- Amazon.co.jp ・本 (489ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102201213
感想・レビュー・書評
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感想は下巻でー。
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枠組みは学園ミステリぽいが、それではいかにも軽く本作にはそぐわないし、そもそもこれはミステリではない。古代ギリシャ語専攻の浮世離れした6人のゼミ生、ヘンリー、フランシス、チャールズ、カミラ、バニー、そしてリチャードの物語。先4人が集団ヒステリーの事故で地元の男を殺してしまう。たまたま集団からはずれていたバニーがそれを嗅ぎつけて、疑い出す。その口封じのためにヘンリーが主犯となってリチャードを含む他4人の協力で、彼を事故死を装って謀殺するという事件。事件そのものは単純で、最初から読み手にはすべて明かされている。おざなりな捜査はあらぬ方へ向かって発覚をまぬがれるかに思われるのだが、それぞれが疑心暗鬼になって内部崩壊し、悲劇の幕を閉じる。そこへ至るまでのいなかの大学に隔離された高等遊民ともいえるサークルの心理ドラマが本書の主題だろう。ジュディやクロークに代表されるごく普通の大学生たちとの際立った対比から、グループの精神的特殊性が浮き彫りにされ、語り手にゼミの新参メンバーで微妙にずれた立ち位置にいるリチャードを配したところが絶妙だ。頭でっかちの世間知らずの悲劇といえば身もフタもないが、それを見事に肉付けして群像劇に仕立て上げたところが作者の手腕、といったら誉めすぎだろうか。
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『罪と罰』を彷彿とさせるという紹介文に惹かれて読んだが、衒学的傾向(古代ギリシア語やラテン語が頻繁に出てくる)や、とかく自意識過剰な主人公群や、客観的には何てことのない物事を壮大かつ深刻に描くところが確かに類似しているが、さすがにドストエフスキーほど人間心理を真底から抉るところまでは至っていないし、文章の情報量も及ばない(ドストエフスキーの暗号のような文体は当時の検閲の副産物なので、現代にそれを望むのは筋違いではあるが)。特に主人公らが熱烈に信奉し、作品のバックボーンを提示する役割を担うギリシア語の「教授」がいまいち上手く描けておらず、終盤での拍子抜けする「変貌」もあって、物足りなさが残る。逆に20世紀後半のアメリカの青年社会を描く上で付き物の「薬物」の描写がやたらと具体的でくどいほどだが、正直冗長で徒労感を覚えた。
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小さい亀裂から殺人事件に落ちていく過程が面白い。しかも、この作者のデビュー作というから驚く