模造記憶 (新潮文庫 テ 10-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102255025

感想・レビュー・書評

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  • わたしは今年の夏からSF読む期に入っており、アンドロイドは電気羊の夢を見るかを読みたいとずっと思っていたのだけど、実家帰ったときに母が「持っとるかもしれんーー」と本棚ゴソゴソして持ってきてくれたのがこれであった。持っとると思うけど見つからんかったけんこっちで、と貸してくれた。

    短編SFなんて多分初めて読んだけど、どれも結末までストーンと落ちる感じでスッキリ読める。SF読みたあいと思ったら気軽に手を伸ばしていい。
    ぶざまなオルフェウスと不屈の蛙が特に好き。最後の話はよく分からんかったが。
    現実と夢(精神・向こう)の境界があやふやだったり行き来したりするような話がいくつかあったけどそーいうの好きなのかな。わたしもそういうの大好きやけど、そういうのが幻想文学や純文学でなくてSFテイストなのも面白いのね。

  • トータル・リコール原作の「追憶売ります」が有名だけど、私は「この卑しい地上に」が大好き。
    神の世界の人知の及ばない残酷さ・不可解さにぞくぞくする。
    読んだ当時から、いつか映像化できないかと思っていたのだけど、仮面ライダーゴーストでちょっとそんな感じなシーンがあって感動した。

  • トータルリコールの原作「追憶売ります」のみ読みました。この小説から2つのトータルリコールを映画化(映像化)したことはすごいことだと思います。

  • 前半はB級SF、後半は不条理文学( ´ ▽ ` )ノ
    まるで筒井康隆文学の縮図みたい( ´ ▽ ` )ノ

    現実の不確かさとか自分という存在に対する不信感とか、テーマは共感できるんだけど……うーん、何というかこういう書き方だとさっぱり胸に迫ってこない……(´ェ`)ン-…
    過剰に強迫神経症なキャラとか、セリフとか、設定とか筋立てとか……変わった人だから変わった妄想にとらわれてるんじゃない?、という感じで、我と我が身に引き合わせて主題を実感する域に達しない、のかな?(>_<)
    映画化された諸作品のように、もっと現実的なキャラクターたちが不条理世界に放り込まれるという図式のほうが、テーマがよりくっきりしていいと思う……(´ェ`)ン-…

    ディックはこれまで二十冊以上は読んだはずだけど、やっぱりどれもこれも自分とは合わないみたい(>_<)
    相性が悪いんだろうな(>_<)
    でなければ、自分の頭が相当悪いのか(>_<)
    たぶんそうだ(>_<)
    読んでも読んでも心をすり抜けて行っちゃって、「追憶売ります」なんてほんの2~3日前に別書(「マイノリティ・リポート」)でも読んだばかりなのに、何一つ覚えてなかった(>_<)

    しかし、「模造記憶」という邦題は変だね( ´ ▽ ` )ノ
    収録作品名でもないし、さして魅力的でもないし( ´ ▽ ` )ノ

    2017/02/27

  • リリース:(茂樹さん)

  •  昨年、コリン・ファレル主演のハリウッド超大作SF映画『トータル・リコール』(レン・ワイズマン監督)が公開された。言うまでもなく1990年に公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演の同名映画(ポール・バーホーベン監督)のリメイク版である。そしてこれらの原作となったのがアメリカのSF作家フィリップ・K・ディックの「追憶売ります」。偽の記憶が植え付けられた男の悲哀をシニカルな笑いと共に描いた短編だ。

     近年、ハリウッドではある種のディック映画化ブームが続いており、最近でもトム・クルーズ主演の『マイノリティ・リポート』(2002年/スティーブン・スピルバーグ監督)やベン・アフレック主演の『ペイチェック 消された記憶』(2003年/ジョン・ウー監督)、マット・デイモン主演の『アジャストメント』(2011年/ジョージ・ノルフィ監督)等が公開されている。その嚆矢は今やカルト的な人気を博しているハリソン・フォード主演の『ブレードランナー』(1982年/リドリー・スコット監督)だった訳だけど、道筋をつけたのは90年版の『トータル・リコール』の大ヒットだったように思う。派手なアクションにスター俳優の主演。ディック原作がブロックバスター映画のキラーコンテンツとして見直されるようになったのだ。
     だから、『トータル・リコール』がリメイクされるというのも時代の流れなのだろう。『ブレードランナー』は続編の噂が絶えずあるし、もうそろそろディック原作映画がさらに二次利用される頃なのかも。
     ちなみにリメイク版『トータル・リコール』は、シュワルツェネッガーのマッチョな魅力と比べてファレルの線の細さがなんとも頼りなかったんだけど、その頼りなさを逆手にとった演出で新たな解釈を見せていた。前作を意識した演出も多く盛り込まれており、大胆に改編されたストーリーも観客の予想を良い意味で裏切ったと言えるだろう。
     ただまあ……前作におけるバーホーベン監督のアクの強い演出と比較すると「ヌルめ」の印象は拭えない。相手が悪かった。

