ゴールデンボーイ―恐怖の四季 春夏編 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102193129

作品紹介・あらすじ

トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い…。不気味な2人の交遊を描く「ゴールデンボーイ」。30年かかってついに脱獄に成功した男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。キング中毒の方、及びその志願者たちに贈る、推薦の1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 映画「ショーシャンクの空に」の原作『刑務所のリタ・ヘイワース』のアンディーにはレッド同様私も魅了された。『ゴールデンボーイ』はいわゆるキングらしい話なのでは。じわりとくる恐ろしさと気持ち悪さで読むのが辛いながら目が離せなかった。

  • 「刑務所のリタ・ヘイワース」は映画「ショーシャンクの空に」と若干違うとこはあるものの、スカッとするところは全く同じ。
    「ゴールデンボーイ」は怖いけどページをめくる手が止まらない。アメリカにはトッドみたいな爽やかだけど不気味な少年が本当にいそうで、リアルな恐怖だった。

  • 「キ◯タマを握り合う」というパワーワードは、お互いの弱みを握り合うという意味らしい。この表現すごく好き。ウケる。

    「刑務所のリタ・ヘイワース」
    結構長かったけど面白くてすんなり読めた。
    後日譚見たい。切実に。

    「ゴールデンボーイ」
    純粋なトッドがだんだんおかしくなっていくところが不気味で良かった。最初からサイコパスだったのかな、、?微笑をいつも浮かべているというのが怖くて良い。

  • 映画ショーシャンクの空に、は、名前だけは知ってた程度で特になんの予備知識もなかったのも幸いして、話の最後まで展開が分からずに楽しめました。

    刑務所ものといえば単純にどういう手段で脱獄を試みるか?に焦点が向かうのが当たり前であり、あくまでも刑務所本体でのミクロ的なことの成り行きにリソースが割かれるもの、と考えるのがふつうだと思うんですが、この話の主人公格のアンディー・デュフレーンは、刑務所服役中の何十年にもわたるあいだで用意周到な計画をはかり、脱獄する前から脱獄したあとの事までを計算しつくしたうえで、それを『楽しむ』余裕さえも見せるという、超人ぶりを発揮します。

    話の中でこの物語の書き手であるレッドは、刑務所内での暮らしを送ったものは奥行きのある考えができなくなって娑婆に出ても刑務所が恋しくなるからまた犯罪をおかして逆戻りする、というニュアンスで読者に語りかけますが、このアンディーに関しては、刑務所内での暮らしを送りながら閉塞する思考に収まっていく通常の人間と真逆に、アメリカの地をマクロ的に捉える視野と豊富な知見に磨きをかけ、周りを味方につけ、自らのプランを愚直に遂行していく胆力までも備えているのです。

    冤罪を受け、自らの置かれた状況が地の底まで落とされても、決して折れずに未来の姿を信じてインテリジェントかつパワフルに進み、そして、計画に絶対的に必要な『とあるモノ』を調達したレッドの恩に対する報いまでを忠実にこなす。アンディーはどこを切っても金太郎のナイスガイですね。

    著者のスティーブン・キング氏を絶賛されていたスポーツライターの金子達仁氏の影響で1冊手にとってみた次第でしたが、期待以上に得るものの多い読書体験でした。また時間みつけて他作品にも食指をのばしてみようと思います。

  • 名作映画『ショーシャンクの空に』の原作「刑務所のリタ・ヘイワース」と表題作の「ゴールデンボーイ」の2編を収録した作品集。
    2編とも方向性のまったく違う作品ですが、どちらも面白かった! 

    解説でどの作品も他の長編を仕上げた後に余力に任せて書いた、と紹介されていたけど、そのときの筆の勢いそのままに、書きたいものを書いたからこその傑作なのかもしれません。本当にこの時期のキングは脂が乗りきっていたのだろうな、と思います。

    「刑務所のリタ・ヘイワース」は語り口がまず見事! 無実の罪で投獄された男アンディーの運命を、他の受刑者が回想しながら語る形式の作品。
    アンディーという男の不屈の精神であったり、他の受刑者や看守に対しての振る舞いであったりという不思議な魅力もあるけど、それを語る語り口がよかった。

    昔を懐かしむ感じもいいし、彼のアンディーに対する敬意の感情から、自分は人間の尊厳や強さに思いをはせていきました。キングの語りはもちろん、訳者の浅倉久志さんの読み込みや表現力もさすがなのだろうな、と思います。

    語り口もいいのだけど後半になると、ストーリーラインがかなり細かく作られていたことが分かってくるのも、ミステリ好きとしてはうれしかった。
    読み終えてみるとそこらかしこに伏線が張り巡らされていて、アンディーの行動の意味も変わって見えてくるのが面白い。たぶん映画で見ても、後からもう一度見返したくなる作品だと思います。

