ホテル・ニューハンプシャー〈下〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102273043

作品紹介・あらすじ

フロイトの招きでウィーンに移住したペリー一家は、第二次ホテル・ニューハンプシャーを開業、ホテル住まいの売春婦や過激派たちとともに新生活をはじめる。熊のスージーの登場、リリーの小説、過激派のオペラ座爆破計画…さまざまな事件を折りこみながら、物語はつづく。現実というおとぎ話の中で、傷つき血を流し死んでゆくすべての人々に贈る、美しくも悲しい愛のおとぎ話。

感想・レビュー・書評

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  • これから先、何が起こっても平気になれるような気がする。
    どんなことも“処理”できるような気がする。
    人間なんて、いくつになっても不安になったり、自信を失くしたり、おじけづいたりするけど、この本がそういうことをすべて拭い去ってくれそうな気がする。

  • やはり「サラバ!」に出てきただけあって、同じ雰囲気を感じさせた。
    少し読み進めづらいところがあったが、話のスケールの大きさはソックリだった。

  • アーヴィングの小説は起承転結がはっきりしていて、盛り上がるところもしっかり用意されている。ありとあらゆる奇抜な要素が散りばめられていて読んでいて飽きない。そして、作者はおとぎ話だというが、非常にリアリスティックな小説だ。僕たちの悲しみも愛も、彼らの不条理な人生の前では平凡に映ってしまう。『ガープの世界』もそうだったが、力ずくでその世界に引きずり込まれるような不思議な魅力がある。

  • 辛いできごとが多いのになぜこうも幸せな気持ちに満ち溢れているのだろう。なんの疑いもなく家族を愛せる心。さみしいのにあたたかい。残酷とユーモアの調和。

    まるで人生のような小説。この小説は荒唐無稽な「おとぎ話」なのだろうか。実はわたしが生きる現実の人生も、そう変わりなく数奇なのではないか。

  • 上巻も良かったが、下巻の怒濤の展開。
    まさに息つく暇も与えず、一気に最後まで読ませた。
    物理的に、精神的に、大切なものを失った家族の物語。
    上巻もひどい喪失の話であったのだが、下巻も下巻でなかなかに悲壮な展開が待ち受けている。
    ただ、それを単に悲劇的な雰囲気としないのが、上巻であれば犬のソローであったり、下巻であれば熊(に扮したスージー)の絶妙な割り込みにあり、この設定は読み終わって全体を思い返して、あらためてすごいなあ、と。

    色々な喪失を乗り越え、最後は再生に向かっていく。
    途中の破天荒な展開からのこのおだやかな結末よ、という突っ込みはありつつ、でもほろりとさせられる。

    アメリカ文学の金字塔、なるほど、堪能。
    よかった。

  • 「開いた窓の前で止まってはいけないのだ」
    そうだ、生きるのだ。

    ホテルニューハンプシャーは3回生まれ変わる。
    その度に思い出が増える。喪失も重なる。しかし、蘇生できるのが真のホテルなのだ。終わり方が良い。

    奇妙奇天烈なようで、これほど緻密に構成された物語があるだろうか。

    熊、犬、小人、差別、文学の創作、演技、成長、自死と事故死、二人のフロイト、ナチスとユダヤ人、大学、性の手ほどきはなぜ女性からなのか、ジェンダー、『グレートギャッツビー』、詩人に詩作をお願いしたくてもしなかったこと、司令塔、そして、家族。。。語り尽くせないテーマが沢山ある。

  • 過酷な運命に主人公たちは幾度も「開いた窓の前で立ち止まり」そうになる。
    「ソロー(悲しみ)は沈まず漂う」なかユーモアを交えながらも描く逞しい文体は、人がもつ強さを体現しているよう。
    小説内で事件が起きるたびに、ため息をつき、それぞれの登場人物に感情移入しながら読んでいた。

    ジョンアーヴィングの小説は、重厚というより骨太な小説で、割と悲惨でデリケートな内容を扱っているのだけど、その文体に救いがあって、小説の面白さや、本を閉じた後の、まとまらない考え・感情が奔流する幸福な時間を再確認できる。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    1939年夏の魔法の一日、ウィン・ベリーは海辺のホテルでメアリー・ベイツと出会い、芸人のフロイトから一頭の熊を買う。こうして、ベリー家の歴史が始まった。ホモのフランク、小人症のリリー、難聴のエッグ、たがいに愛し合うフラニーとジョン、老犬のソロー。それぞれに傷を負った家族は、父親の夢をかなえるため、ホテル・ニューハンプシャーを開業する―現代アメリカ文学の金字塔。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    現代小説からちょっと離れて文学探索をしてみました。

    なんだか不思議な感じもする作品ですね...
    「文学」と書いたけれど、まぁそういうほど重たい作品ではなく。
    作者としてはきっと気軽な読み物として扱ってほしそうな。

    小人症の妹やゲイの兄や難聴の弟。
    レイプ。近親相姦。
    革命家。

    限りなく重たいテーマや人物を扱いながらも、
    そこに固執せず違う読み方をしてもらいたがっていると言うか...

