人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.71
  • (18)
  • (33)
  • (27)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 464
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102200032

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 就職出来ないという悩みを、ヤギになることで忘れよう。
    といわれてどうお感じになるだろうか。
    十中八九、「何を言っているんだこいつは」と感じるだろう。
    しかし著者はこれを思いついてしまったので、実行に移してしまうのだ。著者は最初から最後まで、勢いで生きている。本人も自分の顔写真に「Mr.無計画」とキャプションをつける程である。
    はじめは私もはははと笑いながら読んだ。だが読み終わって、ふと考える。我々は、私は、頭でっかちになっていないか?慎重は行動に起こさないことの言い訳ではないのか?著者は、思いつきを行動に移し、周りを巻き込み、計画は変更になりまくっても最後までやり通す。そんな著者を、周りの人も呆れながらも手助けしてしまうのだ。

    考えすぎて、足がすくんだ時に読み返したい。飛び込め!

  • 自宅の裏庭で鉄鉱石から鉄を抽出し、ジャガイモの澱粉からプラス
    チックが作れると知ればチャレンジし、某国の硬貨からニッケルを
    入手する。考えられるあらゆる手段を駆使して原材料を揃えて、
    自作のトースターを作り上げたイギリス人のトーマス。

    大学院の卒業制作だったこのトースター・プロジェクトをまとめた
    『ゼロからトースターを作ってみた結果』(新潮文庫)は世界中で
    反響を呼び、作品はトーマスが暮らすイギリス以外の国の博物館で
    も展示された。

    無謀とも思えるチャレンジを繰り返すトーマスの姿に笑えた一方、
    大量生産・大量消費を考えるきっかけも与えてくれた。そんな
    トーマスが、またやってくれた。今度は自分が作品になってし
    まっているのだ。それも、ヤギ。

    めでたく大学院を卒業してフリーランスのデザイナーになったもの
    の、暇である。仰せつかったのは姪っ子の愛犬の散歩。既に33歳に
    なったトーマスは、将来に対するぼんやりとした不安を抱えていた。

    その解決方法は…そうだ!しばらく動物になって人間としての悩みを
    忘れちゃえばいいじゃんっ!

    ど、どうしてそうなる?トーマス。フリーランスを辞めて就職する
    とかって選択肢はないの?それか積極的にデザイナーとしての自分を
    売り込むとかさ。

    私の思考の斜め上を行っているのであろうトーマスには現実逃避が
    一番の選択だったようで、思い立ったら行動は早い。早速、医学研究
    などの支援をしている団体に「象になりたいプロジェクト」の申請
    を出す。

    そう、そもそもの始まりは象になることだった。でも、実際に象を
    見る機会があってその大きさにあっさり断念。象になりたくなくなっ
    ちゃった。さて、どうしたものか。

    そこで相談したのがシャーマン。えっと…動物学者とかじゃなくて、
    何故にシャーマン?ねぇ、トーマス。どうしてそうなっちゃうの。

    そしてシャーマンの助言は「ヤギなんてどう?」だった。それ、
    いただきっ!ヤギになって草原をギャロップしたいっ!

    見事な方向転換だよ、トーマス。

    イギリス国内のヤギの権威に「ヤギって悩むんですか?」などと話を
    聞きに行き、言語神経の研究者に電気ショックで人間の言葉を失わせ
    て下さいとお願いし、病気で死んだヤギの解剖に立ち会って体の構造
    を調べ、義肢技術者に頼んで本来の仕事の合間にヤギのように動ける
    補助具を作ってもらう。

    完璧だよ、トーマス。ママに作ってもらったヤギ用防水スーツもある
    し、これで一通りヤギになりきるツールは揃った。さぁ、ヤギの群れ
    に同化する為、アルプスへ出発だ!

    なんでわざわざアルプスなのか分からん。ヤギについてレクチャーして
    もらった保護施設でもいいんじゃないか?でも、きっと雄大な自然の
    なかで草をモグモグするヤギがトーマスの目標だったのだろうな。

    アルプスでのトーマスはしっかりヤギになっていた。しかも、ヤギたち
    から「仲間」と認められちゃってた。

    こうと決めたら走り出す方向が人とは少々違っているけれど、トース
    ターの時といい、今回のヤギになりきるプロジェクトといい、「やり遂
    げる力」の発揮度合いは超人的だ。

    トーマスがアルプスに行ってヤギになりるまでには哲学的考察があり、
    人間と動物の進化についての言及があり、人間の言語を理解すると
    言われる動物に対しての検証もありで、人間とその他の動物との
    違いを考える上で非常に参考になる。

