幽霊たち (新潮文庫)

制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社
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本棚登録 : 2250
レビュー : 267
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451014

感想・レビュー・書評

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  • ニューヨーク三部作の第二作。またもや(?)主人公は探偵。ハードボイルドな雰囲気の中で、得体の知れない依頼主より張り込みを依頼される。行動が少ないターゲットの故に、何も「物語」は起きない。何も起きない中で、主人公が辿る内面の旅の末に得た境地と結末とは・・・?
    相変わらず秀逸な出だしと、個性を消したカラーの命名。章立てもなく一気に「物語」を進める圧倒的な文章力。ハードボイルドな雰囲気の中で「描かれる」現実と虚構、個性と無機質な世界。そして、次第に一体化するターゲットと自分。こうした理不尽な「物語」は前作『ガラスの街』の顛末をさらに推し進めたような感じでもある。
    何も起きずに、ただ主人公が内面を辿るだけではなく、そのプロットは実はミステリー的でもあり、わくわくという感じではないにせよ、意外な緊張感に包まれた不思議な短編小説であった。
    訳者解説で柴田元幸は「エレガントな前衛」という名をポール・オースターに与えているが、なかなか言い得て妙である。ハードボイルドで透き通るような筆致で描き出される不条理な「物語」。まるで、大海原にひとり漂っている心地にさせられる。

    • 深川夏眠さん
      私は『山崎浩一の世紀末ブックファイル1986‐1996』で
      この作品を知って読みました。
      山崎氏は「カフカが書いた探偵小説のよう」だと評...
      私は『山崎浩一の世紀末ブックファイル1986‐1996』で
      この作品を知って読みました。
      山崎氏は「カフカが書いた探偵小説のよう」だと評しておられました。
      2014/06/29
    • mkt99さん
      深川夏眠さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      なるほど「カフカが書いた探偵小説のよう」とは、これも...
      深川夏眠さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      なるほど「カフカが書いた探偵小説のよう」とは、これも言い得て妙ですね!
      確かに探偵小説のようなプロットを備えているのですが、とことん主人公の内面の葛藤と不条理さが全体を覆っていて面白かったですね。(^o^)
      2014/06/29
    • darkavengersさん
      こちらの方にコメント返信させてもらいました。
      たくさんの これいいね!ありがとうございます。

      「佐武と市」は原作、アニメ、実写全てが...
      こちらの方にコメント返信させてもらいました。
      たくさんの これいいね!ありがとうございます。

      「佐武と市」は原作、アニメ、実写全てが好きな作品です。
      ホント、全話DVD化してほしいものです(切実)
      2014/07/27
  • これは昔にさらっと読んだんだけど、今回再読したので登録。

    登場人物があまりキャラクタライズされてないし、これといった事件も起こらないしで ふわっとした印象しか残ってなかったんだけど、
    テーマを知った上で再読してみると面白い。

    人にあふれた街 というモチーフはオースター作品でよく使われるけど
    多くの解説者はそれを ニューヨークの多様性、アメリカの多様性が写し込まれているように言うけども、自分にとっては自己の無個性化のように感じる。 周囲に見知らぬ他人がいることは、同時に、自分も他人にとっては無個性な見知らぬ人間なのだという自覚を生むから。


    読書の助けになったのは、どっかの本で読んだ、
    〝ブルーはブラックのことを調べれば調べるほど分からなくなる。
    それはブラックが ブルー自身であるからだ。
    人間誰でも、自分のことが一番分からないからだ。〝
    …みたいな内容の言葉ですね。
    ほんとどこで読んだのかな??出典がわからなくてすっきりしない。
    これを頭にいれて読むと、ブラックの尾行中に、ブルーが「自分のことを考える」行為がとても自然に思えます。古い思い出を思い返したりする行為は、捜査からの脱線ではなく、まさにブラックという自己と向き合ってるからなんですね。

