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Amazon.co.jp ・本 (544ページ) / ISBN・EAN: 9784102451045
感想・レビュー・書評
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柴田元幸さんを知ってから
ポール.オースターを知りました
そしてやっとこの有名な作品を読むことができました
なんともせつない青春小説
月が常にそばにいて
絶望と、偶然と、運命と、に振り回される
「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」ムーンパレスで出会ったこの言葉が
自らの家系を知り、未来を暗示していく詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長い小説だったが、話の展開は先が読めない面白さがあり飽きずに読み切れました。
不遇な生い立ちが何かしら影響している主人公の青年の厭世観、その後運命的に出会う人々の生き様から受ける強烈なもの…青年にとって大きなうねりのような濃い数年間を共に味わった気分です。 -
ジーンと心に染み入るような感動のある小説でした。
悲劇に振り回されながら生きる登場人物たちはとても人間味があり、僕はなぜか読んでいて救われる気持ちになりました。
登場する3人の男たちは、ある意味悲劇でつながっている深い関係だと思いました。
不思議と読後感がとてもよい小説でした。
また、このような小説を読みたいです -
「人類がはじめて月を歩いた夏だった。」
書き出しのこの一文で、私はこの小説を絶対に好きになる、とすぐわかった。信じがたいしめったに出会えるものではないのだけれど、そういう小説ってちゃんと存在している。
主人公のマーコ・フォッグは11歳の時に母親を交通事故で亡くしてから、唯一の血縁であるクラリネット奏者のビクター伯父さんと共に、土地を移り住みながら生きてきた。父親の顔は知らない。
成長しコロンビア大学に進学したのを機に一人暮らしを始めるが、そのうちに伯父さんも突然亡くなってしまう。
マーコはあまりの絶望に我を失い路頭をさまよって破滅の一歩手前まで追い詰められるが、そこを旧友のジンマーとキティ・ウーに救われることとなる。
二人に支えられながら少しずつ回復してくると、マーコが社会復帰のためとみつけてきたのは、とある屋敷に住む全盲かつ両足不全の老人の話し相手になる、という奇妙な仕事だった。
マーコめがけてやってくる不可思議な偶然と、その偶然が次から次に解き明かしていく運命の連鎖のようなものに、ただただ目を見開きながら読んだ。ここでは偶然は奇跡であり、奇跡はまた偶然だった。マーコの人生はいったいどうなってしまうのか、行き着く先はどこなのか、終盤にすすんでも展開はまったく予測できなくて、魅力的な登場人物とリーダブルな文章に手をひっぱられ夢中でページをめくり続けることしかできなかった。
ビクター伯父さん、キティ、エフィング、ソロモン・バーバー。たくさんの出会いがあって、別れがあって、でも失うことでまた新しく知って、ユタからカリフォルニアまでの砂漠をひたすら歩いて、ようやく人生というものが始まる。マーコの人生はそうして今も続いている。
読後には切なさと苦しさが喉元までせりあがってきて、私は、と思わずにいられなかった。私は、私の人生は、もう始まっている?あるいはまだ始まっていない、あるいはちょうど焼け石のように丸く黄色い満月の下の砂漠を歩いている?
月が随所にモチーフとして出てくるところも好き。
コロンビア大学すぐそばの中華料理店「ムーン・パレス」は、きっと優しい光でマーコを明るく照らしてくれる月みたいな場所なのかもしれない。原点のような。いつも静かに変わらずそこにある。
中でも個人的にものすごく心に刺さったのは、老い先短いエフィングがマーコの将来を心配して今後の計画について訪ねるシーン。「君は夢想家だからな」「君の心は月に行ってしまっておる。たぶんこれからもずっとそうだろう」
マーコは実際何も考えていなかったが、コロンビア大学の図書館学科に願書を出して司書になるつもりです、と嘘を並べて答える。「考えてみれば、図書館というのは現実世界の一部じゃありませんからね。浮世離れした、純粋思考の聖域です。あそこなら僕も一生、月にいるまま生きていけますよ」
この会話を読んで、ぶわっっっと全身に新鮮な酸素のようなものが行き渡るのを感じた。
私も図書館でずっと働いてて、誰かになぜ図書館なの?と問われてもただ好きだから、としか返せなかったのだけれど、そういうことだったんだって答えを手に入れたかのような気持ちになった。
私の心もとっくに月に行っていて、そして私は月にいるまま生きていたかったんだって気づいた。そうか、図書館って、そういうことだったんだ。
序盤にしか登場しないビクター伯父さんもすごく素敵な愛すべき人物なので言及しておきたい。
マーコ・スタンリー・フォッグという本名をからかわれ続けてきたマーコが15歳の時にM.S.Foggと短く名乗るようになった一件について、それがmanuscript(原稿)の略称でもあることから、ビクター伯父さんは「人はみな人生の作者だからね」と言って喜んでくれる。「お前が書いている書物はまだでき上がっていない。ゆえに、それは原稿である。だとすりゃこれ以上ぴったりの名があるかね?」
伯父さんはいつだって、あらゆる物事から隠された真理を読み取ることが得意なのだ。
マーコがその後の人生でたくさん散らばっている偶然や予兆を見逃さないで、見失わないで自ずからつかまえてこられたのは、きっとこうした伯父さんの姿にずっと学んできたからなんだろう。
ポール・オースターという作家の小説を初めて読んだけれど、とにかくとても良かった。
それこそ偶然がつれてくる先の遠く向こうにある何かへの予兆を信じてしまいそうになるほど。
柴田元幸さんの訳文も素晴らしいですね。読者が登場人物たちを、ストーリーを、小説そのものを愛さざるを得なくさせる魔法がかかっているみたい。 -
翻訳小説とは思えない文章の良さ!
