トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2007年12月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784102451106

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

人生の偶然やアメリカの文化が織り交ぜられたストーリーが魅力の作品です。読者は、金や夢、人種に関する深いテーマに触れつつ、日記のように淡々と進む物語に引き込まれます。特に、金と人生の関係についての考察は...

感想・レビュー・書評

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  • ありえないような本当の話をまとめたポール・オースターのエッセイ集。読みながら仰天(^^♪ 彼は偶然の一致に遭遇しやすいのかな? でも日々のニュースや私たちのまわりには、えっ~~なにそれ!? というようなことが結構起こっていますね。そんな<事実は小説より奇なり>というオースター体験を、軽やかなタッチで描いています。

    もちろん、屈指のストーリーテラーは、そんな数々の偶然をしっかり作品に取り込んでいます。
    ある日オースターの叔父は、高所から落ちてしまうのですが、なんとか一命をとりとめたのは、偶然にも落ちた場所に張り巡らせていた洗濯ロープのおかげ。そんな出来事を、彼は『リヴァイアサン』の準主人公サックスに担わせています。

    また、無名時代のオースターはほんとに金がなくて食べる物にもことかいていたよう。自ら命を絶つことなく、なんとか生き延びてこられたのは、いろんな人の助けと偶然の連続……そんな塗炭の苦しみを、彼は『ムーン・パレス』の主人公マーコに担わせました。

    大都会ニューヨークの公園、ホームレスに陥ってしまった孤独な学生マーコ。現実社会の中で無情に降りそそぐ不条理の雨あられ。この物語ではあまりの滑稽さに笑えるのですが(この「笑い」というものに昇華させたところが凄いのですけどね)、そこへ出くわした一文に絶句。かつて人生の崖から飛び降りてしまった友人をどうしても空中でつかまえることができなかった私は思わず涙してしまいました。この一文には間違いなくオースターが塗りこめた言葉の力というものがあるのです。

    「僕を愛してくれる人たちがいることを、僕は知ったのだ。そんな風に愛されることで、すべてはいっぺんに変わってくる。落下の恐ろしさが減るわけではない。でもその恐ろしさの意味を新しい視点から見ることはできるようになる。僕は崖から飛び降りた。そして最後の最後の瞬間に、何かの手がすっと伸びて、僕を空中でつかまえてくれた。その何かを、僕はいま、愛と定義する。それだけが唯一、人の落下を止めてくれるのだ。それだけが唯一、引力の法則を無化する力を持っているのだ」(『ムーン・パレス』)

    彼の作品群を通して眺めてみると、人は迷宮のような現実世界に屈服して千々に漂いながら、それでもイカロスのように大空に飛び出し、底なしの虚無と対峙しようとする静かな力というものを感じることができます。このエッセイにも軽やかに散りばめられていて、オースターの精神性を垣間見ることができます。

    「あなたに世界を再創造してくれとは言わない。単に世界に目を向けて欲しいだけであり、自分のことを考える以上に自分の周りのことを考えて欲しいだけである。少なくとも街に出て、どこかからどこかへ向かって歩いているあいだは。
    ……みじめな人たちを無視しないでほしい。彼らはいたるところにいるから、つい見慣れてしまって、そこにいることを忘れてしまいがちだ……」(『トゥルー・ストーリーズ』)

    物語をとおして厳しい現実や金が人におよぼす栄枯盛衰を、オースターという人はじつに淡々とクールな目で見つめています。そしてときには迷宮世界に屈服しながら、宇宙と静かに対話を続けるしなやかさ。思えば、豊かな想像力と感情移入(共感)の力は、それぞれ愛の変形でもあります。それを見事な物語で紡いでくれるオースターの才気にほとほと感心し、世界で次々に起こる惨事や、この時代、この国、この場所に自分が存在している偶然に、つらつら想いを馳せながら街を歩いていると……いきおいマンホール蓋の小さな穴にヒールがハマって、これが抜けない。う~ん、現実は油断ならない(-_-;)

    素敵な青春時代のオースター作品はもとより、しだいに円熟味を増していく数々のそれにも注目したい作家です。このエッセイ集は上手い文章でさくさくと読めますので、オースターファンもそうでない方ものぞいてみてください♪

    ***
    「物語は魂に欠かせない糧だと思う。我々は物語なしでは生きられない。……我々は物語を通して世界を理解しようと努める。そう思えるから、私も書きつづけられる……私がこの先一冊も書かなくたって世界は崩れやしない。だが最終的に、まったくの無駄骨とも思っていない。我々が世界でしていることの意味をつかもうと努める、人類の大仕事の一翼を私も担っているんだ」(書評集『空腹の技法』)

