- Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102200711
作品紹介・あらすじ
日常の倦怠から逃れ出て、カヌーで激流の川下りに向かう四人の男たち。だが、山の無法者との闘いの中で、一本の矢が放たれた。暴力、鮮血、死。奥地を流れる川が猛々しい貌を見せ始める。果たして四人は「川」から脱出できるのか――南部を舞台に凄惨な出来事と人間の蘇生を鋭い文体で描き切った米国のベストセラー小説! 『わが心の川』を復刊・改題。≪村上柴田翻訳堂≫シリーズ
感想・レビュー・書評
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海外の優れた作品を文庫で復刻させる「村上柴田翻訳堂」シリーズ。アメリカ南部出身の詩人、ジェイムズ・ディッキーによる初の小説作品。
平凡な日常生活の中の息抜きとしてカヌーによる川下りに出かけた4人の男性が、自然・人為の暴力に巻き込まれ、それぞれが抱えていた不安から救い出される様子を描く。読みながら、物語のプロットが近い作品としてジョゼフ・コンラッドの「闇の奥」を思いだしたが、「闇の奥」は川上りの中で「闇」に出会うのに対して(当然そこにはアフリカを舞台とし、川上りをすることで「闇」が現れるというコロニアリズムの問題が潜んでいる)、一見開拓により秘境の地がないように見えるアメリカにおいて、実は自然の暴力という形で「闇」が潜んでおり、その邂逅により救い出される可能性があるということが本作では描かれており、その違いが比較してみると面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
男たちが荒々しい自然と暴力、死の中に分け入って冒険し、新たな自分を発見する型がすごくアメリカ小説的。村上さんが褒める描写力、崖登りでは読んでいて足がすくんだし(高所恐怖症)、自然は美しく恐ろしい。
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都会で暮らす四人の男たち。温和なまどろみに飽きてしまい、カヌーで川下りをしに行くというあらすじ。はじめは気分のよい川下りだったが、途中でとんでもない暴力に出会い、状況が一変してしまう…
なんというか描写がとても丁寧で主人公の内面を追っていくようにじっくり読めた。最終的に主人公の心の中に川ができたというのは自分のなかでうまく解釈できない。またじっくり読み返したい。 -
荒々しい小説。
予定調和を嘲笑う世界観。 -
村上柴田翻訳堂シリーズの1作。1971年に刊行された『わが心の川』の復刊・改題作。大人版の『スタンド・バイ・ミー』といった趣の作品だった。
無味乾燥な日常から逃れたいという気持ちを抱いていた主人公ら4人の普通の男たちがカヌーで川下りに出掛ける。待ち受けていたのは平穏な日常とは真逆の暴力の世界…
普通の男たちを主人公にしているためか、生々しいリアリティーを感じた。壮大な自然を舞台に、しっかりした冷めた文体で綴られる苦難に喘ぎながら、少しずつ再生する男たちの姿が描かれる。 -
翻訳堂シリーズによる文庫えの復刊だそうだ。何故彼らが川を目指すのかが解説を読むまで理解できなかったのが情けない。自分が生きている時代の話ではあるけれど、同時代という感覚はない。
とにかく自然描写が秀逸。アメリカではまだこのような奥地のような場所が残っているのだろうか。