    奴隷解放に誇りを感じるシーンは、あれは自己の解放との重ね合わせだと思ったけどな。

  • 変装したホワイトと名乗る男からブラックという男の見張りを頼まれた私立探偵ブルーの物語。ブラックの監視をするだけの話で、本当にそれだけというのがこの物語のミソである。何も語られず、物語は起こらない。起こらない物語をあれこれと想像し、理由を探し、必死に名付けようとして次第にドツボにはまっていく様はまさに狂気の一語である。そこに浮かび上がるのは人と人との人間関係で、相互認識がなければ人は幽霊と同じである。関わるからこそ交流が生まれ、そこに物語は生まれるのだ。見られていることを意識することによって存在できるというのはまさに真理で、監視対象と自身との境が曖昧になっていく感じは面白かった。現実世界との接点を失った瞬間に現実は消失し、物語の虚構の世界へと閉じ込められる。それをある程度自覚して、脱出しようとする能動性が前衛かつ異色たる所以なのだろう。途中までは主人公と同じように理由を探し結末をあれこれ想像していたが、その行為そのものがこの作品の術中にハマったことの証左である。

  • NY三部作第二弾。ごく普通の男が世界との繋がりを失ってどこかへ消えていくという流れ、最終的に入れ子形式の物語となっている作りは「ガラスの街」と同じ。でもこの作品の主人公には未来の妻や尊敬する先輩がおり、自己存在について考えこむタイプでもなく、望んで孤独という迷宮に踏み込んだわけではないところが前作とは大きく違う。
    世界と繋がって生きていたはずの人間が、ふと一歩横滑りしただけで世界から切り離される。与えられた観察対象が彼の世界の全てになり、気づかぬ内に世界の他の全てにとって彼は非在者となって…唯一繋がっていたその世界が裏返る時、彼の存在自体も裏返る。ブルーもブラックもホワイトもなくなる、色のない世界、でも色の名が溢れる一方でリアルな人間の表情が見えない空虚さは最初から物語全体を覆っていて、読み終わってもそれこそ全てが幽霊たちの話のよう。消失の物語のようで、全体が“非在”を語る作品と言えるかも。(2010/1/29読了)

  • モンドリアンの絵画を想起した。
    一見単純な色彩と面構成によるあれだ。
    矩形の一つ一つに人格があるようで、黒い線は街のようで。

    「私は何者か」というテーマは『ガラスの街』と一貫しているようだが、同じテーマを裏側から書いたようなとでもいえばいいだろうか。

    自分を観察するものがいて初めて自分を認識する。
    そのような感覚はSNSなどによって慰めを得ようとする今の私たちにこそ思い当たる感覚ではないだろうか。

  • 面白っ…わかんねえ

  • わたしがあなたを追跡し監視するとき、わたしはあなたのことを考えているようで、わたしのことを考えている。表面を絵の具で塗り分けるみたいに名前という記号で他者と区別されているに過ぎないわたしは、本当の、あるいは真実の自分を定義することができない。あなたの中にいるわたし、わたしの中にいるあなたの姿はおぼろげで幽霊みたいに漂っている。通じ合う内的世界の闇は果てのない孤独。けれども、あなたとの繋がりを断絶すれば失われるのはわたしのほうだ。わたしが実体をもって存在するためにはいつもあなたに見られていなければならない。

  • 「ニューヨーク3部作」の2作目。

    序盤は推理小説のような雰囲気を漂わせるけど、読み進めるうちに自分という存在、他者との関係性などを考えさせらるような内容。それでいてエンタメ作品として楽しめるのもすごい。解説にも書かれていたと思うけど。

    もやもや考えながら読み進めるのは楽しい。読むたびにいろいろ発見することができそう。

  • ポール・オースターも、柴田元幸も好きで文庫本で購入した。前半は少し退屈したが、後半に一気に盛り上がり、そしてすとんと終わり、よかった。
    主人公が思いだすことに関しての考察がいい。映画や本や景色など。
    買ってよかった。

  • 観察する者、される者の人生が奇妙に重なり合う何も起こらない探偵小説であり、ミステリー小説。
    無彩色の世界であやふやに生きる、他者を持ってしか自分のあるべき「形」を認識出来ない儚い幽霊たちのお話。

    不可思議な文体ととりとめもない世界にするする迷い込むような、小説という形でしかなし得ない体験を読み手にもたらす本。
    すごく刺激的で読み進める手が止まらなくなるのですが、自分の言葉で説明するのがとても難しい。
    物語の枠の外へと旅立った「ブルー」は果たして幽霊では無くなったのか、彼らの織りなす物語を見つめていた語り手もまた実体を持たない「幽霊」だったのか、はたまた、読み手である私たちこそが「幽霊」なのか。

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