量子革命 アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)
- 新潮社 (2017年1月28日発売)
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感想 : 29件
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Amazon.co.jp ・本 (736ページ) / ISBN・EAN: 9784102200810
作品紹介・あらすじ
1900年、放射線の不可思議な現象を説明するため、M・プランクは「量子」という概念を考案した。その後、天才物理学者たちはこれを武器に19世紀のニュートン力学を覆し、新しい世界像を次々と提示し続ける。量子力学の解釈をめぐるアインシュタインとボーアの論争を軸に、ハイゼンベルク、ド・ブロイ、シュレーディンガーなどの人間ドラマも交え物理学百年の流れを追った白熱の科学ノンフィクション。
みんなの感想まとめ
量子力学の歴史とその背後にある人間ドラマを、分かりやすく描いた作品です。数式を極力排除し、論理や実験の図解、研究者たちの古い写真を交えながら、科学の進展を物語として紡いでいます。専門的な知識がない読者...
感想・レビュー・書評
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量子、量子力学の歴史を、
分かりやすく説明してくれている本。
数式は少なく、論理や実験などの図解、
数々の研究者や会議などの古い写真もあり、
まさに連綿と研究者たちが紡いできた、
古典の一物語を読み終えた気がした。
専門的な知識が乏しい私でも、
大まかな歴史や、過去の理論だけでも、
垣間見ることが出来て面白かった。
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マンジット・クマール「量子革命」読了。量子もつれに興味が出てきたら量子力学の事も気になってきた。本書より古典力学の概念を越える科学者らの発見と苦悩。アインシュタインとボーアの解釈の隔たり。そして、最後にベルの不等式による決着と量子コンピュータ。量子力学の現在までの流れを味わえた。
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<物理学のパラダイム•シフト>
本書のテーマは、パラダイム•シフト、エピステーメーの転換の困難さだ。
パラダイム•シフトにしてもエピステーメーの転換にしても、一夜にして起こるものではない。
何故なら、それは「世界観の転換」だからだ。
本書のテーマは、量子力学という物理学の発見と発展という科学的な展開を追い、現代社会を駆動させている量子力学の歴史的展開を理解させてくれる。
だが、それはテーマの一面に過ぎない。
より深いテーマは、量子力学のもたらした世界観をめぐる知的抗争にある。
その抗争の一方の雄はアインシュタインだ。
もう一人は、ニールス•ボーアだ。
アインシュタインは、量子力学の扉を開いた張本人だ。
ボーアはその量子力学を完成させた物理学者だ。
二人とも、量子力学の理論を正しいとみなしている。
では、何を抗争する必要があるのか?
量子力学をどう解釈するのか、という世界観をめぐって二人は論争を繰り広げたのだ。
我々の大半はアインシュタインの理解に与するだろう。
何故なら、彼の世界観は我々の常識的世界観と一致するからだ。
一方、ボーアの世界観は、我々の常識的世界観を逸脱している。
しかし、ボーアは、量子力学の理論を世界観に拡張すると、そう考えざるを得ないと結論したのだ。
二人が論争を開始してから、もうすぐ100年。
アインシュタインが、ボーアの世界観の持つ矛盾に巨大な爆弾を投げてから90年。
2022年のノーベル物理学賞は、アインシュタインの爆弾が不発弾だったことを認めた。
論争は、ボーアの世界観が勝ったのだ。
だが、それでも我々はアインシュタインと同じ世界観に固執している。
電子機器には量子力学を完璧に使いこなしながら、生きている世界観は、ニュートン以来のアインシュタインと同じ世界観なのだ。
本書は、科学的な発見が世界観の転換に寄与することを認めながらも、世界観の転換にはエライ時間のかかることを示している。