表現が全部良くて、刺さりまくって大変でした。
面白い比喩表現が多くて、言葉遣いがとっても好き。
著者も訳者もほんとに素晴らしいです。柴田元幸さん訳の本もっと読みたくなっちゃった。
内容は非常に壮大で先が読めなくて面白かった。
時系列がごっちゃになってて、頭の中の回想を追ってるような感覚。
楽しかったし、展開が全く予想つかなくて驚かされてばかりだった。
大変面白かったです! -
誰かのおすすめ本で紹介されていて
気になって購入後、積読したままにしてたら
何に惹かれて買ったか、どんな内容か
さっぱり忘れてしまってた
わたしの最近の傾向でSFだったかなーと
思いながら読み進めたが、物語である。
僕の視点で話はすすむ
むむむ、最後まで読み切れるかなー
と不安になりつつ、読み進める
50ページも過ぎた頃からか
どんどん引き込まれていく
彼の中に。
小説って、また読もうと思うものはなかなかない
一回読んで、あーよかった、面白かったと
でも、最後まで、ワクワクもするし
人生についてすごく考えさせられる
アメリカ文学って、結構文化的なことを
知った上じゃないと楽しめないのが多くて
苦手だけど
知らなくても、訳も素晴らしいのだからだとおもうが
すんなり溶け込める
そして、人生の移り変わり、はかなさ
生きること、死ぬこと
偶然や必然や運命や
いろいろ思うこと尽きない
初読みでは、全ては移り変わる
執着なんてしても無駄だなーと
今の自分をかえりみた
年齢を重ねて、再度読みたい
もし、病気で死ぬ間際、病院に横になって
読むなら、どうしても読みたい
そんな本です。
巡り会えてよかった! -
狂った若者とイカれた老人とのキテレツな関係も、読み進めるうちに頼もしいコンビのように思えてくる。
主人公と関わる登場人物の多くは、割り切れない葛藤と独りよがりでもそれを打破する工夫や拘りが散りばめられている。狂っていてもイカれていても同じ人なんだと思えた。
タイトルにある「ムーン」という言葉が、全編に渡って多くの描写に使われているのも読み終えて納得。
これは読んで良かった。
自分の人生の終盤にもう一度読むといいかもしれない。
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君が手にするはずだった黄金について(小川哲)に、出ていた本で、かなり興味をそそられたので読んでみた。
結果、かなり時間をかけてやっとこさ読了(笑)
退屈になりそうになると、少し興味がわくシーンへと続く展開が数回ある。
のんびり旅の電車が好きな方は、車中で読むのにお勧めする。そして、時代背景を楽しみに、古典を紐解くのも悪くない。
更に「ミスター・ヴァーティゴ」も面白いと彼女(君が手に・・・に出てくる)が言っていたので、これもブックマークしてある。 -
偶然の出会いと別れによる人生の激しい浮き沈みが描かれることで、ストーリーに惹きつけられ、読書中は現実の悩みを一時忘れさせてくれます。必ずしも時系列ではない語りがあり、匠の技を感じました。
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不格好で、不器用にもがく滑稽な姿。
主人公の青年期が見事に描かれています。
「ムーン・パレス」 ポール・オースター著
若い頃、何冊も同じ著者の本を読んだのですが強く印象に残ったのはこちらの一冊でした。
今年に入ってニュースで著者の訃報を受けました。その夜から3日間でこの小説を再読しました。
物語の前半は、主人公がとにかく極限状態に落ちていく様子、
後半はそこから回復して、自分のルーツを探すという設定です。
後半からの話はちょっと奇想天外で、ここが面白い!という方々が多々ですね。
私は、主人公マーコがどんどん落ちて彷徨うところが、この作品の一番の魅力だと思っています。
この主人公の精神状態がそのまま、つたないのに心を打つ、青春時代に重なるように思えて。
前半の主人公は、とにかく不様に、貧困状態に落ちていきます。
ただただ流されて落ちていくマーコに
何をしてるの!とハラハラしながら突っ込みをいれるんですけど、けれどその心理描写が、著者の語り口があまりにも素晴らしくて、ああ、わかると共感さえしてしまうほど。
「青春」って、青い春って表記するんですね。
長い冬を終え、草木が芽生える希望に満ちた季節でありながら、夜は暗く、寒い。
若さの持つ、無茶ぶり、ひたむきさ、希望に幻想、混沌、いろんなことが胸を打ちます。
ニューヨークのどこか都会的な軽さと洒落た雰囲気の感じられる文体もよいですよ。 -
どこかでグッと掴まれるとか、起承転結がバッチリあるとか、あんまりそういう感じじゃないんだけど(ずっとちょっと変で悲しい話)、なーんか飽きずに楽しく読めて不思議。
MSフォッグ(と彼女のキティ)、フォッグとエフィング(目の見えない偏屈なじいさん)、エフィングの過去、フォッグとバーバー、バーバーの本の内容、みたいにそれぞれまあまあちゃんとした(どちらかというと重くて悲しい)話がたくさん出てきた。