    そしてエンディングの美しさたるや!
    ページ数が200ページに満たない、短編としても長編としても扱いが難しくなりそうな作品ですが、過不足なく物語を描ききったことも本当に見事だと思いました。

    表題作の「ゴールデンボーイ」はまた毛色が大きく変わり、心理サスペンス、スリラーの雰囲気が強い作品です。
    元ナチスの老人と、その老人の正体を偶然知り、彼からユダヤ人虐殺の話を聞き出そうとする少年の交流を描かれます。

    怖いもの、不気味なもの、残酷なものに興味を持つ子どもの暗い心理を絶妙に描かれます。そしてはじめは少年が老人を「ナチの戦犯だとバラす」と脅していたのに、徐々にそうした力関係が移り変わっていく過程も見所でした。
    そして徐々に二人が狂気に陥り追い込まれていく描写もさすがキングと思わせる。子どもや人間の暗黒面を描いた読み応えのある一編だったと思います。

    どちらもキングの十八番であるモダンホラーとはジャンルが違う作品ですが、セピア色の過去に新しい命を吹き込む語り口や、追い込まれる人間の狂気など、キングらしさは十二分に詰め込まれていて、非常に満足度の高い作品でした。

  • 「恐怖の四季」春夏編はどちらもホラーじゃないけど夏はこわい。面白かったです。
    春編は、無実の罪で投獄されたけど脱獄する男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」。こちらを映画化した『ショーシャンクの空に』は何度も観ている良い映画だし原作ももちろん良い。ラストが違うんだなぁ。「ショーシャンクのしあわせ家族」や「断食療法」というユーモアあり、映画では亡くなる人たちが原作では亡くならないのでそれはこちらが好き。希望は良いものだ。

    夏編は、身近に収容所の所長やってた元ナチのSSが住んでいるのに気付いた少年が彼に会いに行き、闇と狂気に呑み込まれていく「ゴールデンボーイ」。これが怖い。トッドには元々素養…というか性質があったんだろうけど、黒いセレンディピティで増幅されてしまいました。
    じわじわと支配・被支配が逆転して共犯関係になっていくのも恐ろしい。悪夢だ…と思っていたけど、だんだんとこの出会いに生き生きとしていくドゥサンダー。トッドにとっても悪夢だったろうけど、終盤にドゥサンダーの正体がばれてからタイトルの意味がわかるラストまでの鮮やかな変化にゾッとします。
    「ときには、過去がそんなにあっさり眠ってくれないこともあるがね。でなくて、だれが歴史を勉強するだろう?」。歴史は繰り返す、の上手い言い方だ。この作品ではナチスだけれど、そうわかるまでは魅力的な老人に見えているので、SSとかのナチの高官って魅せるのが上手いんだろうなと思ったりしました。場を掌握するのが上手い、のか。
    夏編も『ゴールデンボーイ』のまま映画化されているけれど、たしか一度しか観たこと無いのでまた観たくなりました。怖かった記憶はあります。

    ドゥサンダーは株の配当で暮らしているのだけれど、株買うときにアドバイスしてくれた銀行員がアンディー・デュフレーンだったようで、ここで春夏が繋がるのか…と。すごい。

  • スティーブン・キングの中編2作、「刑務所のリタ・ヘイワース」と「ゴールデンボーイ」を収める。
    原著は全体として、中編4作でDifferent Seasons(それぞれの季節)として発刊されている。1編ずつ、春・夏・秋・冬を現す副題がつく。
    邦訳では「恐怖の四季」とされる。おそらくキングがホラーの大家として知られるためにつけられたのだろうが、本作は実はホラー要素は薄い。
    それぞれの作品はキングが長編小説を書いた後に余力で(!)書いたようなもので、書かれた年代も違えば、深い関連もない(1つの作品の劇中人物が他の作品にちらりと出てくることはある)。
    ホラー色が薄い小説、しかも中途半端な長さとあって、なかなか刊行の機会がなかったものを、4編をまとめて出すことになった、という経緯である。
    原題のDifferentはホラーとは「違う」ということも示唆しているのだが、にもかかわらず邦題ではわざわざ「恐怖」と銘打っているのはなかなか皮肉な感じではある。

    新潮文庫版は、春・夏にあたる「刑務所の・・・」と「ゴールデンボーイ」で1冊、秋・冬にあたる「スタンド・バイ・ミー」と「マンハッタンの奇譚クラブ」で1冊と分けている。4作のうち、「マンハッタン・・・」を除く3作が映画化されているというのはさすがキングというところか(「マンハッタン・・・」も映画化の計画はある(あった?)らしい)。