  • ちょっと強引な偶然だろうと感じる小噺(例えば、サン・テグジュペリを巡るはなし)も若干挟まれていたものの、全体としては、こんな偶然ってあるんだな、という感想。

    目を見張る尾は、柴田氏の翻訳技術。アメリカの昔の法律を訳すのに、カタカナと旧仮名遣いを駆使しているあたり、脱帽である。

  • アメリカンな感性がぐんぐん伝わってくる。金、夢、人種、人生について、日記のように進むストーリーは淡々として、無謀で、チャレンジ感に満ちている。金と人生がイコールであるというアメリカ人の強さを知らされるが、著者は逆に最も汚いものの上に金があるとも表現している。金の稼ぎ方とは?金の使い方とは?人が生きていくためには、金は必要不可欠ではあるが、人が金を創るのであって、逆であってはならない。そんなメッセージを受け取った気がする。

  • 『その日ぐらし』っていう、オースターの若かりし頃の自伝が入っていて、それが最高。もう5回位読んだ、多分。

  • 赤いノートブック
    なぜ書くか
    その日暮らしー若き日の失敗の記録
    事故報告
    スウィングしなきゃ意味がない
    折々の文章

  • 柴田さんの翻訳についての本は色々読みましたが、ポールオースターの作品は初めて読みました。

    ポールオースターの書いた文でありながら、でも言葉の選び方などに翻訳者の柴田さんのカラーを感じる部分もあり (具体的にどこがというのは難しいですが…)、こういう楽しみ方もあるのか、というのは個人的な発見でした。

    先入観無しで読むのが本来の姿なのかも知れませんが、先入観があっても面白いものは面白い、ということで。

  • 題名から短編集だと思って手に取った本作、実はエッセイだった。

    「事実は小説より奇なり」な事例を淡々とつづる「赤いノートブック」を筆頭に、オースターの小説ってこういう経験の積み重ねが作り上げてるんだなぁという内容のエッセイがたくさん載っていて、ページ数の割に贅沢な読書時間を過ごせる。

    行動を起し、何かを感じ、感じたものから気付きを得て、また行動していく。その繰り返しがあるからこそ人生は転がっていくし、感覚も精錬されていく。その道中には自分ではどうしようもない出来事も起こっていくが(この本では9.11、俺らだと震災とか台風になるのだろうか)、それらから何を感じ、どう行動を起すか…なんだろうなぁと思う。

    エネルギーに溢れた!…という感じのエッセイではないが、行動せよ、と静かに訴える気持ちのこもった1冊だった。

  • 「事実は小説よりも奇なり」を地で行く"ウソのような本当
    の話"や、自伝的長編エッセイ、短いエッセイを集めた
    「折々の文章」などからなるオースターのエッセイ集。

    "ウソのような本当の話"は、なんでこれほどの偶然が
    重なるのか!と言いたくなるような話ばかり。

    でも、以前に読んだ本の一節…人と人との出遭いは、
    知らず知らずに行動した結果が導いてくれる巡り会わせ
    …を思い出した。
    オースターも、偶然は偶然じゃなくて、こうした巡り
    合わせだ、と信じている人なのかもしれない。

    「折々の文章」に収められたエッセイは、書かれた時期
    がワタシがアメリカにいた時期とほぼ重なるので、どれ
    も共有感の高いものばかり。

    ただ、自伝的長編エッセイ「その日暮らし」だけは少々
    退屈してしまった。収穫は、柴田さんの名訳をいくつか
    抜き書きしたことくらい。

  •  エッセイというか、ショートショートと言おうか、”事実は小説より”云々と手垢の付いた表現を繰り出したくもなるが、これが著者の持ち味なのだろう。
     冒頭の「赤いノートブック」以外のお話も、著者曰く”本当の話”。

    『樽とタタン』(中島京子著)という小説の登場人物である老小説家が、こう嘯く;

    「小説家に聞いちゃいけない質問が一つだけある。『それはほんとう?それとも嘘?』ってやつだ。これだけは、絶対に、聞いてはいけない。ほんとだよ。答えはまず返ってこない。」

     恐らく、ポール・オースターに、本書の内容を問うても、答えは返ってこないのだろう(あるいは、本当の話と言い張るだろう)。そんなエピソードを、ふと思い出す、なんとも、不思議な偶然が積み重なる小話が連なる。

     話の真偽はともかく、著者が稀代のストーリーテラーだというのは十分に味わえる作品集だ。こんな一文が目に止まる。

    「書き手になるというのは、医者や政治家になるといった「キャリア選択」とは違う。選ぶというより選ばれるのであって、自分がほかの何にも向いていないのだという事実をひとたび受け入れたら、あとは一生、長く辛い道を歩く覚悟を決めるしかない。」

     ”選ばれ”て書き手となった、覚悟に満ちた文章が心地よい。選ばれし書き手は日常のこんなことにも目を止めるのだと、摩訶不思議な感性に舌を巻く。そんな小話も良いが、オースターが”書き手”になる以前、職を転々としていた赤貧の頃を綴った「その日暮し」という掌編も、著者の素顔が垣間見えると共に、金儲けと理想との葛藤が、どことなく往時のアメリカっぽくていい。