でもなんからみんな好き。
特に最初のフォッグの、お金無いのにその中で謎にやりくりしようと頑張るところがなんか好き。叔父さんの残した本を読みまくって、売って、何もなくなったら公園で生きて…私も助けに行く親友とキティに加わりたかったな笑
人生の偶然性には本当にびっくりするよな!! -
「それは人類がはじめて月を歩いた夏だった」という、名作と名高い作品に相応しい書き出しで始まります。主人公であるフォッグという青年が大切な人たちを無くし、自らも堕落していく様が描かれた前半はすごく引き込まれて、これからどういう展開になるのか期待値も右肩上がりでした。
そして中盤に入り、エフィングという老人のもとで働くことになりますが、、、そこから急激にトーンダウン。会話文が長いだけでとにかく面白くない。少しずつ斜め読みするようになり、引き込まれた前半とは打って変わって読むことが苦痛になり、とうとうフェードアウトしてしまいました。
読み進めればまた引き込まれたかもしれないですが私はダメでした。
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父はなく、母を亡くし、伯父に育てられた青年の物語。といえばいいのか。オースターの小説はとにかく物語のエネルギーに巻き込まれ、主人公が囚われる現実の中に連れて行かれる魔力があり、大変体力が必要になる感覚がある。
物語は父の不在と希求がテーマになっているように僕には読めた。それは僕個人の体験に触発された部分もあるだろう。言い訳ばかりで都合のいい解釈で生きる主人公を、逃れられない現実が捕まえる。そうして青年は何かを得る体験と喪う体験を共にすることになる。痛みのない人生はないのだ。 -
随分と滑稽で、幾分と自虐的な貧乏学生マーコの視点から描かれる随筆チックな青春小説。
どうしたらこんな比喩が思いつくのか?の連続。純文学にも似た美しい翻訳が、思春期ならではの独りよがりの悲壮感、世の中を穿つことでしか得られない優越感と上手く融和していた。
起承転結というよりは、主人公の回想の中で偶発する出来事の連続にゆらゆらと身を任せながら楽しむ物語。 -
冒頭の珠玉の一文から一転、誇大妄想癖の鬱屈した青年の青春物語が始まる。冗長な独白や蛇足のようなエピソードなど読み進め難くなる部分もあるが、機智に富んだユーモアのセンスや、感傷的かつ暗喩的な表現の美しさに魅かれた。
度重なる偶然とともに物語は進展し、終幕に向かって奇妙で散らかった個人的な物語は収斂していき、主人公は普遍的とも言える出来事により喪失を迎える。評価が別れそうだが、ある種のあっけなさが私は好みだった。
もしも多感な10代の頃に読んでいたら、どう感じただろう、読んでみたかったなと思う。読んだ後に反芻したくなる作品。 -
とても読みやすく、理解しやすかったです。内容も、特別感動する部分は私にはなかったですが、どうなるか分からない展開で、不思議とリアリティも感じられて良かったです。
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「それは人類が初めて月を歩いた夏だった」
主人公マーゴの物語が始まる。
敬愛するビクター伯父さんを亡くしてから、隙間から見える「ムーン・パレス」のネオンサインを、ただ眺め、思い浮かべるだけの生活を彷徨う……やがて、友とキティという女性に助けられて、無為の果てから生還する。
そののちに出会ったエフィングという人物が、主人公に生き様を見せる。
「……どこでもない場所のど真ん中の、何もない荒野に、独りぼっちで何か月も……わしはどこへもいく必要なんかないんだ。ちょっとでも考えれば、とたんにもうそこに戻っているんだから。このごろじゃ一日の大半はそこにいるのさ……」
物語は次に主人公マーコとエフィングの息子との関わりへ続く……。
このあたりになるとマトリョシカのように話中話が入り込み、やや難解になるが、別に研究者じゃないのでわからないところは気にならなければすっ飛ばして読む(と、思ったけど意外と読める)。
そして、終盤……。
『太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である』
オースターは孤独だ。 -
"'人類がはじめて月を歩いた夏だった"
伊坂幸太郎の重力ピエロ、春が2階から落ちてきた。と並ぶくらいロマンチックな書き出しです。
大切なものを手に入れては失っていく主人公の苦しむ姿を美しく感じました。
欲しいものを手に入れるにはそれを欲しがってはいけないなんて、果てしなく青春だ....。羨ましい。
そして侘び寂び万歳。
ひとつひとつを見れば悲劇ですが、俯瞰で見ると喜劇です。
こんなチャップリンみたいな小説がつまらないわけがない。
雨を感じながら読むのにはぴったりの本でした。
ポール・オースターの作品
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