    「刑務所のリタ・ヘイワース」
    Rita Hayworth and Shawshank Redemption - Hope Springs Eternal
    今回本書を読んでみる気になったのは、久しぶりに映画「ショーシャンクの空に」を見たため。本作の映画化作品である。
    妻と愛人を殺害した容疑で、アンディー・デュフレーンがショーシャンク刑務所にやってくる。「調達屋」と呼ばれるレッドは、アンディーと友だちになる。銀行家だったというアンディーはどこか超然とした雰囲気で、周囲の囚人たちとは違っていた。自分は無実だと主張していたが、皆本気にはしていなかった。
    アンディーは、刑務所の無法者たちに痛い目に遭わされもするが、彼らに対抗する術も持っていた。聡明で根気よく、希望を失わない彼は、1つ1つ、刑務所では不可能と思われた事柄を成し遂げていく。
    ある日、入所してきた男はアンディーの事件の真犯人を知っているといった。そこから大きく状況が動くかと思われたが・・・。
    映画とは少々ラストが異なる。途中のエピソードも映画の方が輪郭がくっきりして劇的なイメージ。だがこちらはこちらで悪くない読み心地である。余韻の残るラストもよい。

    「ゴールデンボーイ」
    Apt Pupil - Summer of Corruption
    「刑務所の・・・」の方が主目的だったので、ついでという感じで読み始めたのだが、いや、これは少し驚いた。
    いわゆるホラーではないが、これは怖い。
    13歳の少年トッドは、両親自慢の優等生。勉強だけでなくスポーツも万能。金髪碧眼で顔立ちも整っている。家も裕福、前途洋々である。
    彼はある時、街に住む老人が隠れナチであることを突き止める。そして老人の家を訪れ、黙っている代わりにナチ時代の話をしろとせがむ。強制収容所や大量殺戮に興味があったのだ。老人は渋々ながらそれに応じ、2人は毎週、多くの時間を共に過ごすことになる。両親には、「気の毒な老人のために本を読んでやっているのだ」と偽って。
    だが、過去のサディスティックな所業の物語は、次第に語り手と聞き手の両方を蝕んでいく。自身の中のサディズムが呼び覚まされ、2人は徐々に道を踏み外していく。お互い憎み合いながら、お互いを理解してもいる老人と少年。2人を待ち受けるものとは。
    原題のApt Pupilとは「物分かりのよい生徒」といった意味。邦題のゴールデンボーイは将来性のある青年を指し、映画でもこの邦題を使用している。誰がどの時点でこの邦題にしたのかよくわからないが、中身を汲んだタイトルとは言えるだろう。
    本作で特に怖いのは前半で、思春期の不安定さと相まって、少年が徐々に闇に飲まれていくわけである。少年は当初は事態を制御できると思っていたのだろうが、そんなはずはない。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」。サディズムは特殊な人にだけ宿るのではないのだろうと思わせ、ひたひたと怖さが忍び寄る。
    但し、彼が実際に道を踏み外して以降はそれほど怖くない。個人的には、いくら何でもここまでのことはしないだろうとすっと冷めた。
    動物や人に対する残虐シーン、女性や人種に対する差別的発言(独白)はかなりきつい。
    映画化にあたっては、ラストなどが改変されているようだ。

  • 前半の、刑務所のリタ・ヘイワースのみ。後半は残酷で読むことができない。映画もいいけど、これは小説もほんと、いい。

  • 2本立のうちの1本はショーシャンクの空にの原作「刑務所のリタ・ヘイワース」。映画が好きだったため原作が気になり購入。映画と同様レッドの一人称視点でアンディとショーシャンク刑務所での生活が描かれる。不運と幸運、絶望と希望、そして友情の物語。ラストシーンは映画だとすこし淡白に感じたが、小説はじっくり描かれていて良かった。
    映画よりも好きな終わり方だと思ったけど、映画版のラストシーンは、あれは先に小説を読んでから映画を見た人へのご褒美なんだなと思えば理解できた。
    刑務所の暗い雰囲気とレッドの軽快な語り口調との対比が良い。物語全体が安心感に包まれているのはそのせいだろう。最高でした。

    しかしこの本、刑務所のリタ・ヘイワースが占めるのは3分の1程で、ゴールデン・ボーイのほうが倍くらい厚い。
    元気ハツラツ文武両道、ビジュアルも良い金髪白人少年トッドは、ある日近くに住む老人デンカーの重大な秘密を知ってしまう。二人はその秘密を原因とし、互いに牽制し、強迫し、あるいは協調しながら奇妙な関係性を築く。
    人間の内側を抉り出すような描写は狂気さえ感じるが、こちらも独特の雰囲気ですぐに物語に引きずり込まれ、一気に読み終えた。
    ショーシャンクのおまけ程度に思っていたがこれも相当面白かった。2本とも最高でした。

  • キングの人を観る目、洞察力は凄い。ほぼ40年近く前の作品だが古さを感じさせなくて、人間の業みたいなものがひしひしと伝わって来る。再読しても新鮮で改めて違う面白さを発見できる。
    収蔵のもう一編は「ショーシャンクの空」と映画化された原作。日常の何気ない狂気がリアルで怖い。

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著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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