    私はこの方の作品をあまり読んだことがないのですが、
    他にもたくさんの名作を書かれているんですね!
    そう言えば「サイダーハウス・ルールも積ん読になってるな~、自分(汗)。

    そしてこの作品で大きな影響を与えているのが...

    熊。

    熊ですよ。熊さん。
    この辺がアメリカ的ですよねぇ。
    日本ではまず考えられない。

    サーカスの熊さんがペットなんです。
    そしてこの熊さんが、父と母を結びつけ、
    家族を結びつけ、誤射で死んでしまうんですが
    その後も家族に影響を与え続けます。
    (違う熊も出てきます)

    そして「ソロー(悲しみ)」と言う名前の犬。
    これも年老いて安楽死させられるのですが、
    (ホテルの経営に影響もあって)
    ゲイの兄によってはく製として蘇ります。

    でもこの悲しみの犬は、彼らの悲しみを
    時に代弁するかのように常に物語に顔を出し、
    登場人物の心(特に主人公である二男)に存在し、
    物語の根底を緩やかに漂い続けます。

    夢見がちな父親の行動に家族が振り回される...みたいな
    ストーリーは割とありがちかな、とも思うのですが
    ただ振り回されるだけでないユニークな家族たちが
    この不思議な世界を彩ってます。

    下ネタやいわゆるフォーレターワードが多いのも
    アメリカ文学っぽい気もする(・∀・)

    そう言う言葉である意味自分を飾ってるんですよね。
    村上春樹が性交を(と言う言葉を)書きたがるみたいに?(違

    ま、ともかくホテルは意外な方向へ行き、
    ウィーンへも展開されていきます!

    ウィーンは良かったなぁ。
    うらぶれたウィーンがあるってだけでもなんかちょっと安心した(笑

    で、ホテルや熊や犬やいろんな要素はありながらも、
    基本的にこの小説は主人公とその姉を中心にした青春物語だと私は思ってます。

    家族が団結して、姉の心を救おうとするシーンなんかいいですよね。
    コンプレックスを持った人も、うまく生きていけないと悩む人も、
    絶対に必要とされる場面があるって言う。

    重いシーンもあるけれど、
    最後には救いがある。

    読み返すにはちょっとつらいけど
    お気に入りのシーンたちは
    またいつか再会したいと思える作品でした。

  • 一人一人が、ゴツゴツといびつで、切り立っていたりざらついていたり、
    手のひらですくい上げると色も形もさまざまな、そんな石を連想してしまったペリー家の人々。
    次々襲い来る悲惨なできごとに、互いに関わり合いながら、向き合うすべを探しだしてゆく。

    家族物語ではあるけれど、ありがちな甘ったるさや湿っぽさはない。
    だからこそか、かえって深いつながりを感じた。

    過激で痛々しくて、でもユーモラスで哀しく暖かい物語。
    彼らみな、愛おしい。
    いつの日か、また読み返しそう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「彼らみな、愛おしい。」
      「ガープ」「ニューハンプシャー」ともに先に映画で観てから読みました。映画より好きです。ちょっと無常観のような遣る瀬...
      「彼らみな、愛おしい。」
      「ガープ」「ニューハンプシャー」ともに先に映画で観てから読みました。映画より好きです。ちょっと無常観のような遣る瀬無さが漂っていますが、負けていないですよね。。。
      2012/07/24
    • pponさん
      nyancomaruさん
      それぞれ深く傷つけられはするけれど、安易に読者を涙に引きずり込むような感じではなくて…。
      悲しみの見つめ方に、...
      nyancomaruさん
      それぞれ深く傷つけられはするけれど、安易に読者を涙に引きずり込むような感じではなくて…。
      悲しみの見つめ方に、強さも感じました。
      皮肉を含め、ユーモアたっぷりなのもいいですね。
      2012/07/25
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ユーモアたっぷりなのもいいですね 」
      とことん暗くなりそうなところを、ユーモアが繋ぎ止めているのかなぁ~
      身体が二つあったら、即読み返した...
      「ユーモアたっぷりなのもいいですね 」
      とことん暗くなりそうなところを、ユーモアが繋ぎ止めているのかなぁ~
      身体が二つあったら、即読み返したい。。。
      2012/07/27
  • なんの小説かわからなかった。そして読み終わったいまもなんの小説なのかと問われてもよくわからない。敢えて言うなら人生についての小説だった。
    文書の滑らかさ、優しさが世界に浸る心地よさに繋がっている気がする。
    そしてトロトロと読んでいると急に驚かされる言葉にぶち当たって目が覚める。

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