おそらく、ボーアの示した世界観が世界の主流になるには、まだ200年位かかることだろう。
世界が存続していれば、200年後の人類は、ニュートンやアインシュタインや我々が信憑している世界観を笑い飛ばすだろう。
1.量子の発見
量子力学は、1900年に量子の世界が発見されたことを端緒とする。
それを指して訳者青木薫は「量子革命」と呼ぶ。
(原題は、「Quantum=量子」)
人は現在自分の信憑している世界観、をそう簡単には手放すことは出来ない。
だから、量子の世界を発見した1900年代初頭の人々の驚きと戸惑いは当然なのだ。
人々はその時、ニュートン以来の物理学は完成していた、と信じていたのだから。
それはニュートンを含めて「古典物理学」のパラダイムを一層強固なものに仕立て上げたアインシュタインにしても同様だった。
本書では、古典物理学を新たに書き換えていった天才たちの知的闘争•苦闘が魅力的に描かれるが、そに加えて、世界観のの転換がいかに困難を伴うものなのかを示すものでもある。
だから本書の歩みは右に行き左に揺れ、前に進んだかと思えば一歩後退する。
それは古いパラダイムから脱皮しようとする方向性の定まらない歩みなのだから仕方がない。
何故なら、当時はまだ、原子の存在も定まっていなかったのだから。
2.マックス•プランク
古典力学にどっぷりと使っていたマックス•プランクは意図せず「量子」という概念を導入してしまう。
彼はそれを、現実を説明する数学的仮説という位置付けで使用しただけで、量子の世界の存在など全く信じていなかった。
そんな彼が「量子革命」の扉を開いてしまったのだから、科学の歴史は面白い。
まるで発見してしまった冥界への扉を慌てて閉めて、その存在すら忘れようとするかのようなのだ。
本書で描かれるのは、科学界のことばかりではない。
科学者たちは、第一次世界大戦も第二次世界大戦も経験せざるを得なかった。
ドイツの誇る科学者プランクの息子は、ドイツ政界にいたが、ヒトラー暗殺を企てて処刑されている。
3.アインシュタイン対ボーア
アインシュタインは相対性理論によって古典物理学を大成させる一方、光子という量子を発見することで「量子革命」を大きく推し進めた張本人だ。
「量子力学」の父と呼んでも良い存在だ。
だが、「量子力学」という新しい物理学の分野を作り上げたのは、ニールス•ボーアだ。
そのボーアにとって最大のライバルはアインシュタインだった。
ライバル?
量子の世界の扉を大きく開いたのはアインシュタインではなかったのか?
アインシュタインは生涯、ニールス•ボーアの量子力学解釈(コペンハーゲン解釈=世界観を批判し続けた。
そして、その批判が、「量子力学」を鍛え上げた。
では、アインシュタインは「量子力学」を認めなかったのか?
答えはイエスでもありノーでもある。
アインシュタインは、自ら発見した量子の世界は否定できないものと考えていた。
そして量子力学そのものも正しいと考えていた。
しかし、ボーアらの「量子力学」は、まだ完全ではない、と考えていたのだ。
完全なる「量子力学」を求めるアインシュタインの厳しい批判を浴びることで、ボーアらは彼らの「量子力学」を鍛え上げてゆくことになる。
アインシュタインの天才性は、量子力学を徹底的に鍛え上げたことにある。
アインシュタインの本質的な問題提起によって、量子力学は鍛え抜かれ、科学として確立されていったと言える。
4.量子もつれ
アインシュタイン最後の批判は、「量子もつれ」(エンタングルメント)のもたらす不思議な現象だ。
それを認めることは、光速を超える情報伝達を認めることになり、相対性理論と矛盾してしまう。
そればかりか、「因果律」も「局在性」も崩れ去ってしまう。
それこそ、古典物理学を基幹とする古いパラダイムを完全否定することになる。
アインシュタインは、有名な言葉を残している。
「神はサイコロを振らない」。
このセリフは、アインシュタインが古いパラダイムに生きていたことを如実に語っている。
だから、アインシュタインは、古いパラダイムを守るために、「量子もつれ」という、量子力学が帰結してしまう現象を「パラドクス」(そんなことあるわけないだろう)として、この問いをボーアたちに投げかけたのだ。
2022年のノーベル物理学賞は、この「量子もつれ」
の研究に対して贈られた。
結果はどうだったのか?