     そんな著者の筆致も巧いと思うが、訳者の柴田教授の筆も悪くない。エスプリの効いた訳文が(珍しく)読みやすかった。

     どことなく、遠い昔の、憧れをもって眺めていたアメリカや西欧のごくありふれた暮らしぶりが描かれているのかと思えば、最後は、9.11.前後の小文で締めくくられる。直接9.11.に触れた文章の直後の「地下鉄」は、当時の人々の心情を表しているようで、実に興味深い。ラッシュアワーの地下鉄を描写した文庫本見開きにも満たない小文。理由も判らず停電し止まる地下鉄の中で、

    「わがニューヨーカー仲間たちは、闇の中でじっと、天使の忍耐強さとともに待っている。」

     車両には様々な人種が乗り合わせている。著者は”人間というトランプの無限のシャッフル”と記す。その地下鉄は何のメタファかは自明か?!

  • 「その日暮らし」について。ユーモラス。自分の独立心を持て余しつつとにかく大切にしているのが伝わってきてよい。

  • 本当にエッセイなのか、と思うような、オースター小説みたいなエッセイ。

    blackbird booksで購入。

  • 最初の「レッドブック」だけでも良いかも。
    特に貧乏話の部分が冗長だった。

  • 『そこにはある種のロマンスがあったのだと思う。自分をアウトサイダーとして肯定する必要が、よき人生とはいかなるものかをめぐる他人の考えにはいっさいおもねらず一人でやって行けることを証明したいという欲求があったのだと思う。

    自分の立場を守りつづけ、屈服を拒むことによって、拒むことによってのみ、私の人生はよきものになるのだ。

    芸術は神聖であり、その呼び声に従うことは、求められる犠牲をすべて払うこと、最後の最後まで目的の純粋さを保ちつづけることだ、そう私は思った。』

    ポール・オースターは小説は大好きだけど、短編集とエッセーはそんな好きじゃないな。
    『シティ・オヴ・グラス』、『鍵のかかった部屋』『幻影の書』がまだあるから、早く読みたいな(@ ̄ρ ̄@)

  • ポール・オースターが日本の読者の為に編んだエッセイ集。したがって本国ではこれに対応する原書は出版されていない。まさに日本のファンのための本である。「赤いノートブック」はうそのような本当の話、まるで村上春樹の『回転木馬のデッドヒート』のような。『ガラスの街』の元ネタはオースターの実体験らしい。長篇エッセイ「その日ぐらし」はオースターが作家になる以前の貧乏時代に職を転々としていたころの話。作家ポール・オースターの素顔が垣間見える傑作エッセイだ。

  • オースターが経験した驚くべき偶然の話。
    毎日を生き延びるのに必死だったころの悪戦苦闘の話。
    珍しいかもしれない「こう生きるべき」「こうじゃなきゃいけない」なんて、人生訓のような覚書。

    が書かれたエッセイ。


    『ムーンパレス』のエフィングが語るところの「真実の物語」と同じくらい目まぐるしくて、嘘みたいで、信じられない。

    日付と場所をランダムにした日記を読まされるようなエッセイでした。
    凄く読みにくい。でも面白い。
    『ブルックリン・フォリーズ』と『闇の中の男』に繋がる話もチラホラ。
    自分の経験を殆どダイレクトに小説に反映させちゃう人なんだな、というところが意外でした。
    意外っていうか・・・まさか現実に似たような経験してるなんて思わないもの。

  • 無名時代の体験談や,時事問題についてのノートを集めた本です。
    好きな一節は,州知事にあてた文章で,死刑執行について,州知事の裁量権に言及して,「法を実践する人々が不完全な存在であることを法が理解しているからこそ,法の決定を覆す権限が法自体の中に書きこまれなければならないのです」と述べているところです。
    また,この本で,オースターは,勇気のある作家であり,文字通り彼が自分の命をかけて文章を書いているのだと感じた章がありました。

    言葉が世界をつくり,言葉は,人も,自分をも破滅させる力があります。その破壊力の前に,私は,怖くて,立ち止まってしまうことがあります。しかし,オースターのような人がいるから,少しだけ前へ進む勇気をもらえるのです。

  • 奇跡みたいな偶然って、意外と自分の周りで起きているのかもしれないけれど、多くの人がそれに気づくことができない。
    見過ごしてしまう。

    言葉にして、認識することで、
    初めて気づけるのかもしれない。


    意見も批判も言葉にしなくては意味がない。
    そう思ってしまう。
    極端かもしれないけれど。

  • 軽快な文章でかなり面白かった

    最後の章の9.11以降のアメリカについて筆者はどう思っているのか、文化人はどう思っているのかがすごく良かった
    「国」と人を一括りで考えてはいけないなと改めて思った

    金銭的安定(勤めて固定収入)と精神的安定(書きたい物を書きたいときに書く)の狭間で揺れた時期を書いた『その日暮らし』が痛快だった

  • 小説だと思って買ったらエッセイだった。
    よくある日本のエッセイとはタイトルも内容も随分違って、小説のように楽しめる。

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