ムーン・パレス (新潮文庫)

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レビュー : 360
  • Amazon.co.jp ・本 (532ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102451045

感想・レビュー・書評

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  • 一人の若き青年の物語。思いもよらぬ偶然の出来事が次々と起こり、物語が複雑に展開してゆく。
    登場人物の男逹の物語は、主人公の肉親の物語でもあったのです。
    この物語には「月」が一つの象徴となっています。それは、主人公の人生の幸運であったのかもしれません。
    そして主人公が本当の意味での人生の新たな幕開けを得たことに、深い安堵を感じました。若き青年の人生はこれからはじまるのです。
    愛と別れの、青春の感動の一冊。

  • 特別な一冊になればと思って購入したが、今の自分にとってはあまり響かなかった。

    時折見せるユーモラスな表現や、物語の山場には何かを期待せずにはいられなかったが、内容の割に文字が多めで話のテンポが遅く感じ、途中読み疲れてしまった。

    初めは、両親がいない主人公マーコ・スタンリー・フォッグが、育ての親であるビクター伯父さんを亡くしたことで人生に絶望し生活が悪化、敢えて何もせずに貧しい生活を送り命の危機にさらされる。

    そこでルームメイトのデイビット・ジンマーと、以前1度だけ面識がある中国人女性キティ・ウーに救われ、その後ジンマーの部屋に居候し、衰弱した肉体を回復、そしてキティと関係を持つ。

    ここまでは、不器用な若者が己の過ちに気付き再生するまでの物語、そして青春の幕開けという感じだったが、マーコが人生をやり直すためトマス・エフィングという老人の介護のアルバイトを始めたことで次のフェーズに突入する。

    その老人は掴み所が無く、ある日は呪詛と罵倒が飛び、またある日には深い共感のこもった温かい言葉が出てくる。本心なのか全てが演技なのか…エフィングの屋敷に住み込み、看護師兼家政婦のリタ・ヒュームと生活を共にしていく中で、マーコはこの精神的鍛錬の日々に適応していく。そんな中、エフィングは自分の先が短いことを悟り、今まで秘密にしてきた過去をマーコに打ち明ける。

    この老人が語った壮絶な過去によって、トマス・エフィングの存在感はより大きなものとなり、まるで別の物語を読んでいる様な印象を受けた。
    死が迫っている老人の行動は無意味に感じるが、もし自分が年老いてその時期が来た時に、エフィングの様に選択する気力を保てるのか、意味が無くても行動を起こす原動力は何なのか考えさせられた。

    彼の死後、マーコはエフィングの息子だと明らかになったソロモン・バーバーという男へ手紙を送るが返事は無く、キティと共に新しい生活を始める。エフィングが亡くなってから4ヶ月ほど経ってから、バーバーから返事が届き、ようやく会うことに。

    バーバーは相当な巨漢でハゲているが、ウィットにあふれる魅力的な人物だった。お互いの情報を交換し、意外な真実が明らかになる。エフィングの息子であるバーバーは、当時教え子だったマーコの母エミリー・フォッグと関係を持ち、2人は別れる。その後、マーコが産まれる。つまりバーバーは実の父親であり、介護していたエフィングは祖父だった。

    意図せず父親との再会。だが、キティが妊娠したことで、出産に対する意見の違いからマーコとキティは別れることになる。落ち込むマーコを元気付けようと旅に誘ったバーバーだったが、旅の途中、2人でエミリーの墓参りに寄った際に墓穴に落ちてしまい、しばらくして亡くなる。

    孤独の身となったマーコは、1人エフィングが語っていた洞穴を探し続けたが見つからず、ついには陸の果ての浜辺までたどり着き、夜空の闇に浮かぶ月を見つめる。悲しみの果てに彼は何を思うのか…

    全て読み終えて、この作品は何が伝えたいのか自分には分からなかった。また不幸な登場人物が多いが、なんとなく強引にバッドエンドにしているように感じた。主人公の孤独を演出にするために、最愛の恋人とは別れ、父親が穴から落ちたことが原因で亡くなるという間抜けな最後。感情移入もあまり出来なかったし、心も動かされなかった。

    もしかしたら、この感想は読み手の自分に原因があって、条件さえ整えば今回理解できなかったこの作品の魅力に気付けるかもしれないため、またいつか読み直したいと思う。

  • 悪くない…悪くはない。むしろ良いと思う。
    けど好みじゃない。
    数冊読んで好みが出てきたからなんですが…

    たくさんの大事な人を得てそして失ってきたこの主人公の心はとても繊細で破滅的。
    主人公なのに彼のエピソードの部分だけが好きになれない。
    そして希望を見出したように見える最後のあのシーン…
    あのあと彼は色々な事とちゃんと向き合えたのか、これからの人生でおこるであろう様々なことに立ち向かえたのか。
    1冊分の彼の人生をみてきた後では不安が残る…

