最後の陪審員 上巻 (新潮文庫 ク 23-23)

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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102409237

感想・レビュー・書評

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  • 後半は、どんな展開になるのか?

  • 1970年代のアメリカ南部の人種隔離政策の様子、ベトナム戦争反対のデモのことなど分かる。やはり面白かった。陪審員ってJurorなのね。一つ覚えた。

  • 往年のグリシャムの作品に比べると、悪い話ではないんだけど、でもなにか物足りない。

  • ミシシッピ州北部、裁判所がある架空の小都市、フォード郡クラントンが舞台。
    主人公ウィリーは、1970年、新人記者として勤務していた地元新聞社が倒産したのを機に、祖母に5万ドルを借りてこれを買収。23歳にして社主となる。

    ちょうどそのころ、平穏な地方都市では珍しく凶悪な殺人事件が発生する。
    逃走中に飲酒運転で事故を起こして逮捕された被疑者は、地元で隠然とした権力を持つバジット家の不良息子ダニー。

    ウィリーは、連邦憲法修正1条・言論の自由を錦の御旗に掲げ、他方では新聞の売り上げを高めるため、バジット家や煮え切らない捜査機関を舌鋒鋭く批判する論陣を張る。違法スレスレの刺激的な報道により、販売部数は着実に回復していった。

    法廷で進退窮まったダニーは、弁護人が苦労して「善良な青年」のイメージを作ろうとしたにもかかわらず、ついに「おれを有罪にしてみやがれ。お前たちをひとり残らず仕留めてやるからな」と毒づき、陪審員たちを恐怖に陥れる。

    陪審により、すぐに有罪評決がなされたが、死刑宣告の条件である「陪審員の全員一致」が充足されなかったため、終身刑が宣告された。クラントン市民は失望したが、陪審員が互いの秘密を守ったため、誰が死刑に反対したのかは知られなかった。

    終身刑となったはずのダニーは、制度の不備をつき、バジット家の潤沢な資金で関係者を抱き込み、ついに9年目で仮釈放が決定されてしまう。

    その後、バジット裁判の元陪審員が2人続けて射殺され、平穏を取り戻しつつあったクラントンに再び緊張が走る。誰もがダニーを疑ったが、被害者はいずれも評議では死刑に反対していたようなのだ。ダニーはそれを知らず無差別殺人をしているのか。

    証拠が何もないため、ダニー逮捕をためらっていた裁判官も、また別の元陪審員にプラスティック爆弾が届けられるに及んで、ついに逮捕状を発行。ダニーには再び手錠がかけられた。しかし、3人目の被害者も死刑には反対していた。

    傍聴人がつめかけた保釈審問会が始まり、手錠姿のダニーが入廷した・・・

  • 久々に読んだジョン・グリシャム。
    最初は気が進みませんでしたが、あっという間にストーリーに引き込まれました。
    下巻ではまた大きく話が動きそうです。

  • わたしはグリシャム作品と言えば法廷!なので、新聞記者が主人公のこの作品はどうも物足りなかった。法廷サスペンス好きとしては、どうもいまいち。でもグリシャム作品ならではの、一度読みだしたら次はどうなるんだろうと、次々読ませてしまう引き込むうまさは健在だし、やっぱり面白い。
    この作品は一人称よりも三人称で書いた方が良かったような気がする。グリシャム作品は「評決のとき」が一番好き!

  • 「私」が地方新聞社を買収した矢先、強姦殺人事件が起こる。犯人はその地方を牛耳る無法一族の若者だった。無事有罪を勝ち取ったものの、その量刑に波紋が広がる。

  • どうも翻訳になじめない。
    15冊。

  •  先に『大統領特赦』が邦訳されたが、執筆順序としてはこちらが先行する。長篇小説としては、ロング・バケーション・モードに入ったかと思われたグリシャムだったが、ここ一年くらいの間に、ノンフィクション『無実』と合わせると一気に三作、いずれもが大作であり、力作であるところの、とてもグリシャム・ライクな、手を抜かぬ本ばかりが届けられている。訳者の白石朗さんは、相当のハードワークだったのではないろうか。やはりグリシャムは、白石さんの翻訳でなくてはならない。超訳なんていう原作を無視した無作法な出版物を、ぼくは絶対に読まないのだ。

     さて『大統領特赦』は、著者にしては珍しく、世界を股にかけた国際冒険小説といった趣きで、本当に唖然とさせられたのだが、もともと<読ませる>力のある作家だ。法廷から離れても、アーチャーやフォーサイスばりの国際的ストーリーを、しっかりした小説技法の下に書き込んで見せることができる、とばかりに、その器用ぶりを証明したようなエンターテインメントであった。

     だが、どこか一つ物足りなかった、というのも正直なところだ。果たして読者はグリシャムに、国際エンターテインメント小説などを求めていただろうか?