アインシュタインは間違っていたのだ。
「量子もつれ」という常識的には不可思議な現象が確かに起こっていることが検証されたのだ。
だが、アインシュタインの本質的な問いに答えようとする努力こそが、「量子力学」を徹底的に鍛えることになったことは否定できない。
だが、「量子もつれ」の証明は、古いパラダイムを捨て去らなければならない、という古いパラダイムに対する晩鐘となったのだ。
5.量子力学の世界観
ミクロの世界である量子力学の世界は、我々の常識や古典物理学の発想を超えている。
この不思議な世界をどう解釈したら良いのか?
「量子力学はわからない、理解できない」という常識的見解に対して、カリフォルニア大学バークレー校の理論物理学者野村泰紀はこう言っている。
「現代の電子機器は量子力学に基づいて設計されている。
量子の振る舞いは数学的に100%捉えられている。
科学の世界ではこれを<理解している>と言う。
人間の感覚や常識で言う理解と、科学的に理解することは異なっている」と。
量子力学の世界と折り合いをつけること。
新しいパラダイムの見方を身につけること。
これが現代人には必要なのだ。 -
量子力学誕生100年ということで、読んでみました。
物理は高校レベルの知識しかありませんが、そんな自分にもわかりやすく読むことができました。量子力学発展の経過を人物そのものに焦点を当てながら、ボーアとアインシュタインの対立軸を大きな流れとして完成されていて素晴らしい本だと思います。 -
今まで読んだ一般向け「量子力学」、いや、「科学」の本の中でダントツ一番に面白かった。最高の読書体験が出来た。この様な想像を超える程の凄まじい物事が全て事実であり、私達の身の回りに遍在している事にこの上無い人生の面白さを感じた。
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史上最高に面白いドキュメンタリー。
個人的に興味のある分野、研究してた分野だから当然といえば当然だけど、人類がした議論で最も面白い議論の一つだと感じた。 -
おもしろかった!様々な科学者が人間的に息づいて各々の信念や運命に倣って量子の理論を追求する姿を小説として純粋に楽しめたし、それだけじゃなく量子力学への興味も否応なしに掻き立てられるものだった。
個人的にはボーアよりもアインシュタインの信念に強く共鳴しながら読んでいたので、現在アインシュタインの立場が回復してきていると知って安心した。これからの量子力学がどう進むかはわからないけれど、非局在的実存に何らかの理論が付けられて新しい量子力学が生まれることにわくわくしている自分がいる。 -
なんか司馬遼太郎の小説みたい。量子力学のいろんな公式や解釈についても、それぞれの成り立ちと軋轢の歴史があったんだなということがよくわかる。そんな簡単に思いついて、簡単に受け入れられてきたわけではない。アインシュタインは量子力学の革新的な考え方についていけなかった”老害”みたいに語られることが多いが、この本を読むとアインシュタインの言っていることの方がまっとうに聞こえることが多い。ハイゼンベルクだってボーアだって老害化しているし、一周回ってアインシュタインが再評価されるようなところも出てきていることを考えると、歴史(特に百年もたっていないような最近)にあまり安直に判断できないということがよくわかる。
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重厚なミステリー、ヒューマンドラマ。
そりゃあ具体的な理論はわかりませんが数学を極力排除した説明やここの人物像に当てた量子力学の通史であり、へっぽこ文系の自分ものめり込んでしまった。量子力学のことも多少なりとも理解が深まった気にもなれるし、そのアンビバレントな魅力の一端を垣間見れた気がする。
ここまでくるとより具体的な量子力学を学びたいと意気込んで手に取った入門書に挫折している私なのです。 -
量子力学は納得できそうで、結局理解出来ない。そんな理解のが解釈の部分である。
アインシュタインとボーアが繰り広げる思考の戦いについて行きたいと思ったが、それもままならなかった。
ただそこに至る数多くの巨匠を出した20世紀初頭の物理学の世界は暗い社会情勢の中における奇跡だ。 -
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アインシュタインvsボーアを軸にした量子論史。この対決が凄まじく、また面白い。
SFで飽きるほど見た猫だのテレポートだの宇宙の分裂だのが、どういう流れから産まれたのか分かるのも楽しい。
