危険な弁護士 (上) (新潮文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102409374

作品紹介・あらすじ

セバスチャン・ラッドはアメリカの大都市で開業中の“無頼の弁護士”。レズビアンと後でわかった元妻に一人息子を取られてダウンタウンの高層マンションにやもめ暮らし、月 1 回の面会だけ許されている。オフィスは黒い大型カーゴヴァン。目下、幼女 2 人の暴行殺害容疑で逮捕された少年を弁護中だが、他の弁護士がやらないヤバイ事件の被告を弁護する仕事ばかり集まってきて、落着く暇なし。

感想・レビュー・書評

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  • フィクションだもの誇張はあるだろうけど、アメリカの司法制度は何と腐ったモノになり下がった事か。願わくは、日本が真似をしない事を。……でも、大体、アチラの悪弊は何年かすると渡ってくるような気がする。

  • リーガル・サスペンスといえば…のグリシャム。
    久々に読んだ。
    しかも本作は、本人も違法スレスレで目立ちたがり、あちこちから恨まれて私生活もトラブルだらけのアウトロー弁護士が主人公。

    感想は下巻で。

  • 目次
    ・侮辱
    ・ずどん・ずどん部屋
    ・兵隊気取りの警官たち

    主人公は”無頼の弁護士”セバスチャン・ラッド。
    とりわけ凶悪でスキャンダラスな事件の被告を弁護してばかりいるので、周囲はことごとく敵である。
    悪人を弁護する弁護士としてテレビや新聞に顔が出るので、善意の一般庶民から警察、裁判所も彼を見ると眉をしかめ、犯罪組織の暗部を知る男としてそちらからも命を狙われている。

    『侮辱』は、幼女2人の殺人事件の犯人として、いかにも悪いことをしそうな少年を町中が犯人に仕立て上げるなか、ひとり少年の弁護のために奔走する主人公を描く。
    証人も陪審員も善意の人たちなのだ。
    だから悪を憎み徹底的に制裁を加えるために、また、そのことによってヒーローになるために、被告人を貶める証言をし、証拠を用意する。
    それぞれは正義のためと思ってするその行為が、例え日ごろの行いが悪いからと言って無実の少年を罪に陥れることになることの無自覚がとても恐ろしい。

    そしてそれは『兵隊気取りの警官たち』にも言える。
    地道な捜査をせず、夜中に個人宅に銃を持って押し入り、驚いた家人を銃殺した警官たち。
    悪いことをしたわけではなく、ただ家で夜寝ていたところを踏み込まれた男は、銃で賊を追い払おうとしただけだ。
    普通に暮らしていたら、夜中の押し込みが警察の捜査だなんて思うわけがない。
    銃を発砲した男は、警官に向けて発砲した罪で逮捕される。
    妻を殺した警官たちは罪に問われない。

    大立ち回りの結果、誤操作だったことがわかった警察は、男に罪をなすりつけようとして証拠の隠滅、改ざん等を行う。
    ことは警察の面子に係わるからだ。

    これに対する主人公の、情け容赦のない反対尋問。
    作者はよほど警察やアメリカの司法制度が嫌いなのではないだろうか。

    一つ、勝ち目のない刑事事件の裁判が未解決のまま終わっているが、下巻で解決するのだろうか。
    心情的には同情の余地はあるけれど、大勢の人の前で行われ、ニュース映像でさらに大勢が目にした殺人事件。
    主人公が被告にどう引導を渡そうかと迷っているようだけど、この件、ひっくり返すことができるのか。

  • アメリカの片田舎の悪目立ちする弁護士の法廷小説。

    著者には珍しく連作形式で基本的に事件は一話完結。
    上巻には三つの物語が載っていて、そのうち2編は検事や警察の誤逮捕や誤捜索を糾弾する、民事正義派的な物語でスッとしました。
    一つは大物ヤクザの脱獄劇に臨場してしまう話で、これが何を意味するのかよくわかりませんが、下巻につながるような気がします。
    全体に流れているテーマとしては、趣味のケージファイトのスタッフというかオーナーにおける問題、離婚した妻とその間にできた息子の問題があり、これらの問題も下巻でどう展開するか楽しみです。
    最初はとっつきにくかったですが、だんだん面白くなってきました。

  •  作者の名を何度も確かめずにいられないくらい、グリシャムとしては異端の作品である。逆に言えば、この小説を読んでグリシャムの印象を決めないことを望む。グリシャムはリーガル・サスペンスの王道をゆくような正統派作家である。しかし、そうこの作品は、異端と言ってもよいだろう。

     そもそもグリシャムとしては珍しく、本書は連作中編小説のような構成である。長編作家として知られるグリシャムが、一話完結的な中編物語を紡いでゆく上巻。まずは異端の弁護士の一人称と、その悪ぶった語り口に違和感を覚える読者は多いだろう。これ、グリシャム? ブラックでは? ノワールでは? そう思わせるような、一匹狼のタフなプロフェッショナル弁護士セバスチャン・ラッド。

     どんな奴でも弁護する。信じられるものは法律だけ。趣味として真夜中のケージ・ファイトに出かけ、犯罪者たちとの賭博行為を行うばかりか、ファイターに出資すらしている。これが本当にグリシャム?

     しかし徐々に、このネガティブ・キャラクターが、手段を択ばない執念や怒りの強さにより、入り組んだ個々の事件が絡み合う迷路のさなか、狭い狭い抜け道を見つけ出しては、個性的キャラクター(暗黒街の大物も警察上層部も何でもあり)を次々と手玉に取って、あり得ない結末を導き出してゆく様子に、いつの間にか拍手を送っている自分に気づく。

     こんなごみ溜めのような世界に生息する弁護士であれ、その生きる糧は勝利なのであり、自分の持てる力を発揮して世界を正しく変えてゆく目的への強烈な飢餓感なのである。あきれるほど駆け引きに長けたダーティ・ヒーローによる、あくまで法律を準主役としたリーガルミステリー。グリシャムが読者の期待を良い意味で裏切る熟練の騙し技を、いくつも垣間見せてくれる本書の娯楽性は、鋭い切っ先を持つ刃の切れ味であった。

  • 『常人なら引き受けない例外的な案件を引き受ける』弁護士セバスチャン・ラッド。常に身の危険を感じており、時にはモーテルを転々とする生活。運転手兼ボディーガード兼弁護士助手の「パートナー」が運転する車が事務所。実はレズビアンだった妻と離婚し、一人息子は元妻が引き取っている。上巻では、凶悪犯の弁護を引き受けて脅迫されたり、死刑執行直前の死刑囚に目の前で脱獄され共犯者として逮捕されたり、無能な警察相手の訴訟の弁護したり。プライベートでも色々やらかしてるのが面白い。下巻へ!

  • 東2法経図・6F開架:933.7A/G86k/1/K

  • セバスチャン・ラッドはアメリカの大都市で開業中の“無頼の弁護士”。レズビアンと後でわかった元妻に一人息子を取られてダウンタウンの高層マンションにやもめ暮らし、月1回の面会だけ許されている。オフィスは黒い大型カーゴヴァン。目下、幼女2人の暴行殺害容疑で逮捕された少年を弁護中だが、他の弁護士がやらないヤバイ事件の被告を弁護する仕事ばかり集まってきて、落着く暇なし。

    今回の主人公は、正義のヒーローではありません。しかも連作集のような構造です。どうなる下巻。

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