     否! 否なのでである。グリシャムの小説の持つ躍動感は、アメリカの病巣を抉り出そうとして、時代に斬り込んで行く時にこそ、真価が発揮されるのだ。初期の大傑作『評決のとき』は、売れなかったデビュー作と言われるが、ブレイクした第ニ作である『法律事務所』よりも、実はずっとずっと大きなテーマに挑んだ問題作であったゆえに、後に発掘され、映画化もされ、世界中に発信された。ぼくは今も、『評決のとき』はグリシャムの最高傑作だったと思う。むしろ初期作品ならではの100%グリシャム・テイストが活かされた作品として、愛着すら感じてしまう。

     その後、ストップの許されない作家として次々と傑作を世に出し、書き終わる前から映画化権は引っ張りだこになり、映画もまたそれぞれ話題になり、グリシャムはその黄金時代を築き上げたのだった。

     グリシャムはそれでもいきなりストップしたのである。ミステリーではない自伝的南部小説『ペインテッド・ハウス』を最後に、彼は立ち止まったのだ。ここ数年、『スキッピング・クリスマス』という掌編を残しただけで(この作品もハートウォーミングで実に楽しい)、グリシャムはあれほど続けていた全力疾走をやめてしまった。

     だからこそ本書の帯にある「完全復活!」の文字は、頼もしい。関口苑生氏のあとがきの力の入れようを見るだけで、グリシャムの復活が歓迎されている様子が深く伝わってくる。もちろん、大のグリシャム・ファンであるぼくにとっても、本書は一大エポックである。

     先に邦訳された『大統領特赦』で、本作ほどの狂喜を感じなかったのは、なにせ、グリシャムが変わってしまったのではないか、との不安があったせいでもある。だからこそ本書『最後の陪審員』で、ぼくらは安心を与えられ、グリシャムの完全復活を確信させられ、何よりも歓びを与えられるのだ。

     『評決のとき』の町に、舞台は戻ってきた。それも1970年の南部の町に。

    ミシシッピ川州フォード郡クラントン(架空)。ベトナム戦争でアメリカは、死と暴力の匂いに疲弊し切っている。公民権運動はまだスタートラインに差し掛かったばかりのあの時代。本書の若き主人公は25歳にして地元新聞フォード・カウンティ・タイムスの社主となる。よそ者の新聞社オーナーは地元に沸き起こった事件に、青春を激しくスクランブルされるが、若さがすべてを凌駕する、その明るく、夢や目的性に満ちた、怖いもの知らずの破天荒ぶりが、次第に町にとってなくてはならないものになってゆく。

     容疑者は明確であり、裁判はつつがなく進行するが、無期懲役を言い渡された被告は陪審席に向かい「一人残らず復讐してやる」と宣言する。被告は、数年後仮出所する。かくして町では、あの裁判の陪審員が一人また一人と唐突な死を遂げてゆく。

     陪審員としては町で初めての存在となる黒人女性が、本書のキーとなる。語り手の新聞社主にとって、この女性は次第に母のような存在となってゆく。彼女の一家との交情こそが、小説に膨らみを与えてゆく。  彼女らの一族は、この町に黒人としての誇りを打ち立て、敬虔なクリスチャンとしても知られる。語り手の新聞社主は、青春小説の主人公のように彼女の一家から多くの見えない価値観を吸収してゆく。町の歴史や真実を理解してゆく。そして今も町に残る差別感情と戦い、人権の確立を、メディアという立場から応援してゆく。もちろん少なからぬ暴力に曝されるという恐怖と闘いながら。

     最後の最後まで、事件とともに、物語の時代背景は語られ続ける。ベトナムは無益に終息し、生き残った兵士たちが帰還し、公民権運動は州間を飛び火してゆく。黒人と白人が同じ学校に通うように定められるが、自治体は抵抗を訴える。黒人が選挙や司法に参加するようになってゆくが、暴力がこれを阻止する。そんな時代背景の中で、南部という最も差別の色濃い場所で、若い語り手が次第に成熟し一人の男として使命を果たしてゆく。黒人女性一家との別れまで連なるこの壮大な物語は、実に情感豊かに描かれてゆく。この小説こそ、帰ってきたグリシャム節以外のなにものでもない。

     久々の感動に噎せ返りそうになりながら、最終ページを閉じる。今さらグリシャムでもないのかもしれないが、あれこれ抜きにして考えると、やはり真実今年度のベストミステリと呼ぶ以外、あり得ないように思うのだが。

  • この訳者読みやすくって好き。
    昔のジョン・グリシャムとちょっと趣が変わった印象。
    人種差別が残るアメリカ南部の1970年代。
    新聞社を買収した若き青年。そこへ強姦殺人事件が・・・

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著者プロフィール

ジョン・グリシャム
一九五五年アーカンソー州生まれ。野球選手になることを夢見て育つ。ロースクール卒業後、八一年から十年にわたり刑事事件と人身傷害訴訟を専門に弁護士として活躍し、その間にミシシッピ州下院議員も務めた。八九年『評決のとき』を出版。以後、『法律事務所』『ペリカン文書』『依頼人』『危険な弁護士』など話題作を執筆。その作品は四十ヶ国語で翻訳出版されている。

「2022年 『「グレート・ギャツビー」を追え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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