孤独の発明 (新潮文庫)

制作 : Paul Auster  柴田 元幸 
  • 新潮社
3.55
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本棚登録 : 1064
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451038

作品紹介・あらすじ

私の父は、52歳で離婚し、ニューアークの家で、ひとり孤独に死んでいった。父の死を伝え聞いた私は、15年ぶりに帰郷し、遺品の数々と対峙する。そこで、私は一冊のアルバムを見つけた。夥しい父の写真。私は曖昧な記憶をたどり始める。父の孤独な精神の闇。父の父(祖父)をめぐる不幸な殺人事件…。見えない父の実像を求めて苦闘する私。父子関係をめぐる著者の記念碑的作品。

感想・レビュー・書評

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  • 「見えない人間の肖像」と「記憶の章」の二部構成からなる長編。あらすじ的にはオースターの自伝。でも自伝的小説というのには当たらない。解説にもあったようにオースターの精神の成り立ちをあぶりだすような作りになっている。こういう内省的な小説は自分に合わないものだと吐くくらい気持ち悪いけど、オースターの孤独を通り越して空虚な感じはやっぱり好きです。最初は本当怖いぐらい空っぽな父親の空っぽが息子を孤独にしていく過程が恐ろしかった。でも「見えない人間の肖像」は進むにつれて父親の人間的な部分も見えてきて混乱する。一人の人間を語るのには混乱がつきものなのだろうけど。たくさんんの部屋を通して見る孤独、物語ことの重要性。

  • 父の肖像はわからない。
    父という存在は、知れば知るほど自分と遠ざかると思うのは全世界共通なのだな、と。それを改めてつきつけられる。だよね、と。
    最も近い人とも実は分かり合えていなかった、という悲しくなる事実を、避けては生きていけない。知らないといけないのだ、と思うこと自体は非常に重要なことだと思う。それは真摯さか、父を通した自己探求か、ただの好奇心か。

    調べる前から虚しくなるとわかってて進んでく作者はマゾに思える。
    自分もそうなるかもしれない。

  • 記憶の書が素晴らしい たゆたう思考の滞留もそのままに。これは名著

  • 『ガラスの街』を読んで以来、軽くマイブームになっている柴田元幸訳のポール・オースターは今回が四冊目。書かれた時期からすると、本書が最も古いとのこと。
    他の作品同様、これも非常に内省的。しかも、題材が父子であり、「僕自身をモデルにして、自己というもののなりたち方について探った作品」とのことで、内省度合いが他の作品よりはるかに強い。前半は、父親から愛情らしい愛情を示されなかったことを心に刺さる言葉で綴っている。内容は辛いはずなのだが、なにか美しささえ感じられる。一方、後半は古典などから様々な引用を交えた、小説というよりは散文に近いトーンで進む。正直、読むのにかなりの体力を要するが、愛情に飢えた心情を思うと読む手を止められない。
    オースターの主な著作に一通り目を通したら、この初期の作品にもう一度戻ってこよう。

  • 2009年1月23日~25日。
     ポール・オースターの散文作家としての処女作とのこと。
    「見えない人間の肖像」で亡き父を語り「記憶の書」で記憶、孤独、偶然などを語る。
    「記憶の書」が難解、あるいはつまらないという意見が多いように思えるのだが、僕としては「見えない人間の~」よりも圧倒的に面白かった。
     そこには、ハッとするような文章表現や思考がそこかしこに存在している。
     そんな文章を読んでいると物を見る時の見方がおのずと変わってくる。
     哲学的だとさえいえると思う。
     そして同時にロマンティックでもあり、情緒的でもある。
     一見、とっちらかっているようにみえて、全てが繋がっている。
     たまらなくおもしろかった。

  • 父親の記憶、ユダヤ系であること、子どもの頃の記憶。そういった記憶を通して様々な考察をしている作品です。
    考察も深く、考えさせてくれるものですが、同じような記憶があったりして、共感できるものもあります。
    なにかを考えたいとき、ぜひ。

  • 後半が抜群によいと思う。幾つもの引出から幾つもの物語をが出てくるところがさすがという感じだ。

  • 自意識、自己の成立ち、世界と自分のつながり方、来し方行く末、などを、いつでもどこでも考えて考えて考えて、文章に結晶させたいというヒリヒリした思いを持つことのできる人が、詩人になれるのだ。父と息子の関係、家族と自分の関係、一生の間に巡り会いすれ違う人たち、その時の場所や体感の記憶、そういったものの積分が、今の自分だ。