    やっていることは破天荒かもしれないが、トーマスって実はとても
    教養豊かで感受性の鋭い人なのではないかしら。

    嫌な出来事が重なったりすると「あ~、鳥になって好きなところへ
    飛んで行きたい」とか、「猫になって1日中ゴロゴロしていたい」と
    思うことがある。だからって、トーマスのように本当に人間をお休み
    してしまうことはないんだけどね。

    だって、本書を読むと人間と動物の体の構造の違いが分かってしまう
    から、人間は人間以外のものにはなれないんだと思っちゃう。

    さて、念願の(?)にヤギになってアルプスを歩き回ったトーマス。
    次は何をしてくれるのだろうか。期待しちゃうよ。

    尚、ヤギになれたトーマスだがギャロップは人間の体の構造上無理
    だった模様。ヤギのように前脚(人間なら両腕)から着地したら、
    鎖骨が折れてしまうのだそうだ。

    各章、カラーでの写真が豊富でヤギ・プロジェクトの様子がよく理解
    出来る。だが、解剖時の写真もあるので苦手な人は要注意だ。

  • 20200321
    原題: Goatman: How I Took a Holiday from Being Human by Thomas Thwaites (2016)
    無職の英国人男33歳がふと人間の悩みから逃避してヤギになることを決意し、哲学的、生物学的、化学的見地から、魂・思想・骨格・筋肉・消化器官等、あらゆるヤギ的な要素に本気で(笑)取り組んだルポ、2016年度イグノーベル賞受賞。真剣に取り組む写真がシュールで好い。

    ー満足な豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスの方がよい(J・S・ミル「功利主義論」)

    ー何かについて悩むためには、まずはそれが起きるのか、起きないのかについて想像する必要があるのだとの考えに僕は行き着いた。これは、未来について心配するためには想像しなければならないということだ。

    ーすべての物理的な現実は幻想かもしれないけれど、疑うためには、何かが起きていなければならず、それゆえ、疑っている「私」は存在しているはずだということだ。コギト・エルゴ・スム。我思う、ゆえに我ありというやつさ。

    ー家畜化は脳の萎縮をまねく(中略)そして興味深いことに、過去三万年間において、人間の脳も萎縮しているのだ。(中略)この進化のパターンは、人間も家畜化のプロセスを辿っており、凶暴さをそぎ落とされる方向に淘汰されつつあるという、興味深い考えに行きつく。

    ー「道具」を再定義しなければならない。「人間」を再定義しなくてはならない。そうでなければ、チンパンジーを人間として受け入れなければならない。(ジェーン・グドールの論文を評価した、指導教官ルイス・リーキーのことば)

    ー心の中で時間旅行ができるという能力が、僕達人間を計画性のある策略家にしてくれるものの、同時に悩ませ、そして後悔させるのだ。

    ーヤギになるという体験がどのようなものか知っていなければ、成功したかどうかもわからない

    ー「許可を得るよりは謝ったほうがいい」(破天荒な映画監督ヴェルナー・ヘルツォークからのアドバイス)

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB2477678X

  • 図書館で。
    人間である事やめたい、(悩みが無さそうな)ヤギになりたいって発想はちょっとわかるけど(猫になりたいと思った事はある)実際行動に起こすところがスゴイ。すごいけど…今回のプロジェクトはちょっと片手落ちじゃないかなぁ?

    と、思ったのも。
    ヤギになるのがゴールなのか、人としての悩みを忘れるのが目的なのかがよくわからないのが一つ。ヤギの格好をして、ヤギのように歩き、ヤギと同じものを食べる事でヤギになれるのか?ヤギと呼べるのか?という疑問が二つ目。(じゃあヒトと同じような服を着せられて、ヒトと似たような食事をし、2足歩行する犬やネコや猿はヒトなのか?)
    そしてヤギの格好をして4足歩行をしてヤギの群れと同行したことで人としての悩みを忘れられたのか?という結論が語られてなかったのが3つ目。他にもあるけどまぁ大きな疑問点はこんな感じ。ヤギの格好で4足歩行してアルプスを越えるのが目的じゃ無かったんじゃない?と読み終えて思いました。(ある意味、最初の章のシャーマンは正しい。ヤギのコスプレするのが目的なわけ?というね)

    そして動物には過去という概念が無いというのも疑問。人にも過去なんて無いのかもしれないし。あるのは現在だけで、過去の記憶を思い返している現在の自分が居るだけだと言われればそれまでだし。来たるべき冬に備え、食料を備蓄するリスには未来という観念は無いのか?非常に難しい問題。そもそも、ヒトと同じ考え方をするのがインテリジェンスって訳でもないし…とか言う議論をしている本ではないのですが象が難しそうだからヤギでってのも…ねぇ?(笑)

