冤罪法廷(上) (新潮文庫)

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感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102409398

作品紹介・あらすじ

いまから1時間と45分後に、男は死刑を執行される。奇跡のような執行停止が認められるかどうかは、ひとりの弁護士にかかっていた。彼の名はカレン・ポスト。事件を徹底的に再調査して無実を証明し冤罪死刑囚の自由を取り戻す。ほぼボランティアの法律事務所〈ガーディアン・ミニストリーズ〉の専任弁護士だ。実話と実在の人物を題材に巨匠が新境地に挑む、超絶スリリングな法廷サスペンス。

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳文がどうにも馴染めず(カタカナでの名前も覚えにくいし・笑)、海外小説はつい遠ざけてしまうが、直前に読んだ小説が冤罪がテーマだったこともあり、内容に興味を惹かれ本書を手に。
    主人公が働いているのは、冤罪の確定囚を救うために設立された非営利団体。それゆえ依頼人は、全員が刑務所の中にいる。その成果は、過去10年で8人の無罪を勝ち取っているという。
    現在も釈放を目指している依頼人は6人で、そのうちの2人を主に描かれている。
    強姦殺人の冤罪死刑囚と、弁護士殺害の冤罪死刑囚。
    目撃証人や専門家証人に疑問を投げかけ、主人公と仲間たちが真相に近づいてゆく過程はスリリングで小気味がいい。
    苦手な翻訳文も気にならず、巻頭に登場人物も羅列されていることから、すんなりと読み進めることが出来た。

  • 冤罪と思われる死刑囚・終身刑収監者の事件を徹底的に再調査し、無実を証明、彼らを自由の身にすることを専門とする、ほぼボランティアの法律事務所〈ガーディアン・ミニストリーズ〉。専任の弁護士であり聖職者でもあるカレン・ポストの毎日は過酷だ。強姦殺人容疑で死刑宣告されている受刑者を処刑直前で執行延期へと持ち込み、一方では22年前の弁護士殺害事件を掘り返し、証人の説得に奔走する。結果、真犯人グループの麻薬カルテルの闇にまで切り込んでゆく羽目に。自身の危険もかえりみず無辜の者たちを救おうとするポストの祈りはとどくのか――。

    久しぶりにグリシャムのリーガル・サスペンスを読む。こうでなくっちゃ。あっという間に上巻読了。

  •  グリシャムは無骨である。小説の構想は緻密であるけれど、語り口は無骨だ。装飾とか修辞ということにはあまり縁がないように思える。修辞的要素を至って好むぼくは、ではグリシャムのどこにこんなに惹かれるのだろうか。グリシャムの小説に毎度のように、ぐいぐいと惹き込まれてゆく要素は、この作家のどこにあるのだろうか。

     それは彼の作品がドラマティックであることとともに、登場する人間たちが魅力的であることだろう。彼ら彼女らは、底知れぬ必死さを携えて、およそ考えられそうにない難問に挑んでゆく、その姿は何とも魅力的なのである。そしていつもハイレベルで心を惹く主題がそこにある。そうした人間の真実に関わるテーマを提供してくれる法律家であり作家であるグリシャムの、冷徹な題材選び、また、小説という形でありながら、現実に社会に存在する矛盾と闘う、作者の果敢な姿勢が、あまりにも明らか、かつ正当であるゆえに、この作家の価値はわれわれの現在という地平と繋がって、ひたすら高貴なものに感じられるのだ。

     実は、上の二つのパラグラフは、グリシャムの傑作のひとつ『自白』のぼく自身のレビューを若干修正したものである。これらの文章は本書を読んでいる間ずっとぼくの中に湧き上がっていた感情であり評価であったために、そのままこの作品に再利用させて頂いた。

     『自白』もまた本書と同じく、冤罪と闘う法律家の物語であった。死刑制度、冤罪を主題としたグリシャム作品は、他に『処刑室』、ノンフィクションとしての『無実』があり、グリシャムは再三このアメリカの矛盾と闘ってきた作家と言える。そしてほとんどすべての作品の中に、人種差別が打倒すべきテーマとして描かれているのも、グリシャムのホームグランド、トランプ前大統領にも見られる幼稚で戦闘的で、人権無視の土壌である米南部が舞台となっているためもあろう。

     本書の弁護士たちは、冤罪の死刑囚の命を救うことにボランティア的に奔走する、使命感の強い貧乏法律家ばかりである。本書では、冤罪は誤ったものというより、むしろ意図的に作られたものが多く、その底にあるのは冤罪に追い込む捜査側であり、彼らの強引な暴力の源となるのは、欲望と差別である。いずれにせよ無慈悲そのものの強欲が、犠牲者を生み出している現実が存在する。本書の主人公らは、そうしたアメリカ的なる罪から犠牲者たちを必死に救おうとする。何年も何十年も無実の罪を背負わされて檻の中で命の残り日を数えてゆく犠牲者たちを。だからこそ、血の通うあたたかい人間たちの、必死の姿を見せつける全ページが熱い。

     十代の頃にぼくの接したバーナード・マラマッド『修理屋』は、ユダヤ人迫害と冤罪による死刑囚を描いた檻の中の痛すぎる物語であった。それは終始、矛盾とそれを孕む地続きの現実であった。それ以来の激しい痛みを感じさせる力作が本書でもあるが、実は本作の背景には現実のモデルとなる事件があり、彼らの救済活動に命を賭ける法律家たちのグループも実際にいくつも存在する。グリシャムはそうしたチームへの愛と尊敬と共感とで、ヒューマニズム溢れる本書を書いている。真実の重みが、またもグリシャム作品を通して、七つの海を越え、ぼくらのもとに届けられる。

     語られる人間たちの個性と魅力。また、その苦しみ。手づくりの日々と、限りない優しさ。何よりも命を守ろうとする敬虔な行いと、そこに向かう善なる意思。かくも魅力的な人たちと出会えるのがこの作品である。非情で乾いた現実と常に闘う者たちの、終わりなき心の美しさに対する讃歌と言えよう、これはそうした魂の力作なのである。

  • 『刑務所で生き延びるにはポーカーフェイスが必要だ。孤独の日々が長くつづくことは珍しくない』
    『有罪だとわかりきっている人間を、どうして弁護できるのか?』
    『刑務所は、入れられる理由のある人間にとっては悪夢そのものだ。入れられる理由のない人間なら、毎日が一定レベルの正気をたもつための戦いの場になる。そして自分の無実を証明する証拠があることをいきなり知らされ、それでもなお牢屋に閉じこめられたままの人々にとっては、毎日が文字どおり正気をなくしそうな場になる』
    『みなさんは犯罪を解決して、関係者を牢屋にいれる。一方わたしたちは犯罪を解決して、関係者を牢屋から出してやります』


    身に覚えのない殺人容疑で有罪判決を受け服役している死刑囚。
    冤罪を立証し無実を証明する「ガーディアン・ミニストーリーズ」
    この物語は実話と実在の人物を題材にした巨匠グリシャムによる法定サスペンス。
    冤罪は…ある。

  • 死刑囚と無期懲役囚を救う弁護士たちの話。
    人道的にはなしは進むが、作者らしいサスペンスのプロットは弱い、

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