  • 記憶の書。死と記憶。語り続ける事と生きる事—シェラザード、ピノッキオの寓話。

    「彼はこれ以上先に進めない」

    ・・・かなり暗い。

  • 書くこととは記憶すること、存在しない父をめぐる。語り続けることで生き続ける。

  • ポール・オースターの自伝的小説
    「見えない人間の肖像」「記憶の書」の二篇。

    「見えない人間の肖像」はオースターの父親のことを主に記したもので、読みやすく内容としても面白い。

    父はいわば恒久的な部外者、自分自身の旅行者になっていた(p16)

    こうあるようにオースターの父親は積極的に人生を生きるというより一歩離れたところに佇むような、家族との関わり方も心の通い合わないようなものだったらしい。
    こういうひと、いるなあと自分の周りにいるひとに重ねて読めたためオースターの気持ちも父親の気持ちにも添いやすかった。

    「記憶の書」は、オースターに言わせればこちらこそ書きたいことで重要らしいのだが、読みにくい。
    どこまでが事実でどこからが空想なのかなど曖昧でわかりにくい。

    一度読むだけでは何を伝えたいのか正直言ってわからなかったことが残念だった。
    翻訳ものでは読み返すと見えてくるものもよくあるので、また時間を置いて読んでみたいと思う。

  • 2015/09/28 読了

  • オースターが小説家として名を上げる前の作品。詩人として活動していた時代から小説家に転身するまでの移行期の作品だけあって小説としては観念的・抽象的すぎてよくわからなかった。オースターを読むならこのあとのニューヨーク3部作以降の作品から読むのが吉。

  • 今までオースターの本を5冊ほど読んでずっと感じていた、捉えどころが無くメランコリックで空虚な感じ。なぜオースターの作品はそうなのかが、よく分かるような自伝的作品。

    「見えない人間の肖像」は読んでいて恐ろしかった。オースターの父の底なしの空虚が。息子オースターの内にも外にも満ち満ちている孤独が。彼らの、常に紗幕越しであるかのようなぎこちないふれあい。そこにほんの時おり、目が合ったように思える一瞬があったのだと思うと切ない。オースターが空虚な父を発見して理解していったように、いつか私も子供に見透かされるのだろう。


    後半に収録された「記憶の書」は、あまりにも断片的で、集中力が途切れてしまい残念ながら読み通せなかった。

  • オースターの作品のベースは父と息子にあり。

  • 孤独が生み出すもの。
    孤独でしか生み出せないもの。

    閉ざされると同時に開かれるもの。

    断片は断片ではない。

    父の不在。
    不在の存在。

    歴史。

    偶然。

  • 『死は人間の肉体をその人間から奪い取る。生にあっては、人間とその肉体は同義である。死にあっては、人間があり、それとは別に肉体がある。「これはXの遺体だ」と我々は言う。あたかもその肉体、かつてはその人物そのものだった、Xを代表するものでもXに帰属するものでもなくXという人物それ自身だった肉体が、いまや突然何の重要性ももたなくなってしまったかのように。
    ある男が部屋に入ってくる。私は男と握手をする。そのとき私は、彼の手と握手しているとは感じないし、彼の肉体と握手しているとも感じない。私は彼と握手をしているのだ。死がそれを変える。これはXの遺体だ。これはXだ、ではない。それはまったく別の構文である。それまでひとつのことについて語っていたのが、いまや我々はふたつのことについて語っている。そこで前提とされているのは、人間そのものは依然として存在しつづけているということだ。』

    第一部の「見えない人間の肖像」は良かったが、第二部の「記憶の書」は難解で、かつ、興味も湧いて来なかった。

  • 「見えない人間の肖像」
    書くことによって近づこうとする父の肖像。父にまつわる数々の事実と、空しさ。

    「記憶の書」
    断片的で難しく、途中で読むの断念してしまった。時間置いてからまた読んでみよう。

  • なんとか読み終わった。時間がかかった。よくわからん。

  • 「見えない人間の肖像」
    死後の父、生前の父。決して触れることのできない他人という存在。
    その肖像は血の繋がりゆえにいくらも思い浮かぶだろう。
    さっぱりと語り続ける口調、あえて何かの肖像をとらえようとする研究者の体で、疑問も反感もそのままに。仮定はいっさい使わない。
    でもとてもやさしいと感じる。
    真実であるがゆえ哀しいこと。美しくないこと。偶然から無視されること。
    すべて、ぜんぶ。ああ、これが愛かと思ってしまった。
    そのやさしい手の内にわたしは人間の愛の深さを思い知らされて、
    ほんとうに救われました。ほんとうに。