    トースタープロジェクトの方が面白かったな。着眼点が面白かったし、昔の技術が廃れていく事の恐怖と、自分が作りだせないものに囲まれて生きている現代人の矛盾が面白かった。けどヤギはねぇ… なんかけっこうヤギに失礼な本だなぁと思ったり。

  • イギリスのグラフィック・アーティストである著者が、「悩む」という人の逃れられない宿命から逃れるため、身も心もヤギになることを目指す。タイトルが示す「ヤギになった結果」ではなくて、「ヤギになるための過程」が描かれています、これはちょっと注意。

    「魂」「思考」といった内面から、「体」「内臓」といった具体的身体的構造を、それぞれのプロフェッショナル(シャーマンから行動学や身体構造・運動学の大学教授、義肢装具士などなど)にものおじすることなく接触し、ヤギになるために奮闘を重ねていく。

    バカらしい、でも思わず読んじゃうんですよ。というかこのバカらしさがいいんでしょうね。無計画ながら一生懸命に物事に取り組む、何となく前向きになれるし、最後のヤギとともに過ごすくだりは、大きな感動とまではいかない、でも「ああ、良かったねぇ、ホント」というような、不思議な感慨が味わえますよ。

  • ニートのようなヒモのような,そんな生活をしている著者が,動物になりきることで人間特有の悩みから解放されるのでは,と思い立ち,実際に動物になろうと奔走する内容.一見ばかげたプロジェクトであるにも関わらず,大学教授や義足製作の技術者といったその道のプロたちが,動物になるとはどういうことか,動物はどのように形作られているかといった問いに真摯に答えているのがすごいと同時に面白かった.脳の特定の部位に磁場をかけて活動を阻害し,擬似的にその部位がない状態を作るという研究があることには驚いた.

  • くくくくだらないことを永遠に考え過ぎてて、お腹痛い。悩みがあるだれか!あなたはまだまとも過ぎるのだ。

  • クレイジーな方で、理解に苦しむ所はあるけど面白く読めました。
    結局人間はお休みできたのかな?

  • 「大きくなったらクラゲになりたい。だってフワフワしてて、きもちよさそうなんだもん」
    そう夢を語る当時5才の我が娘の姿を見て、微笑ましく思ったことを今でも覚えている。

    「束縛だらけの人間でいることが嫌になったから、自由なヤギになってみようと思うんだ」
    もし僕に息子がいたとして、その息子が33才無職だとして、彼がそんなふうに夢を語り出したら、はたして僕ならどんなリアクションをするのだろう。

    たぶん、身体的特性のデメリットと疾病の恐ろしさを事細かに説明し、全力でその夢を打ち砕きにかかるはずだ。

    本作の著者は真剣にヤギになることを目指した男、トーマス・トウェイツ(33才・無職)。

    ヤギになるといっても、ヤギの仮装をしてヤギと一緒にしばらくぼんやりと暮らす、などといった甘っちょろいものではない。
    彼は、ヤギ的心理思考に近づくために自身の脳の言語中枢を切り、ヤギと同様の四足歩行をするために人工外骨格を作成し装着、さらには草から栄養を摂取するためにヤギの消化機能の獲得を目論む。
    そして完全なヤギとなって、ヤギとともにアルプス山脈を越えることを最終目標として掲げているのだ。

    人工外骨格の作成を相談した医師からは「君の体にかかる圧力が、君の体をぶっ壊す」と忠告されても、彼はめげない。

    消化機能獲得の相談をした専門家からは「私は、強く、反対します」と同意が得られなくとも、彼はあきらめない。

    「無理なら、別の方法を考えるまでさ~」といった思考で、彼は前に進んでいく。

    著者の徹底的に『本物のヤギなること』に拘る姿は、読んでいて馬鹿らしくて笑えもするが、「がんばれ!」と心から応援したくもなる。
    彼の安全性という言葉とは程遠い構造の人工外骨格プロトタイプを装着する姿や、特殊な方法で加工した草を涙目になりながら食む姿には、笑いなのか感動なのか判別できない涙が出てしまった僕。

    この本を読んで、どんなに馬鹿げていると思われることでも、誰かが真剣に取り組む姿には心の底からワクワクを引き出す魅力があると、僕は感じた。
    意味不明だけど、意義があることを応援したいひとにオススメの一冊。

全47件中 1 - 10件を表示

村井理子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
夏目漱石
エラ・フランシス...
伊坂幸太郎
佐藤 雅彦
トーンテレヘン
西 加奈子
ヴィクトール・E...
ミヒャエル・エン...
森見登美彦
有効な右矢印 無効な右矢印

人間をお休みしてヤギになってみた結果 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×