    キャラが好きじゃないなと思いつつこんなことを思ってしまうのは共感してしまったのか作者の描写がとても上手なのか。
    ああいう感じに終わるのはいいんですが、彼のキャラクターを考えるともう少し違うエンドが欲しかったかな。

    この作者は4作目ですが自然に読める翻訳には毎回感心してしまいます。素晴らしい。

  • まさに、青春小説。
    それも、部活とか恋愛に邁進するような「ザ・青春」ではなく、
    失い、迷い、傷つき、立ち上がってやみくもになってみたりする、
    青臭くてがむしゃらで、なんか痛々しくあるんだけど自分を重ねてしまうような「青春」。
    度重なる別れに傷つき悲しみながらも、何度でも人は立ち上がっていくんだなぁと思う。

    あやふやな土台に、頼りなげに立っている主人公。
    主人公の青年は、私生児として生まれ、母も13の時に事故で失い、
    大学生のときには育ててくれた叔父も亡くしてしまう。
    ひどい喪失感から、叔父のくれた大量の本をむさぼり読み、
    これを古本屋に売って生活費に充てていたが、やがて本はなくなり、
    家を追い出され、ホームレスとなる。
    朦朧とした意識の中、2人の友が彼を救い、やがて動けるようになってから、
    住み込みで老人の世話をするという仕事を始める。
    老人は彼に、自分の激動の半生を書きとめるという仕事を科した。――

    なぜかわからないけど、極貧生活をしている主人公が、
    最後の卵を床に落としてしまい、板の割れ目に卵が流れおちていくのを
    見たときの絶望感がリアルで、一番印象に残っているシーンだ。

    最後は少し失速してしまった感もあったけれど。
    普段、あまりこういった翻訳ものは読まないからわからないけど、
    この翻訳はとてもいいんじゃないかと思った。(偉そうでごめんなさい)

  • 植物がグイグイ水を吸うみたいに、
    私の中にどんどん沁みてくる物語だった。
    ほかのどんな時でもない、
    今読めて本当によかった。

    物語が持ってる
    ワクワクさせてくれる力、
    それが人生のほんとうかもしれないと感じさせてくれる力、
    私にとってはそういうものがたくさん詰まった物語だった。

    愛おしいって言葉が1番しっくりくるな。
    私はこれを会社の行き帰りの満員電車の中で読み継いだけれど、
    読んでいる間、
    私はニューヨークのセントラルパークにいて、
    ユタの洞窟を探し、
    真夏の暑いさなかに汗をダラダラかきながらビールを飲む気持ちになった。
    本当にそこへ連れて行ってくれる物語だった。
    物語の楽しさを存分に楽しめる物語だった。

    解説にあったように、彼の人生はここから始まるのかもしれない。
    でも紛れもなくそこまでのあれもこれも、
    彼の人生の断片で
    なければここまで決してたどり着けなかったのだ。
    私はそれが奇跡で愛おしくて、
    ほかの誰とも違う彼、すなわち私がいることだと思う。

    何もかもなくしたい衝動というのを、
    人は持ってるのかもしれないと思った。
    もう一度、新しく生きるために。

  • クズはクズでしかないのか。

  • 終始流れていた暗くも魅力的な青春の風。物語がどこに向かってるかわからないものの、登場人物の面白さと、たまに挟まる考えさせる一言で読む手が止まらなかった。始めてきた図書館(鳥居の近く)ということもあり、特別な旅をしていた気分に浸っている。

    ちょうど今の自分に染みる部分が多かった。

  • グイグイ引き込まれる文体。メインとなるマーコ、トマス、ソロモンの3人の男を筆頭に、登場人物の描き方がとてもよかった。古き良きアメリカへの郷愁が強く感じられ、アメリカ史上のターニングポイントも抑えてくるので、自伝的な要素が強く感じられる。
    人生は必然性によって決められるのか、それとも偶発的な要素によって決められるのか。自分の人生を振り返る際にとても役に立つ本だと感じた。人生の中での大きなイベントの度に読み返したい。かなりストライクだった。

  • 色んなことが次々と起きて、グイグイ読ませられた。
    所々で哲学チックな語りが始まるのも面白かった。

  • ポールオースターの作品は初めてでしたが、面白かったです。
    あまりに都合が良すぎる展開は一種のコメディでしたが、主人公と周囲の人物の関わりからは哲学的な何かを感じさせられました。
    主人公が色んな人と出会い、人と繋がる喜び、大切なものを失う悲しみを知り、そして学生時代、自分の殻に閉じこもり、誰も受け入れなかった彼が、人を赦し受け入れていくことを学んでいく。400ページ程の本ですが、人生で人が成長していくために必要な経験が沢山書かれていると思います。
    少し回りくどい構成ですが、読み終わってみると、この構成でよかったとさえ思わせてしまうくらい、大人になるために必要なことが書かれていました。
    青春小説として素晴らしい本でした。

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