     映画の話が長くなってしまったが、『模造記憶』は『トータル・リコール』の原作「追憶売ります」が収録された日本オリジナル短編集。収録作は以下の12編。

    「想起装置」(Recall Mechanism)
    「不屈の蛙」(The Indefatigable Frog)
    「あんな目はごめんだ」(The Eyes Have It)
    「この卑しい地上に」(Upon the Dull Earth)
    「ぶざまなオルフェウス」(Orpheus with Clay Feet)
    「囚われのマーケット」(Captive Market)
    「欠陥ビーバー」(Cadbury,the Beaver Who Lacked)
    「ミスター・コンピューターが木から落ちた日」(The Day Mr.Computer Fell out of its Tree)
    「逃避シンドローム」(Retreat Syndrome)
    「逆まわりの世界」(Your Appointment Will Be Yesterday)
    「追憶売ります」(We Can Remember It for You Wholesale)
    「不思議な死の記憶」(Strange Memories of Death)

     新潮文庫はかつて、SF小説のラインナップがやたら充実していた時期があり、フィリップ・K・ディックのオリジナル短編集もこの時期に3冊編まれている。本書『模造記憶』の他に『悪夢機械』『永久戦争』というタイトルで刊行された。
     映画『トータル・リコール』の大ヒットによって本書もよく売れたらしい。内容もSF作だけでなく軽いコメディタッチの小品から幻想的な作品、内省的な作品まで幅広くかつバランスよくチョイスされているので、ディックの魅力をコンパクトに味わうには最適の一冊だったのかも知れない。
     SF作家・評論家の森下一仁は『SFベスト201』(伊藤典夫・編/新書館)において本書を取り上げた理由を<こよなくディックを愛する名翻訳家によって編まれた>ためとし、ディックの短編群は他の作家の作品と並べられると異色だが、集めてみると実のところ似たテーマを時期ごとに様々なバリエーションで書いているとしている。この評論はディックの短編や長編作について解説が簡潔にまとめられており示唆に富んだものになっている。

     森下一仁が指摘する通り、ディックの作品はどれもこれも強烈なインパクトを残すが読み比べてみると共通のテーマめいたものが浮かび上がっていくる。「現実とは何か」「本物とは何か」「にせものとは何か」という自己の存在に大きく関わるテーマである。
     だから『模造記憶』という書名も非常に端的にSF作家・ディックの世界を表している。記憶という自己のアイデンティティに深く関わるものがにせものであるかも知れない、という自我崩壊に似た感覚を見事に四字熟語で言い表している(現在ではここらへんのセンスは大森望による創元SF文庫の「年刊日本SF傑作選」に引き継がれている)。

     20世紀後半からディックの映画化ブームが起きているのも、SFXが発達して技術的に映像化が可能になったという理由だけでなく、自己の存在感が揺らぐ現代において人々の感性にディックの作品が訴えかけてくるからなのだろう。
     ハリウッドにとってはドル箱コンテンツなのだろうが、その実、現代人の不安感をうまく煽りたてているのかも。と言っても実際映画化されてしまうと能天気なアクション大作になってしまうことが大半なのだけど。

  • 300 馬場ブコフ

  • 12編収録。現実と虚構の境目が消失していくディック得意のテーマの作品群。他にはアメリカの荒野を舞台にした「囚われのマーケット」が良かった。

  • 初期から晩年までの短編を網羅的に収録。記憶と深層心理をテーマにして、訳も素晴らしい。分子の隙間から落ちてしまったり、非常に科学的な考え方(同時に突っ込みどころ)が多く、読んだあとに別の展開をつい考えてしまう。「追憶売ります」は映画「トータルリコール」の原作。

  • 映画のトータルリコールの原著?原作?が入っているということで読んでみました。

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