てはまる事情ではないかと、そこに背筋が凍りましたね
フランケンシュタイン青年科学者が人間に似た生命体を完成させる
それが怪物くん、フランケンシュタインが作った名無しの権兵衛
解説にある通り、わたしも怪物の名前がフランケンシュタインと思っておりました
でも、フランケンシュタインが生んだようなもんだから、フランケンシュタインでいいんじゃないか
それはさておき、作品の生命体があまりにもおぞましいので
(そこは詳しくは描写されていないので、想像で各自イメージする)
製作者は拒否してしまう、つまり、捨ててしまう
ちょっと待って!仮にも人間に似た生命体だよ
書き損じの小説や、作りかけの工作じゃないんだから・・・
怪物くん見た目はひどい(おそましい)が
掘り起こせば感性に溢れ、知性と情けを知る御仁
あるきっかけで人間としての教養を積んでしまう
それではと
人間社会で受け入れてもらいたいのがあだとなり
本人の意向とは裏腹に恐れられ
ますます孤立してしまう悲しさ
生みの親にも嫌われ、誰も振り向かない、認めてもらえない
そうなったときどうなるか?
失意のどん底、復讐の魔物となるのか
少々饒舌なところもありますが、三重構造の良さ
語りて
フランケンシュタイン
怪物くん
それぞれの真に迫ったモノローグがグイグイと迫ってきます
怪物とは「超現代科学技術のもう取り返しがつかない行方か!」
との思いを強くしました -
映画『メアリーの総て』を観た後に手に取ったものの、長い前置きに飽きて放置していたのだが、先日、柴田元幸さんが好きなイギリスの小説として『ガリバー旅行記』と並んで挙げていらしたので、再び興味を持ち、今回は最後まで読めた。なるほど元祖SFと言われるだけあって、今日までのさまざまな作品に影響を与えているんだなあと納得&感心。直接間接を問わなければ、ごんぎつねだって、町田康(ヴィクターの情けない独白)だって、流れを汲んでいるのでは?アラビア娘を通して女性への教育の大切さを説くところや、怪物が募る孤独や疎外感を自分を受け入れてくれない女性への憎悪に転嫁する瞬間の描写など、今読んでも色あせないし、これを19歳の若さで書いたメアリー・シェリーはさすがである(このあたりは『メアリーの総て』を観ていたのでより楽しめた)。
怪物のくやしさももちろんわかるけど、私は中盤、むしろ言い訳だらけのヴィクターの利己性、加害性に自分を重ねて、反省というか苦い気持ちになったのだが、最後の方はグダグダすぎてさすがにヴィクター、おまえ、アホかと。
自然の描写も素晴らしかったな。
読めてよかったです。 -
筆者の旅行体験を元に描いた背景描写が細かく壮大で読み応えがあった。博士と怪物の相入れないジレンマが心苦しかったけれど、どちらも“人間性”を感じるところが多々あって200年前に書かれたとはいえ(翻訳済みですが)読みやすかった。周りの登場人物たちの慈愛が怪物の孤独を更に強調され切なかった。。
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新潮文庫のStar Classicsの1冊として出た新訳版。
既存の翻訳は確か創元で読んだと思うのだが、新訳になってじゃあ何が変わったか……というと、正直なところ、最初に読んだのは遙か昔過ぎて覚えていないw 近年の流れとして、所謂『翻訳調』の訳文を書く人は少なくなったので、多分こなれたんだろうなぁ、と想像するのみ。
ただ、創元版はホラー小説の古典という雰囲気をたたえていたが、今回の新潮文庫版は怪物の苦悩、求めても求めても得られない寂寞とした寂しさに翻訳の重点が置かれているような印象を受けた。この訳だと、主人公のフランケンシュタインより、彼が作り出した怪物に親しみを感じる読者も多いのではないだろうか。 -
昼間に頭痛で寝込んでる間もちまちま読んでた甲斐あって、わりと早く読み終えられた。古典ホラー=マニア向け、って括りに入れられてしまうにはあまりにも惜しい人間悲劇の傑作だった。
成立時期が古いがゆえの固定観念のたぐいもあちこちに垣間見えるけど、それでもなおこの作品が間断なく突きつけてくる「問い」には時代を超える普遍性があると思ったな。
☆4か5かいたく迷ったけど、古いからこそ19世紀初頭の時代の息吹も感じさせてくれるってとこを評価して☆5としました。
名作といっていいと思う。
著者プロフィール
メアリー・シェリーの作品