    「記憶の書」
    連なる記憶からなる書。
    すこし気が散った。
    けれども部屋の描写はとても印象深い。
    ひとつの部屋、空間。自分、境界線。
    たまにふと思い出す。

  • 変わり者で孤独な父親が持つ多面性。複雑で単純。変わり者ではなくても、普通の人などいない。一部が好き。

    ちょうど祖母を亡くして葬儀を終えたばかりのときに読んだので、一部の父の遺品についての語りには共感するところがあった。

  • この二部構成はなかなかすごい。再読必至。

  • <オースターの父と子の関係。そして様々な部屋に関する記憶と孤独の断片。その2つの中篇。>

    ポール・オースター

    2つの中篇収録。
    前者は当たり前ですが、オースターも様々な葛藤を抱えて、詩人、小説家になったのだな・・・と感じさせる文章。
    後者は・・・なんだかよくわからない・・・苦笑

    でもひたすらクールな文体。
    これ(特に2つめ)は再読しなければ。

  • 著者が自らをモデルにして書いたという、
    自伝風フィクションだそうだが、
    印象として、ほとんど事実ではないかと思われる。
    二部構成で、
    第一部は、語り手が父の死を契機に、父について思いを巡らす。
    第二部は、主人公(著者の分身のようなキャラクター)が
    様々なテクストを引用して、父と子の関係を考察する、
    という内容。
    最も「距離」が近いはずの親子でありながら、
    どうしても手が届かない、もどかしさがあるわけだけど、
    その悶々とした気持ちが創作意欲を駆動しているのかもしれない。

  • オースターの家族を描いた自伝的作品。彼の作品には孤独を描いたものが非常に多い。なぜ、彼がそこまでして孤独というモチーフに拘るのか、その答えは彼の出自にあったのかもしれない。ただし、小説というよりは彼の思弁の叙述も多いため、物語が躍動する独特のオースター節はあまりないように感じた。

  • 著者の自伝のような、少し違うような作品。
    定義としては私小説のようだけれども、日本のそれとは全然違う。
    かなり骨太に、記憶をめぐる思考を語る。
    (それはそれで素晴らしいけれども)情景の中に感情を読み込んだり、そういう空気を写し取るようなものではない。

    特におさめられた二作目、『記憶の書』は強烈。
    どのエピソードが、ではない。どの一文が、でもない。
    膨大な物語がおさめられていながら、無駄な一文、冗長な語りがあり得ない。

    結論が示されるわけではなく、煮詰められた考察、をそのまま呈示してみせたような本。

    考察の対象は、父への子の、子への父の眼差しを表象としながら、自らの内へ内へ向かっていくもの。
    父の死から生へ、そして自らの生に遡って(明示されているわけではないけれど、息子を見る眼差しは反転して、息子にとって父である自身の死、というか消滅、社会的な死も含めた死、記憶の中の生も含めた生、に向かっている)

  • 【概要・粗筋】
    見えない人間である父を何とか理解して語ろうとする「見えない人間の肖像」と、古典的な著作や聖書、詩などを引用・言及しつつ、孤独や記憶、文学などについて語る「記憶の書」の二部構成からなるポール・オースターの初期の作品。

    【感想】
    小説を期待していただけに第二部の「記憶の書」にややとまどった。第一部は、自己完結して他者を必要としないようでつかみ所ない父親の一生を巡る物語で、自伝的小説として読め楽しめた。一方、第二部は、エッセイとも評論とも自伝的小説とも云えるもので、そして、ポンポンと語られている内容が飛ぶから、あんまり理解できず、字面をただ読んだだけだった。だから、評価しようがない。もっとも、理解できるようにもう一度読み返そうとは思わなかった。

    でも、第二部で、Aが16歳のときに恋していた少女とロンドンで偶然彼女を見かけた箇所(P237)は気に入った。

  • とらえられない父の実像…。
    あなたは自分のお父さんのこと、どれくらい知ってますか…?

  • 人に心を開かないお父さんの話。珍しく4。

  • 先生。そう呼びたい。この人は舞台装置のような仕掛け作りが好きなのだろう。文章ははっきりしないが、舞台上でどこまでもトントンとやっていけそうな作風。全てが親父をすり抜けてゆき、たまに親父の意識した何かが少し親父に留まった的書き方に感銘を覚えた。

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