が、やはり文章から量子論をイメージするのは難しすぎる。訳者は量子論解説本の決定版のように褒めるが、とてもついていけない。「波」と言われて私が想像するものと、量子論でいう「波」は似ているようで全く違う。そんなイメージのズレが至る所に現れるのだから、当然量子論の全体像は群盲像を撫でるが如くである。
私のような盲が理解に近づくには、象を撫で倒すしかないらしい… -
とびきりの天才が人類の知の沿岸を広げてきたことに改めて敬意を感じながら、それらの天才たちも同じ人間として日々の苦労や戦争のような外的な苦しみに耐えながら知の探究を続けていたという姿に励まされもする。
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当時の偉大な物理学者たちですら、解釈に戸惑い、納得感がないまま、それでももがいて先へ進もうとしていたのであれば、凡人の自分が学生時代に量子力学で挫折したのもやむをえまい
と、自分を慰める。
地球が丸いことや自転公転でぐるんぐるん回っていることを理解や納得どころかイメージすらできなかったであろう大昔の人の気持ちがわかるというか。証拠や証明を持ち合わせなくとも、地球が丸いことや回ってることは子供の頃からイメージできて納得し確信しているのに、量子の世界には手触り感を持てなかったところに自分の知性の限界を感じるというか。
もしもタイムマシンが使えるのなら。
昔の大学入学前の自分に本書を届けて「量子力学を学ぶ際にはとりあえず、解釈とか納得感とか気にせず、とりあえずひたすら数式で勝負して先に進め。解釈とか納得なんてその後だ、もしくは、そんなのはどうでもいいことなのだ」とアドバイスしてやりたい。
本書の本筋ではないが、ナチスによるユダヤ系科学者への迫害に関する記述も興味深い。優秀な科学者をドイツが自ら手放してゆく馬鹿馬鹿しさ。戦後、反共政策を進めたアメリカも同じだ。
政治や差別排外思想が科学や学問に口を挟むと碌なことにならない、という当たり前のことなのに、残念ながらいまだに残存しており、現代の日本にも通ずる教訓だろう。
さらに別の話だけど、奥さんに対するアインシュタインのゲスっぷりも酷いというかスゴいというか。さらには、自分はノーベル賞を受賞するはずだからそのときにもらう賞金を慰謝料に、って言う方も言う方だけど、それを受け入れる奥さんもなかなか。 -
理論よりも人の物語になっていて面白かった。高校物理だった人はぜひ。
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[出典]
「世界は「関係」でできている」 カルロ・ロヴェッリ
脚注 [20] -
量子力学は抽象度の高さや古典物理との違いから学生時代に正しく理解できず、どうしてこんな理論体系ができたのか疑問で仕方がなかったが、この本を読んでその一端を知ることができた。
当時の一流の物理学者たちの中でもなかなか受け入れられず、解釈の異なる事象を少しずつ解いていく過程は科学誌としてとても読み応えがあった。
また量子力学について学びたくなるような本 -
現代の科学現象を理解するうえで基盤に量子という概念がある。この概念を考案した、アインシュタインやプランクなどの天才科学者の人間ドラマと白熱の論争を軸にした科学ノンフィクションであることが推薦理由である。
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量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突
(和書)2013年06月25日 23:24
マンジット・クマール 新潮社 2013年3月29日
量子についてわくわくしながら読書できたのが良い。
ただ僕は相対性理論や量子物理学を数式だけでなく哲学的にも理解できていない。この著者凄くいいと思う。この人の本であったらいいな。
双子のパラドックスとか理解できるようにしたい。
思考実験という部分がとてもいい。この本に書かれている思考実験を考えるだけで人間の魂が救済される。 -
論争の詳細まで踏み込んで理解できなかった。
科学者間の人間関係は 興味深かった

確か今年(2025年)は、量子という考え方がこの世に誕生してから100年目だと思います。
ウチの...
確か今年(2025年)は、量子という考え方がこの世に誕生してから100年目だと思います。
ウチの天文台にパンフレットがありました…苦笑。
難しそうですが、いつか読んでみたいです!